孤帆の遠影碧空に尽き

年に3回ほどアジアの国を中心に旅行、それが時間の流れに刻む印となっています。そんな私の思うこといろいろ。

リトアニア  日本輸出の原発建設計画に関する国民投票で、建設反対が6割超

2012-10-15 22:50:41 | 原発

(閉鎖されたチェルノブイリ原発と同型のイグナリナ原発 日立が受注したビサギナス原発はこの隣に建設が計画されています。 “flickr”より By Martijn.Munneke http://www.flickr.com/photos/martijnmunneke/4113149104/

原発建設計画が見直される可能性も
バルト三国のひとつリトアニアで14日、議会選挙と併せて、日本の日立製作所が受注したビサギナス原発の建設の是非を問う国民投票が行われました。
国民投票結果は法的拘束力はないものの、建設反対が約63%と賛成(34%)を大きく上回り、議会選挙における建設反対派躍進と併せて、今後の原発建設計画に大きく影響しそうな状況です。

****リトアニア:ビサギナス原発建設反対が6割超 国民投票****
毎日新聞 2012年10月15日 19時25分
 【ベルリン篠田航一】旧ソ連・バルト3国のリトアニアで14日、日立製作所が受注したビサギナス原発の建設の是非を問う国民投票が行われた。中央選管によると、15日朝までの開票で建設反対が62.70%に達し、賛成の33.96%を大きく上回った。国民投票に法的拘束力はないが、同時に投開票された議会選で原発計画の再点検などを求める左派系野党が躍進し、政権交代する見通しになり、日立の原発建設計画に影響が出る可能性を指摘する声も出ている。
 リトアニアは04年に欧州連合(EU)に加盟。その条件として、旧ソ連・チェルノブイリ原発と同型の老朽原発の閉鎖を約束し、09年に稼働を停止した。現在は電力の約7割をロシアからの輸入に依存しており、独自のエネルギー源確保のため原発の新設を急いでいるが、昨年の福島第1原発の事故後、国民の間に原発を不安視する声が広がっていた。
 議会は6月、ビサギナスに計画する原発の建設事業権について、日立製作所と契約することを承認。炉型は改良型沸騰水型軽水炉(ABWR)で、事業規模は約4000億円。20年ごろの運転開始を目指している。
 議会選は、現地メディアが報じた14日夜の出口調査結果によると、野党の労働党が20%前後の得票率で第1党となり、社会民主党などと今後、左派連立政権樹立に向けた工作を開始する見通し。クビリウス首相率いる保守系の祖国同盟・キリスト教民主党など連立与党側は苦戦しており、近年の財政緊縮策が国民の支持離れを招いたとみられる。【10月15日 毎日】
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上記記事にあるように、リトアニアはEU加盟の条件として旧ソ連・チェルノブイリ原発と同型の老朽原発を閉鎖しましたが、その結果、発電のためのロシアからの天然ガス輸入が増大し、電力価格も高騰しています。
そうした現状を打開するためのビサギナス原発建設計画ですが、安全性と費用対効果の面で国民の支持が得られていない状況です。
一方、国境近くのベラルーシ、ロシア領カリーニングラード州のそれぞれでも原発建設が進められています。

****リトアニア、電力確保で脱ロシア依存 日本から原発輸入****
旧ソ連から独立し、欧州連合(EU)に加わったリトアニアに、日本から原発が輸出される。東京電力福島第一原発の事故後の初案件だが、「ロシアからのエネルギーの独立」をはかりたい政府に対し、野党は不要論を展開。総選挙と国民投票が10月にある。街は原発と政治に揺れ続ける。

■電力確保で狙う「独立」
新原発を待ちわびるビサギナス市は、ベラルーシとの国境に近い緑豊かな湖の街だ。市庁舎前のモニュメントも、道路の両側に並ぶ小さな青い旗も、ツルがモチーフだ。
市の誕生はソ連時代の1975年。もともとは閉鎖されたイグナリナ原発の労働者の街だった。「核エネルギーを扱う慎重さ」との意味を込めて、注意深い性格といわれるツルが街のシンボルに選ばれた。

イグナリナ原発は、86年に大事故を起こした旧ソ連ウクライナのチェルノブイリ原発と同型。91年のソ連崩壊を経て、リトアニアは04年にEUに加盟する条件として、イグナリナ原発の閉鎖を約束させられた。
ロシアのくびきから逃れてEUの傘下に入る――。ビサギナスは、政治的思惑のしわ寄せをくった。約5千人いた労働者は、閉鎖処理に携わる2千人だけになり、多くの技術者は国外へ。街は寂れ、電気料金は6倍に跳ね上がった。

「リトアニアは原子力国家。『独立』のためにも必要です」。ダリア・シュトラウパイテ市長(53)は、原発の賛否を問う10月の国民投票は予算の無駄だと強調した。「福島のような事故は心配していない。地震の多い日本とは条件も違う。技術も進歩している。我々は日本の日立(製作所がつくる原発)を待っています」

原発閉鎖で揺れたのは街だけではない。国家のエネルギー安全保障もだ。約5割だったエネルギー供給のロシア依存は閉鎖後の2010年、8割に膨らんだ。電力のための天然ガスもロシアから高く買わざるをえなくなった。

ソ連崩壊から20年。バルト3国の電力網は依然ロシアに組み込まれ、欧州大陸の送電網にはつながっていない。
リトアニア・エネルギー省のジキマンタス・ワイチュナス副大臣(30)は「エネルギー安全保障のためには、輸入を減らし、欧州のシステムに合わせる必要がある。そのためには原発が欠かせない」と話す。20年にはロシア依存を24%まで落とすのが目標だ。

かつてリトアニアはドイツに占領され、第2次世界大戦下ではソ連に併合された。原発建設を支持する地元誌の記者は言う。「我々には占領された長い歴史がある。『独立』には敏感だ。経済のロシアの影響を下げるためにも、日本や米国の企業を呼び入れ、旧弊を変えなければならない」

■反対論次々、国民投票へ
「グローバル化が進む中でエネルギーの独立とは何の意味があるのか。子供の遊びではない」。かつてリトアニアの首相と大統領を務めたロランダス・パクサス欧州議会議員(56)は、原子力そのものは支持しつつビサギナス原発には反対の立場だ。

リトアニアの国境周辺には原発が次々に建とうとしている。
チェルノブイリ事故で放射能汚染を受けたベラルーシは、国内初の原発をリトアニア国境に近いオストロベツに建設中だ。原子力を成長産業と位置づけるロシアが全面支援している。

そのロシアは、リトアニアに隣接する飛び地のカリーニングラード州でもバルト原発の建設を進めている。ビサギナス原発を含め、北海道ほどの面積の中に三つの原発が建つことになる。それがリトアニアの事情を複雑にしている。
パクサス氏は「原発に国境はない。ロシア、ベラルーシと実利に即した関係を築けないのか。市場原理にのっとり、安ければ買えばいい」。

グリーンパワー研究所のリナス・バルシス所長(51)も「小国に新原発はいらない」と語る。グリバウスカイテ現大統領の補佐官だったが、大統領が原発容認に転じたため辞任した。
新原発に反対する理由は、安全性への疑念と、経済的負担の大きさだ。バイオマス発電を増やす方が、雇用を促進し経済的メリットも大きいと主張する。

三つ目の理由として、新原発を建ててもロシアからのエネルギー独立にはつながらないと指摘した。当面はロシアの電力網につながり、ロシアの意向で原発が止められる可能性もあるからだ。「将来的に欧州大陸網とつながっても、それは欧州とロシアをつないでしまうことになる」

