俺は完全なオフロード野郎かというと、実はそうでもない。元々はどちらかといえばOFFはテクニック向上の為の手段として始めた物で、本来のファーストバイクはヤマハVmaxである。OFF走行そのものはVmaxに乗り始めるよりも随分前から、河原レベルではあるが練習していたし、今現在では必ずしも手段ではなく、目的にもなっている。ケニー・ロバーツが自宅前のダートラコース(?)でVmaxでフルカウンターを当てて走る写真、ウイリー松浦さんが某紙にて書いたVmaxのインプレッション、佐藤信哉氏がやはりVmaxでフルカウンター(ケニー・ロバーツよりはショボイ)で走る写真等により、Vmaxはオンロードをコーナーリングするよりも、OFFでカウンター当てて走るバイクである・・・との図式が頭の中に出来上がってしまっているのである。
さて、俺のVmaxは2001年8月18日に、友人達との集まりから帰宅してエンジンを止めて以来、全く動かしてない。その時点までは全く不具合も無く乗っていた。だが、その最後に乗った日にバッテリーの寿命が訪れてしまい、「バッテリーを交換しなきゃ・・・」と思いつつも多忙の余り放置、車検は切れ、埃を被り、遂にはその姿を眺める事すら無くなってしまった。
この5年強の保管…というより「放置」はガレージの中であったので、細かい作業は別にすれば、基本的にはバッテリーを付けてやれば動く筈だ。
久しぶりに細かく目視チェック。風雨に晒されていた訳では無いものの、結露による物と思われる細かい錆が出ている。これは磨いてやれば取れるであろう。
軽く押し歩きしてみる。ウヘェ、重すぎ! Vmaxが元々重いものあるが、これはタイヤが原因と思われたので空気圧を測定。何と、ほぼ圧が掛かってない状態。エアを入れてやると普通に押し歩きは出来るようになったが、タイヤにはフラットスポットが残ってしまった。
VmaxのノーマルバッテリーはYB16AL-A2という品番の開放型バッテリーであり、当時のユアサとGS、現在のGSユアサからのみラインナップされているだけで、他メーカーからはリリースされていない。DUCATIのモンスターが同じバッテリーだと聞いた覚えがあるが、同世代のリッターバイクでもコレよりも小型のバッテリーを積んでいるケースが多いのでは?
Vmaxのバッテリーが弱いというのは有名な話である。コレには色々な理由があるが、その理由は大きく分けて二つ。そもそも充電が弱い事と、バッテリーに負担が掛かりやすい事。
まず、充電が弱い事については、絶対的に発電量が少ないというよりも、低回転域で発電しない事にあると思われる。Vmaxでクルージング的な走りをすると、低速トルクが強力なのでトップギアで2000rpmとかでも全く普通に走ってしまうのだが、コレをやっているとバッテリーがアガり易くなる。
負担が掛かりやすい理由は、エンジン始動時にフリクションが大きい事に一つの原因がある。ちょっと弱ったバッテリーだともうエンジンは掛からない。冬季はエンジンにお湯を掛けるだけで始動する場合もある。あと、リヤバンクのエキパイの直隣に位置している事。バッテリーの液量に気をつけていないと、酷い人では交換後数ヶ月しかバッテリーが持たないなんて事もある様だ。
できれば液量チェックの必要が無く、自己放電しにくい密閉バッテリー(制御弁バッテリー)に交換をしたい。
超個人的な理由も含めて考えると、
●ホームセンターで入手可能な事(理由はご想像にオマカセ)
●とりあえずノーマルバッテリーケースに入る事
●容量や寸法等のスペックが近いか、又は並列2連装できる事
ところが、この条件にかなう物は無かった(GSユアサのカタログも照合したが、やはり無かった)。
で、妥協しまくって近所のホームセンターで買ってきたのが、下の記事のバッテリー。
純正のYB16AL-A2は16Aで外寸は206*71*163。
