孤帆の遠影碧空に尽き

年に3回ほどアジアの国を中心に旅行、それが時間の流れに刻む印となっています。そんな私の思うこといろいろ。

イラン  バイデン米大統領は「解放する」とは言うものの熾烈な当局のデモ弾圧 対露ドローン供与問題

2022-11-07 22:43:32 | イラン
(テヘラン市内をバイクで走るイランの警官隊(2022年10月) 【11月5日 Newsweek】)

【バイデン大統領「われわれはイランを解放するつもりだ」】
最近「???」と感じたのはバイデン大統領のイランに関する「イランを解放」という発言。

****バイデン米大統領「イランを解放」と発言、選挙演説で****
バイデン米大統領は3日、中間選挙に向けたカリフォルニア州での演説で、政府に対する抗議デモが続くイランについて「解放」すると表明した。デモ参加者は間もなく自由になるだろうと述べた。

会場の外でイランの抗議者らを支持する集会が開かれる中、バイデン氏は「心配することはない。われわれはイランを解放するつもりだ。彼らはすぐに自由になるだろう」と語った。

具体的にどのような措置を取るのかには言及しなかった。ホワイトハウス国家安全保障会議は現時点でコメント要請に応じていない。

イランでは髪を覆うスカーフの着用が不適切として警察に拘束された女性が死亡した事件を受け、抗議活動が7週間にわたって続いている。

米国は2日、イラン政府が女性の権利を否定し、抗議活動に対し残忍な弾圧を行っているとして、45カ国からなる国連の「女性の地位委員会(CSW)」から同国の除外を目指すと表明した。【11月4日 ロイター】
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「イランを解放」ということは、イラン現体制を転覆させるということになります。イランからすればとても容認できる話ではなく、外交的には絶縁状みたいなことにもなります。核合意再建に関する協議も停止してしまいます。もう、合意をあきらめたのでしょうか。

何らかの具体的な話があってのことでしょうか? 仮にあったとしても、軽々に発言べきものでもないでしょう。

特に意味はなく、演説の勢いで口にした言葉でしょうか? そうであるなら、やはり軽率でしょう。かねてより懸念されている「バイデン大統領は大丈夫か?」という話にも。

台湾有事をめぐる従来からの「あいまい戦略」を否定するような発言は、何回も繰り返しているところをみると“うっかり”ではなく「確信犯」のようですが、今回イラン発言の真意は?

【熾烈なイラン当局のデモ弾圧】
ヒジャブ(スカーフ)の被り方が不適切として拘束されたのち、警察で死亡した女性をめぐる抗議行動は今も続いているようですが、単にヒジャブの問題、警察の暴力の問題にとどまらず、自由を求める現体制否定の闘いともなっており、それだけに当局側の弾圧も熾烈なようです。

****イラン革命防衛隊司令官、デモを「暴動」と呼び強く警告も…収束の兆し見えず***
女性の髪を覆うスカーフ「ヒジャブ」の着用をめぐり抗議デモが続くイランで、精鋭部隊・革命防衛隊の司令官がデモを「暴動」と呼び、やめるよう強く警告しました。しかし、デモは翌日も行われ、収束の兆しは見えていません。

イランでは、ヒジャブの着用が不適切だとして警察に拘束された女性が死亡し、抗議デモが続いています。
ロイター通信によりますと、革命防衛隊の司令官は29日、「“暴動”はきょうで終わりだ。もう街に出るな」と抗議デモをやめるよう強く警告しました。

しかし、イランの大学では翌日もデモが行われ、女性がヒジャブに火をつけ、抗議の意思を示しました。また、集まった学生らは「イスラム共和国はいらない」と声をあげました。

治安当局はデモの鎮圧のため実弾も使用し、これまでに1万4000人以上を逮捕したということですが、依然として収束の兆しは見えていません。【10月31日 日テレNEWS】
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最高指導者ハメネイ師も警察当局の鎮圧行動を支持しています。

****殴りバイクでぶつかり、最後は至近距離で発砲...イラン警官、デモ参加者への非道な暴行現場****
<激しいデモが続くイランで、警官隊によるデモ参加者への常軌を逸した暴行の様子が撮影された。被害者の容態などは不明のままだ>

スカーフを適切に着用していなかったとして若い女性が道徳警察に拘束され、死亡した事件を受けて抗議運動が過熱しているイラン。緊迫した状況が続く首都テヘランで、警官隊がデモ参加者に激しい暴行を加える様子がビデオに収められた。

11月1日にSNSに投稿された2分強の動画には、夜の道路に横たわる男性に、12人ほどのイラン警察が襲い掛かる様子が映っている。警官たちは男性を蹴りつけ、棒で殴り、バイクでひこうとする様子も見られる。そして最後には、至近距離から男性に発砲する。アルジャジーラによれば、この銃は散弾銃と見られるという。

この男性がその後どうなったかは明らかになっていない。(中略)

イラン警察は、この事件が起きた場所や時間などを操作するとともに、関与した人物の特定を進めていると発表した。また国営メディア上で発表した声明で、「警察は暴力や非正規な行動を決して容認しておらず、違反者は規則に従って確実に法的措置を受けることになる」とした。

警察は暴行する「自由を与えられている」
一方、国際人権NGO「アムネスティ・インターナショナル」イラン支部は、国連人権理事会にこの事件の調査を要請し、「彼らは抗議者を残酷な手段で殴ったり撃ったりする自由を与えられている」と声明で述べた。

ノルウェーに本部を置く人権団体「イラン・ヒューマン・ライツ」によれば、イランで女性の死亡を受けて抗議デモが発生して以降、子供40人を含む277人が治安部隊によって命を奪われたという。拘束された人は1万4000人以上に上るとの情報もある。