パクサス氏もバルシス氏も、10月14日のリトアニア議会選に自らの勢力を率いて参加する。同時に原発の国民投票が実施されることになった背景には、原発を争点にしたい野党勢力の思惑もあるとされる。
最近の世論調査では5割弱が原発反対の情勢で、投票率が5割に届けば成立する。投票結果は政府の決定を縛らないとしているものの波乱の芽を秘めている。【9月13日 朝日】
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【「どの国も、自国の経済を発展させるためにどんな電力供給源がよいかは自ら選ぶことができる」】
原発新設計画を進めてきたリトアニアのクビリウス首相は、エネルギー資源を有しないリトアニアは、「脱原発」を進める状況にはないことを強調しています。

****リトアニア首相、原発推進に意欲 日立製「最高の品質****
東京電力福島第1原発事故後、初の日本メーカーによる原発新設計画が進むリトアニアのクビリウス首相が、首都ビリニュスの政府庁舎で産経新聞のインタビューに応じ、発注する日立製作所の改良型沸騰水型軽水炉(ABWR)について「最高の品質が保証されている唯一の原発だ」と安全性を強調、今後も原発計画を推進していく強い意欲を示した。リトアニアでは同計画の是非を問う国民投票が10月14日に実施される。

リトアニアは、電力の60%以上をロシアからの天然ガスによる火力発電に頼る。ロシアへのエネルギー依存体質を脱却するため、2006年から原発を建設する計画を立ち上げ、今年6月に国会が、日立と契約することを承認した。

クビリウス首相は、福島の事故後もフィンランドやポーランドなどで原発計画が進行中であることを例に挙げ、「どの国も、自国の経済を発展させるためにどんな電力供給源がよいかは自ら選ぶことができる」と指摘。エネルギー資源を有しないリトアニアは、「脱原発」を進める状況にはないことを強調した。

首相はまた、30年代までの原発稼働ゼロを模索する日本の議論を注視しているとしつつ、ゼロ政策はあくまでも長期展望にすぎず日立との契約や自国の原発計画には影響を及ぼさない考えも示した。

その一方で首相は、リトアニア国境と数十キロ以内の場所に建設される予定の露カリーニングラード州とベラルーシでの原発計画について、「これらの(ロシア企業が建設する)原発は安全性について国際基準を満たしていない上、ロシアとベラルーシ政府は欧州基準のストレステストも実施していない」として深い懸念を表明した。【9月22日 産経】
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日本としても、国内では脱原発を目指しながら国外には原発を輸出するという、整理が難しい状況になっています。

悩ましい「難しい隣人」との付き合い方
リトアニアを含むバルト三国にとって、ロシアとどういう距離感を保つか・・・ということが非常に重要かつ微妙な問題となります。経済的には、地理的に近いロシアとの関係を無視することはできませんが、「嫌ロシア」感情も強く残っています。

****急成長 バルト三国 露への経済依存「?」***
政治的に壁/難しい隣人/エネ政策牽制
1990年代初めに旧ソ連から独立したバルト三国が、経済のロシア依存化に神経をとがらせている。
バルト三国は欧州各国の経済が金融危機で停滞するなか、いち早く5%超の経済成長に復帰した。背景にあるのは資源国として成長を維持するロシアへの輸出増で、地理的にロシアに近い特徴を生かした経済立て直しへの期待は大きい。
しかし約50年にわたってソ連に支配された経験から来る「嫌ロシア」感情は根強く、経済的な接近とは裏腹に、政治的な関係強化には障害が残っている。

「ロシアとの経済関係は深まっているが、20年後のロシアがどんな国かは予想できない」。エストニア国会外務委員会のミヒケルソン会長は、対ロシア関係の難しさを指摘する。
エストニアはリーマン・ショック後の2009年、実質国内総生産(GDP)が約14%縮小する危機に見舞われたが、10年には約3%増、11年には約8%増の成長を取り戻した。今年7月のロシアへの輸出は前年同月比35%増で、ロシアは全体の15%を占める最大の輸出相手国だ。リトアニア、ラトビアも対ロシア輸出が経済を後押しする。

大国ロシアとの関係強化は各国の企業にビジネスチャンスとなる。
リトアニアで音声認証技術などを開発するエトロニカのガルズィウリス会長は、「今の取引先は北欧企業が中心だが、今後はロシアやウクライナに拡大したい」と意欲的。ラトビアでデータセンター事業を展開するDEACの幹部は「ロシアにデータを保存したくない企業からの需要が大きい」と明かす。

しかし三国とロシアとの政治関係は複雑だ。三国は1940年、ソ連に併合され、多数の市民が虐殺された経験がある。91年のソ連崩壊直前に独立を回復し、今ではロシア関係の強化が追い風となっているが、民主化の遅れも指摘されるロシアが「難しい隣人」(ミヒケルソン氏)であることに変わりはない。

ロシアは今年7月、ベラルーシと原発建設契約に調印した。しかし建設地はリトアニア国境に近く、完成時期はリトアニアがエネルギー自給率の向上を狙って日立製作所と建設合意した原発の完成よりも数年早い。リトアニア政府幹部は「ロシアがあえてリトアニア国境近くに原発を建設することに、リトアニアのエネルギー政策を牽制(けんせい)する意図を感じる」と漏らす。

また、エストニア政府は2007年4月、大規模なサイバー攻撃を受けた。当時、第二次大戦で戦死したソ連兵の記念碑の移設問題でロシア系住民による暴動が起きていたことから、「攻撃はロシアによるもの」とも報じられた。【9月22日 産経】
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バルト三国と大国ロシアとの関係は、中国との経済関係が強化されるなかで、中国との距離感に悩む日本を含むアジア各国とも共通するものがあります。
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原発  世界では原発回帰の動き 日本では拡大する脱原発デモ

2012-07-22 22:42:06 | 原発

(6月29日の首相官邸前脱原発デモ “flickr”より By SandoCap http://www.flickr.com/photos/sandocap/7467143046/

【「こうする以外には電力供給の安定性を確保する方法が見つからない」】
福島第1原発事故は、日本だけでなく世界の原発に対する姿勢に大きな影響を与えましたが、世界的に見ると、事故後に高まった脱原発の動きは、その後「やはり原発が必要・・・」という方向へ回帰しているようです。

****東日本大震災500日 世界の原発、変わる流れ****
■環境・経済性で再評価
昨年3月の東京電力福島第1原発事故を契機に先進国に広がった脱原発の流れが減速している。脱原発の推進が電力供給を不安定にし、電気料金を高騰させる危険性が認識され、欧米では稼働年数延長や新規建設の承認など再評価の動きが出てきた。一部には新型天然ガスによる火力発電への期待もあるが、環境面や価格の安定性で優れた原発の利用を進める現実的な道が探られている。

◆全廃方針に批判
「こうする以外には電力供給の安定性を確保する方法が見つからない」。ベルギーのヴァテレ・エネルギー相は4日に決めた原発の稼働延長について欧米メディアの取材に応えた。

ベルギーは2015年から25年にかけて国内7基の原発を全廃する方針を9年前に決めている。しかし現在でも総発電量に占める原発の比率は50%超で、代替電源として期待された太陽光、風力発電は総発電量の1%程度しかない。
脱原発は電力不足を招く危険が大きく、15年に廃止予定の3基のうち1基の稼働延長を認めざるをえなくなった。11年12月発足のディルポ政権は、25年までの全廃方針は維持しているが、議会からは「見通しが甘かった」との批判が出ている。

一方、02年に脱原発計画を決めたドイツは、太陽光、風力発電を総発電量の約12%まで成長させた代替エネルギー確保の成功例だ。福島第1原発事故後の11年7月には、22年末までの原発全廃を法制化した。しかし、電力価格高騰が国民生活を直撃している。太陽光や風力発電で作られた電気を電力会社に固定価格で買い取らせる制度が00年に導入され、買い取り費用が電気料金に上乗せされていることが一因だ。

ドイツの12年の家庭用電気料金は1キロワット時あたり25・74ユーロセント(約25円)の見通しで、00年に比べて約85%も値上がりした。消費者団体は「10世帯に1世帯の割合で電気料金を払えなくなっている」と指摘する。

