九品寺の横の水路にそっと隠れざくような萩の花が好きです。
万葉集では、1番多く詠われているのが、萩の花だというのに、秋になって咲く花を待ちわびた、万葉人に
惹かれます。
萩の万葉歌は141首ですが、ふと今目に触れた数首をここに書き残します。
真葛原靡く秋風吹くごとに阿太の大野の萩の花散る 作者不詳 巻10-2096
(大野とは人里はなれた野を言います。葛の葉が裏返り萩の花が散り敷いている景色のすさまじさ。) 沙額田の野辺の秋萩時なれば今盛りなり折りてかざさむ 作者不詳 巻10-2106
(枝や花を髪に挿す、あるいはかずらとして頭に巻き、植物の生命力や活力、精気を身体に受け、その力にあやかろうとしました。) 大夫の心はなしに秋萩の恋のみにやもなづみてありなむ 作者不詳 巻10-2122
(太夫にあるまじき、恋のとりこになっているわが身を自嘲的に。) 秋萩は雁に逢はじと言へればか声を聞きては花に散りぬる 作者不詳 巻10-2026
(雁が来る頃には、すでに萩の花は散ってしまっている。恋人と会えない、すれ違いの状態なのでしょう。) 秋萩の咲たる野辺にさを鹿は散らまく惜しみ鳴き行くものを 作者不詳 巻10-2155
(萩の花が散るのを惜しんで鳴いている鹿よ。妻を求めて鳴く鹿の気持ちになって詠んだ歌。萩の初花を妻としようとしている --萩の原には常に鹿が見られることから鹿の妻とみなして。)
1番初めに挙げた詠は私の住む町の、阿田の大野を詠んでいます。
「真葛原」から命名してもらったという友人がいます。
きっと、お父さんはこの万葉歌がお好きだったのでしょうね。
秋風に揺れるのは、萩だけでなく、コスモスの優しい花の佇まいも、この葛城路に
今花盛りです。
彼岸花だけだったのが、最近急にコスモスが多くなりました。
秋に此処を度々訪れるのが、楽しみになっています。