呉市の吉浦本町商店街（後編）

ＪＲ吉浦駅の北に位置する吉浦本町商店街。ぱっと見た感じではお年寄りが多い。三原市の帝人通り商店街と雰囲気が似ていると思った。私は喫茶店の近くで店番をしていた女性（お婆さん）に会釈をして話しかけた。

「吉浦駅の向こうに色街があったらしいですね」

「はい、以前はね。今は普通の住宅地になってて昔の面影など何もないですよ。どちらから来ちゃったん？」

眉間にしわを寄せた彼女にはるか東の方からやって来たと伝えた上で「とりあえずあっちへ行って見ますわ」と言って頭を下げた。

柿の白和えを堪能する

甘い柿にねっとりと絡む淡い味の豆腐。主役の柿を引き立てるのが豆腐である。柿の白和え作りのポイントは稲荷寿司のそれとよく似ている。

稲荷寿司は甘い油揚げとあっさり味の酢飯の組み合わせだから旨いのである。どちらも甘かったらくどい味になってしまう。味の濃淡が命と言ってよいだろう。

砂糖が貴重だった昔は果実が菓子の代わりになっていた。そんな歴史に思いを馳せながらこの料理を食べると柿がより一層いとおしくなる。