サクラソウの果実は蒴果で見えている子房は帽子状になっています。熟すとこの帽子がスポッと取れてその下に胎座に並んだ種子が出てきます。花は頻繁に目にしていても果実を観る人は少ないのが現実です。こういう姿もしっかり観ることによりよりサクラソウを理解することに繋がります。
意図的な展示ではなさそうなクモキリソウが園路脇の石の縁に生育していました。自然に発生した個体をそのまま保護している様子です。山野に自生ている個体も比較的他の種がいないような林床に見られることが多いのですがそれでも比較的目に付かないことが多いものです。ここでは被圧植物もなく伸び伸びと立派な株に生育していました。小型の野生ランで派手さはないのですが趣のある草姿です。マニアも結構いるようです。
小さいこともあり花や葉が全体的に同色系ですからよく見ないとどういう構造をしているのかがはっきりしない花です。不思議な形をしている花で、側花弁は線形をしていて両サイドに伸びていて唇弁は直角に反り返っています。外側にはがくが3方向に細く伸びています。
クサボタンの大株がありました。秋の花ですが早いものがポツポツと咲いています。半低木といい基部は木質化する性質があり冬には全体が枯れるものの基部は残ります。丘陵公園にもわずかに自生していますがほとんど地に伏したようになりつる植物と間違えてしまいそうです。こんな立派なクサボタンは新潟ではなかなか見ることはできません。
ほとんどつぼみの状態でしたが、わずかに咲いている花がありました。この種も雌雄異株とされます。この株はどちらか確認していませんが、花を割ると雄花はおしべがぎっしりと入っいるはずです。薄青い花は派手ではないにせよいかにも山野草という雰囲気があり捨てがたい一種です。どことなくキキョウ科のツリガネニンジンに似た花付きをしています。
在来のバラの中では最も高木になる種で今迄に出会った最も樹高の高い木でした。5mはあるようです。樹の幅も4~5mくらいはあったように感じました。サンショウバラは富士山周辺に自生する小高木といわれ環境省の絶滅危惧Ⅱ類(VU)に指定されている貴重な種です。花は6月ころ咲く種ですから残念ながら花はありません。その代わりおびただしいほどの果実が付いていました。
花は魅力的な薄めのピンクです。果実は花に似合わず棘だらけで栽培バラの実とはかなり趣が違います。その後実は色づくこともなく褐色になっていきます。青いうちに果実種に利用できるそうですが虫が入る実がほとんだとか。何のためにこの棘があるのでしょうか。
この種も新潟県内ではまず見られない種です。唯一平標山の中腹で出会ったくらいです。しかし、群馬県や長野県内では深山のところどころに見られました。図鑑などで全国的に分布しているとされるものの中には実は偏りがあるものがけっこうあります。特に三国山脈を境に新潟県内と太平洋側の関係が興味深いものです。新潟県内にあって群馬側にはないとかその逆で群馬側にあって新潟県内にはないなどもあります。オオバショウマは群馬側にあって新潟側にはないというタイプの種になります。
どこかで述べているかもしれませんが、「ショウマ」という名前が付いた種が案外多いのですがその関連性が面白いものです。ベースはサラシナショウマでこの乾燥品が「升麻(ショウマ)」という漢方です。解熱鎮痛などの効果があり珍重されるものです。これを追い求めて葉が似ているものを系統などということを意識せず「ショウマ」と呼ぶようになったことや学問が進みサラシナショウマと類縁の種に「ショウマ」の名前が付けられました。オオバショウマはキンポウゲ科の種で系統的に近いために着いた名前でしょう。葉は似ても似つきません。また、違った理由で「ショウマ」と名付けられたものもありますが、それは別の機会にします。