ON  MY  WAY

60代を迷えるキツネのような男が走ります。スポーツや草花や人の姿にいやされ生きる日々を綴ります(コメント表示承認制です)

「楽しいこといっぱい 65」(栗原はるみ著;扶桑社)を読む

2022-07-15 20:19:08 | 読む


テレビを見ていると、様々な料理番組があり、いろいろな料理研究家の人が登場する。
そのなかで、栗原はるみさんが出演しているものが、一番心落ち着いて見ていられる。
最近は、料理を作りながらのおしゃべりがやかましいくらいの人が多く、できた料理がちっとも美味しそうに見えないことだってある。
それに比べて、はるみさんは、物腰が柔らかく、周囲の人への気配りも感じられる。

この本は、はるみさんが65歳になったときに、一つの記念として出版した、初めてのエッセー集。
「65」の文字は、手書きだ。
私よりも10年前に生まれている人が、65歳になったときにどんなことを思っていたのだろう、ということに関心もあった。

料理の番組同様、本書は肩の凝らない、力が程よく抜けたエッセーが並ぶ。
その数は、当時の年齢と同じ65。
一つにつき見開き2ページの構成。
左側に写真、右側にエッセーの文章となっているし、字数も多くないので読みやすい。

「ジーンズ」「私の手、働く手」「はみちゃんの椀」「ボーダーのTシャツ」「ハッカのあめ玉」「豚肉のしょうが焼き」「玲児さんの椅子」「トイレはもうひとつの部屋」…。
エッセーの一つ一つの題目は、はるみさんの毎日の暮らしで大切にしているものやことを取り上げ、それにまつわることや思い出を語っている。
決して無理をしているわけでなく、日々の暮らしが楽しくなるように、自分の生活が充実するように、心がけていることやその実際を披露してくれている。
「ジーンズ」では、いちばん自分らしい格好として、ボーダーのTシャツにジーンズ、そしてエプロンをあげている。
その中でもジーンズは、髪を短くしたら気が軽くなって、チャレンジできるようになった、という。
だから、ちょっと勇気を出して踏み出してみると、新しい自分に出会える気がするということを書いている。

さりげない文章から、65年生きてきた経験から得た自信と知恵がじんわりと感じられる。
そして、夫や母、義母や子どもなど、家族たちとの様々な思い出を交えながらの文章に、感謝の心が伝わってくる。

肩の凝らないエッセー集。
出版されたのは、もう10年も前になる。
3年前には夫との永訣もあって、当時と状況は大きく変わっているだろうと思う。
でも、65歳時点で大切にしていたことは、きっと今も同じだろう。
暮らしを楽しむ、自分の生活を精神的に豊かにして過ごす。
そんなことに、今65歳の私も学びたいなあ。
コメント
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