この不況下、大学生で一部上場企業やマスメディア関係に就職出来る人はごくわずか。そんななか、「岩波書店」がコネ採用を広言したというニュースが、波紋を呼んでいるようだ。
だが、出版社がコネ採用というのは、昔から珍しいことではない。出版社は、その知名度の割には、小さな会社が多いので、関係者を採用して済ますことも多かった。もちろん、小学館や講談社などの大手では、きちんと採用していると思うのだが。「岩波書店」については、以前、知人から「在日朝鮮人の女子が高卒採用で入社していた。、どうやって、”天下の”岩波に入ったんだろうと思った」という話を聴いたことがある。
「岩波」が「進歩的文化人」のご子弟を採用したとしても、社会的にそれほどの波風は生じない。だが、TV局ともなると、話は別だ。「みのもんた」の子ども3人が、日テレ、TBSに入社していることは有名。田淵幸一(野球)の息子はフジテレビ。東京都副知事・猪瀬直樹の娘はNHK、田原総一朗の娘がテレ朝、古くは、中曽根康弘の娘がNHKアナというのも有名だ。民放各局にはコネ採用ゴロゴロで、実力入社は、東大、京大、一橋大クラスまでと言われる。問題なのはNHK。「岩波書店コネ採用」の問題にコメント(下記参照)している、小宮山洋子・厚労大臣自身が、故・加藤一郎・東大総長のご令嬢なのだから、身も蓋もない話だ。
地方公務員の採用についても、東京都や横浜市など少数の自治体を除けば、コネ採用が依然としてまかりとおっているはずだ。
その点、国家公務員Ⅰ類(旧・上級職)試験は、学力が際だっていれば、出身大学や門閥に関わりなく採用される。「公務員バッシング」の嵐の中、実は、最も公平な就職試験が国家公務員Ⅰ類だというのは、皮肉なことだ。
応募条件は「コネのある人」 岩波書店が来年度採用で
出版社の岩波書店(東京)が平成25年度定期採用の応募条件として「岩波書店から出版した著者の紹介状あるいは社員の紹介があること」とし事実上、縁故採用に限る方針を示したことが2日分かった。
岩波書店は大正2年創業の老舗。就職先として人気が高く、例年数人の採用に対し1千人以上が応募している。
「縁故」に限ったのは、出版不況が続く中、有能な人材を効果的に採用するのが狙いとみられるが、機会平等の観点から議論も呼びそうだ。
小宮山厚労相:岩波書店の縁故採用に言及
小宮山洋子厚生労働相は3日の閣議後の記者会見で、岩波書店が13年度の定期採用で同書店の出版物の著者や社員の紹介を応募資格にしたことについて「公正な採用・選考に弊害があるという指摘かと思うので、早急に事実関係を把握したい」と述べた。
厚労省職業安定局によると、年齢・性別を限定して採用することは雇用対策法や男女雇用機会均等法に抵触するが、縁故採用について明確に規制する法令はないという。
毎日新聞 2012年2月3日 11時10分(最終更新 2月3日 15時53分)