森の案内人 田所清

自然観察「独り言」

果期のツチアケビ

2020年11月26日 | 自然観察日記
ついに出会いました。ツチアケビの果実です。何とも言えない魅力的な造形で美しいというより神秘的な感情の方が大きく大いに感動しました。今年は人生70年を過ぎて初めての経験をさせていただいたことがいくつかあるのですが、9月のクマとの近距離での遭遇と10月のツチアケビの果実に出会ったことは特筆できる2大出来事になりました。
初夏に福島の観音沼付近でツチアケビの花を見ました。これも初めてのことでした。その後を見ようと9月に3時間もかけて同じ場所に出かけたのですが、残念ながら草刈りでしょうかきれいさっぱり跡形もなく消失していてとても落胆していました。せっかくの機会を逃してしまったと落ち込んでいたのですから見事なツチアケビの果実に出会えた時の喜びはそれはそれは大変なものでした。

ツチアケビの果実

2020年11月26日 | 自然観察日記
アケビというより赤いバナナのようは果実です。大きさは10㎝くらいで太さは2㎝ほどあります。大小さまざまですがそれが20個くらいついています。もっとも花の数はこの数倍で結実する確率は20%~30%くらいでしょうか。

ツチアケビの果実の横断面

2020年11月26日 | 自然観察日記
縦断した果実を合わせて横断面を観ました。縦に切った跡が入りましたからわかりにくいのですが、果実を作る子房は内側で三か所で膨らみその表面に細かな種子が並んでいるというのが見て取れます。

ツチアケビの種子

2020年11月26日 | 自然観察日記
小さな種子を少し拡大して観てみました。縁に翼があることがわかります。種子が小さいことと種子に翼があることから風に乗り遠くまで飛びやすい構造だと理解できます。しかし、ツチアケビの果実は他のラン科植物とはことなり果実は熟しても裂開しないとい性質があります。動物などに食害されない限りそのまま朽ち果ててしまうということになります。種子が空中に飛び出すことはない種なのです。

ツチアケビが自生していた環境

2020年11月26日 | 自然観察日記
ツチアケビはナラタケを利用して生活するという腐生植物として知られています。ナラタケと共生していいるというよりナラタケから栄養を取り生活するという寄生的になっていいると考える方が正しいようです。ナラタケは最も強烈な木材腐朽菌の一種で枯死した森の木々を分解する働きをしているとされます。そのナラタケを利用して生きているツチアケビ、不思議な生き方を選んだものだと思う次第です。今回のツチアケビが自生していた環境はブナ林の一角で低木が生い茂る南面の傾斜地でした。写真の中央にある赤い小さなものがツチアケビです。