ただ当局はこれまで、デモ参加者の死亡について関与を否定し、外国が支援する「潜入者」や「テロリスト」によるものだと非難している。【11月5日 Newsweek】
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****イラン当局、デモ参加者約1000人を起訴 公判へ=報道****
 強硬な取り締まりで知られるイランの司法当局は首都テヘランの暴動で約1000人を起訴し、近く公判を開く見通し。同国のタスニム通信が伝えた。当局は長期化する抗議活動の鎮圧に向けた動きを強めている。

スカーフのかぶり方が不適切だとして9月にマフサ・アミニさん(22)が風紀警察に拘束され急死した事件に抗議するデモは、学生や女性を中心に約7週間にわたって繰り広げられており、当局が弾圧を強めているにもかかわらず収束していない。

イランの指導者らは、デモ隊を暴徒と呼び、厳しい措置を取ると警告。米国を含む敵国が暴動をあおっていると非難している。

タスニム通信によると、テヘランの司法当局トップは、治安当局の襲撃や殺害、公共物の放火を含む破壊行為を行った約1000人の裁判が革命裁判所で開かれると表明。報道によると、今週に公開裁判の形で行われる。

司法当局によると、警察官に車で突っ込んだとされる22歳男の判決はまだ下っていないが、死刑に相当する「地球の腐敗」という罪に問われているという。【11月1日 ロイター】
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可能であるなら「イランを解放」してほしいところですが、単に口にするだけなら“米国を含む敵国が暴動をあおっている”とする体制側主張を刺激するだけで、一層の弾圧をまねくことになる危険も。

【イランのロシアへのドローン供与 強化されるイラン・ロシア関係の一端】
イランに関してここのところ問題になっているのが、ロシアに対するドローン供与。

イラン側もこれまでの否定を覆して“少数の無人機を侵攻前に供与した”と認めていますが、ウクライナ・ゼレンスキー大統領は「まだうそをついている」と批判。

****ロシアへの無人機供与認める ウクライナ侵攻前とイラン外相****
イランのアブドラヒアン外相は5日、ロシアがウクライナに侵攻する数カ月前に無人機(ドローン)をロシアに供与したと記者団に明らかにした。国営テレビが伝えた。イランはこれまで、ウクライナで使用される武器を送っていないと重ねて主張していた。

一方で、一部米メディアが報じた弾道ミサイルの供与については「ロシアに対していかなるミサイルも送っていない。完全に間違っている」と改めて否定した。

ロシアは、無人機によるウクライナのインフラ攻撃を激化させており、米欧はイラン製が使用されているとして、同国を強く非難。対イラン制裁で圧力を強めている。【11月5日 共同】
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****イランは「まだうそをついてる」 大統領、対ロ無人機供与で****
ウクライナのゼレンスキー大統領は5日のビデオ演説で、イランが同日、ロシアへの無人機(ドローン)供与を認めたことに言及した上で「まだうそをついている」と批判した。少数の無人機を侵攻前に供与したとのイランの主張に対し、ウクライナ軍が「昨日だけで11機破壊した」と指摘した。

ゼレンスキー氏は、イランの要員がロシア軍に無人機の扱い方を指導しているとし「そのことに関して、イランは沈黙している」と述べた。

10月に続いたウクライナ首都キーウ(キエフ)を含む各地への攻撃にはイラン製無人機が多用されたとみられている。【11月6日 共同】
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イランはロシアへのドローン供与の見返りに、核合意再建協議の決裂に備えて核開発に関する援助をロシアに求めているとも報じられています。

****米CNN、イランが露に核開発巡る援助要請と報道…米研究機関「無人機提供の見返りに」****
米CNNは4日、米情報機関の分析として、イランがロシアに対し核開発を巡る援助を要請したと報じた。イラン核合意の立て直しに向けた協議が破綻した場合に備えているとの見方を伝えた。

報道によると、イランは核物質の提供や核燃料の製造に関する支援を求めているが、ロシアが応じるかどうかは不明だという。

ロシアは核開発抑止を柱とする核合意の当事国で、イランの核兵器保有に反対している。軍事転用が懸念されるイランの核開発拡大をロシアが受け入れた場合、米政府は大きな方針転換につながる可能性があるとみて警戒を強めている。

米政策研究機関「戦争研究所」は5日、ロシアにイラン製無人機(ドローン)を提供する見返りに、イランが核開発への支援を求めているとの見方を示した。(後略)【11月6日 読売】
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イランのロシアへのドローン供与は2年前から極秘交渉されており、ロシアがウクライナ侵攻に備えて入念に準備していたとの見方も。
また、弾道ミサイルも交渉中とのこと。

****無人機供与、2年前から極秘交渉 イラン、弾道ミサイルも協議****
中東イランがロシアに攻撃用無人機(ドローン)を供与した問題で、供与に向けた両国間の極秘交渉は2020年末に始まり約半年で合意に至ったことが7日、分かった。イラン外交筋と革命防衛隊関係者が明らかにした。

機体は21年夏に初納入された。交渉の詳細が判明したのは初めて。ロシアはイラン製弾道ミサイルにも高い関心を示し、現在も売却交渉が継続中という。

ロシアは侵攻前の21年春に部隊を集結。交渉はその数カ月前に始まったことになり、兵器の海外調達を進めていた可能性がある。イランは核問題で米欧と対立、ロシアと軍事分野で急速に連携を深めた実態が分かった。【11月7日 共同】
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バイデン大統領としては、イラン現体制もロシアのプーチン支配体制もまとめてひっくり返したいところでしょうが、明日の中間選挙結果次第では、その前にアメリカ・バイデン政権が窮地に陥ることもあります。

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イラン  ヒジャブ着用をめぐる女性死亡事件への抗議 「自由」を求める声と妥協の余地がない現体制

