『やあ!宵の薄墨の空ペア帰る』
『カルガモの連れ舞い落ちし棚田かな』
『カルガモの飛び立ちし池水濁る』
『葦島にカルガモの雛覗きたり』
棚田の畦を補修していたら、2枚上の棚田にカルガモが2羽飛来して着水した。小生に気づかなかったはずはない。作業している前を目の高さで横切り着水したのだから。
田んぼに降りてしまうと、もう姿の確認は出来ない。飛び立つ気配が無いので、時折目を向けると頭部を伸ばしているのだけ見える時があった。向こうもそれなりに気は使っているようだ。
エリア内の水辺に飛来している「つがい」かどうか確認する術はないけれど、他の小さなため池も利用しているのを散見するから、カルガモにとっては特別の場所ではなくなったようだ。
こちらが昼を食べている時間も田から出なかったが、帰り支度をするころは畦に上がって休んでいる風だった。棚田一枚挟んでいるだけだから10メートルはない距離だ。
こちらのほうが遠慮して反対側のあぜ道を使って帰ることになってしまった。「カモの恋路を邪魔する奴は…」なんて野暮は無し。
もう人間として認めてもらっていないみたいで、喜んでいいのやら悲しむべきことなのか、そんなことより「今夜はシジミ汁だ!」と固く心に決めて帰宅するヨレヨレの午後だった。
棚田脇の危険箇所「丸太落としの罠」を排除した。三本が絡んで斜めに立ったままの杉が危険この上ない。何時までも放置できないから重い腰を上げた。棚田の手入れが済んだ訳ではないが、連日の田起こしは少々きつい。気分転換?とも言えるか…。
幹の下部は沢の泥に突き刺さっているし、絡み具合が微妙で予測も出来にくいから、安全のためロープを掛けて倒れる方向を規制して取り掛かった。
地面に倒れている木はムカデのように枝を広げて、なんとも侵入しにくいし足場を悪くしている。枝払いと足場つくりが最初のチェーンソー作業となった。
掛かり木の処理による労働災害は炭鉱や石切り場に次ぐ危険作業との事は承知だし、ボランティアが行う範疇でも無いと思っているがやむをえない。
ともかく無事終了、その奥の倒木数本も処理して、ようやく沢の水路に光が差し込むようになった。トンボの生息環境と、まだ命脈を保っているかもしれない蛍のための「水辺の保全」でもあるのだ。
沢越えして掛かり木となっている二本は、まだしっかりしていてびくともしない。足場が悪いしチェーンソーを入れて反作用がどう来るか確信が持てないから、そこは手を付けなかった。替わりに掛かり木の下に進入しないよう横木を設けて注意喚起の一助としたのだ。
これで進入して潰されても我輩の関知するところでは無い、と思いたい。
棚田の畦を補修していて、呼吸を整えるため手を休めたら、北斜面から張り出した栗とヒノキの枝にモリアオガエルの卵塊が見えた。今年の初確認だ。でも直ぐに変な感じもした。その理由は「例年より卵塊が高い位置」なのである。
二箇所確認できたが、おおむね8メートル、10メートルの高さに産み付けられている。枝の最下段の高さは4メートル位で、今まではこの高さでも産卵していたのだ。
気になって他の産卵状況を確認したら尾根筋の溜池に一箇所だけ卵塊があった。この高さは更に高くて12メートルほどだ。
たまたまなのか理由があるのかは判らないが19日か20日のどちらかで産卵したのは間違えない。
今日はホトトギスの初鳴きも聞こえた。サンコウチョウも鳴いていたが両者、いえ両鳥とも「只今練習中」という感じで、思わず独り微笑む。これは少々恐ろしい。
蛇の子も初見した。赤い斑点があったからヤマカガシだと思ったのだが、およそ30cmで後頭部に白い帯があった。幼態だけの特徴なのかカメラは暑いのでザックの上だった。取りに行く暇も無い、残念無念である。シマヘビは大きな個体をすでに見た。アオダイショウ、マムシはまだ出会っていない。
二日間の雨模様の後、21日は一転して暑くなった。棚田6枚のうち最下段が日当たりが良好だから作付けできるように代掻きをした。ついでに南側6尺ほど田の広さを拡幅した。
代掻きと言っても三本鍬のみだから、したことにはならないが次回にトンボとレーキで仕上げることにした。そこまで済めば田植えはいつでも可能だ。
一番面積の大きい3枚目の棚田は漏水箇所が多くて泥を新たに塗りつけた程度では止まらなかった。思い切って畦の幅を倍にして漏水を防止することにしたのだが、今の所、漏水は減少顕著だ。下側の斜面が乾燥してくれれば大成功である。
暑くなったから脱水症状や熱中症には注意しなければならなくなった。昼過ぎには持参の水一リットルを飲み干して作業終了だ。
枯葉そっくりなのには感心するだけだ。彼らも自信があるのか近くまで接近を許してくれることが多い。というより、突然足元から飛び立ってビックリさせられるのが常なのである。
自分の色合いと枯葉の色合いの認識が出来るのか、対比が鮮明になるところには止まらない時が多いようだ。似た場所を選んで着地する。
里山に入る前には見る事も無かったチョウ達ではあるが、つかの間の一瞬を和ましてくれるお隣さんでもある。
