書名の後ろに、「箱根」とあるように、「タスキメシ」の続編。
主人公は、前編と同じく眞家早馬。
前編「タスキメシ」でも、箱根駅伝の場面が入る話ではあった。
しかし、主人公が選手として箱根駅伝を走ることはなかった。
今回は、箱根駅伝の出場を目指す大学が、早馬の活躍する舞台となる。
だが彼は、もう25歳であり、選手としての話ではない。
箱根駅伝。
大学。
「馬」の名が付く長距離走者の兄弟。
…こんな設定を読むと、私には、東洋大学で活躍した、服部勇馬・弾馬兄弟のことが連想される。
彼らは、新潟県出身だから、なおさらだ。
兄の勇馬は、昨年9月、見事にMGCで2位に入って、東京五輪のマラソンの出場権を獲得している。
この小説では、兄より弟の方が素質があるという設定になっている。
きっと、作者はあえてそうしたのだと思う。
大学卒業とともに選手として走るのをやめ、管理栄養士として働いていた早馬。
大学院で学ぶために入った大学は、箱根駅伝の出場を目指していた。
管理栄養士兼コーチアシスタントとして、その駅伝部の部員たちを支えて活躍するストーリー。
前作の「タスキメシ」よりも、個人的には面白かった。
箱根駅伝を目指す大学を描いた小説は、ほかにもあった。
ただ、「タスキメシ」の名の通り、「メシ」こと食の面にもアプローチするという点で、他にはないユニークさがある。
そして、単純にすべてハッピーエンドではないところが、面白さを高めてくれる。
努力は裏切る。
ここぞってところで裏切る。
この言葉が、一番印象に残る。
だが、読後感は爽快だ。
残念なのは、エピローグ。
「競歩王」もそうだったが、この話も、最後の場面が「2020年8月」になっているのだ。
本来なら、それによって物語は完結するのだろうが、興ざめになってしまうのは、なんとももったいないなあ。