昭和20年に戦争が終わった。
昭和32年に自分が生まれた。
戦争は知らない。
完璧に戦後の人間なのだが、それでも、現在の世界の様々な情勢を見ていると、なんだか危うさを感じる。
民族をめぐる問題、領土をめぐる問題などで紛争となっている地域、あるいは緊張が高い地域などが多くある。
核実験、ミサイル発射などの示威的な行動もある。
領土・領海への侵入などの頻発が問題となっているところもある。
そんな今なので、「なぜ必敗の戦争を始めたのか … 」この書名が気になった。
本書を読んでみると、日本は、やればなんとかなるという見込みだけで、負けるかもしれない、国が亡くなってしまうかもしれない、危険な戦争に入ることを決意してしまったことがわかってきた。
また、海軍と陸軍というのは、本当に仲が悪かったのだということも伝わってきた。
戦争をするにあたっても、日本の指導部が結束して出した結論というわけではなかったようなこともわかった。
こういう理由で戦う。
こういう作戦で、こういう戦い方をする。
戦いをやめるときはこういうときである。
…という具体的な計画は何もないままに太平洋戦争の開戦となる12月8日の真珠湾攻撃に至ってしまったというわけだ。
あまりにも軽いままに流れていった挙句が、非常に多くの命を失い、悲惨な結末になっていってしまった。
こんなくだらない流れで、国が、国民が、命が左右されてはたまらない。
今の時代の世情を考えて、改めてそう思う。
本書の内容は、昭和50年代に陸軍のエリート将校たちによって語られ、行われた振り返りの座談会であるが、有名でない雑誌に掲載された内容を、半藤一利氏が編者となって2019年に出版されたもの。
半藤氏が、末尾のあとがきで、こう言っている。
本の売れないいまの時代に、本書のようにいささか固い、あえていえばシチ面倒くさい本を読まれるという奇特な方に、少しでも手助けとなるようにつとめたつもりですが、はてどんなものか。
はい、半藤さん。
おかげで、私も奇特な存在になれたことを喜んでいます(苦笑)。