澎湖島のニガウリ日誌

Nigauri Diary in Penghoo Islands 澎湖島のニガウリを育て、その成長過程を記録します。

矢吹晋著 「尖閣問題の核心~日中関係はどうなる」 

2013年12月09日 11時00分46秒 | 
 HDDレコーダに溜まったTV番組を整理しているうちに、「西部邁ゼミナール」に矢吹晋・横浜市立大学名誉教授が出演しているのを見つけ、改めて見直した。その映像は、下記に添付したYouTube映像のとおり。
 
 矢吹晋氏と言えば、中国分析専門家(チャイナウォッチャー)の中で、ぶれることもなく、現代中国を見続けた数少ないひとりである。私個人としては、石川忠雄、中嶋嶺雄、竹内実などと同じくらい、信頼に値する学者だと思っている。

 「尖閣問題の核心―日中関係はどうなる」(花伝社 2013年1月)は、その矢吹氏の最新刊であるが、西部邁氏によれば、この本について、書評さえ書かれない状況だという。

 それは、この本が「尖閣紛争をどう解決するか。「棚上げ合意」は存在しなかったか?日中相互不信の原点を探る。日米安保条約は尖閣諸島を守る保証となりうるか?紛争の火種となった外務省の記録抹消・改ざんを糺す>」(アマゾンの紹介文)という内容なので、対中不信が盛り上がった現在、「中国側の肩を持つ」かのような本には人気が出ないというわけだ。

 アマゾンには、下記のようなブックレビューが掲載されている。異論もあるが、単純な思いこみを排するという視点に共感できる。

 TV番組の最後に矢吹氏は「尖閣は結局、日中の共同管理という形で決着せざるをえない」と語っている。同様の話を天児慧・早大教授がNHKラジオで語っていたが、全く信用ならない話という印象だった。それに対して矢吹氏の発言には、誠実さと信頼感があり、傾聴に値すると感じた。

【アマゾン・ブックレビュー】より引用
世界は複雑にできてる 2013/7/4
By ryu
 Amazon.co.jpで購入済み先日、ご縁があって、シンガポール人のビジネスマン(日本語はネイティブにしか思えないほど堪能です)と話をする機会があった。
 中国ではいま、尖閣諸島は中国のものであるという報道や発言が毎日メディアに登場しているという。彼曰く、あれじゃあ、中国国民は洗脳されるよなあ、といった話をしてくれた。
へえ、と私は思ったのであるが、実は、気になることがある。
 日本では、少なくともネット上のニュースサイトでは、「尖閣諸島は日本のものである」という言説を目にしないときはない。逆に中国人がこれをみたら、日本人は洗脳されていると思わないだろうか? 尖閣諸島が日本のものであるという歴史的根拠が地図入りで紹介され、なんとなく、尖閣はそりゃ日本のものだろうと思ってしまう。
 対して、私たちはどのくらい中国の言い分を冷静に考えているのだろう。彼らの言い分にもしかしたら、幾分かの正当性があるかもしれないという姿勢でこのことを捉えたことがあっただろうか。
 今、ネットのニュースサイトで、中国が滅びる、衰退する、バブルがはじける、海外からの投資がどんどん逃げるという話を見ないことはない。同様に、韓国のサムスンや現代自動車は円安、ウォン高で収益が激減していると報道される。
 韓国は日本と違って貿易に過度に依存する国だから、一企業の業績が国の存亡をゆるがすという。韓国の原子力発電所の部品の品質にウソがあり、原発が止まっている。夏は大規模な停電があるかもしれない。みな本当のことなのだろう。
 中国にしろ、韓国にしろ、それの衰退のニュースはとても心地よく感じる。なんだ、彼らが破竹の勢いだったのは、彼らが優秀なのではなく、安い労働力や、ウォン安のおかげに過ぎなかったのだ。中国は領土拡張の野心むき出しの覇権的な国家であり、危険だ。だから私たちは東南アジアの諸国やインド、ロシアと結んで自衛のため軍事的な協力関係を結ばなくてはならない。中国のような傍若無人の国の言うことなど何一つ信用できない。まして尖閣諸島の中国の主張などお話にならない。すべて、聞いていて胸のすく話ばかり。聞いていて愉快になることばかり。(愉快になるのはお前だけだろう、と言う人はあまり信用できない…)
・・・・・
 危険を感じないだろうか?私たちが聞かされて、「気持ちのいいこと」のみが流布する。
気持ち悪くないだろうか?「気持ちのいいこと」に反する言葉は抹殺される。

 現に、野中広務元官房長官や鳩山由紀夫元首相は、日中間に尖閣諸島のついて棚上げの暗黙の了解があった旨の発言をしたが「売国奴」呼ばわれされて撃沈である。 
 彼らの言葉が実際に馬鹿げたことであったとしても、私はこの反応のエキセントリックさが怖い。
 かつて、第二次世界大戦中、実際の戦況は正確に報道されず、日本が戦争に突き進んでいった背景に、新聞、ラジオ等のマスコミの偏向報道があったという。マスコミは政府からの圧力でそういう報道をしていたわけではないのだ。結局、国民の聞きたくない内容は報道されないのである。今、同じ匂いがしないだろうか?
 
野中広務は戦争の体験者として、「田中角栄と周恩来には尖閣の棚上げについて暗黙の了解があった」と発言したが、日本と中国がこのまま互いの主張をぶつけていけば、軍事衝突もあると考えているのではないか。いま、この日本の状況で野中氏の発言がどういう反応を巻き起こすか予想がつかないはずかなかろうに(鳩山さんは予測ついてないかも…)どうしても言わざるを得ないことではなかったのか。簡単に無視していいのだろうか?

 「尖閣問題の核心」矢吹晋 花伝社 という本がある。尖閣の棚上げに関して日本の外務省文書に改ざんあると主張する本だ。日本が棚上げを否定することになって、中国はむしろ、その領有をおおっぴらに主張できるようになったという(詳しくは読んでください)ミュージシャンや登山家がそろって売国奴の言葉を発しているが、気味が悪い。世界は複雑にできているのだ。
 中国が全くの悪で、日本の主張は非の打ち所が無いという単純さを私は憎む。領土問題について、互いの国がガチンコで主張し、どちらかの主張が全面的に認められて平和的に解決するなどということがはたして起こるだろうか?
 それとも戦争しますか?(しましょうという言葉がたくさん聞こえる気がする)日本の外務省が、暗黙の了解など百も承知、でもそれは秘密にしておいて中国の領土的野心が世界中から非難されているうちに、ごり押しして尖閣は日本のものだと世界に認めさせてしまおうと悪賢く考えているならむしろあっぱれである。
でも、今さら外務文書改ざんしてました、と言い出せないで取り繕うとしているとしたら、原発と同じなのかもしれないとも思う。
ネットのニュースサイトでも、尖閣に関して周恩来と田中角栄とのあいだにやりとりがあったと認め始めている。ただ、これを棚上げの合意とは認められないとの論調だ。もう既に雲行きがあやしい。
 尖閣に関して二人にやりとりがあったと認めたなら、それをどう解釈するかに議論の余地は発生するではないか。日本の文書には何も書かれていない。中国の文書には記述がある。二人のあいだに尖閣についてなにか話があったと認めるだけで、日本は既に不利だ。中国が行儀の悪い国であることは確かだろう。とはいえ、だから悪ガキは叩いて懲らしめないとわからないのだから、戦争だぁ、になるのは嫌だ。
 私はせめて世界の複雑さに耐える大人でありたいと思っている。






尖閣問題の核心―日中関係はどうなる
矢吹 晋
花伝社


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