電気料金高騰を受け、ドイツは6月29日、太陽光発電の買い取り価格の約20~30%引き下げを決めた。しかしそれでも「30年までに買い取り費用などで3000億ユーロ(約29兆円)の負担が必要」との試算もある。コストの安い原発は次第に支持を取り戻しつつある。

これに対して原発依存度が78%に達するフランスでは今年5月の大統領選で、「25年までに原発比率を50%まで引き下げる」と公約したオランド氏が当選。エロー首相も7月3日の議会演説で公約実現に意欲をみせた。

しかし、欧州で脱原発が国民生活に与える負担の大きさが明らかになる中、オランド大統領自身は当選後、原発政策をめぐり目立った発言はしていない。
欧米メディアでは「ギリシャなどの債務危機が経済の足を引っ張っている中、脱原発が進むとは思えない」との指摘も多い。

◆米、推進にかじ
欧州の情勢を横目に米原子力規制委員会(NRC)は2月、ジョージア州で2基、3月にはサウスカロライナ州で2基の原発新設を認めた。
米国では1979年のスリーマイル島事故を機に原発の新設が止まったが、オバマ政権は二酸化炭素を排出せず、原油価格変動の影響も受けない原発の推進にかじを切っている。

米国では新型天然ガス「シェールガス」開発への期待から天然ガス価格が下がり、原発のコスト上の強みが減るとの見方もある。しかし議会内には「天然ガス価格がどう動くかは誰にも分からない。今後、多くの原発が必要になるだろう」(ラマー上院議員)との声もあり、原発の優位性は揺るぎそうもない。

≪新興国≫
■電力需要拡大で注目

今後も経済成長が見込まれる中国やインドなどの新興国では、福島第1原発事故後も原発へのニーズは衰えていない。生産活動や生活水準向上のためのエネルギーの確保が不可欠。原油などの価格上昇が予想される中、大規模な原発建設計画が打ち出されている。エネルギー安全保障の観点からも原発への期待は大きい。

「福島第1原発事故という悲劇にもかかわらず、原子力の安全で確実な平和利用の重要性を認識する」。アジア太平洋経済協力会議(APEC)のエネルギー相会議は6月25日のサンクトペテルブルク宣言で原発の意義を強調した。
宣言の背景にあるのは世界的なエネルギー需要の拡大だ。日本エネルギー経済研究所の試算によると、2035年の世界のエネルギー需要は08年の1・6倍に増える見通し。原油や天然ガスなどの価格高騰の恐れもあり、「エネルギー対策のリストには原発も加える」(ロシアのノバク・エネルギー相)必要がある。

中国は35年にエネルギー需要が08年の2倍になるとされる最大の需要国だ。政府は5月末、20年までに約60基の原発を新設する計画を承認し、福島事故後も「現実的な選択肢」との位置づけに変化はない。

インドも同様だ。09年の発電量は日本と同程度の9千億キロワット時で、1990年の3倍以上。総人口は約12億人で、今後の需要増は確実だ。政府は2032年までに原発の発電能力を現状の約13倍、6300万キロワットまで高める計画で、昨年7月には韓国と原子力協定を締結。日本とも交渉を進める。シン首相は5月に議会で「原発という選択肢を諦めては国益を害する」と訴えた。

一方、エネルギー資源に乏しい国々では安全保障の観点からも原発の意義は大きい。原発には一度ウランを輸入すれば安定的に発電を継続できる準国産電源としての特長もあるからだ。 天然ガスなどの資源をロシアに依存するハンガリーなどの中欧諸国や電力の一部を中国から輸入しているベトナムなどでは、「緊急時でも供給が途絶えない自前のエネルギー源として原子力が必要とされている」(日本政府関係者)。

ただし新興国でも原発の安全性への不安は広がっている。インドでは昨年9月、住民の反対運動の結果、2基の原発の建設作業が一時中止された。エジプトでも原発建設計画が住民の反対運動で宙に浮いている。【7月22日 産経】
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産経としての原発に対するスタンスも窺われる記事ではありますが、報道内容は事実でしょう。

ゆるやかにつながり、冷静に行儀よく、しかし執拗に主張する
それぞれの国にはそれぞれの事情がありますが、日本では不思議なくらい、事故後あまり目立った国民による脱原発の行動はありませんでしたが、3月以来毎週金曜夜の恒例になった首相官邸への反原発デモがここにきて大きく広がる様相を見せています。

ツイッターやフェイスブックの呼びかけで、3月のスタート当初は300人程度でしたが、最近は主催者発表で15万人とかいった、これまでにない規模に膨れ上がっています。
先日の20日には、鳩山元首相が参加し「この時点での再稼働はやめるべきだと私も思っている」と訴えたことなども話題となっています。

今回の首相官邸への脱原発デモは、従来の政権への対決姿勢を明確にした組織的抗議行動とはかなり様相を異にしており、いろんな考え方の一般の人々が脱原発という一点で集まったもので、ある意味気楽に参加できるイベント的な感もあるようです。

警備する側にも、敢えて参加者を刺激して逮捕者などを出すようなことがないように・・・という思惑もあるようです。
一方、参加者側からは、マスメディアの姿勢について、政府・東電に配慮したかのようにデモを無視するような扱いをしている・・・との批判もあります。

***デモ「革命」、ゆるやかに整然と 官邸前の脱原発行動***
毎週金曜日の首相官邸付近の抗議行動が大規模になっている。首都圏反原発連合が主催し、13日は主催者発表で約15万人(警察は発表せず)。誘導や応急班などをスタッフが手弁当でこなしている。

作家の広瀬隆さんらは6月22日の約5万人を集めた抗議行動の後、「若者が頑張っているんだから、僕たち老人もできることをしよう」と、有志のカンパでヘリを飛ばすことに決めた。翌週29日、「正しい報道ヘリの会」と名付け空撮写真を撮った。

6日には、小雨まじりだというのに主催者発表で約15万人が集まった。国会議事堂前駅などでは改札を出ても路上に出られない。別の駅から遠回りして国会議事堂裏側にたどり着く。警察官に列の最後尾につくように促され、多くの人がおとなしく2列に並ぶ。

若い警官が「イベントに参加される方は、列の最後尾に」と大声を出す。苦笑する若者がいたが、何度も繰り返す警官に嘲笑する意図があったとも思わない。実際、いつも警備している“デモ”とは明らかに異質な「何物か」になっていただろう。

■動かない行列
特定政党に結びついたようなプラカードやビラがほとんどなく、「反原発」だけで結びつくという主催者の意図がよく浸透している。行列が動く気配がまったくない。終了30分前、主催スタッフが回ってきて「もう動きません。ここでシュプレヒコールを」と説いて回る。「再稼働反対!」の連呼が上がるが、官邸ははるかに遠い。太鼓など鳴り物がない中での単調な連呼は、30分も続けると苦行に似てくる。サウンドデモのような祝祭性は、薬にしようにもない。それでも、回を追うごとに参加者は増える。

1960年、日米安保条約が自然承認される日を目前に、同じように国会議事堂は労組や学生らに取り巻かれていた。その数20万人とも言われるから、規模は近づいている。当時の報道によれば「はげしいジグザグ行進」で国会の門を突破し、座り込みを狙った(江刺昭子『樺美智子 聖少女伝説』)。東大生の樺さんは、デモで命を落とした。

■冷静に執拗に
隔世の感がある。今はジグザグどころか歩けないのだから、デモ行進ではなく「デモ行列」。一部からは警官に怒号が飛んだが、逆にツイッターには「逮捕される覚悟より、ギリギリのところで抗議を続ける根気を」という発言があった。

安保闘争以後、労組など組織動員のデモは予定調和的な示威行動となり、路上の一般人は振り向きさえしなくなった。2003年、イラク戦争反対をきっかけに東京・渋谷で始まったサウンドデモは、DJやバンドらが先導し、若者らを巻き込んでの社会事象にもなった。高円寺のリサイクル店・素人の乱が主導した「家賃タダにしろ!」デモなどは、主張の新奇さだけでなく、管理が厳しくなる一方の路上を自分たちの手に取り戻すという主張が共感を集めた。以来デモ取材を続けたが、官邸周辺の抗議行動は先行例のいずれとも違う、まったく新しい様相を呈している。