2022-10-24 23:27:00 | イラン
(イランの首都テヘランのイマーム・ホメイニ国際空港に到着し、記者の取材に応じる(ヒジャブなしでの競技参加で注目された)エルナズ・レカビ選手。国営イラン放送の映像より(2022年10月19日撮影)【10月20日 AFP】)

【長期化するヒジャブ女性死亡事件への抗議 ただ、最近のイラン国内の状況に関する情報は少ない】
イランで、スカーフ(ヒジャブ)の被り方が不適切として宗教警察に拘束され、その後死亡した女性をめぐって、警察の暴行によって死亡したとして政府への抗議デモが長期化していることは、10月10日ブログ“イラン 長引く抗議デモ イスラムによる統治体制への批判に拡大 没落する中間層の不満も”でも取り上げました。

当局側は警察の暴行を否定し、女性が有していた既往症との関連を指摘していますが、体制・政府の意向が支配的なイラン議会もその線に沿った報告書を発表し、騒動の幕引きを図りたい構えです。

****イラン議会が報告書「死亡は暴行が原因ではない」 デモ拡大の発端となった“ヒジャブ着用”女性の死めぐり****
スカーフの着用をめぐる女性への弾圧などを受けてデモが拡大しているイランで、議会は抗議活動の発端となった女性の死亡について、「身体への暴行が原因ではない」とする報告書を発表しました。

イランでは、ヒジャブ、髪の毛を覆うスカーフのかぶり方が不適切だとして拘束されたマフサ・アミニさんが急死したことをうけ、デモが激化しています。

地元紙などによりますと、イラン議会は16日、報告書を発表し、アミニさんの死亡について、「身体への暴行で死亡したのではない」としたうえで警察の救護措置が遅かったと指摘。謝罪と職員の研修強化を求めました。

また、女性に義務付けられているヒジャブのつけかたなどについて曖昧さをなくすための法改正を求めていますが、事態の収束に繋がるかは不透明です。

人権団体によりますと、一連の抗議活動が始まってから、少なくとも子ども23人を含む201人が死亡しているほか、デモ参加者が収容されているとみられる刑務所で大規模な火災が発生し、これまでに4人が死亡しています。【10月17日 TBS NEWS DIG】
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抗議デモに伴う犠牲者数は、報道規制が厳しいイラン国内でのことなので、よくわからないのが実態です。上記記事数字より遥かに多い可能性もあります。

政権側は、抗議デモの背後にアメリカなどの外国勢力が扇動しているとして厳しい鎮圧を行う姿勢です。

****バイデン氏、イランで「混沌とテロ」を煽動=ライシ大統領****
イランのライシ大統領は16日、バイデン米大統領がイランで「混沌とテロと荒廃」を扇動していると非難した。国営イラン通信(IRNA)が伝えた。同国では4週間にわたって抗議デモが続き、国家規模の動揺が生じている。

ライシ氏は「米大統領は、発言を通じて他国における混沌とテロ、荒廃を扇動している」とし「(イラン革命の指導者が)米国を大いなる悪魔と呼んだ不滅の言葉を米大統領は忘れてはならない」と述べた。

バイデン氏は15日、「イランは基本的人権を行使しているだけの自国民に対する暴力を止めなければならない」と発言した。【10月17日 ロイター】
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こうした当局の強硬姿勢がありますので、今現在イラン国内でどのような抗議が行われているのかはよくわかりません。

ここのところは、具体的な抗議行動の様子などに関する記事は目にしていません。ほとんど封じ込まれた状態なのかも。

そうした当局の弾圧がない外国では、在住イラン人による抗議が今も続いています。

ドイツの首都ベルリンでは22日、イラン人らによる大規模な抗議デモが開かれたました。警察発表で約8万人が参加したとのことですから、かなり大規模なデモです。
同様の抗議行動は、アメリカのワシントンやロサンゼルスでも行われました。そして東京でも。

****イランの自由求めて 東京都内でデモ****
東京都渋谷区で22日、イランで服装規定違反の疑いで逮捕されたマフサ・アミニさんが死亡した事件を受け、抗議集会が開かれた。【10月23日 AFP】
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最近話題になったヒジャブを着けずに試合参加したスポーツクライミングの女子選手の件も外国でのことです。

****ヒジャブ非着用のイラン選手帰国 空港で「英雄」の声援受ける****
韓国で行われたスポーツクライミングの大会で、女性の髪を隠すスカーフ「ヒジャブ」を着用せずに出場したイラン女子代表のエルナズ・レカビ選手が19日に帰国し、空港で支持者から「英雄」として迎えられた。

スポーツ選手を含むすべての女性にヒジャブ着用を義務付けているイランでは、服装規定違反の疑いで逮捕されたマフサ・アミニさんの死をめぐる女性主導のデモが1か月以上継続している。そうした中、ヒジャブを着用せず試合に臨んだレカビ選手は、当局の怒りを買ったとみられている。

レカビ選手は帰国に先立ち、自身のインスタグラムアカウントへの投稿で、ヒジャブを着用しなかったのは意図的ではなかったとして謝罪。首都テヘランのイマーム・ホメイニ国際空港に到着した際も、同様の説明を繰り返した。

だが活動家は、こうしたコメントがイラン当局からの圧力を受けて出されたものであると懸念している。

空港の外にはレカビ選手の支持者が多数集まり、「エルナズは英雄だ」や「よくやったエルナズ」との声援や拍手を送ったり、スマートフォンでその瞬間を撮影したりした。同選手を乗せていると思われる車が空港を去る際にも声援と拍手は続いた。中にはヒジャブを着用していない女性もいた。

米ニューヨークに拠点を置く人権団体イラン人権センターは、レカビ選手が「英雄の歓迎」を受けたとする一方で、「身の安全をめぐる懸念は残っている」と指摘している。 【10月20日 AFP】
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【新たな事件も】
一方、イラン国内では抗議行動に伴う新たな事件も。

