(2025年1月26日/コンゴ民主共和国、北キブ州ゴマ、郊外に避難する人々(AP通信)【1月28日 KWP News】)
【ルワンダが支援しているとされるツチ族系反政府勢力M23 コンゴ東部主要都市を掌握】
各メディアで報じられているように、アフリカ中部コンゴの東部で隣国ルワンダの支援を受けているとされる反政府勢力M23(ルワンダのカガメ政権も、コンゴのM23もツチ族系)が攻勢を強め、東部主要都市ゴマ(人口200万人)を掌握したとも。
一方、これに対し首都キンシャサではM23・ルワンダに抗議するデモが激化し、各国大使館が襲撃されるなど緊張が高まっています。
****コンゴ民主共和国 反政府武装勢力が東部の主要都市を掌握 首都にも飛び火****
アフリカ中部コンゴ民主共和国で、反政府武装勢力が東部の主要都市を掌握したと宣言しました。首都ではデモ隊が大使館を襲撃するなど、各地で緊張が高まっています。
コンゴ民主共和国で、隣国ルワンダの支援を受けているとされる反政府武装勢力「M23」は27日、東部の主要都市ゴマを掌握したと宣言しました。
コバルトなど鉱物資源が豊かなコンゴ東部では100を超える武装勢力が乱立し、政府軍とおよそ30年にわたる紛争を続けてきましたが、今月に入り、「M23」が攻勢を強めています。
国連は、今月だけで新たに40万人が避難民になったと報告しています。
「M23」は、コンゴ東部と国境を接するルワンダからの支援を受けていると指摘されていますが、ルワンダ政府はこれを否定しています。
首都キンシャサでは28日、「M23」に対する抗議デモが激化し、ロイター通信によりますと、ルワンダ大使館やアメリカ大使館など、複数の外交施設が襲撃されました。
国連のグテーレス事務総長は声明で、「より広範囲な地域紛争に発展するリスクが高まった」と懸念を示した上で、「M23」に対し攻撃を直ちに停止するよう求めています。【1月29日 TBS NEWS DIG】
コンゴ民主共和国で、隣国ルワンダの支援を受けているとされる反政府武装勢力「M23」は27日、東部の主要都市ゴマを掌握したと宣言しました。
コバルトなど鉱物資源が豊かなコンゴ東部では100を超える武装勢力が乱立し、政府軍とおよそ30年にわたる紛争を続けてきましたが、今月に入り、「M23」が攻勢を強めています。
国連は、今月だけで新たに40万人が避難民になったと報告しています。
「M23」は、コンゴ東部と国境を接するルワンダからの支援を受けていると指摘されていますが、ルワンダ政府はこれを否定しています。
首都キンシャサでは28日、「M23」に対する抗議デモが激化し、ロイター通信によりますと、ルワンダ大使館やアメリカ大使館など、複数の外交施設が襲撃されました。
国連のグテーレス事務総長は声明で、「より広範囲な地域紛争に発展するリスクが高まった」と懸念を示した上で、「M23」に対し攻撃を直ちに停止するよう求めています。【1月29日 TBS NEWS DIG】
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【コンゴ 豊富な地下資源と民族問題から混乱と戦争の歴史】
コンゴにおける100を超えるとされる反政府勢力・武装勢力の跋扈は再三取り上げてきました。
更に遡れば、1996年~1997年の第一次コンゴ戦争、1998年~2003年の第二次コンゴ戦争といったように、コンゴでは戦争の混乱が絶え間なく続いています。
アフリカということで世界からはあまり注目されませんが、犠牲者数で言えば、第二次コンゴ戦争の1998年から2007年の間だけでも540万人以上ということで、第二次大戦後に起きた紛争としては世界最多の死者を出しています。
政権の統治能力の欠如と言えばそれまでですが、そうした状況は、“コバルトなど鉱物資源”が戦闘のための各勢力資金源ともなり、また、周辺国の介入を招きやすいという“資源の呪い”の側面があります。 更に、ルワンダの大虐殺の背景ともなったフツ・ツチの対立も絡んでいます。
****世界に知られていない悲劇:コンゴ民主共和国****
アフリカ中部に位置するコンゴ民主共和国。人口は7,800万人に上り、その面積は西ヨーロッパに匹敵する。鉱物資源にも恵まれており、金、ダイヤモンド、銅のほかに、電化製品に欠かせないタンタル、スズ、タングステンなどを産出する。リチウムイオン電池に使用されるコバルトは世界生産量の5割以上を占める。
豊かであるかのように見えるこの国は、実は大きな混乱のなかにある。2年連続で避難民の数は世界第一であり、中東のシリアやイエメンなどの国々よりもひどい状況なのである。
