8月は、終戦を迎えた月だった。
そのせいか、図書館には8月末になっても、戦争についてのミニコーナーが展示してあった。
そのなかに、一度読みたいと思っていたシリーズ本の1冊があった。
そのシリーズの名前は、「漫画家たちの戦争」である。
長い年月が経ち、風化していく戦争、そして戦場の現実。
それらを描いた漫画家たちの実体験や見聞きした悲惨な体験。
戦争の悲劇を忘れないためにも読んでみたいと思っていたのだった。
これは、金の星社が創業95周年を記念して出版したシリーズ本で、全6巻となっている。
(1)原爆といのち
(2)子どもたちの戦争
(3)戦争の傷あと
(4)戦場の現実と正体
(5)未来の戦争
(6)漫画家たちの戦争 別巻資料
今回見つけたのは、その4番目の「戦場の現実と正体」であった。
この本の収録作品は、私の年齢でも子どものころからよく読んでいた漫画家の作品が多かった。
- 水木しげる『白い旗』
- 手塚治虫『大将軍 森へ行く』
- 楳図かずお『死者の行進』
- 古谷三敏『寄席芸人伝 噺家戦記 柳亭円治』(脚本協力・あべ善太)
- 松本零士『戦場交響曲』
- 比嘉慂『母について』
- 白土三平『戦争 その恐怖の記録』
- 秋本治『5人の軍隊』
古谷三敏氏の作品は以前に読んだことがあったが、他は初めて読むものばかりであった。
詳しい内容を1つ1つ紹介するのは避けるが、どの作品からも、現代人にはわからない戦争の悲惨さが、驚きをもって伝わって来る。
また、本書の特徴として、1つの作品が終わると、「読書の手引き」というコラムのページがある。
そのページがいい。
それぞれ、次のような小見出しをつけ、内容的に読ませる文章が載っている。
★『白い旗』…「生きろ」と叫ぶ勇気
★『大将軍 森へ行く』…戦争には正義も悪もない
★『死者の行進』…無責任が招いた不幸
★『寄席芸人伝 噺家戦記 柳亭円治』…失われた若い才能たち
★『戦場交響曲』…実際にいた戦場に消えた作曲家
★『母について』…激戦地沖縄の庶民の記憶
★『戦争 その恐怖の記録』…人間らしさを奪った戦争
★『5人の軍隊』…本当に戦争が終わったのは…
それらの中で、印象深いのは、『大将軍 森へ行く』の戦争には正義も悪もない、という文章だ。
いじめられているクラスメートを助けるために、乱暴なことをして、いじめっ子やほかの子にもけがをさせたときに正しいことをしたと胸を張って言えるか、とコラムは問う。
クラスメートを助けたいという目的は正しいかもしれませんが、結果として人にケガをさせてしまったことは悪いことです。
「いい戦争」「悪い戦争」という考え方もこれに似ています。どんなに目的が正しいとしても、人間を傷つけてしまう戦争という行為は間違っています。
そうなのだ。
今のロシアのウクライナ侵攻にもかかわって、まったくそうだとうなずける。
あちこちの戦争で言われているのは、必ず自分が正義で、悪いのはいつも相手だという主張だ。
「正しい戦争などない」と、万人が意識し行動できれば、世界は平和になるはずなのだ。
なお、8月14日に日本政府が中立国のスイスとスウェーデンの大使館を通じて、「負けを認める」と返事をしていたので、戦争が本当に終わったのはその日とも言えるようだ。
漫画だから読みやすく、いい本だなあと思った。
だが1冊3,200円(+税)を超える定価だから、ちょっと高価だ。
残りの巻も、図書館から借りて読むことにしよう。