ジョイスの『ユリシーズ』では、あらゆる暴力が嫌いという主人公が「革命だって整然と分割払い方式でやらなきゃ」と語る。今回の抗議行動は、参加者たちに「あじさい革命」と呼ばれている。ゆるやかにつながり、冷静に行儀よく、しかし執拗(しつよう)に主張する。「革命」という言葉に、いい意味での革命が起きている。 【7月18日 朝日】
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「革命」という言葉を使うのも気恥しい感があります。
昨年10月にニューヨークなどで広がった「ウォール街を占拠しよう」という若者らの抗議行動にも似た感があります。

原発近くで暮らして思うこと
個人的なことを言えば、私は原発と隣り合わせ、約10kmほどのところに暮らしています。職場などは2kmぐらいの至近距離です。
普段、国内ニュースには殆んど目をとおさないこともあって、東京での脱原発を求める行動がこんなに広がっていること自体、最近まで知りませんでした。参加者側が批判するように、メディアの扱いがこれまで小さかったということもあるのかもしれませんが。

原発を抱えた地元では、東京とは異なり無風です。先の県知事選挙でも反原発を1枚看板にした候補が現職に挑みましたが、大差で敗れました。原発を抱える市での得票も伸びなかったようです。

いろんな考えの方の人がいて、私の周りにも原発の危険を訴える方もいますが、私自身は正直なところ、普段、原発の危険性を真剣に感じることはありません。
“危険性”ということで言えば、私たちの生活はすべからく何らかの危険性に溢れており、それをある意味“無視”することで生活が成り立っていると考えています。

道を歩けば、あるいは車のハンドルを握れば、それなりの(恐らく原発事故よりはるかに高い確率の)事故の危険性がありますが、家に閉じこもるようなことはありません。生活においては、安全性というのは唯一絶対の尺度ではなく、利便性や必要性と総合的に勘案されるひとつの尺度です。
そんな感じ方をしているせいで、原発に限らず、食の安全とか医薬品の副作用とかいった問題で、ことさらに危険性をアピールする主張にはちょっと引いてしまうと言うか、違和感を感じます。そうした感じ方がすべてで、あとの議論は付け足しです。

別に原発が絶対安全などとは思ってはいませんが、福島のような破滅的な重大事態が自分のまわりで起きるとも、正直なところ思っていません。少なくも私が生きている間は。
地震の被害で言えば、市街地を流れる川の上流のダムが決壊して、街全体が水没する確率の方が現実的なようにも思えます。

また、原発が完成された技術とも思っていません。使用後の核廃棄物の扱いなどは対応を将来に先延ばしたまま使っているのが実態でしょう。
ただ、それについても、「まあ、将来の人たちで考えてよ」といったところです。それなりの知恵も生まれるのでは。

自然エネルギーなどの取組を進めることには賛成ですが、せっかく莫大な費用を投じて建設した現存施設を無駄にすることについては、いかがなものか・・・というのが本音です。
安全性面でも、普段から正常運転して監視するより、中途半端な形で放置しておく方が何らかのトラブルがおきやすいのでは・・・とも思っています。
ベタな原発推進派の意見になりますが、原発の稼働停止で地元の被る経済的影響は小さくありません。地元にとっては大きな問題です。
原発に関するハード・ソフト面の技術は、今日本が海外から求められる数少ない技術です。このまますたれさせるのはもったいない感がします。福島の教訓を生かしたより安全な技術開発を行うのもひとつの道かと思います。

まことに不真面目・不謹慎・不勉強極まる考えとお叱りを受けるかとは思っています。
お叱りを受けるついでに敢えて言えば、そんなに安全への配慮をされるのであれば、「たかが電力」ということで自分たちの生活の利便性を犠牲にすることも厭わないというりっぱな覚悟であれば、日本国内の原発の危険を云々する前にもっと目を向けるべき問題が世界には山積しているのではないでしょうか。

世界には飢餓に苦しむ人々、身ひとつで逃げてきた難民、最低限の医療の受けられない人々・・・そうした生命の危機に直面した人々が多数存在しています。私たちの豊かな暮らしのほんの少し、コーヒー数杯程度をそうした人々に振り向ければどれほどの人々の生命が救われるか・・・。

東京での脱原発イベントに楽しく参加している人々を見ていると、自分とは関係のない人々そうした深刻な事実には目を向けることなく、自分の恵まれた生活の安全をひたすらに叫ぶ・・・そんなふうにも思えてしまいます。ちょっと言い過ぎですね。止めておきましょう。
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今も続くフクシマの悪夢 原発対応に揺れる中国、アメリカ、フランス

2012-02-12 22:06:23 | 原発


(1月7日 町の全域が福島第一原子力発電所から半径20キロ圏内の「警戒区域」内にある福島県双葉町。 役場機能と町民の多くが埼玉へ避難しています。国は2年以内に汚染地域の放射線量をおよそ半分に減らす基本方針を打ち出していますが、除染によって安全に暮らしていける場所になるのかはよくわかりません。
“flickr”より By osaprio http://www.flickr.com/photos/osaprio/6773986313/ )

揺らぐ「冷温停止状態」 温度計故障?】
福島第一原子力発電所事故については、野田首相が昨年12月16日、政府の原子力災害対策本部の会合で「冷温停止状態に達し、事故そのものは収束に至った」と宣言しました。

これについては、“「冷温停止」などの言葉が本来とは異なる意味で使われており、これで問題がなくなったといった誤った印象を与えるのではないか”(NPO法人環境エネルギー政策研究所の飯田哲也所長)などの批判が内外からありましたが、私を含め事故地域外の多くの人にとっては、危機感・恐怖心が日重生活のなかで次第に薄れているのも事実です。

しかし、今日報じられた福島第一原子力発電所2号機の温度上昇のニュースは、フクシマの問題が何ら解決した訳ではないことを改めて思い起こさせます。

****2号機温度、80度超す…「再臨界の恐れない*****
東京電力は12日、上昇傾向を示している福島第一原子力発電所2号機の圧力容器底部の温度が同日午後2時20分に約82度に達し、保安規定で温度管理の上限として定める80度を超えたと発表した。
これを受け、午後3時30分には、原子炉に注入する冷却水を毎時約3トン増やし、計17・4トンに変更する作業を完了した。

ただ、温度が上昇しているのは、圧力容器底部の温度計3個のうち1個だけで、ほかの温度計は35度前後で安定しているという。原子炉の気体の分析でも、核分裂で発生するキセノン135は検出されておらず、東電は再臨界の恐れはないと説明している。

昨年末に政府と東電が宣言した「冷温停止状態」は、原子炉の温度が100度以下であることなどが条件で、東電では、20度程度の測定誤差を考慮して、80度以下に維持すると定めている。【2月12日 読売】
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温度計の故障の可能性も指摘されていますが、内部で何が起きているのか未だによくわかっていないことが問題でしょう。
また、冷却水を大量に増加させて冷却を加速することについても、汚染水の処理が定まっていない現状で、汚染水を増やす事態は避けたいとする東京電力は消極的だとか。汚染水を含めた事後処理も手つかずの状態です。

【「最悪シナリオ」で問われる情報公開の在り方
一方、昨年の事故当時、首都圏を含む避難処置に言及した「最悪シナリオ」が政府に報告されていたことも話題となっています。

****福島事故直後に「最悪シナリオ」 半径170キロ強制移住*****
福島第一原発の事故当初、新たな水素爆発が起きるなど事故が次々に拡大すれば、原発から半径百七十キロ圏は強制移住を迫られる可能性があるとの「最悪シナリオ」を、政府がまとめていたことが分かった。首都圏では、茨城、栃木、群馬各県が含まれる。
菅直人首相(当時)の指示を受け、近藤駿介・原子力委員長が個人的に作成した。昨年三月二十五日に政府は提出を受けたが、公表していなかった。