2017年には一日に平均5,500、合計170万もの人々が家を捨てざるを得なかった。世界最大の避難民を生み出す原因は紛争にとどまらず、他にも国内に問題を抱えているコンゴ民主共和国だが、なかなか注目されることがないのだ。
コンゴ民主共和国が歩んできた厳しい道のり
現在のコンゴ民主共和国は、1885年のアフリカ分割に関するベルリン会議においてベルギーの領有が認められ、コンゴ自由国と呼ばれるようになった。
しかし、その実態はベルギー国王レオポルド2世の私有地であり、そのもとでゴム、象牙、土地などをめぐり現地人への過酷な収奪が行われたため、国際的な非難を受け、1908年にはベルギー政府直轄のベルギー領コンゴへと形を変えた。
その後、他のアフリカ諸国と同じように独立運動が始まり、1960年にコンゴ共和国として独立を達成した。しかし、南部カタンガ州の分離運動からコンゴ動乱に突入し、5年にわたる紛争が続いた。
この紛争は、独立を認めたはずのベルギーが、南部の豊かな鉱山地帯であるカタンガ州を分離独立させて影響力を残そうとして兵力を残し、分離独立に肩入れをした。ベルギーとアメリカの後押しを受けた軍部のモブツがクーデターにより当時の首相ルムンバを逮捕し、後にルムンバが殺害されたことで動乱が拡大した。
1965年にモブツが大統領となり軍政を敷き、一応動乱は収拾されたものの、モブツは国名をザイールに変更したのち、アメリカに支えられて独裁体制を強め、国の資源・財源を私物化したため経済成長が止まり、貧困が続いた。モブツの長期政権の中で腐敗が進行しただけでなく、人権抑圧も続き、国家としての機能が退廃した。
1994年の隣国ルワンダのジェノサイドから発生した多くの難民や武装勢力が東ザイールに滞在するようになり、それがきっかけで、ルワンダ、ウガンダなど数カ国による侵攻で1997年にモブツ政権が倒された。そしてローラン・カビラが大統領となりコンゴ民主共和国という国名に改名された。
しかしこの政権への不満を募らせたルワンダは反政府勢力を組織、国内の豊富な天然資源に対する利権も絡み、ウガンダ、ブルンジとともにコンゴ民主共和国に侵攻した。これが2回目の侵攻で、今回は政府側にアンゴラ、ジンバブエなどが応援に入り、合計8カ国による紛争となった。これが「アフリカの第一次世界大戦」とも呼ばれるものである。
カビラが暗殺され息子ジョゼフ・カビラが大統領に就任した後、2003年の和平合意が結ばれ、外国兵の撤退は実現したが、形を変えた武力紛争が部分的に続いた。
鉱物の採掘権や民族間のアイデンティティ対立、隣国の関与などの問題を抱え、武装勢力による襲撃や食料の略奪により、住民たちは不安定な生活を余儀なくされている。
このように続くコンゴ民主共和国の紛争は、1998年から2007年の間に540万人以上もの犠牲者を出しており、1950年代の朝鮮戦争以来世界最大だ。(後略)【2018年3月8日 GLOBAL NEWS VIEW】
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“M23は現在、電子機器の製造に不可欠なコルタンの採掘事業を支配している。”【1月27日 SPUTNIK】とも。
【22年末以来のM23の動き ルワンダは関与を否定】
近年では「3月23日運動」(M23、ツチ族系のルワンダ系反政府武装勢力)【外務省 海外安全HP】の攻勢が強まっており、約1年前の2023年12月24日ブログ“コンゴ 20日の大統領選挙、トラブル多発で延長 ルワンダが支援と言われるM23をめぐる動き”でも取り上げました。
ですからM23の攻勢はここ1,2か月のものではありません。更に言えば、M23は2012年にもゴマを制圧したことがあります。
下記は2023年12月24日ブログでも引用した2023年2月の記事です。
****コンゴ東部でM23をめぐる紛争続く****
(2023年)1月26日、M23は北キヴ州マシシ県のキチャンガを制圧した。昨年(2022年)10月末に本格的な攻撃を再開したM23は、ウガンダ国境の街ルチュルからゴマに向けて南下し、コンゴ軍との間で戦闘が続いてきた。
12月初めの虐殺事件を契機に、M23、そしてルワンダへの圧力が高まり、M23は占領地からの撤退を表明したのだが、それ以降ゴマ西方のマシシ方面での軍事的プレゼンスを強めている。コンゴ軍の攻撃に反撃する形で、キチャンガを制圧したと報じられている(3日付ルモンド)。
M23をめぐる紛争については、アンゴラのロウレンソ大統領がアフリカ連合(AU)および南部アフリカ開発共同体(SADC)から委任を受けて仲介役を務めており、同時にケニヤッタ元ケニア大統領が東アフリカ共同体(EAC)のファシリテーターとして調停にあたっている。
