「ウィッツ青山学園高校」の就学支援金不正受給問題が採りあげられ、「お店でお釣りの計算をしたら”数学”、映画を見たら”英語”の学習だった」とか、詐欺まがいの教育内容についても騒ぎが広がっている。
だが、TVのワイドショーは、表面的な話題でお茶を濁すだけで、何故、三重県伊賀市の山の上に、こんな学校ができたのか考えてみることさえしない。
この「ウィッツ青山学園高校」は、国から「教育特区」の認定を受けて作られた。「特区」は全国的一律的基準からはみ出した部分について、行政のニーズがある場合に、特別に許可、認定するという制度。最近では、東京都大田区の「民泊特区」が話題にはなった。「ウィッツ青山」による悪徳商法まがいの学校経営を見るにつけ、これが単に一経営者の着眼と目算で行われたとは考えにくい。そこで、ネット上を検索していたら、就学支援金不正受給校の創立者 下村前文科相と親密 後援会長・会社から献金(「赤旗」昨年12月28日)という記事を見つけた。
塾経営者でもあった下村博文とのつながりが事実であるのならば、これは「教育界へ民間活力の導入」という触れ込みが、いかにインチキであるか如実に示した事件だと思われる。
「ウィッツ青山」は詐欺師が作った高校であるにしても、それでは大学は大丈夫なのだろうか?私立大学の多くは多額の補助金を文部科学省から交付されているが、その教育内容については、「学問の自由、大学の自治」を盾に文科省の干渉を極力拒む体質がある。学生をバカにしきった教授陣、それに反発することもなく、勉強する気など全くない学生。単位を乱発しなければ、翌年は教室に学生があふれてしまう劣悪な教育環境…。「ウイッツ青山」とそっくりなこんな大学、いっぱいあるような気がするが…。
後援会長・会社から献金
東京地検特捜部が強制捜査に乗り出している株式会社立の「ウィッツ青山学園高校」(三重県伊賀市)をめぐる就学支援金不正受給事件で、安倍晋三自民党総裁(首相)の総裁特別補佐を務める下村博文前文部科学相(衆院東京11区)と、同校創立者との親密な関係が浮かび上がっています。(藤沢忠明)
同校は、内閣府や文部科学省から教育特区認定を受けた伊賀市で2005年に設立された株式会社運営の高校です。
参入解禁
この「教育特区」と深い関わりがあるのが、下村氏です。
利潤追求を目的とする株式会社は、学校教育法で学校を設立することはできませんでした。04年9月に小泉内閣で文部科学大臣政務官に就任した下村氏は、小泉政権がすすめた「規制緩和」、構造改革特区制度を利用した教育特区の担当者として、株式会社の学校参入を可能にしました。
これにより、09年春までに全国でウィッツ青山学園高校など、高等学校21校、中学校1校、小学校1校が設置されました。
今回、就学支援金の不正受給が明らかになったウィッツ青山学園高校の創設者は、下村氏の後援会「全国博友会」の会長で、学習塾「メリック」の代表、森本一氏です。
森本氏は同社のホームページで、自らの経歴について、1992年10月に「ウイン」という塾を設立、98年11月に「ウイン」が大証2部に株式上場、2005年9月に「特区制度を活用して、株式会社のウィッツ青山学園高等学校を設立」と書いています。
下村氏が支部長を務める「自民党東京都第11選挙区支部」の政治資金収支報告書によると、「ウイン」から03年に115万円など、00~05年の6年間で計195万円の献金を受け取っています。
森本氏は、さきのホームページに「下村博文衆議院議員を都議会議員時から支援し、その後援会組織を全国規模に拡大しました。(略)今では塾出身の文教議員として将来の文部科学大臣の有力候補の一人にまで成長されました」と持ち上げています。
下村氏は、05年10月にウィッツ青山学園高校を運営する株式会社「ウィッツ」も加わって設立された「学校設置会社連盟」(現・新しい学校の会)の顧問に同年12月に就任しています。
06年9月、第一次安倍内閣が発足、内閣官房副長官となった下村氏は、同連盟のホームページに、「教育改革の推進など今後の活躍が期待される新内閣」との説明で、安倍首相とのツーショット写真が掲載されました。
「第11選挙区支部」は、兵庫県養父市と茨城県高萩市に本校をもつ第一学院高校の運営会社「ウィザス」からも、05~13年に計108万円の献金を受け取っています。
説明責任
教育特区の実現にかかわってきた下村氏は、学校設置会社連盟の顧問として、今回の就学支援金不正受給疑惑について、どう考えるのか、関係企業から献金を受け取り、便宜を図ったことはないのか―など説明責任があります。
下村氏の事務所は、本紙の問い合わせに回答をしていません。