シナリオでは、1号機で二回目の水素爆発が起きて放射線量が上昇し、作業員が全面撤退せざるを得なくなると仮定。注水作業が止まると2、3号機の炉心の温度が上がって格納容器が壊れ、二週間後には4号機の使用済み核燃料プールの核燃料が溶け、大量の放射性物質が放出されると推定した。
放射性物質で汚染される範囲は、旧ソ連チェルノブイリ原発事故の際に適用された移住基準をあてはめると、原発から半径百七十キロ圏では強制移住、二百五十キロ圏でも避難が必要になる可能性があると試算した。

事故の拡大を防ぐ最終手段にも言及、「スラリー」と呼ばれる砂と水を混ぜた泥で炉心を冷却する方法が有効とした。スラリーの製造装置と配管は、工程表にも取り入れられ、実際に福島第一に配備されている。

政府関係者は「起こる可能性が低いことをあえて仮定して作ったもので、過度な心配をさせる恐れがあり公表を控えた」と説明。近藤委員長は「当時、4号機のプールは耐震性に不安があり、そこにある大量の核燃料が溶けたらどうなるか把握しておきたかった」と話している。【1月12日 東京】
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当然に想定されるべきシナリオであると思いますが、この報告の公表が控えられてきたことの是非が、情報公開の在り方として問われています。
政府側は、過度の、必要でない心配・不安を煽りたくなかったので公表しなかった・・・との立場です。
メディアの取り扱い次第では、首都圏住民にパニックを引き起こすことも考えられます。

そうした心情はよく理解されますが、一方で、都合の悪い情報は伏せる・・・という対応では、今後の政府情報への信頼性を損なうことも事実です。なかなか判断に迷う問題です。

中国:原発建設推進に地方政府が中止要求
魔法のように巨大なエネルギーを生みだす原発は、ひとたび事故を起こすと制御不能な事態をも引き起こします。それが生み出す廃棄物の処理さえままならないのが現在の技術です。
こうした原発の取り扱いについては、フクシマ以後、日本だけでなく各国がそれぞれの事情で迷っています。

先日、原発建設に関する話題が中国とアメリカからありましたが、中央政府が進める原発建設に対し隣接地方政府が建設中止を求めたのが中国で、スリーマイル島原発事故後34年ぶりに建設再開を決めたのがアメリカというのも、面白いところです。

****中国東部の原発建設「即時中止を」、隣県政府が国に求める****
中国東部に建設中の原子力発電所の立地が地震多発地域にあたり住民の安全が懸念されるとして、安徽省望江県政府が中央政府に建設の即時中止を求めたと、国営紙新京報が9日、伝えた。
経済発展に伴い大量のエネルギー確保が急務の中国では、国内25か所で原発の建設計画が進んでいる。こうした状況のなか、地方政府が国に原発計画の中止を要求するのは極めて異例だ。

新京報によると望江県政府は、隣接する江西省彭沢県で進められている原発建設計画について、今週初めに公表された環境アセスメント結果が、建設予定地から半径10キロ圏内の住民の人数を実際より少なく見積もっているなど信頼性に欠けると主張。また、予定地で2006年にマグニチュード(M)5.7、前年9月にはM4.6の地震が起きているなど、地震多発地域である点を指摘している。
望江県政府関係者らは、「原発が放出するガスや有毒液体」によって風下の住民が深刻な被害を受ける恐れがあるとの懸念を口にしているという。

これに対し、彭沢県政府は「全く根拠のない主張だ」と反論しているという。
彭沢県の原発建設計画は2010年に承認され、既に初期工事も始まっているが、新京報は建設計画の評価報告書を公明正大に公表すべきだとの論評を掲載した。

中国では現在、14基の原子炉が稼働中。世界原子力協会によれば、中国当局は2020年までに原発稼働能力を現在の5~6倍に増強したい考えだ。東日本大震災に伴う福島第1原発の事故を受け、中国も前年4月、国内全原発の総点検を実施している。【2月10日 AFP】
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アメリカ:34年ぶりの建設再開
****米で原発2基新設認可 34年ぶり 規制委員長は反対票****
米原子力規制委員会(NRC)は9日、南部ジョージア州で計画されている新規原発2基の建設・運転の申請について5人の委員による投票を行い、賛成多数で認可した。ただ、ヤツコ委員長は東京電力福島第一原発事故を受けた安全対策が規制に反映されていないとして反対票を投じた。

ボーグル原発に増設される3、4号機(いずれも110万キロワット級)で、2008年にNRCに申請が出されていた。東芝傘下の米ウェスチングハウスが開発した改良型加圧水型炉「AP1000」を採用、16年と17年の運転開始を目標にしている。1979年のスリーマイル島原発事故後、原発の建設が行われていない米国で建設が認可されるのは、78年以来、34年ぶりとなる。

反対票を投じたヤツコ委員長は「福島原発事故は無視できない」とする声明を発表。事故を受けた安全対策の規制強化が検討されている最中なのに「まるでこの事故がなかったかのように認可に賛成することはできなかった」と説明した。
オバマ大統領の指名で09年に委員長に就任したヤツコ氏は、原発に厳しい姿勢で知られる。昨年末には運営手法をめぐって他の委員との対立が表面化、米議会が調査に乗り出す事態になっている。

ウェスチングハウスによると、AP1000は外部電源喪失などの緊急時に運転員が操作しなくても自動的に原子炉の冷却が維持される仕組みを備えている。中国の2カ所で建設が始まっている。米国でも南部サウスカロライナ州のサマー原発で2基の増設計画があり、近くNRCから認可が下りる見通しだ。

米国では104基の原発が稼働中だが、主に経済性の問題で新規申請は長年、控えられてきた。ブッシュ前政権時代に建設のための資金調達をしやすくする原発推進策が導入され、今回の2基を含む計26基の新規申請が出された。
だが、国内での天然ガス価格低下や建設コスト高騰などで、20年までに運転開始できる新規原発は4基にとどまるとみられている。このほか78年以前に認可を受け、長らく工事を中断していた南部テネシー州の原発1基の建設が07年以降、再開している。【2月10日 朝日】
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なお、アメリカの原発建設再開の多くを日本の東芝が受注しているとのことです。

****東芝「原発は今後も不可欠」 新設認可の米で次々受注****
米原子力規制委員会(NRC)が新規の原発建設を認可したことについて、米ウェスチングハウス(WH)を傘下に持つ東芝は10日、「温室効果ガス対策などの観点から、原発は今後も必要不可欠なエネルギーとして、継続的な需要が見込まれる。安全性向上のためさらに努力を続けたい」とコメントを発表した。

東芝によると、NRCには今回認可された2基以外にも、26基の建設を求める申請が出ており、うち12基がWH、2基が東芝の原子炉を採用している。
東芝は09年、15年度までに自社とWHをあわせて39基の原発を受注。年間売上高1兆円を達成する目標を掲げた。しかし、東京電力福島第一原発の事故を受け、達成が数年間遅れるとの見通しを示している。【2月10日 朝日】
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フランス:雇用確保と絡んで大統領選挙争点に
欧州では脱原発の動きがドイツ・スイス・ベルギーなど広まっていますが、原発大国フランスでは、4月の大統領選挙の重要な争点に浮上しています。

****仏大統領選:「国内最古の原発」存廃が争点に*****
フランスのサルコジ大統領は9日、独、スイス両国境に近い仏東部にある国内最古のフッセンハイム原発を訪れ、「この原発の閉鎖は問題外」と原発推進を強く訴えた。大統領選で社会党公認候補のオランド氏がフッセンハイム原発の閉鎖を公約に掲げており、老朽化した原発の存廃が、選挙の争点になってきた。