****15歳少女殴られ死亡か スカーフ問題に続く新疑惑 イラン****
女性のスカーフ着用強制に伴う死亡事件を発端に反政府デモが続くイランで、15歳の少女が治安当局に殴られ死亡した疑いが新たに浮上した。教員組合は「無実の人々の殺害」をやめるよう訴えている。  

同組合の声明によると、北西部アルダビルでアスラ・パナヒさんが他の生徒と共に差別や不公正に反対するスローガンを叫び始めた際、スカーフを着けた私服姿の女性警官に暴力を振るわれた。

学校に戻って再び殴打され、今月13日に搬送先の病院で死亡したという。他にも生徒数人が拘束され、生徒1人が意識不明に陥った。  

国営テレビは、パナヒさんのおじとされる男性が「彼女は心不全で死亡した」と語るインタビューを放映。一方、アルダビルの議員は「錠剤を飲んで自殺した」と話すなど、死因を巡る情報が交錯している。【10月20日 時事】 
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英BBCなどによると、“治安部隊は生徒に対し、イランの現体制を支持する歌を歌うよう強要した。歌は「こんにちは司令官」で、米軍に2020年1月、イラクで暗殺された革命防衛隊のソレイマニ司令官を賛美する内容だった。
だが、パナヒさんら複数の生徒は歌うことを拒絶し、政府を批判する声を上げた。その後、パナヒさんは治安部隊に暴行された。他の複数の生徒も病院に運ばれたり、逮捕されたりしたという。”という報道も。

この事件に関する続報などは目にしていません。

【「自由」を求める声 妥協の余地がない政権側】
抗議デモが長期化した背景には、単に女性のヒジャブだけの問題ではなく、現在のイランの抑圧的な政治体制への不満が自由を求める人々から噴出していることがあります。

逆に言えば、そうであるだけに当局・政権側としては「一歩譲れない」という対応にもなります。

****「政府を倒そうと思っている」長期化するイランの抗議デモに在日イラン人が語る思い…ヒジャブ着けずに競技に参加したイランの女性選手も****
イランでスカーフの着用が不適切だとして拘束された女性が死亡して約1か月。抗議デモは今も続いています。日本でも行われたデモに参加した、在日イラン人の男性からは「みんな政府を倒そうと思っている」そんな声も聞こえてきました。

■イラン抗議デモ「どれだけ血を流しても諦めない」 子ども27人含む215人死亡
イラン各地で1か月以上続く抗議デモ。収束の兆しは見えません。

10月11日に公開されたテヘランで行われたデモの映像では、デモに集まった学生たちが「女性!生活!自由!」と叫び、「血」を意味するペルシャ語の文字を”人文字”で表現しています。「政権によってどれだけ血を流しても私たちは決して諦めない」という意味が込められているそうです。

人権団体IRAN HUMAN RIGHTSによりますと、デモの鎮圧などで少なくとも子ども27人を含む215人の死亡が報告されています。(中略)

■「みんな一つになって政府を倒したい」背景には女性の立場の低さ
抗議の声は日本でも。来日して30年になるイラン人のナシール・パルヴィジさん(58)も母国への憤りを募らせています。9日に外務省前で行われたデモで抗議の声を上げていました。(中略)

大規模デモはなぜ、ここまで世界に広がっているのか。
ナシールさん 「我々は今、みんな一つになって政府を倒そうと思っているんです。いまデモに参加している人たちはほとんどが若い人で、これからの自分たちのことが心配で」

ナシールさんは大規模デモが広がる背景にイラン国内の女性の立場の低さがあると話します。

ーー女性というのはイランの中でどんな存在?
ナシールさん 「(女性の立場は)弱い。すごく弱い。人間として見ていない、女性のことを。ただ子どもを産んで終わり。あとは家の面倒を見て終わり」(中略)

小川彩佳キャスター: 今回のデモは若者や女性の参加が目立つということですが、価値観が変わってきているということでしょうか?

中東調査会 青木健太研究員: 1979年のイラン革命から43年を経て若者や女性の価値観が徐々に変化していると思います。
8月に4年ぶりにイランに現地調査に行ったが、ヒジャブを頭に被らずに肩にかけるだけの若い女性が特に北部、テヘランで多く見られました。過去には髪を少し見せるくらいの女性は多くいましたが、完全にというのは少なかった。
その意味では特に都市部で変わってきていて、それを道徳警察が厳しく取り締まる事案が増えているということも仄聞していましたので、そういった違和感を感じていた中で、9月16日のアミニさんの死亡事件を受けて抗議デモが広がっていったということになります。

国山ハセンキャスター: デモの長期化の理由について青木さんは「女性や若者の蓄積した不満が爆発した」と見ています。

【蓄積していた不満】
・ヒジャブ着用義務に中産階級の若者が反発
・2019年のガソリン値上げを受けたデモで暴力的な弾圧。数百人が死亡
・2021年の大統領選で投票の自由意志が奪われた

ヒジャブの着用義務以外にもずっとたまっていた体制側への不満が一気に噴き出した形なんでしょうか?

中東調査会 青木健太研究員: 抗議デモのスローガンを見てみると、「女性」「人生」「自由」ということを叫んでいる。あるいは「独裁者に死を」ということを叫んでいる。やはり女性が中心になっていることが今回のデモの大きな特徴。また、「自由」という言葉が入っていることが今回の抗議デモの参加者が求めていることを象徴しているように思います。

さらに言えば、アメリカの経済制裁によって経済状態が苦しくなっていて、経済的困窮も背景にあると思います。

■体制側は強固な姿勢 収束には長期化も?
小川キャスター: 今回のデモに対してイランの最高指導者・ハメネイ師は「デモを鎮圧する治安部隊の全面的支持」を10月3日に表明しています。このデモ、いつ収束するといえるんでしょうか?

