原題:『曲がれ!スプーン』
監督:本広克行
脚本:上田誠
撮影:川越一成
出演:長澤まさみ/三宅弘城/諏訪雅/中川晴樹/辻修/志賀廣太郎
2009年/日本
正反対の「本物」と「理想」について
「カフェ de 念力」というカフェのマスターである早乙女が店にこのような名前を付けた理由が興味深い。マスターは野良犬に追いかけられた経験を持ち、壁際まで追い詰められた時に、「スポーツバッグ」が転がってきて、地面をひとりでに転がっていった「スポーツバッグ」を野良犬が追いかけていったために助かったことで、いつかそのエスパーが店に来て再会できるようにという願いを込めて付けられたのである。カフェに集う本物のエスパーたちはそのように自分の姿を見せずに超能力を使うエスパーこそ理想とするエスパーだと語り合っているのであるが、そのスポーツバッグに入っていたのは、彼らが「偽者のエスパー」として断罪した「細男」の神田であることは、桜井米との会話の中で私たちは知ることができる。つまり「本物」であることが必ずしも「理想」であるとは限らないどころか、「偽者」が「理想」である可能性さえあるのだ。
『サマータイムマシン・ブルース』(本広克行監督 2005年)においてもタイムパラドックスを分かりやすく検証していたが、超能力に対するスタンスの取り方というのはここらへんにあるように思う。