ON  MY  WAY

60代を迷えるキツネのような男が走ります。スポーツや草花や人の姿にいやされ生きる日々を綴ります(コメント表示承認制です)

「マスカレード・ゲーム」(東野圭吾著;集英社)を読む

2022-07-11 22:07:10 | 読む


東野圭吾の「マスカレード」シリーズの最新作。
それが、この「マスカレード・ゲーム」。

解決の糸口すらつかめない3つの殺人事件。
共通点はその殺害方法と、被害者はみな過去に人を死なせた者であることだった。
捜査を進めると、その被害者たちを憎む過去の事件における遺族らが、ホテル・コルテシア東京に宿泊することが判明。
警部となった新田浩介は、複雑な思いを抱えながら再び潜入捜査を開始する―


こんなふうに、発行元の会社では、あらすじを紹介している。

ホテルで、間違いなく殺人事件が起こることを確信した捜査陣。
何が起こるのかわからないところで、潜入捜査を開始する。

この小説を面白くしている一つが、立場の違う登場人物たちがプロフェッショナルであること。
それゆえに、捜査の過程で、捜査のプロである警察側と接客のプロであるホテル側の、プロ同士ゆえの譲れないぶつかり合いが展開される。
事件を起こしたくないがゆえに強硬な手法を進めたい警察側と、部屋に入って捜査する方法には、異を唱えるホテル側。
ホテル側の主張は、客のプライバシーを大切にするのがホテルの務めであるいうこと。
一流ホテルならではのものと思わせる、プロフェッショナルな態度が描かれていた。

ぶつかりながらも、なんとかすり合わせられるところを見つけながら、話は進む。

また、同じ警察側であっても、ぶつかり合いはあった。
手段を選ばず正義を行使しようとする者と、ホテル側の主張を受け入れながら進めようとする者とでの対立。

そんな、プロフェッショナルであるがゆえに生じるぶつかり合いの数々は、読んでいて現実味があり、納得がいくし面白かった。

そして、意外な展開で迎えたクライマックスでもぶつかり合いがあり、主人公がそこを正論で突破していくのはさすがだと思った。

殺人事件を扱うということもあるが、人が人の命を大切にするというのはどういうことなのかを、物語の様々な場面で考えさせられもした。
想像のつかないストーリーの展開と、そこに描かれる登場人物一人一人の人間的な葛藤は、東野ミステリー独特のものだと思った。

最後、暗い終わりではなく、明るさのある終わり方は、このマスカレードシリーズの最後(だと思うが)にふさわしかった。

コメント
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