中東調査会 青木健太研究員: 現段階で長期的見通しは難しいが、私は長引くと見ています。反体制側に統一した指導者が存在しないということで、体制側からしてみれば対話をする相手がいないという状況にある。
当初は大規模な活動でしたが、小規模なグループで散発的に行われることが全国各地に広がっていったという状況なので、なかなか収束に結びつけることが難しい。

今のイランの体制は宗教界や治安機関によって支えられているので、イスラームに基づく統治ということに関して、妥協するということが体制の基盤を危うくすることになりますので、融和策をとることも難しい。なかなか早期に収束することは見通せない状況だと思う。【10月19日 TBS NEWS DIG】
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経済的な不満だけなら何らかのバラマキでとりあえず鎮めることも可能ですが、「自由」という話になると「体制」の存続にかかわる問題で妥協の余地がありません。

***イラン抗議デモは「ベルリンの壁」に匹敵 米在住女性活動家****
イスラム教徒の女性が髪を隠すスカーフ「ヒジャブ」は、イラン政府にとって抑圧の道具になるかもしれないがアキレス腱(けん)にもなり、「ベルリンの壁」崩壊のような事態につながるのを政府は阻止しようと努めている──米ニューヨークを拠点に活動するイラン人ジャーナリストで人権活動家のマシー・アリネジャド氏はAFPにこう語った。(中略)

「私から見て、ヒジャブ着用の強制はベルリンの壁のようなものです。この壁を壊せば、(イラン・)イスラム共和国は存在しなくなる」とアリネジャド氏はAFPに語った。「ヒジャブの強制は(イラン・)イスラム共和国にとってアキレス腱。だからこそ政権はこの革命を本当に恐れています」

ヒジャブは「私たちを抑圧し(中略)女性を支配するための道具」であり、「女性を通じて社会全体を支配するためのものです」 イラン人女性が「服装を指図する人側にノーと言う」ことができるようになれば、独裁者にノーと言う力を持つようになるとアリネジャド氏は主張する。(後略)【10月15日 AFP】
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【経済的苦境への抗議も重なる】
「自由」を求める声は、現行政治体制のもとで経済的苦境に苦しむ市民の声とも重複しています。

“中間層がここにきて、50%に跳ね上がったインフレと、今年最安値を更新した通貨リアル急落による重圧に苦しめられている。イランでは人口の約3分の1以上が貧困層で、この比率は2015年の20%から急上昇。中間層も全体の50%を割り込んだ。

テヘラン北部にある裕福な地域の通りで抗議デモに参加していた52歳の主婦は「デモの根本にあるのは経済問題で、これが今爆発している」と話す。彼女はヒジャブを取り、他の女性の群衆とともに振り回していた。【10月5日 WSJ】

経済的側面としては、イラン経済の根幹をなす石油産業労働者のストライキに波及しています。

****ヒジャブから石油産業に飛び火したイランの反政府デモ****
<風紀警察の手によるとみられる女性の死に対する抗議が、イランの財源を支えるエネルギー産業の労働者に波及、全土でストライキが相次いでいる。エネルギー産業の労働争議は、1979年のイラン革命の原動力だったともいわれ、政府幹部にも焦りがみえる>

22歳のクルド系女性、マフサ・アミニの死をきっかけにイランで始まった抗議活動は、10月第3週に入ってから、同国の主要産業である原油・石油化学セクターにまで拡大しており、その現場を映したオンライン動画が出まわっている。この抗議活動は、イランの原油生産とグローバルサプライチェーンに影響を及ぼす可能性があるし、体制転換にもつながりかねない。(後略)【10月12日 Newsweek】
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後先の話で言えば、生活困窮からの労働者争議の方が年初から存在し、アミニさんの事件への抗議に合流した経緯があります。

“デモの第1波は今年に入って始まった。主導したのは、賃金が貧困ラインを割り込んだ石油業界の従事者や教師らの業界団体だ。 労組はこれまで、アミニさんが違反したとされるヒジャブ着用義務づけの法律を廃止するための運動に加わるよう、組合員に求めている。”【10月5日 WSJ】

【農村部の支持を得ている現体制 都市部の抗議だけでは体制転換は困難】
ただ、体制転換という話になると、そうそう事は進まない・・・という指摘も。

****イランで抗議デモが広がっても体制転覆はしない事情****
(中略)イランで体制を批判する大規模なデモが起きると、イラン嫌いの米国や欧州諸国はこのようなデモを大きく取り上げるきらいがあるが、イランのイスラム革命体制が今にも倒れると思うのは早計であろう。

なぜならば、イランのイスラム革命体制は、40年間かけて強固な支配体制を構築しており、特に1979年のイラン革命前の王政時代には、農村部の犠牲の上に都市部の繁栄があったが、革命後、イスラム革命体制は、農村の開発に力を入れた結果、元々、信心深く保守的な農村部の支持を確保していると思われるからである。

度々起きている全国規模のデモも、都市部で起きており、農村部で大規模な反政府デモが起きたとは聞かない。逆に言えば、これまで農村の犠牲の上で特権を得ていた都市部の住民が今度は損な役回りとなり、都市部住民がイスラム革命体制に対して不満をつのらせがちであることも大規模なデモが都市部で起こる遠因であろう。(後略)【10月14日 WEDGE】
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都市部の不満層だけの抗議で終わるのか、保守的農村部にまで抗議が拡大するのか・・・そこが抗議行動、そしてイラン政治体制の今後を決める分かれ道になります。
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イラン  長引く抗議デモ イスラムによる統治体制への批判に拡大 没落する中間層の不満も

2022-10-10 21:26:01 | イラン
(頭部をスカーフで覆っていない女子学生たちがホメイニ師とハメネイ師の肖像に向かって中指を立てた【10月5日 BBC】)

