目覚めると、朝日を吸い込む窓ガラスには結露が滴る。
畑を覗くと一面ウッスラ白いベールをかぶっている。
歌舞伎役者の如き白塗りではない。華やぐうら若き女性のお化粧とも違う。雪が積もった様子とも異なる。
言うなれば、やや恥じらいを帯びたたおやかな中年女性の薄化粧か…。
初霜である。
暦は大雪、本格的に雪がやってくる季節を告げる。
南北に延びる日本列島、もうとっくに雪に見舞われた地方もあるのだろうが、ここ瀬戸内は “いよいよ来るか…冬将軍!!” そんな感じの師走初旬。
心あてに 折らばや折らん 初霜の
置きまどわせる 白菊の花
初霜が一面まっ白におりて、どれが花か霜か、見わけをつかなくして
いる白菊の花を・・・。
もし折るとしたら、あてずっぽうに折ってもちゃんと、折れるのだろうか。
このウッスラ白いお化粧も、陽差しの前にはひとたまりもない。
時にキラッキラッと輝きを見せるものの、一瞬にして露と化し、土に草の根に吸い込まれて行く。
人の一生、また草の葉の露の如し……なーんかどこかで聞いたような…。
先日植えた豆のタネが、この初霜の冷たさに耐え、露のしずくを養分にして芽を出すのだろう。
寒い寒いと縮こまってもいられない。この寒さと共に、忘年会が盛り上がるのだ……。
( 写真: 恥じらいの薄化粧を思わせる、畑に降りた初霜 )