原題:『Spectre』
監督:サム・メンデス
脚本:ジョン・ローガン
撮影:ホイテ・ヴァン・ホイテマ
出演:ダニエル・クレイグ/レイフ・ファインズ/モニカ・ベルッチ/レア・セドゥ
2015年/アメリカ
新旧システムの対立に隠れた「三角関係」について
『ムーン・ウォーカーズ』(アントワーヌ・バルドー=ジャケ監督 2015年)がスタンリー・キューブリック監督作品のオマージュで成り立っているとするならば、もちろん本作はこれまでの「007」シリーズのオマージュで成り立っており、莫大な制作費を投じた甲斐もあって迫力のある映像を楽しめることは間違いない。例えば、ビルの大爆発やマックス・デンビーが屋根から落ちて死んでしまうところなど『サバイバー』(ジェームズ・マクティーグ監督 2015年)とそれほど変わらず、制作費の規模や脚本の良し悪し以前に、スパイ映画お決まりの「フォーマット」はあるのだろう。
しかし時折不可思議な演出が見受けられる。例えば、Mの制止を振り切ってボンドがローマで行われているスペクターの秘密会議に潜入した際に、フランツ・オーベルハウザーの目の前で行なわれる殺人のシーン、あるいはボンドの目の前でミスター・ホワイトが自殺するシーンなど無駄に長尺で、ストーリーのテンポを悪くしてしまっていると思う。
ジェームズ・ボンドが必死に守ろうとする「ダブル・オー・セクション('00' section)」の既成のシステムとフランツ・オーベルハウザーが手助けすることになる国際監視ネットワーク「ナイン・アイズ(Nine Eyes)」という新システムの対立は、墜落寸前のヘリコプターを器用に操るボンドのシーンから始まり、オーベルハウザーが乗ったヘリコプターが爆破してしまうシーンを経て、結局のところマドレーヌ・スワンを巡る「三角関係」に帰し、世界で一番有名な優男が勝利するというラストは「ボンドガールたち」の期待を裏切らないといったところか。