そろそろトンボなどの羽化、飛翔が期待されるようになってきた。昨年までは手を出せなくて藪の中に埋もれていた水路を今年は手を加えることにした。
水生昆虫の環境改善とトンボ類の産卵場所確保のためなのだが、隠れた理由はカワニナの生息環境を向上させることにある。
今までは藪に埋もれて日も射さず、川幅も浸食溝そのままで狭かったから、出水すると一気に水勢が強まってしまう。川幅を広げ段差工を施して日照を確保する、これで生物の生活環境を安定させ増やしたいのだ。
画面右の斜面は棚田の法面で水面に近いところはコケ類が多い。右側は田んぼ跡なので土は軟らかい。これにカワニナが増殖してくれればゲンジボタルの生息環境が整うのだ。
昨年の確認で盛期に20個体くらいは飛翔してくれた。見物者が入るようになれば、直ちに絶滅してしまいかねない生息数だが、今の所は生きながらえている。
残念だけど付近の林内のヒメホタルは確認できないままでいる。せめてゲンジボタルの絶滅は回避したい。
幼い頃、まだ有機リン系「パラチオン」に代表される猛毒農薬が使用されない頃は、蛍もアカトンボも農道を埋めつくすほど群舞していたのだ。その中に突進すれば顔に当たってくるほど飛翔密度があった。こんなことは体験していないものには絵空事に違いない。その後は二十歳の頃、岩手山のお釜の中の雲かと思える群れが最後だった。
初めてパラチオンを使用した時の父の話を思い出した。散布しての帰路、農道に動くものがある。近寄ったら、それは腕の太さに近い大うなぎが苦しんでいたのだそうだ。水路には魚がいっぱい死んで浮かんだとのことだった。
その郷里の水田は区画整理され水路も小川も無くなってしまった。米が出来るだけだ。