サルコジ氏は原発労働者を前に「政治家の下心のためにあなたたちの雇用を犠牲にするのは言語道断だ」と繰り返した。大統領選のライバルとなるオランド氏の社会党は昨年11月、「欧州エコロジー・緑の党」と選挙協定を結び、▽25年までに電力の原子力依存率を現在の75%から50%に下げる▽原子炉24基を段階的に閉鎖する--などの合意書を取り交わした。フッセンハイムは合意書で唯一「速やかな閉鎖」とされ、オランド氏は当選した場合の任期中の閉鎖を明言している。

東京電力福島第1原発より約6年遅れた77年に運転開始したフッセンハイム原発は老朽化が進み、特に福島原発事故後、安全性が不安視されてきた。脱原発を打ち出した独やスイスとも近く、両国でも閉鎖を求める運動が起きている。仏原子力安全機関はすでに、原発を運営するフランス電力に土台部分の改修などの措置を命じている。

今年1月、仏原子力安全機関が公表したストレステストの結果では、仏国内に「すぐに停止すべき原子炉はない」とする一方、安全確保のための追加改修費用が国内全体で約100億ユーロ(約1兆円)と見積もられた。フッセンハイム原発についてはコシウスコモリゼ環境相が閉鎖の可能性を排除できないと発言している。

大統領選では雇用対策が最大の争点となっており、サルコジ氏は「原発推進」と「雇用確保」を絡める形で支持を広げる戦略に出ている。【2月10日 毎日】
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現在の世論調査では、社会党オランド候補が支持率でリードしており、政権交代となれば、フランスの原子力政策も大きく舵を切ることになります。

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問われる原発の安全性  仏低レベル核廃棄物処理施設で爆発事故 イランのブシェール原発が稼働

2011-09-13 21:12:20 | 原発

(爆発事故があったフランス南部マルクールの低レベル核廃棄物処理施設 “flickr”より By theseoduke http://www.flickr.com/photos/theseoduke/6140903021/

【「原子力事故ではなく産業事故だ」】
12日、フクシマの事故を教訓にして、原発の安全強化に向けた行動計画案を協議する国際原子力機関(IAEA)の定例理事会がウィーンで始まりましたが、丁度その日、フランス南部のマルクールの核再処理施設で爆発事故が起き、少なくとも1人が死亡、4人負傷しました。

この施設は複数の原子力施設が混在する核複合施設で、原子力庁の研究センターや仏電力公社の子会社の核廃棄物処理会社などが運営し、原子力発電所の使用済み核燃料からMOX燃料(ウラン・プルトニウム混合酸化物)を抽出する再処理関連施設です。
爆発で火災も起きましたが、事故発生から約1時間後に鎮圧され、「放射能漏れはなく、建物も壊れていない」(ジャック・ロシャール所長)とのことです。

“フランスの原子炉は58基で米国に次いで世界2位。全発電量の約74%を原発に頼る。原子力事業は輸出の主力産業に成長し、サルコジ大統領は福島の事故後、フランスの原発の安全性を強調し、6月には最新鋭原発開発への投資を表明、ドイツやスイスが「脱原発」にかじを切る中、原発推進の立場を鮮明にしている。”【9月13日 産経】という「原発大国」で起きた事故だけに、その影響が注目されます。

****仏核施設爆発:仏環境相が現地で安全性強調 原因は示さず****
フランス南部マルクールの低レベル核廃棄物処理施設で12日起きた爆発事故で、仏のコシウスコモリゼ環境相は同日、現地を訪問し、「放射性物質の漏出はない」と安全性を強調した。だが仏原子力庁(CEA)など仏当局は事故原因や、作業場からの放射能漏れに関する防止体制などを示しておらず、今後、仏政府は詳しい説明を求められそうだ。

現場を訪れた環境相は、犠牲者家族との面会後、「施設の内外で放射線は検知されておらず、心配ない」と強調。一方で、事故原因については「分からない」と述べた。環境相によると、現在、仏原子力当局や警察が原因を調査中という。

事故は現地時間の12日昼ごろ発生。仏電力最大手・フランス電力公社(EDF)の関連会社が運営する施設で、金属などの核廃棄物を溶融する際、爆発が起きた。死亡した作業員は全身を焼かれ即死状況で、他の作業員1人も「重篤(じゅうとく)状況」(CEA関係者)という。

事故後、仏政府やEDFなどは「被害者には放射能汚染はなく、原子力事故ではなく産業事故だ」「作業現場の放射線レベルは非常に低い」と強調。周辺の土壌などの検査はするが「事故による環境への影響はない」としていた。

だがCEA関係者は事故直後、毎日新聞に「低レベルの放射能漏れの危険性がある」と説明。また12日付フィガロ紙(電子版)によると事故のあった溶融炉は12年前の稼働時から、仏当局が「従業員の保護対策が不十分」と指摘していたという。同紙によると、溶融炉は金属などの核廃棄物を1600度で溶融、廃棄物処理のために体積を縮小するのが目的という。

一方、AFP通信によると、隣国イタリア政府幹部らは事故に関し、「隣国の核施設が事故を起こした際は我々も(被害に)巻き込まれる」と発言。「状況を注視している」と、核施設の脆弱(ぜいじゃく)さに懸念を示した。またグリーンピースなど環境保護団体は「周辺住民に事故状況を即刻、通報すべきだ」と核関連事故での情報の透明性を求めた。【9月13日 毎日】
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ニューヨーク・タイムズによると、この施設では工具やポンプなど金属廃棄物を溶かしているほか、技術者の防護服や手袋といった可燃性の低レベル放射性廃棄物の処理が行われているということで、そう聞くと「原子力事故ではなく産業事故だ」といった関係者の発言も、「そうかもね・・・」とも思われます。
ただ、ル・モンド紙によれば、爆発が起きた溶融炉には約4トンの放射性廃棄物があり、約6万7000ベクレルの放射能が含まれていたとのことですが、これがどの程度の危険性を有するものなのかは素人にはわかりません。

仏原子力安全局(ASN)は発生から約4時間半後の12日夕(日本時間同日深夜)、「事態は収束し、危機対応態勢を解除した」と発表しています。

原発周辺には数百メートルおきに監視所や対空ミサイルが
原発関連で、もうひとつニュースが。
イラン南部のブシェール原子力発電所(出力100万キロワット)が運転を開始し、12日、建設を担ったロシア側関係者も出席して記念式典が行われました。同原発は中東のイスラム諸国では初の商業用原発となります。

****イラン:南部のブシェール原発が稼働 中東で初めて****
イラン南部のブシェール原発が12日、稼働し、電力供給を始めた。中東地域で初めての原発稼働で、トルコやヨルダンなど周辺国の原発建設も加速するとみられる。福島第1原発事故で原発の安全性が問われる中、情勢不安定な中東での原発稼働には懸念も高まる。

原発は加圧水型軽水炉で、出力100万キロワット。イラン国営テレビによると、12日はまだ低出力による運転だが、年内には最大出力での運転が可能になるという。現地であった稼働式典で、イランのアッバシ原子力庁長官は「イランの科学者は福島原発の惨事から教訓を学んだ」と安全性を強調した。

ブシェール原発は昨年、コンピューターウイルスの攻撃を受けて状態が一時、不安定になり「原子炉が崩壊する恐れがあった」との分析もある。イランの周辺国やテロリストからの攻撃の危険性も否定できず、原発周辺には数百メートルおきに監視所や対空ミサイルが置かれている。

ブシェール原発は70年代に建設が始まったが、イラン・イラク戦争でイラク軍に攻撃を受けて中断。90年代にロシアの支援で再建が始まったが、米国の意向を受けてロシアが繰り返し稼働を延期した。その後、ロシアが核燃料を管理することを条件に原発稼働準備が進められた。【9月13日 毎日】
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ブシェール原子力発電所の核燃料はロシアが管理することになっているため、兵器転用の恐れはないとしてアメリカもその稼働を容認しています。
核兵器の開発疑惑を抱えて国際的に孤立するなかで、同原発稼働によって、イランは「核の平和利用」をアピールするとみられています。

