MASQUERADE(マスカレード)

 こんな孤独なゲームをしている私たちは本当に幸せなの?

『Re:LIFE ~リライフ~』

2015-12-11 00:41:58 | goo映画レビュー

原題:『The Rewrite』
監督:マーク・ローレンス
脚本:マーク・ローレンス
撮影:ジョナサン・ブラウン
出演:ヒュー・グラント/アリソン・ジャネイ/ベラ・ヒースコート/マリサ・トメイ/J・K・シモンズ
2014年/アメリカ

ストーリーに説得力を持たせる「ストーリー」について

 主人公の脚本家のキース・マイケルズはかつて脚本を担った『場違いな楽園(Paradise Misplaced)』という作品が1998年に大ヒットしてアカデミー賞まで受賞したのだが、その後書いた2作品はヒットせず、完全な「一発屋」に成り下がっていた。仕事の催促をしてエージェントに紹介された仕事はニューヨーク州立大学ビンガムトン校でのシナリオの書き方を教える教師の職だった。
 当初は嫌々ながら仕事をこなしていたキースはだんだんと自分の仕事は脚本家よりも教師の方が向いているように感じてくる。それをいかに説得力をもって描けるかということが本作の肝となる。何故ならば脚本家に限らず、小説家なども一度売れた後にヒットが出ないと生活のために大学教授になるような人を山ほど見るからで、彼らのほとんどは自分の書いているものが売れれば教師などしなくて済むのにと内心忸怩たるものがあり、誰もが村上春樹のようになりたいと思っているはずなのである。
 一度は教え子の作品のプロデューサーとしてハリウッドへの復帰を試みようとするものの、キースは敢えて就任早々に学生のカレンと肉体関係を持ったことによるマリー・ウェルドン教授の倫理委員会にかけられることを選択し、再び教壇に立つことを切望する。
 ここで重要と思われる作品は、キースが授業で学生たちと一緒に観賞し、実際の場所まで登場するテレビドラマ『トワイライト・ゾーン(The Twilight Zone)』の「歩いて行ける距離(Walking Distance)」(1959年)である。内容を簡単に説明すると、主人公の36歳のマーティン・スローンが実家近くの給油所で車を停め、近くの公園まで歩いていくとそこに少年の自分がおり、メリーゴーランドに乗っている若き自分に語りかけた時に、怖くなった若きマーティンが落ちて足に怪我を負ってしまう。そこへマーティンの父親がやってきて36歳の男が自分の実の息子だと理解すると、人にはそれぞれ自分の時間というものがあるのだから、自分たちに関わらずに自分の人生を謳歌するようにアドバイスする。そして36歳のマーティンが現在に戻って来た時に、自分の足に怪我の跡があることに気がつくという話である。
 改めてキースがこれを観て思ったことは自分の過去に囚われるべきではないということであろうし、だからラストで離ればなれに暮らしていた息子から電話があってもキースは電話にでなかったのであろう。キースは自分自身が「場違いな楽園」にいたことにようやく気がついたのである。脚本家を主人公とした物語だけあって良く出来た脚本だと思う。


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