迦陵頻伽──ことだまのこゑ

手猿樂師•嵐悳江が見た浮世を気ままに語る。

夢はいつでも醒めにけり。

2024-03-23 18:37:00 | 浮世見聞記




觀世能樂堂にて、觀たかった能が三番見事に揃った企画を見つけたので、渋谷區松濤より銀座の地下に移った舞薹まで出かける。


「弱法師」「熊野 村雨留」「安達原」の三番に共通して見たのは、“氣持ちと現實”。



「弱法師」の俊德丸は、西に沈む陽を心の目で見た氣になってゐても、現實には盲目ゆゑに他人(ひと)に突き當って転倒し、「熊野」は平宗盛一行が絢爛たる京の櫻を愛でやうと繰り出したところで、今回の小書(特殊演出)にもある“村雨”と云ふ現實により興醒めとなり、「安達原」の鬼女は嘘をつかないと信じてゐた阿闍梨に、現實には裏切られる──

能樂と云ふ、立体静止画像の空間に何時間も身をおくのは、演じる方も演じる方だが、それを觀る方も觀る方だと、自分もその一部のくせしていつも苦笑ひだが、今回は自分のなかで“主題”を見つけたおかげで、それなりに樂しんで鑑賞す。


そして、普段は氣にも留めぬチケットケースに刷られてゐるキャッチコピーに目を留めて、ここにも現實ネタがあったとつひ笑ふ。



銀座に行って會ふのは、外國人觀光客(ガイジン)ばかりだヨ。

ウンザリするくらゐに。

あそこもやがて、シブヤに續く「日本で嫌いな場所」になるかもしれん。










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