山里に生きる道草日記

過密な「まち」から過疎の村に不時着し、そのまま住み込んでしまった、たそがれ武兵衛と好女・皇女!?和宮様とのあたふた日記

漱石をめぐる明治文壇ミステリーの闇

2020-06-12 19:30:13 | 読書

 市井に住むダビンチさんが、古山寛原作・ほんまりう作画のマンガ『漱石事件簿』(新潮社、1989.12)を持ってきて「読むべし」という。ダビンチさんはいかにもオイラが好きそうな題材を感知していたのだった。

     

 目次の原稿用紙のデザインは浮世絵作家の橋口五葉であることを作者らは紹介している。そういう目立たない所にスポットを当てるのが作者らの本願のような気がする。その延長線上に粘菌研究者で万能の超人・南方熊楠のヨーロッパでの活躍を描き、また推理作家のコナン・ドイルの知られていない二面性を暴いていく。そこに漱石を絡ませている。

      

 さらに、総理だった黒田清隆の酒乱による殺人容疑や冤罪の大逆事件の闇を告発している。大逆事件の冤罪ははっきりしているのに再審請求は1965年却下されている。天皇制は現代でもタブーであるのだ。この時から、大文豪をはじめあらゆる分野に自主規制・自粛の空気が日本全体を襲う。それが太平洋戦争となりさらに現代にも継承されている。それを指弾する人は弾き出され、異議申し立てをする人間を孤立させるのに成功しているのが過去であり、「いま」でもある。

 

 啄木の凄さは、この画像の言葉の通り「やがて世界の戰さは来たらん!不死鳥のごとき空中軍艦が空に群れて、その下に、あらゆる都府が毀たれん!戦さは長くつづかん!人々の半ばは骨となるらん!」と、予言した。初めて知った詩作だったが、啄木の先見の明の鋭さを再認識する。この詩を書いたのはライト兄弟の飛行機が飛んでまもなくの時代だった。啄木の警告にもかかわらず戦火が始まり数百万人の命を失って戦後が始まる。

 それでも闇は触れられないまま生き残っている。作者らの一番言いたいことはこの巨悪こそ解決すべき「事件」なのではないかということだろう。「人間の愚かさで歴史は繰り返すものだ」ということをダビンチさんはオイラに教えてくれたに違いない。

 

 

コメント (4)
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