ただ、同原発に関しては、イランの核開発を安全保障上の最大問題のひとつと見るイスラエルの存在や、反政府勢力支援を嫌うスンニ派アラブ諸国との関係もあって、上記記事にある“周辺国やテロリストからの攻撃の危険性”が懸念されていますが、“地震多発地帯に位置するため、風下にあたるクウェートなどペルシャ湾岸諸国からは安全性を疑問視する声も出ている。”【9月12日 朝日】という不安もあるようです。
対空ミサイルで守られた原発というのも、考えてみると物騒です。

稼働を一応容認しているアメリカからは、イランが原子力安全条約を批准していないことへの批判があります。
****イラン:ブシェール原発 米が安全性への懸念表明****
米国務省のヌランド報道官は12日の記者会見で、ブシェール原発の電力供給開始の式典が開かれたことについて「イランは原子力安全条約を批准せずに原発を稼働させている唯一の国だ」と述べ、安全性に懸念を示した。
同条約は、1996年に発効した原子力施設の安全に関する初の国際条約。報道官は「福島第1原発の事故があった今、非常に心配(な事態)だ」と強調した。

さらに「式典を行っても、イランが国際社会や国際原子力機関(IAEA)の義務に従わなければならないことに変わりはない」と述べた。(後略)【9月13日 毎日】
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ブシェール原発の地元で反原発運動
注目されるのは、イラン国内の地元でも住民による反原発運動があったとのことです。
****イラン:稼働のブシェール原発 地元では反原発運動起こる*****
12日に稼働したブシェール原発の地元で、今年1月に反原発運動が起きていたことが複数の住民の証言で分かった。国策への批判を厳格に取り締まるイランで、反原発運動が起きるのは異例で、国内外のメディアは一切報じていない。イラン政府は「原発の安全性は世界最高水準」と強調するが、住民は情報不足の中で不安を募らせている。

ブシェール在住のタクシー運転手(42)らによると、ブシェール原発近くの住民ら約300人が今年1月、ブシェール州庁舎前に集結。原発稼働計画を中止するよう求めるプラカードを掲げて抗議した。地元当局が原発計画の当初に約束したとされる、原発周辺住民の集団移転も実現しておらず「約束を実行しろ」などと要求。多数の警官が制止し、集団を解散させたという。
福島原発の事故後、住民の不安は一層高まる。この運転手は「技術の優れた日本ですら事故が起きた。イランで安全と言い切れるわけがない」と話す。

また、海岸近くの雑貨店主の男性(36)も「ここは漁業の町。原発事故による放射能汚染で影響が出たら深刻な事態になる」と不安を漏らした。今年5月には数日間、原発の建物上部から白い煙が上がったが、何の説明もなく、近隣住民が騒然となったという。

イランには環境問題のNGO(非政府組織)が複数あるが、事実上政府の管理下にあり「反原発」を公言する組織はない。イラン原子力庁は「原発に関する個別の取材には応じない」としている。【9月13日 毎日】
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反対運動の性格についてはわかりませんが、こうした活動が行われたこと自体が、イラン社会の現状を考えるとき、興味深いものがあります。
イランは、過激なイスラム原理主義に導かれた宗教国家というイメージがあります。また、欧米諸国と激しく対立するアフマディネジャド大統領の言動からのイメージもあります。

実際、最高指導者ハメネイ師の存在のような宗教優位のシステムとか、強権的な反政府デモ弾圧など、イランの政治体制は欧米的な民主主義体制とは異なるところが多々ありますが、一定に選挙を通した民意が反映するシステムでもあり、全くの宗教独裁国家という訳でもありません。

国家政策としての原発に反対するようなデモなど起こり様がない国は世界に多くありますし、“警官が制止し、集団を解散させた”だけではすまない国も少なくありません。
イランの“普通の国”の側面を垣間見るという意味で、今回デモを興味深く感じた次第です。

【“強制”から“自主的招待奨励”へ
話を原発の安全性の問題に戻すと、国際原子力機関(IAEA)の理事会は13日、原発の安全性強化に向けた「行動計画」案を採択しました。
加盟国間で原発の安全対策を評価する専門家チームを派遣し合う「ピアレビュー制度」を「強制」化しようとした原案から加盟国の義務的要素が削除されたため、規制強化を求める欧州諸国などから有効性を懸念する声も上がったようですが、迅速な実施を優先することで一致したとのことです。

****IAEA:原発調査「強制」巡りせめぎ合い 行動計画案****
東京電力福島第1原発事故から間もなく半年。世界の関心が次第に薄れていく中、原発の安全性強化に向け国際原子力機関(IAEA)がまとめた行動計画案は、IAEAによる「強制」を嫌う加盟国とのせめぎ合いの中で見直しを余儀なくされた。「現実路線に落ち着いた」との冷めた見方がある一方、実効性を疑問視する声も出ている。

大きな焦点の一つは、加盟国間で原発の安全対策を評価する専門家チームを派遣し合う「ピアレビュー制度」の扱いだった。IAEAは8月22日付の第1次修正案で「加盟国はピアレビューの定期的な招待を“約束”する」との一文を盛り込んだ。しかし、1週間後の29日に出された第2次修正案では「“自主的な”招待が強く奨励される」との表現に後退した。

ピアレビューは、原発の安全運転調査団(OSART)や原子力規制調査団(IRRS)などによる評価の総称。天野之弥IAEA事務局長は6月の閣僚級会議でピアレビューの強化を打ち出していた。特に、世界で稼働中の原発約440基から10%分を無作為に抽出し、3年間でOSARTを派遣する考えは天野提案の目玉だった。だが、この提案も最終的に、原発保有国への3年以内の最低1回のOSART派遣に変わってしまった。

ウィーン外交筋の一人は「10%の無作為抽出をどのように行うのか、多数の原発を評価するための人的、資金的な手当てをどうするのかも不明確だった」と振り返る。
また、別の外交筋は「安全強化策の最低ラインを定める現実路線で落ち着いた。行動計画が原案段階から後退したと言われるが、福島原発事故前に比べれば格段の進歩だ」とも話す。

IAEAの原子力安全分野に、核不拡散分野の「査察権」と同様の強制力を持たせることも検討された。だが、自国の原発政策の独立性を維持したい米国や、厳しい規制の導入に慎重なインドや中国などは、IAEAへの強制力付与に概して消極的と言われている。
天野事務局長は加盟国の協力を得てIAEAの指導力強化を図る道を模索。そうした中でIAEA主導の行動計画が見直しを迫られたことに、西欧諸国などからは「期待通りにはいかなかった」との声も上がっている。【9月6日 毎日】
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「脱原発依存」で注目される「シェールガス」

2011-07-21 23:42:34 | 原発

(アメリカ・テキサス州バーネットのシェールガス採掘 “flickr”より By Oil and Gas http://www.flickr.com/photos/47609639@N04/4365140308/

世界のシェールガス埋蔵量は旧来の天然ガスの約2.4倍
「フクシマ」を受けて原発の稼働停止や「脱原発依存」がドイツなど先進国で広がっています。しかし、風力や太陽光発電が原発の代替エネルギーとなるには費用面や技術面で、まだ時間を要するように思われます。
そこで、温室効果ガスの排出量の増加を抑えながら当面の電力需要を賄うには、石炭・石油に比べCO2排出量が少ない天然ガスを燃料とした火力発電に頼るというのが現実的な選択肢と考えられています。

その天然ガスのなかでも、最近注目されているのが“シェールガス”のようです。
シェールガスは、地下にある硬い頁岩(けつがん)(シェール)の岩盤に含まれる天然ガスのことで、成分は普通の天然ガスと同じです。
その存在は以前から知られていましたが、掘り出すコストが高く、実用化は最近まで敬遠されていました。
ここにきて、採掘技術の進展によって、実用化も可能になってきたとのことです。

