原題:『The Young and Prodigious T.S. Spivet』
監督:ジャン=ピエール・ジュネ
脚本:ジャン=ピエール・ジュネ/ギョーム・ローラン
撮影:トマ・ハードマイアー
出演:カイル・キャトレット/ヘレナ・ボナム=カーター/ジュディ・デイヴィス
2014年/フランス・カナダ
ポップな表現に隠されて見逃される内容について
ジャン=ピエール・ジュネ監督は『アメリ』(2001年)の印象が強すぎて、そのポップな独特の映像に目を奪われて本作の内容の理解に難をきたしているように思う。
最初に指摘しておきたいことは、フランスの映画監督がアメリカで製作した『エイリアン4』(1997年)はともかく、何故アメリカ西部を舞台とした英語劇をフランス・カナダの資本によって製作したのかということである。もちろん原作がアメリカ人作家のライフ・ラーセンの『T・S・スピヴェット君 傑作集(The Selected Works of T.S. Spivet)』を元にしているということはあるだろう。しかし10歳の天才科学者の主人公のT・S・スピヴェットと彼の周囲の人物たちのおもしろおかしな言動だけに目を奪われてしまっては、テレビ出演時に、スピヴェットが本心を吐露しようとした際、大人たちに都合の良いように言いくるめられる状態と変わらなくなってしまうだろう。
本作のテーマはスピヴェットと双子の弟のレイトンの間で起こった銃の暴発事故によるレイトンの死である。スピヴェットが約400年ももつ「永久機関」を発明した理由は、10年も生きられなかった弟を思ってこそなされたものであり、西部開拓時代から続く銃社会アメリカの暗部をあからさまに示そうとしたはずである。しかし残念ながらこのようなテーマにアメリカが資本を出すわけがなく、フランス人監督がフランス・カナダ資本で製作しなければならないことをもっと深刻に考えるべきであろう。