反対に存在を強烈に主張しているのがオオスズメバチだ。出かけるたびに出会いのある季節になったが、人が居ても逃げることも臆することもなく「我が道を行く」だ。
というより「何だ、こいつは?」とばかり頭部至近を旋回したりホバリングしたりと、わざわざ接近観察をする強気の昆虫でもある。師走に入るまでは気が抜けないが、こっちが「枯木そっくりさん」になる立場だ。
『生き様の姿大小変われども我を見下ろす杉の隊列』
『この山に一木なりし公孫樹の樹木肌に優し立春の陽よ』
『土を掘る二月は逃げて木を植えし三月去りて花吹雪の今日』
『枝刻み緑葉命絶つ年の明け緑保ちて立春となる』
棚田のある谷は周囲は森に囲まれて静かな場所だ。正確には鳥のさえずりが一日中響いているうるさい場所だ。しかし水の溜まった棚田と、それに続く畑跡の草地は見ているだけで天国の気分になる。
しかし現実はそう甘くない。南側には自然がもたらした危険な仕掛けが罠となって存在しているのだ。元はと言えば森の手入れをしなくなった結果の地盤崩壊によるものだけど…。
遊歩道脇の景観点なので「掛かり木」の処理を行政にお願いしたのだが、現地で確認はしてくれたが「業者を入れる金がない」とのことで数年が過ぎた。その時間の中で「掛かり木」となっていた数本は朽ちて自然落下したのだが、それが偶然にも「丸太落としの罠」状態になってしまった。
折れて「くの字」で落下したときに先端は立ったままで幹の下半分がつっかえ棒となってしまったのだ。ご丁寧にも更に別の木が横から圧し掛かってしまった。こうなると何処に倒れるか、どういう反動が起きるか予測が難しい。
同時に現地視察してもらった人工林の掛かり木は一人で処理できたが、ここの木の径は小さいけど危険は格段に高くなっている。立て札は立ててあるが散策者が入るようになってきたから放置は出来にくい状況でもある。「死然落下」なんて御免だから重い腰を上げざるを得ないか・・・。
棚田下の畑跡の刈り払いを行った。手入れを行う前は一面の葦原だったが、今はセリ、タデ、フユイチゴなどが優勢だ。刈り払っているとセリの香りに包まれる。
作業を終えて木陰で休んでいたら目の前の浮き草にギンヤンマが来て産卵を始めた。オスに襲われたりして何回か中断し飛び立ったが、どうも産卵場所にこだわりがあるようだった。水面は広く、何処でも産卵可能と思えるのだがギンヤンマはそうは思っていないみたいで、戻ってきては産卵する。
鮭の産卵で口をいっぱい開けるシーンを見たことがあるが、ギンヤンマも力が入るらしくて羽に力が入るのが判って面白かった。
逆光の中に赤っぽいトンボが見えたので「アカトンボには早いだろうに」と確認にいったらムギワラトンボらしい。というのも体長が小さめだったから自信がもてない。最初はウスバキトンボかと思っていたのだが、詮索は止めよう、徒労だ。
目を転じた小水路の林縁にはイトトンボ、カワトンボが多数飛翔している。はかなげない飛び方が愛おしさを醸し出すトンボたちだ。
こんな生物を見た時「妖精だ!」と思うのだろう。今年二回目の出会いだった。一回目は止まらずに飛翔していただけで撮影できなかった。今回はうまく撮影できた。
飛翔中は長い触角がクルクルと揺れて虫とは思えない。例えて言うと「回転翼飛行機」あるいは水泳の「バタフライ」、そんな雰囲気だ。
触覚は長く、体長の5倍以上はありそうだ。虫自体の体長は10mm弱だが、触覚が異常に長いのが写真からも判ると思う。
イタドリを刈り払っていた時に飛び出して、また葉に止まったのを撮影したのだ。先日、オオスズメバチに脅されて退散したイタドリの原を、朝の気温の上がらない時を狙って刈りに入って遭遇したのだが、オオスズメバチとは出会わずに済んでラッキーとしか言いようがない。
徒労に終わること多であったから名前の詮索はしない心算だったが、携帯版に「クロオビヒゲナガゾウムシ」と載っていた。そのまんまの名前なので「妖精だ」と思っていたほうがよかったかなあ。
直ぐ近くには吾亦紅の群落が何箇所かあるのを見つけた。長野県まで出かけなくても済むようになったが植栽地となった周囲だし、継続して下草刈りを必要とするから、人目に付き易くなったのも確かだ。花穂が目立つ様になると抜き取られて「絶滅」する心配がもう芽生えてきた。この植物も妖精の雰囲気がある。
食事を摂る姿を見つめているなんて失礼この上ないと思うのだが、つい見とれてしまう。決して欠食児童、いや欠食爺ではないのだ。お握りは二つ食べている。
ムギワラトンボをようやく撮った。オスはまだ見ていない。このサイズのトンボは、まだこれ一種類のみだ。今日は複数の個体が飛翔していてトンボも警戒心を解いたのか接近し易かった。
スゲの葉に止まって食事中の個体は30cmまでカメラを近づけても食事をやめない。スジグロシロチョウだと思うけど、羽をきれいに噛み切って外し胴体をむさぼっている。毎日の事とは言え器用なもんだ。
蟷螂はまだ見ていないが、蟷螂の食事風景は圧巻だ。バッタ類を食べるとき「バリバリ」と音を立てて食べるのだ。「必見の価値」と言うより「必聴」というべきか。ギョロリと頭を回して睨まれるのも楽しい。トンボはそんなことはしない。