対して入手したYTX7L-BSは6Aで外寸114*71*131。
正直、大失敗だ(爆)。サイズ的にはノーマルの代替に成り得るが、二連装となると微妙。仮に二連装出来ても、ノーマルよりもスペックが低い。言い訳をするならば、今年中にVmaxを復活させるとすると、逆算するとどうしてもこの日にバッテリーを買う必要があった。まあ、今後ゆっくりと対策を考えよう。
バッテリーを取り付け、メインキーをON。Vmaxの燃料タンクはシート下にあるので、暫くエンジンを掛けていない状態だと、メインをONにすると燃料ポンプが作動するのだが、何故か無音。(ちなみに逆輸入車の場合はV-Boostのサーボモーターも動くのだが、俺のはフルタイムV-Boost化により、サーボモーターは取り払ってある)
スタータースイッチを押しても無反応。セルを直結にするとちゃんとセルモーターは回るし、ポンプも直結すれば作動するので、スターターリレー、カットオフリレー、イグナイターをそれぞれ交換してみるも変化無し(もう一台組める位のノーマルパーツを持っている)。ヘッドライトやウインカー等は点灯するし、ホーンも鳴る。途方に暮れてしまった。
悩んでいても仕方ない。燃料ポンプ直結時、キャブがオーバーフローしていたのでOHする。心配していたダイヤフラムは、ヤレてはいるが破れ等は無い。Vmaxは先に述べた通りに燃料が自重落下ではないので、暫く乗らないとフロートチャンバー内のガソリンが無くなってしまい、中身が腐りにくい。空けてみると、やはり殆ど腐りは無いのだが、ニードルバルブとジェットニードルが固着していた。ジェットの詰まりは無かった。
キャブを組み付けてからもメインキーONしても動かない。一旦作業を中断、晩メシを食らい、長女と風呂に入ってから作業再開。やっぱりダメか?
キーをONにしたまま数秒ボーっとしていると突然!!「カタカタカタ…・」とポンプが動き出した。どうも何かの接触不良の模様。接点が錆びているのであろう。スターターも回る。補充電したバッテリーも弱くなってしまったので、嫁さんの日産マーチに直結して始動。5年ぶりに息を吹き返した。
久しぶりに間近で耳にするアイドリング。やっぱり俺にはコレだ! ドスの利いた音質、ちょっと不安定で頼りなげな回転。今回キャブをバラしたものの、同調を取ってないので本調子ではない(コレはVmaxのメンテをする上で基本中の基本なので、近い内に改めて紹介します)が、直4なんかでは味わえない魅力がココにある。
ちょっと乗ってみた。(スミマセン)同調が取れてないので今一つだが、身体に残っていた感触と全て一致した。上まで回してみる。低回転域ではバラけていた音は、回転の上昇と共に纏まって、一つの咆哮となる。
サーキットという場にて歴史を刻んだ銘車は数多い。
また、サーキットからのフィードバックという形で人気を博するバイクも多い。
そういった意味ではVmaxは、完全に「無冠の帝王」である。
勿論、伝説も多い。トップギアでアイドリング、ハンドルから手を離しても走る(ホント)。
3速100km/h、ドライでもホイールスピンする(条件が揃えば可能、コレを知ってる人はかなりのVmaxクレージーとお見受けする)。
外装パーツ全部外しても走る(爆)。空冷のXR250にシュラウドが付いただけで「意味無い」とかワーワー言うバカがいるが、Vmaxを見ろ! その一番の特徴であるエアスクープ、こりゃダミーである。しかもダミーの癖にちゃんとアルミで出来ている。本来燃料タンクのあるべき場所にはエアクリーナーBOXがあり、燃料タンク風のカバーが被せられる。究極はリヤフェンダー。カバーを取り外すと、鉄製の似たようなフェンダーが現れる。文句あるか?
とりあえずVmaxについては、車検取得&復活が目標。XRが完成するまで改造はしない。