「第七回 二子玉川ライズ薪能」で上演された觀世流「小鍛冶」を、無料動画配信で樂しむ。
舞臺は生(ナマ)で觀るに越したことはないが、前席のヒトのアタマが邪魔になったり、隣りや近くのヒトが無遠慮に咳をしたり、連れといつまでも駄弁ってゐる喋り好きなどに氣を散らされることなく、自室でゆったりと觀たいものを觀られるかうした現代文明も、私は大いに活用したいクチである。
今回の薪能はもちろん野外上演のところ、昨日からのイヤミな冷たい雨のため──八十八年ぶりの十月真冬日云々──、屋内に假設舞臺を移しての演能。
背景は鏡板ではなく黒幕を垂らしてゐるため、どうも妙な雰囲氣だが致し方なし。
「小鍛冶」は能の人氣曲の一つなわりに、私はこれまで五流能では縁がなく、新潟縣村上市の大須戸能と、江戸里神樂の「神剣幽助」で觀たことがあるばかりだ。
そんなこともあって今回の無料動画配信は前々から樂しみにしており、切能らしくさっぱりきっぱりとした舞と地謠を、暖房を効かした我が城で、殿にでもなった氣分でしっかり脳裏に焼き付けり。