原題:『Love & Mercy』
監督:ビル・ポーラッド
脚本:オーレン・ムヴァーマン/マイケル・アラン・ラーナー
撮影:ロバート・D・イェーマン
出演:ポール・ダノ/ジョン・キューザック/エリザベス・バンクス/ポール・ジアマッティ
2014年/アメリカ
「分かりにくさ」と「悪さ」の違いについて
ザ・ビーチ・ボーイズのリーダーであるブライアン・ウィルソンを描いた本作は、だからと言って例えばフランスのポップスターだったクロード・フランソワを描いた『最後のマイ・ウェイ(Cloclo)』(フローラン・エミリオ・シリ監督 2012年)のように分かりやすい訳ではなく、ある程度ビーチ・ボーイズを知らないと面食らうかもしれない。
ブライアン・ウィルソンは若き頃をポール・ダノに、「その後」をジョン・キューザックによって演じられているのだが、クライマックスは少年と大人のブライアン・ウィルソンが寝室で交錯し、まるで『2001年宇宙の旅』(スタンリー・キューブリック監督 1968年)のクライマックスを想起させるほどシュールな演出である。
しかし演出が悪いという訳ではなく、例えば、プールの深いところでもがいているブライアンを尻目に他のメンバーはプールの浅いところやプール際でくつろいでいるシーンなど彼らの立場を上手く現わしており、あるいはラストシーンにおいて偶然メリンダ・レッドベターと出会ったブライアンが自分の生家を見てみたいとメリンダが運転する車で行ってみたものの、その場所には「END(終わり)」と書かれたプレートがあるだけの既に生家がない更地で、ようやくブライアンは自分が囚われていた過去を捨ててメリンダと新しい家庭を作る暗示として優れた演出だと思うのである。