昨年(2022年)7月、(アンゴラ大統領)ロウレンソが(コンゴ大統領)チセケディと(ルワンダ大統領)カガメを首都ルアンダに招き、和平に向けた合意を得たが、停戦は続かなかった。9月以降、ケニアのイニシャティブでコンゴ東部にEAC(東アフリカ共同体)軍が展開されたが、抑止力としては機能していない。
この間、コンゴとルワンダの関係は悪化を続けている。M23の攻勢はルワンダの支援によるものだというコンゴ側の主張と、コンゴの国内問題だというルワンダ側の主張が平行線をたどっており、チセケディとカガメは相互に非難を繰り返すだけで、直接対話もできなくなっている。
国際社会のスタンスは、ルワンダにM23への支援を止めるよう求めるものだ。それに対してカガメ大統領は、M23はコンゴ国内の問題であり、問題はコンゴのガバナンスだと繰り返し、国際社会へのいらだちを隠していない。
ルワンダが何らかの形でM23への支援を行っていることは、国連専門家委員会が認めるところである。一方、コンゴ側のガバナンスに深刻な問題があること、そして紛争の中で民兵組織を利用してきたこともまた事実である。
ルワンダを締め上げれば問題が解決するわけではない。こうした状況下、戦闘の意思と能力を持つM23に引きずられる形で、紛争が拡大している。【2023年2月4日 武内進一氏 現代アフリカ地域研究センター】
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【国連平和維持部隊 「第3次内戦」の恐れを警告】
今回の衝突に関しては
“AFP通信によると過去数日間の戦闘で100人以上が死亡し、1000人近くが負傷した。【1月29日 時事】
“国連によりますとゴマやその周辺の病院は戦闘でけがをした人たちであふれ、治療が追いつかなくなっているほか、略奪や性暴力なども横行しているということです。”【1月29日 NHK】
“(28日の)銃撃戦により南アフリカの平和維持部隊員4人が死亡した。”【1月28日 ロイター】
英BBCは26日、M23の攻撃で200人以上の民間人が死亡したと伝えています。
平和維持部隊に関しては、25日までに要員13人が戦闘で死亡したという南アフリカ軍の発表もあります。
政府軍とM23の衝突における平和維持部隊のスタンスはよくわかりませんが、政府軍とともに空港などの維持にあたっていたようです。
今後、衝突は更に拡大する懸念を国連平和維持部隊は警告しています。
****コンゴ、「第3次内戦」の恐れ=東部で衝突激化、国連が警告****
アフリカ中部コンゴ(旧ザイール)で政府軍と反政府勢力「3月23日運動(M23)」の衝突が激化している事態を受け、現地で活動する国連平和維持部隊の幹部は28日、「第3次コンゴ内戦の脅威が差し迫っている」と述べ、戦闘がさらに深刻化する恐れがあると警告した。国連安保理の緊急会合で語った。
M23は隣国ルワンダ軍の支援を受けているとされ、今月に入って攻勢を拡大。東部の主要都市ゴマに侵攻し、AFP通信によると過去数日間の戦闘で100人以上が死亡し、1000人近くが負傷した。
国連コンゴ安定化派遣団(MONUSCO)の幹部はゴマからオンラインで報告を行い、「街では略奪が発生し、多くの避難民を保護しているが、われわれも安全ではない」と強調。ゴマは孤立状態にあるとして、市民の安全な退避や支援物資の搬入を可能にする「人道回廊」を早期に設置するよう国際社会に訴えた。【1月29日 時事】
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首都キンシャサにおけるデモの参加者からは“「ルワンダと戦うべきだ」との声も上がっていて、混乱が広がる中、周辺国を巻き込んだ地域紛争に発展する懸念が高まっています。”【1月29日 NHK】とも。
M23とルワンダの関係については紆余曲折がありますので省略しますが、ルワンダの大虐殺後、虐殺に関与したフツ族系組織がコンゴで活動、それに対抗するツチ族系組織をルワンダが支援・・・といったあたりが最初のM23前身組織とルワンダ・カガメ政権の関係だと認識しています。
【アメリカ・トランプ政権はどのように対応するのか? ルワンダにはトランプ政権が認めるのではないかとの期待も】
こうした状況でルビオ米国務長官とルワンダのカガメ大統領が会談(おそらく電話会談)を行っています。
****ルワンダ大統領、米国務長官と会談 コンゴ停戦の必要性で一致****
ルワンダのカガメ大統領はルビオ米国務長官と会談し、コンゴ民主共和国(旧ザイール)東部での停戦の必要性について一致したことを29日に明らかにした。
ルワンダが支援するコンゴの反政府勢力「M23」は東部最大の都市ゴマに進軍したが、カガメ大統領はルワンダ軍とM23にゴマからの撤退を求める圧力に屈する姿勢は示さなかった。
