今年の鎌倉薪能は、事前収録した金春流の素謠と仕舞を今日の正午から無料配信とのことで、「久しぶりに本物の能を観られる……!」と、特に金春流前宗家の「羽衣」を樂しみにしてゐたが、先日に鎌倉市側の関係者に人災疫病の感染者が一名確認されたため、延期とのこと。
お粗末な話しだ、と思ふ。
この場合、事前に發熱症状が表れたことで感染が發覺したものの、これがもし無症状感染の状態で収録當日を迎へてゐたらと思ふと、空恐ろしくなる。
黒川能のやうに、感染防止の見地から今年は中止、と初めから決めてゐてくれた方が、私には納得がいく。
先日の埼玉県におけるミュージカル劇團の、まさに“劇場型”な事例といい、いくらアルコールを完備してゐやうとそこへ感染者に入り込まれたら一巻の終はり、と云ふいまの現實を、よく肝に銘じるべきだ。
──どだい無理があるこの疫病騒動下における催事の、はっきりとした限界を私は見る。