原題:『Woman in Gold』
監督:サイモン・カーティス
脚本:アレクシ・ケイ・キャンベル
撮影:ロス・エメリー
出演:ヘレン・ミレン/ライアン・レイノルズ/ケイティ・ホームズ/ダニエル・ブリュール
2015年/イギリス
時代を超える男の強い意志について
本作は、グスタフ・クリムトの『アデーレ・ブロッホ=バウアーの肖像 I(Portrait of Adele Bloch-Bauer I)』(1907年)の所有権を巡る、主人公のマリア・アルトマンと弁護士のランディ・シェーンベルクと、オーストリア政府との1998年から始まった攻防のみならず、1938年の、夫であるフレデリック・アルトマンとのナチスからの逃走劇も見応えがあり、実際には、シェーンベルク弁護士よりもオーストリアのジャーナリストであるフベルトゥス・チェルニンの方が資料収集などで重要な役割を果たしていたり、マリアは父親が亡くなる1938年7月までウィーンに留まっていたようだが、同様な絵画を巡る奪還劇である『ミケランジェロ・プロジェクト』(ジョージ・クルーニー監督 2014年)に決定的に足りなかったサスペンスがここにはある。
マリアとランディはハインリッヒ・ホフマンの描いた『もじゃもじゃペーター(Der Struwwelpeter)』を通じて世代を超える繋がりを感じるのではあるが、それよりもマリアのために1938年になんとかスイスに飛行機で脱出できた夫のフレデリックの強い意志を引き継ぐかのようにやる気を見せるようになるランディという巧みな編集の流れが上手く機能していると思う。