カガメ大統領は「ルビオ長官とコンゴ東部の停戦を実現し、紛争の根本原因にきっぱり対処する必要性について生産的な会話をした」とXに投稿。
米国務省は「長官はこの地域の即時停戦を促し、全ての当事者に対し主権国の領土の一体性を尊重するよう呼びかけた」と述べた。
米政府は28日、国連安全保障理事会に対し、M23の攻撃停止に向けた措置を検討するよう要請した。
現地住民によると、ゴマでは数日間にわたって激しい戦闘が続き、店舗などが略奪されていたが、29日は散発的に銃声が聞かれた以外、総じて平穏な状態が続いている。
コンゴと国連の平和維持部隊によると、ルワンダ軍はゴマでM23を支援。ルワンダはコンゴの武装勢力から自国を守っていると主張しているが、コンゴ領内に進軍したかについては直接コメントしていない。【1月29日 ロイター】
ルワンダが支援するコンゴの反政府勢力「M23」は東部最大の都市ゴマに進軍したが、カガメ大統領はルワンダ軍とM23にゴマからの撤退を求める圧力に屈する姿勢は示さなかった。
カガメ大統領は「ルビオ長官とコンゴ東部の停戦を実現し、紛争の根本原因にきっぱり対処する必要性について生産的な会話をした」とXに投稿。
米国務省は「長官はこの地域の即時停戦を促し、全ての当事者に対し主権国の領土の一体性を尊重するよう呼びかけた」と述べた。
米政府は28日、国連安全保障理事会に対し、M23の攻撃停止に向けた措置を検討するよう要請した。
現地住民によると、ゴマでは数日間にわたって激しい戦闘が続き、店舗などが略奪されていたが、29日は散発的に銃声が聞かれた以外、総じて平穏な状態が続いている。
コンゴと国連の平和維持部隊によると、ルワンダ軍はゴマでM23を支援。ルワンダはコンゴの武装勢力から自国を守っていると主張しているが、コンゴ領内に進軍したかについては直接コメントしていない。【1月29日 ロイター】
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今後に展開についてはルワンダの方針にかかっていますが、“トランプ政権が自分たちの行動を承認するのではという期待がルワンダ側にある”との指摘もあるようです。
****M23がコンゴ東部の主要都市ゴマに侵入****
27日、反政府武装勢力M23は、東部の主要都市ゴマに侵入した。M23やそれと共闘する「コンゴ川同盟」(AFC)はゴマを制圧したと発表したが、27日時点で事態は混乱しており、完全に制圧したわけではなさそうだ。
これに先立つ26日、国連安保理で緊急会合が開かれ、グテーレス事務総長は、ルワンダ軍にM23への支持を止め、コンゴから撤退するよう要請した。事務総長がルワンダを名指ししたのは、これまでにないことだった。同会合では、米国、英国、フランスも、ルワンダに撤兵を呼びかけた(27日付ルモンド)。
『名前を知らない戦争』の著者スターンズは26日付ファイナンシャルタイムズ紙に論説を寄せ、紛争終結にはルワンダに圧力をかけるしかないと強調した。
M23は2012年にもゴマを制圧したが、この時は国際社会がルワンダに援助停止などの制裁措置をとり、ルワンダが支援を控えたことでM23の崩壊につながった。今回、欧米諸国はルワンダにコンゴから撤兵するよう呼びかけているが、制裁に向けた動きは今のところない。
この時期にM23がゴマを制圧した理由として、世界の関心がトランプ政権誕生に集まっているうえに、トランプ政権が自分たちの行動を承認するのではという期待がルワンダ側にあるとの指摘もある(27日付ルモンド)。
ルワンダ側のメディアは、コンゴ軍が、民兵組織ワザレンドゥ、ヨーロッパ人傭兵、ブルンジ軍、南部アフリカ共同体軍と協働し、かつてない脅威をルワンダに与えていると強調している(27日付New Times)。
1月に入ってから40万人が避難民となり、戦闘で国連平和維持部隊、南部アフリカ共同体軍にも合わせて13名の犠牲者が出ている。紛争は、大湖地域全域を不安定化させつつある。【1月28日 武内進一氏 現代アフリカ地域研究センター】
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ウクライナに侵攻したロシアも、ガザを破壊したイスラエルも、相手側の脅威をあげて自国この軍事行動を正統化しています。
トランプ大統領はアメリカの利益にならないアフリカの紛争など関心はないでしょうが、こうした紛争・地域混乱にアメリカとしてどういう姿勢で臨むのかも注目されます。
ついでに言えば、国連・欧米諸国はルワンダの大虐殺を止められなかったことで、ルワンダ・カガメ大統領に“負い目”みたいなものがあります。