オオバジャノヒゲも意図して栽培展示されている種ではありませんが、日陰の場所にところどころ自生しています。ジャノヒゲに比べ大型で立ち上がる草姿になっています。ナガバジャノヒゲという種があるのですがこの種は葉が細くしだれるような草姿になりますから印象がかなり異なります。
毛の生えたシソ科特有の花姿。タムラソウの仲間ですが、花でおしべが飛びださないのがアキノタムラソウで、長く飛び出るのがナツノタムラソウということなのでこの個体はナツノタムラソウということになります。しかし、ナツノタムラソウの自生は太平洋側で神奈川から近畿にかけて分布するそうです。少し分布域が重ならないので調べてみるとミヤマタムラソウ(ケナツノタムラソウ)という変種が中部以北に自生することがわかりました。これで群馬県にもこのタイプの花を持つ種が自生することが説明できます。キク科のタムラソウもいればハルノタムラソウもいますから、とにかくこの仲間はややこしいのです。
いろいろな植物を展示してありますが、その間隙をぬって意図しない山野草も見られるのが良いところです。ヘビイチゴもそんな仲間の一つ。実の季節になっていて、赤い宝石のような実がまばらに見られます。似た種にヤブヘビイチゴがあり普通日陰の林の中などに見られる種ですが、ヘビイチゴはやや日当たりの良い場所に見られるやや小型のつる植物です。
果実は1cmくらいあってヤブヘビイチゴに比べ一回り小さいものです。食べても毒ではありませんが美味しいものではありません。見て楽しむのもでしょうか。ヤブヘビイチゴと比べてみるとはっきりするのですが果実の光沢はやや落ちるようです。
林の一角にヤグルマソウの群生する場所がありました。花の時期は過ぎていますから花後の姿を観るちょうどよい段階です。深山に行けば普通に見ることができる種ですが植物園などでこのような群落展示をしているところは記憶にありません。なんとなく新鮮な感じを受けました。
ヤグルマソウはユキノシタ科の種ですが花に花弁はありません。花弁のように見えるのはがくになります。果実は蒴果。めしべは2裂するため果実にはその痕跡がはっきりと認められます。熟すとこのまま乾燥し割れて中から種子が出てきます。
ミヤマカラマツのかなり生育の悪い個体かな?と思ったものの全体的に生き生きとして生育していますから不思議に思って調べてみると、ヒメミヤマカラマツという種があることを知りました。それも、赤城自然園のある群馬県に自生しているといいます。野生のヒメミヤマカラマツを観たことがないのでこういう林下に生育するのか判然としません。図鑑には深山の岩場にまれに自生するとあります。
ミヤマカラマツも葉の変化はありますから一概には言えませんが、この個体の葉はやや丸みがあるように見えます。ヒメミヤマカラマツとすればなかなかの貴重種でそれなりのしっかりした場所で管理栽培されなくてはなりません。そういえば、この種の周りには鹿よけなのかネットで囲まれ保護されていました。シカなどの食害被害があるのかネットの囲いは各所にありました。
少し湿った場所にサクラソウの花後の姿、まもなく休眠する頃の姿がありました。湿地環境を好むサクラソウは夏の高温や乾燥は苦手なようで種子を完成させた後は今年の生活を終わりをするのでしょうか。周囲にはまばらにサクラソウが植栽されているのかすでに枯れた個体もあります。鉢で栽培などするとかなり遅くまで葉などが残っていますが、冬には休眠する種です早々とその体制に入っているのでしょう。