【現行統治システムの中核を成すイデオロギーへの批判が表面化】
イランの首都テヘランで頭髪を覆うスカーフの着用方法をめぐり連行された後、昏睡状態に陥り、3日後に死亡した女性をめぐって、警察の暴力によって女性が死亡したとして抗議デモが拡散した件は、これまでも数回取り上げてきました。


事件発生から4週間目に入った現在も抗議行動は続いています。
死者の数は、情報統制が厳しいイランのことですのではっきりしませんが、人権団体によると、当局による抗議デモの弾圧などでこれまでに子ども19人を含む185人の死者が報告されている・・・とも報じられています。【10月10日 TBS NEWS DIGより】

当局は、女性は「病死」であり警察の暴行はなかったとして、デモの鎮静化を図っています。

****イラン女性急死、法医学当局「脳腫瘍に関する既往症と関連」…暴行疑惑で抗議活動続く***
イランの法医学当局は7日、服装規定に違反したとして警察に拘束された後に急死したマフサ・アミニさん(22)の死因に関する報告書を発表した。死因は頭部などへの殴打ではなく、既往症と関係があると結論づけた。国営メディアなどが伝えた。

アミニさんは9月13日に拘束された後、意識不明となり、3日後の同16日に死亡した。報告書では死因について、アミニさんが8歳の時に手術を受けた脳腫瘍に関する既往症との関連を指摘した。

アミニさんは意識を失った後に心肺蘇生処置を受けたが、脳に「損傷」を負い、「脳の低酸素状態による多臓器不全で死亡した」としている。(後略)【10月8日 読売】
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しかし、女性の父親は、彼女には病歴はなく逮捕前まで健康上の問題は一切なかったと語っており、また、暴行を受けたと思われる状態を見たと主張し、死因に関する上記の公式発表を否定しています。

****イラン抗議デモ、4週目へ 女性の父、当局の死因発表を否定****
イランで服装規定などを取り締まる「道徳警察」に逮捕されたマフサ・アミニさんが拘束下で死亡したことに端を発した抗議デモは8日、4週目に入った。全土で女子学生がスローガンを叫び、労働者がストをし、デモ隊が治安部隊と激しく衝突している。(中略)

(死因に関する公式発表に対し)アミニさんの父親は在英ペルシャ語放送イラン・インターナショナルに対し、「私はマフサの両耳と首の後ろから血が出ているのを自分の目で見た」と述べ、公式発表を否定した。

■抗議の輪
テヘランの女子大学、アルザフラー大学では、保守強硬派のエブラヒム・ライシ大統領が新年度の始まりに訪れた際にも、抗議デモが続いていた。

在外人権団体イラン・ヒューマン・ライツは同大のキャンパスで「抑圧者に死を」と叫ぶ若い女性たちが目撃されたと報告している。

アミニさんの地元の西部クルディスタン州サッケズでは、女子学生が「女性、命、自由」とスローガンを唱えながら、スカーフを振り回して行進する様子が撮影された。人権団体によると8日に行われた抗議デモだという。

■「警察は殺人者」
抗議参加者はインターネット規制をものともせず、新しいメッセージ戦術を取っている。
例えばネットには、「もう恐れない。私たちは戦う」と書かれた巨大横断幕がテヘラン市内の陸橋に掲げられた画像が投稿された。AFPは画像が真正であることを確認した。

また同じ幹線道路にある当局の広報ボードの文言を、「警察は公僕」から「警察は殺人者」に書き換える男性を捉えた映像も拡散している。(中略)

■外国人拘束も
(中略)イラン当局は外国勢力が抗議デモを扇動していると繰り返し主張。先週には欧州出身者計9人を逮捕したと発表した。フランスやオランダは、イランへの渡航に関する警告や同国からの出国勧告を発している。(後略) 【10月9日 AFP】
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イランではこれまでも大規模な抗議行動は何回もおきていますが、従来のものが選挙の不正やガソリン価格など経済問題であったのに対し、今回は女性のスカーフ着用、つまりイスラム的価値観の強要が問題となっており、現在の神権政治ともいわれるイスラムを中核とする統治体制への不満と見ることができます。

****きっかけは1人の女性の死。今回のイラン抗議デモがこれまでと違うのはなぜか****
<「ふしだらな格好」を道徳警察にとがめられた若い女性が、病院で死亡。抗議行動は全土に広がり、体制批判にも発展している。近年はデモが頻発しているイランだが、今回のデモは何が違うのか>

イランが燃えている。きっかけは1人の女性の死だ。地方から首都テヘランを訪れていたマフサ・アミニ(22)は、地下鉄の駅を出たところで「道徳警察」に目を付けられ、連行された。

理由は、ヒジャブ(イランの女性に着用が義務付けられている髪を隠すためのスカーフ)から髪が少し出ていたからとも、ぴったりしたジーンズをはいていたからともいわれる。

残念ながら、この種の逮捕はイランでは珍しくない。そして拘束中に命を落とすことも、そんなに珍しくない。
だが、アミニの死は「イランで時々ある残念な出来事」では終わらなかった。

「病院のベッドに横たわる彼女の写真が流出したのだ」と、イラン系アメリカ人の弁護士ギスー・ニアは言う。「顔は腫れ上がり、首には分厚いガーゼが巻かれ、呼吸器につながれていた。その衝撃的な写真が、元気なときの美しい彼女の写真と共に、ソーシャルメディアで広く共有された」

9月に一部の女性たちが始めた抗議行動は、たちまち男性も巻き込んでイラン全土に広がり、体制批判にまでつながっている。いったいイランで何が起きているのか、スレート誌のメアリー・ハリスがニアに話を聞いた。

(中略)
――イランの女性は非常に教育水準が高いが、それでも自由を制限されている。

イランの女性は識字率が非常に高く、教育もある。男性よりも女性のほうが大卒者は多いとも聞く。ただ、女性たちを家庭にとどまらせるよう仕向けるさまざまなルールがある。女性が外で働いたり、スキルを活用したりすることは奨励されていない。

