先日、アメリカの児童文学作家ルース・スタイルス・ガネットさんが日死去したというニュースが新聞に小さく載っていた。
100歳だったそうだ。
「児童文学作家ルース・スタイルス・ガネットさん」と言われても、ピンとこなかった。
だが、児童書「エルマーのぼうけん」の作者だと知って、ああ、そうだったのか、と思った。
「エルマーのぼうけん」は、どうぶつ島にとらわれたりゅうの子を助けに行く、9才の男の子エルマーの冒険物語だ。
この本は、1948年に出版されたそうだが、私が子どもの頃、小学校の図書室にあったと記憶している。
図書室には、「エルマーのぼうけん」だけでなく、「エルマーとりゅう」の本も置いてあったのを覚えている。
だが、このシリーズは3部作で、もう一つ「エルマーと16ぴきのりゅう」もあったのは、記憶に残っていない。
でも、「エルマーのぼうけん」「エルマーとりゅう」の本は好きだったことを覚えている。
アメリカでは、1948年から51年にかけて、「エルマーのぼうけん」「エルマーとりゅう」「エルマーと16ぴきのりゅう」の順に出版され、世界的ベストセラーとなった。
日本でも累計780万部を記録したベストセラーなのだが、日本では、1964年初版で福音館書店から出版されていた。
私が小学生になったのは、1963年だったから、その頃新しい本として図書館に入ったばかりだったのだろう。
まさに低学年の頃だし、表紙絵からしても魅力的な本として目に映ったに違いない。
子どもの頃は冒険のお話は大好きだったから、「エルマーのぼうけん」には飛びついたことだろう。
さて、わが家には、30年近く前に、この3部作がセットで買ってあった。
子どものためだったのかもしれないが、大人でも手元に置きたい本だったのかもしれない。
話はすっかり忘れてしまっていたので、このたび順番に読んでみた。
9歳の少年エルマーが、家に出入りするねこから、とらわれた竜の子の話を聞き、遠い島まで助けに島に行く。
リュックに入れて持って行ったものが、チューインガムや桃色の棒付きキャンデー2ダースとか、じしゃくやむしめがね6つとか、「クランベリ行き」と書いた大きな袋…など、いちいち物の名前や数などが書かれているのも面白い。
やがて、それらがちゃんと使われるときがきたり、使われるときにはどういうことでいくつ使われるとか、子どもが気にしそうなことにもこだわってストーリーが展開するのは楽しい。
子どもの側に立って話が作られているから、読んでいて楽しいのだ。
想像をかきたててくれるのが、挿絵だった。
ふわっとした可愛い絵が多い。
「りゅう」というと、怖いイメージがあるが、エルマーと友だちになるりゅうは、とても愛らしい。
挿絵を描いたのが、作者ルース・S・ガネットの義理の母、ルース・C・ガネットだというのだから、その関係を思うとなんとなくほのぼのした感じにもなる。
様々な困難にあうたびに、エルマーは機転を利かして乗り越えていく。
自らの知恵を使い、手元の道具を生かして。
それは、相手を傷つけ痛めつけることなく。
そんなところが、子どもだけでなく大人受けするところなのかもしれない。
楽しい物語を与えてくれたことに感謝し、100歳で亡くなられたルース・S・ガネット氏の冥福を祈ります。
合掌。