その後も向かい家の少女とは、門口で時間を問わず会った。
いや、会った、というより、向こうから一方的に冷たい瞳で“刺して来た”、と言ったほうが当たっている。
私はどう考えても、あの白いワンピース姿の少女から、そのような視線を向けられる覚えがなかった。
一体何なのだろう……?
私は一度、思い切って少女に問いかけようと試みたことがある。
しかし少女は、門口からぱっと奥へ退(しさ)って、今度は樹木に囲われて薄暗い母屋の玄関先から、やはりあの瞳で、刺してくるのだった。
完全な拒否の態度だった。
しかし私は、敵意を含んだ瞳で刺すかの少女を、不思議と生意気でイヤな娘だとか、そのようには思わなかった。
また、心身を患っている娘のようにも感じられなかった。
私へ嫌悪感を抱いていることは確かのようだが、しかしそれとは別に、なにか訴えたいことがあるようにも感じられた。
その後も私は、何度か少女に接触を試みたが、結果はいつも同じだった。
けっきょく私は、もう確かめることは無理と、諦めることにした。
たかが子どものやることではないか……。
やがて職場の人事異動で仕事がにわかに忙しくなったこともあり、いつしか少女の瞳を気することは、ほとんどなくなっていった。
〈続〉