――近年のイランでは、抗議デモが頻発している感がある。多くは不正選挙に対するものだが、それ以外の部分で、今回のデモは何が違うのか。

2009年に大統領選の結果に対する大規模な抗議デモが起きた。非常によく組織されたもので、「グリーン革命」として世界的にも注目を浴びた。(中略)ただ、基本的にデモはテヘランの中心部に限定されていた。

だが、それ以降の抗議デモは大きく異なる。2017年12月と18年1月の抗議デモは全国的なもので、明らかに反政府的な色合いを持っていた。

2019年11月には、ガソリン価格が突然引き上げられたのをきっかけに、全国的に大規模デモが起きて、現体制に対する批判へとつながった。

――抗議行動がどんどん激しくなり、混乱を帯びたものになってきたということか。

人々が昔ほど抗議の声を上げることに恐れをなさなくなったことは間違いない。抗議デモが起きる頻度が高くなり、場所も都市部だけではなくなった。

ある地方での水不足がきっかけだったり、低賃金に対する不満がきっかけだったりと、原因も多種多様だ。
だが、今回は経済難などではなく、神権政治の中核を成すイデオロギーが問題になっている。ヒジャブの着用義務は、イスラム神政を口実にした人権抑圧を象徴するルールだ。

性差別的な法的枠組みの象徴でもある。なにしろ裁判では、女性の証言は男性の証言の半分の価値しかないと見なされるのだから。イランには民族的・宗教的マイノリティーや、性的少数者に対する差別もある。(後略)。【10月3日 Newsweek】
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“神権政治の中核を成すイデオロギーが問題になっている”となると、政権側は一歩も後へ引けません。譲歩や妥協が困難な問題です。
最高指導者ハメネイ師は、抗議行動はアメリカやイスラエルによって意図されたものだとして、警察対応を支持しています。

****イラン最高指導者、警察の対応支持=デモの死者130人超か****
イランの最高指導者ハメネイ師は3日の演説で、国内各地で続く若者らの抗議デモについて「あらかじめ計画されていた暴動だ」と断じ、鎮圧に向けて強硬姿勢を取る警察など治安当局の対応を支持する考えを示した。国営通信が報じた。最近のデモについてハメネイ師の発言が伝えられるのはこれが初めて。

一方、オスロに拠点を置く人権団体「イラン・ヒューマン・ライツ」(IHR)は2日、デモが激化した9月16日以降の衝突による死者は133人になったと発表した。最高指導者が強硬対応を容認したことで、流血がさらに拡大する恐れもある。(中略)

ハメネイ師は、女性が命を落としたことについて「深い悲しみを覚えた」と述べた。しかし、抗議行動の拡大は「(イランを敵視する)米国やシオニスト体制(イスラエル)などが意図したものだ」と主張した。【10月3日 時事】 
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しかし、ハメネイ師のこうした姿勢は女性の怒りを増幅させているようで、抗議行動は多くの女子学生が参加し、最高指導者、宗教指導層を批判するものともなっています。

****イラン抗議デモ、女子学生が多数参加 前例ない行動も****
イランで全国的に広がっている抗議デモで、これまでなかった行動が相次いでいる。10代の女子学生たちはスカーフを外して振り回し、宗教指導層を非難する言葉を唱え、侮蔑的なジェスチャーを見せるなどしている。(中略)

BBCが確認した動画からは、いくつかの都市の校庭や路上で抗議デモが行われたことがわかる。
首都テヘランのすぐ西に位置するカラジでは、女子学生たちが学校から教育関係者を追い出したとされている。

ソーシャルメディアに3日に投稿された動画には、女子学生たちが「恥を知れ」と叫び、水の空ボトルと思われるものを、教育関係者が校門から出て行くまで投げつけていた様子が映っている。

同じカラジで撮影された別の動画では、学生たちが「団結しなければ、1人ずつ殺される」と声を張り上げているのが聞こえる。

南部の都市シラーズでは3日、女子学生数十人が主要道路の通行を妨害。スカーフを振りながら、「独裁者に死を」と声を合わせた。すべての国家問題で最終決定権をもつ、同国の最高指導者アリ・ハメネイ師に向けたものだ。

4日には、カラジ、テヘラン、北西部のサケズ、サナンダジュでも、女子学生の抗議デモが報告された。
また、多くの女子学生が教室で、頭部を覆わずに立っている場面の写真も出回った。学生たちは、ハメネイ師と、かつての最高指導者ルホラ・ホメイニ師の肖像画に向かって、中指を立てるひわいなしぐさを見せている。

女子学生らがこうした抗議行動を起こした数時間前には、ハメネイ師が沈黙を破って、イランの宿敵であるアメリカとイスラエルが「暴動」を仕組んだと非難していた。また、抗議デモを暴力的に弾圧した治安部隊への全面的な支持を表明していた。【10月5日 BBC】
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最高指導者への批判は、国営テレビのハッキングという形にもなっています。

****ヒジャブめぐるデモ イランで国営テレビがハッキングされる ハメネイ師に銃の照準****
スカーフの着用をめぐり拘束された女性が死亡した中東・イランでは、抗議活動が続いていますが、国営テレビが放送中にハッキングされました。

8日、イランの国営テレビで午後9時のニュース番組が報じられていた最中、突然、画面が切り替わり、白い仮面が登場したあとに最高指導者ハメネイ師に対し、銃の照準が合わせられるかのような映像が流れました。
反体制派が国営テレビを数秒間に渡って乗っ取り=ハッキングしたとみられています。

ハメネイ師は炎に包まれているように見え、画面下には一連の抗議活動の発端となったアミニさんや、デモ途中に死亡したほかの3人の女性の写真が表示されました。(後略)【10月10日 TBS NEWS DIG】
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ハッキングされた最高指導者ハメネイ師の画面には「若者の血があなたの手から滴る」とも表示されていたとか。