****米で噴き出す夢のシェールガス 埋蔵、国内需要30年分****
地中の岩盤層から噴き出すシェールガスが、米国のエネルギー事情を変えつつある。国内の埋蔵量は需要の30年分以上あるといい、輸出にも意欲をみせる。石油がぶ飲みなどと言われてきた米国が、原発事故でおぼつかなくなりかねない世界のエネルギーの支え手にまわる勢いだ。

航空機や石油関連産業の街、テキサス州フォートワース市郊外の牧場に、住民らがクリスマスツリーと呼ぶやぐらが並ぶ。高さ約20メートル。約75万人の大都市圏をガス田に変える装置だ。
約2千メートル掘り進むとはいえ仕組みはシンプル。ドリルで地中に穴を開けて水を流し込む。岩盤層に亀裂を生じさせ、ガスをしみ出させる。2、3週間で掘り終えれば、何十年も使えるガス井となる。やぐらは解体して次の場所に移る。(中略)

バーネットシェールと呼ばれるこのガス層は、広さ約1万3千平方キロメートル。4年前に参入したエンカナは700以上掘った。米企業も掘削を競い、住友商事も2009年に参画、ガス井の数は計1万4千以上という。
シェールガスはバーネット以外からも次々に見つかる。米エネルギー省は、米国の陸上部で採掘可能なシェールガスは国内需要の30年分以上だと見ている。

欧州や中国でも大量に存在が確認され、英エネルギー大手BPによると、世界のシェールガス埋蔵量は旧来の天然ガスの約2.4倍に達するという。
生産拡大で、米国ではガス価格が急落。いまの天然ガス相場は、最近のピークだった08年の3分の1程度の100万BTU(英国熱量単位)=約4ドルだ。

■エネルギー政策も変化
 実用化に道を開いたのは、小さなエネルギー調査会社を経営していたジョージ・ミッチェル氏(92)だ。10年近い試行錯誤を経て、水圧で亀裂を生む方法にたどり着く。02年に会社を35億ドル(約2700億円)で売却すると、各社が一斉に技術を発展させた。(中略)
 
米国内でもガスへの切り替えが起きる。ペンシルベニア州のエネルギー会社PPLの幹部は「フクシマ後、原子力は地元の理解を得づらくなった。石炭も環境面で厳しい」。同州にはバーネットより大きいシェール層がある。将来、天然ガス発電が同社の5割を超す可能性もあるとみる。(後略)【7月18日 朝日】
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【「天然ガスをポーランドに売れなくなるロシアが反対キャンペーンの背後で糸を引いている」】
これまでロシアの天然ガスに依存してきたポーランドのような国では、自国内に存在するシェールガスは政治的な意味合いも大きなものがあります。

****ポーランド「シェールガス革命」進行 天然資源、ロシア依存脱却に道****
ポーランドの自主管理労組「連帯」が誕生し、ベルリンの壁崩壊とソ連崩壊につながる東欧民主化の発源地となった造船の街グダニスク。中心部から南へ40キロ下った麦畑の中に、世界とこの国のエネルギー事情を一変させるかもしれない天然資源に通じる直径約50センチの井戸があった。

「6月25日までここは一面、麦畑だった」。現場監督のコヴァルスキ・ズジスワフ氏(54)は周囲を見渡した。コンクリートパネルが敷き詰められた試掘現場は100メートル四方にも満たなかった。
35年間、天然ガスの井戸を掘り続けてきたズジスワフ氏はこの1年、「シェールガス」と呼ばれる新しい天然ガスの試掘を3件立て続けに手掛けた。「掘っているとセンサーが反応した。条件が整えば3~5年で生産できると思う」と期待に胸を膨らませる。

 ◆新技術で安く採取
シェールガスは、シェール(頁岩(けつがん))層という泥岩に貯留する天然ガス。採算に合わないため放置されてきた頁岩に、横井戸を掘り、米国で確立された水圧破砕法と呼ばれる新技術を用いればシェールガスを比較的安く採取できるようになった。

米エネルギー省の報告書によれば、中国、米国、アルゼンチン、メキシコの順に豊富にあり、今分かっているだけで世界の天然ガスの可採埋蔵量を4割以上増やし、世界の資源地図を塗り替えつつある。(中略)

 ◆欧州最大の埋蔵量
カナダの石油・ガス大手「タリズマン」のワルシャワ事務所。同社幹部のトマシュ・グリゼフスキ氏が壁の地図を指さした。
柔らかな頁岩層がポーランド北東から南西につながるベルト地帯の地下約4キロに横たわっていた。「ここにポーランドのガス消費量の100~300年分に相当するシェールガスが眠っている」。欧州では最大の埋蔵量を誇る。

米国やカナダの企業など約25社が93カ所の試掘権を獲得し、すでに10カ所前後で試掘が始まっている。日本の三井物産も6月に参画を発表したばかりだ。
 
今年の経済成長予測が国内総生産(GDP)比で4%を超える東欧の新興国ポーランドだが、電力供給の9割以上を石炭に頼る。(中略)
この点ではEUの劣等生であるポーランドが、燃料を石炭からシェールガスに切り替えれば、温室効果ガスの排出量は半減できる。

しかも、既存の天然ガスはロシアやイランなどが牛耳っているため、シェールガスは地政学上の力関係を変える可能性がある。天然ガス消費量の7割をロシアから輸入しているポーランドにとって、東欧革命後も20年以上続くロシアへのエネルギー依存からの脱却に道を開くものだ。

しかし、今年のアカデミー賞長編ドキュメンタリー映画賞にノミネートされた米映画「ガスランド」は、米国のシェールガス開発が進む地域で、民家の水道水が燃え上がる衝撃的なシーンを伝え、ブームに冷や水を浴びせた。
EUの欧州議会やフランスでは、水圧破砕法の安全性が百パーセント確認されるまで開発を中止するよう求める動きが活発化している。
これに対し、ポーランド経済省のカリスキ事務次官は「飲料水に使われる地下水にシェールガスの成分が混入することはあり得ない」と力説する。

シェールガスは、ポーランドに革命を起こすのか。
「天然ガスをポーランドに売れなくなるロシアが反対キャンペーンの背後で糸を引いている」。5年後の生産開始を目指して一斉に走り始めたポーランド人からこんなつぶやきが聞こえてきた。【7月20日 産経】
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採掘技術の世界標準化の動き
上記記事にある環境問題については、“水圧破砕には、一つの坑井に多量の水(3,000~10,000m3)が必要であり、水の確保が重要となる。また用いられる流体は水90.6%、砂(プロパント8.95%)、その他化学物質0.44%で構成されることから、流体による地表の水源や浅部の滞水層の汚染を防ぐため、坑排水処理が課題となる。
実際に、アメリカ東海岸の採掘現場周辺の居住地では、蛇口に火を近づけると引火し炎が上がる、水への着色や臭いがするなど)が確認されるようになり、地下水の汚染による人体・環境への影響が懸念されている。
採掘会社はこれらの問題と採掘の関連を否定しているが、住民への金銭補償・水の供給を行っている。
こうした問題に関連したデューク大学などの調査では、着火しうる濃度のメタンが採掘地周辺の井戸水で検出されていることが明らかとなっている。”【ウィキペディア】とのことです。

こうした掘削時に周辺の地下水に与える影響が問題となりますが、採掘技術の世界標準化の動きもあります。
アメリカ国務省は昨年春、「シェールガス・イニシアチブ」という国際会議を発足させています。「世界各国の開発を積極的に助ける」との主旨で、中国やインドが参加を表明しています。
“会議を通じて米国の技術を世界のデファクトスタンダード(事実上の標準)にできれば、「世界のエネルギー開発の主導権を握り続けられる」(米シンクタンク研究員)との見方が出ている。”【7月18日 朝日】

技術開発や原油価格の高止まりなどを背景に、探せばいろんなものがありそうです。
日本海沿岸では、海底面に露出したメタンハイドレートが発見され、低コストで採掘できる可能性があるとも聞いています。
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