MASQUERADE(マスカレード)

 こんな孤独なゲームをしている私たちは本当に幸せなの?

『母と暮せば』

2015-12-20 12:57:45 | goo映画レビュー

原題:『母と暮せば』
監督:山田洋次
脚本:山田洋次/平松恵美子
撮影:近森眞史
出演:吉永小百合/二宮和也/黒木華/加藤健一/浅野忠信/広岡由里子/本田望結/橋爪功
2015年/日本

「淑女は何を忘れたか」

 21世紀になってますますはっきりしてくることは「イスラム国」をはじめとするイスラム教と西洋諸国のキリスト教の対立であるが、もちろん宗教対立は今に始まったことではなく昔から存在しており、イスラエルという国の存在がその近親憎悪のような複雑さを象徴しているのは周知の事実である。
 その点を勘案するならば1945年8月9日のアメリカ軍の長崎への原子爆弾の投下は、広島のそれとは意味合いが大きく違う。言うまでもなく、また描かれてもいるように長崎市はカトリック教徒が多く暮らす街であり、それは主人公の福原浩二も例外ではなく、実際に墓石には名前の前には彼の洗礼名と思われる「ヨゼフ」と書かれており浩二の兄で戦死した謙一の墓石にも「フランシスコ」と書かれていた。
 浩二はメンデルスゾーンの「ヴァイオリン協奏曲」をこよなく愛し、特にユーディ・メニューインが指揮するヴァージョンが大好きだった。浩二は『ヘンリィ五世(Henry V)』(ローレンス・オリヴィエ監督 1944年)を観たと言ったことに対して、母親の福原伸子は『アメリカ交響楽(Rhapsody in Blue)』(アーヴィング・ラパー監督 1945年)を観に行ったと答える。
 時系列に多少の疑問が残るが、ここで何をいいたいのかと言えば、アメリカ軍の長崎への原子爆弾の投下はキリスト教の信者たちが同じキリスト教信者たちを殲滅しようとした前代未聞で空前絶後の大事件であるということで、これを明るみに示しただけでも本作は高く評価されるべきであろう。


  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする