エンジンを組んでいく前にもう一つやらなければならない事がある。それは燃焼室容積の測定である。
タケガワのボアアップピストンキットは圧縮比11.0との設定であるが、実際にそれが正しいのか知っておくべきである。燃焼室やピストントップ、バルブ等は磨いてあるので、キットの設定自体が正しくても、自分の作業によって数字が狂ってくる可能性もあるし、キットの公称が間違っている場合だってあり得る。
今回の俺のXR250(MD30)のスペシャルエンジンのコンセプトの一つに高圧縮というのがあった。XR250R(ME08)ピストンやRFピストン、ワイセコ、JE等の場合に比べて、何か一つ位はアドバンテージを持たせたかったのであります。
で、実際に数字を知った所で別に実用上のメリットは無い。2気筒以上のエンジンであれば各シリンダーのバランスという意味で、燃焼室容積を知る理由は大いにある。だが単気筒では数字そのものに意味は無い。俺の様なプライベーターがXRに於いて圧縮比を知る理由、それは「俺のXRは圧縮比11.0だぜ!」と自慢する為に他ならない。
燃焼室容積を測定する。
この作業、方法はある程度知っているもののやった事が無い。ネットで検索してみると、どうやら次の様な手順にて行うらしい。
まずメスシリンダーに正確な量の液を用意する。ここからスポイト等で液を取り、アクリル板で密閉した燃焼室に移していく。最終的にメスシリンダーに残った量から容積を割り出す・・・という物。
つまり注射器やスポイトで何度も液を注入していると、その目盛りの不正確さ(特に最後の一目盛り)から、最終的に大きな誤差が出てしまうという事らしい。
但しこの手順を紹介しているHPは、どうやら四輪のエンジンの容積を量っている様である。つまりバイクに比べて容積が大きいのである。
ノーマルXR250(MD30)の圧縮比は9.3なので、現在でも容積はせいぜい27cc前後である筈だ。このHPで紹介されている手順のように何度も液を取って移して・・・を繰り返さなくても良さそう。なので、元々自分自身が認識していた方法、直接注射器で注入して、その目盛りで量る方法で行う事とした。
ちなみにこのHP、俺と同じく「圧縮比を知る理由は、自慢する為」とハッキリ言っている。親近感湧きますな。
注射器。これは商売柄持っていた。アクリルの接着材(メチクロと呼ばれる溶剤)を注入するのに使用する物で、1000円もしない。目盛りは30ccまで刻まれている。
密閉に使うアクリル板。これも商売柄持っていた。10mm厚のクリヤ板で、切断&磨き仕上げしたものの仕様変更によってボツになり、工場の肥やしになっていた物。これにテーパー穴を開けて使う。
さて、注射器の目盛りは如何ほどアテになるのか?
ノギスにて計測した所、最初の一目盛りはともかくとしても、それなりには正確な様だ。シリンダー内側とピストンの摺動面にグリスを塗布(一般的にはワセリンを使う)。
ベタ付け面にもグリスを塗り、アクリル板をセット。
最初に使った液は、MOTUL5100の15W-50。が、コレは固すぎた。次に発電機用にストックしていたカストロール10W-30。まだ固い。で、そのカストロールを灯油で半割り位にしてみたところ、丁度良かった。
①最初に30ccを注射器内に用意して燃焼室に注入。3cc残ったのでヘッド側の容積は27ccである。
②今度はシリンダー側。ピストントップはシリンダー&ヘッドの合わせ面よりも飛び出しているので、上死点を出した後、正確に5mm下げる。勿論ダイヤルゲージを使用する。5mmじゃなくても、計算しやすい数字であれば何でも良い。ヘッドと同じ要領で容積を量ると19cc。ボアは77mmなので、ピストントップが真平らだとすると23.283ccの筈。23.283-19=4.283。これがピストントップの飛び出した分の容量なので、先の27ccから引いてやると、22.72cc。
③忘れてはならないのがヘッドガスケットの厚み。これは実測で0.6mmなので、2.79ccとなる。
差引すると燃焼室容積は実測で25.51ccである。これが正しいとすれば圧縮比10.8となるが、仮に圧縮比11.0とすると燃焼室容積は25.17cc。その差0.34cc。これは測定誤差として考えても良い範囲である。
そんな訳で我がXR250馬邪のスペシャルエンジンの圧縮比は11.0という事にしておきます。
最後に一言、「俺のXR、圧縮比は11.0だぜ!」
補足加筆:使用した注射器は1cc毎の目盛りしかない(目盛りの間隔は1.3mm)。また気を付けて作業しても微妙に漏らしてしまう事、アクリル板をグリスにて固定しているのでグリスの厚み分の誤差がある事、クラッシャブルのヘッドガスケットの厚みをノギスで測っている事など、計って得た数字はどちらかといえば実際よりも多目となり、圧縮比も低めの計算結果が出ているであろうという判断により、上記の様なポジティヴな捉え方(爆)をする事とした。それぞれ二回ずつ計測しているが、1cc単位の目盛りの読み取りでは差は無かった。