「こども六法」を読んで、かつて現職のときに子どもたちにした話を思い出した。
いじめなど子ども間に起きるトラブルを、子どもなりに気をつける力をつけてほしいと願ってのものであった。
以下に、その話を再現してみる。
世の中には、してはいけないことを定めた決まりがあります。
日本には、「刑法」という法律があり、そこにはしては罪になることが、いろいろ定めてあります。
例えば、窃盗罪、傷害罪、暴行罪、強要罪、名誉棄損罪、侮辱罪など。
難しい言葉で分かりにくいですね。
今日は、これらのことについて皆さんに紹介します。
① 窃盗罪…人のものを盗むことです。刑法第204条によれば、10年以下の懲役または50万円以下の罰金と書いてあります。懲役というのは、刑務所に入って重い仕事などをさせられることです。だから、人のものをとった人は、最高10年間刑務所に入れられたり50万円の罰金を取られるということになります。詳しくは裁判で決められます。
② 暴行罪・傷害罪…刑法204条や208条にあります。他の人をなぐったりけったり、暴力で傷つけたりした人は、15年以下の懲役または、50万円以下の罰金です。
③ 脅迫罪・強要罪…刑法第222条や223条にあります。言う通りにしないとなぐるぞとか秘密をばらすぞとか言って、お金や物などを持って来させたり、無理なことをさせたりすること。3年以下の懲役か30万円以下の罰金です。
④ 侮辱罪・名誉棄損罪…刑法第230条・231条にあります。悪口を言って人の心を傷つけた人は、3年以下の懲役または50万円以下の罰金です。
これらの法律は、大人になると適用されますが、子どもである皆さんにも考えてほしいのです。
お店のものはもちろんのこと、教室や友だちの家から、友だちの持っているものを持ってきたり、取って隠したりする。これは、窃盗罪にあたります。大人なら、10年の懲役、50万円以下の罰金です。
気に入らないから、他の人を、はたいたりけったりした。これは、暴行罪や傷害罪です。
「お前の持っているゲームソフトを貸せよ。貸さないとなぐるぞ。」これは、強要罪です。
「○○ちゃんって、この頃生意気だよね。かわいくもないのに。」悪口を言うのは、侮辱罪などになりますよね。
このようなことは、子どもならしてもよいのでしょうか?
いいえ、よいはずがありません。子どもでも、罪になることはしてはいけないのです。
子どものうちに、どういうことが罪になるかを知り、してはいけないことはしないような人になっていくことが大切なのです。
ほかに知ってほしいこととして、刑法第60条に「共同正犯」というのがあります。これは、二人以上で一緒に罪になることをすれば、全員が同じ罪をしたことになるということです。
また、第61条には、「教唆」というのがあります。「人をそそのかして悪いことをさせれば、させた人も同じ罪になる」ということです。
だから、罪になることを誰々が先にしたから、直接自分がしたのではないから、と言い訳してもダメなのです。
また、してはいけないことを他の人がしていたから、自分がやってもいいということにはなりません。
人間として生きていく限り、してはいけないことがあります。
してはいけないことはしない。
私は、皆さんが子どものうちからそれができるように、自分で気をつけて生きていってほしいと願っています。
…こんな話をしてから、もう何年もたつ。
あのときの子どもたちは、ほとんどがもう大人になって生活しているはず。
自分なりにいい人生を送ってくれていることを願う限りだ。