抗議デモの火に油を注ぐように、デモに参加した別の女性の不審な死も問題になっているようです。

****イラン抗議デモ 別の17歳少女が死亡 政権側の関与疑う声広がる****
イランでスカーフのかぶり方をめぐり逮捕された女性が死亡したことに抗議するデモが広がるなか、デモに参加していたとみられる17歳の少女が死亡しているのが見つかりました。
検察は死亡した理由はデモとは関係ないとしていますが、政権側の関与を疑う声が広がっていて、さらに反発が強まっています。(後略)【10月10日 NHK】
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【政権批判が広がる根底には崩壊しつつある経済下で苦しむ中間層の怒りも】
先ほど、“現在の神権政治ともいわれるイスラムを中核とする統治体制への不満”が表面化していると書きましたが、スカーフに敏感な若い女性だけでなく怒りが広く共有されるのは、長引く制裁で疲弊した経済への不満が根底にあっての話でしょう。

****イラン抗議デモ 中間層怒りのマグマ****
米国による制裁や汚職・失策で崩壊寸前の経済、縮む中間層

髪を覆うスカーフ(ヒジャブ)着用を巡る問題が引き金となり3週間にわたりイランを揺らしている抗議デモは、崩壊しつつある経済下で苦しむ中間層の怒りを巻き込み、一段と大きな運動へと発展してきた。

(中略)口コミで組織されソーシャルメディアで情報を拡散するデモ隊の要求は、女性の権利向上を求める運動から、イラン社会の隅々まで支配するイスラム教統治の廃止を求める運動へと急速に様変わりしている。

「女性・テクノロジー・貧困という3要素がデモを拡大させている」。外国企業にイラン事業戦略を助言するテヘランの実業家モスタファ・パクザドさんはこう話す。「若者は厳しい制約によって自分の人生がまさに台無しにされているとの思いが強い」

1979年のイラン革命以降、同国の中間層は安定のかなめだった。核や弾道ミサイルの開発、テロや武装勢力への支援を理由にイランが米国などから厳しい制裁を科される中でも、経済成長をけん引した。過去40年に人口の6割を占めるまでに拡大。強固な教育制度に支えられ、壊滅的な戦争や幾度の原油価格急落を経験しながらも、医師や弁護士、エンジニア、トレーダーといった高度人材を送り出している。

その中間層がここにきて、50%に跳ね上がったインフレと、今年最安値を更新した通貨リアル急落による重圧に苦しめられている。イランでは人口の約3分の1以上が貧困層で、この比率は2015年の20%から急上昇。中間層も全体の50%を割り込んだ。

テヘラン北部にある裕福な地域の通りで抗議デモに参加していた52歳の主婦は「デモの根本にあるのは経済問題で、これが今爆発している」と話す。彼女はヒジャブを取り、他の女性の群衆とともに振り回していた。

(中略)イランの石油・金融業界を標的にした米国の制裁措置によってドル資金調達の道が断たれ、イラン経済を崩壊寸前に追い込んでいる。エコノミストはこうした見解でほぼ一致する。
それでもイラン国民の63%は、制裁ではなく経済運営の失策と汚職が原因だと考えている。(中略)

かつて世界有数の産油国だったイランだが、足元の産油量は日量約250万バレルと、1970年代の600万バレル余り、2016年の400万バレルから大きく落ち込んでいる。

新型コロナウイルス禍からの景気回復の恩恵は、インフレ高騰で打ち消されているとエコノミストは指摘する。国際通貨基金(IMF)が先週公表した研究によると、イランの大卒者の雇用は制裁発動後に7%減少した一方、高技能の男性労働者の賃金は約2割減った。

デモの第1波は今年に入って始まった。主導したのは、賃金が貧困ラインを割り込んだ石油業界の従事者や教師らの業界団体だ。労組はこれまで、アミニさんが違反したとされるヒジャブ着用義務づけの法律を廃止するための運動に加わるよう、組合員に求めている。(中略)

中間層の多くにとっては1979年以降、ビジネスを行う自由が一程度認められ、稼ぐことができていたことで、政治的弾圧や厳格なイスラム教の価値観の強要に対する不満が和らいでいた。政府はエリート層に集中していた石油収入を再配分し、無償で医療や教育、家族計画プログラムを提供した。

イランの強力な教育制度によって、農村部の貧困層でも社会階級を上がり、家を所有することが可能になった。大学の学位取得が法律や医学といった専門職への扉を開いた。

社会格差や教育水準、寿命などから国の発展レベルや豊かさを測る国連の「人間開発指数」によると、イランは2015年の段階で、メキシコやウクライナ、ブラジル、トルコを上回っていた。

イランでは同年、米国や欧州、ロシア、中国との間で結んだ核合意により、国際的な孤立から脱却できるとの希望が高まっていた。

ところが、期待されていたような追い風は吹かなかった。ドナルド・トランプ氏が2016年に米大統領に当選したことで、西側企業の間ではイランとの取引を敬遠する動きが広がった。トランプ氏が核合意の離脱を表明し、制裁を復活させた2018年以降、イランの中間層が貧困層へと転落するケースが顕著になる。

イランの中間層はかつて、2013~21年に大統領を務めたハッサン・ロウハニ氏などの改革派に望みをつないでいた。だが、世論調査や取材からは、選挙を通じて政治を変革することへの期待が中間層の間で失われたことがうかがわれる。昨年の大統領選では、ハメネイ氏が改革派の候補者による出馬すら認めないことが明らかになると、投票率が過去最低に沈んだ。

ロウハニ氏の後継であるブラヒム・ライシ大統領は、経済的な自立と、西側ではなくロシア・中国との貿易を重視する考えを強調している。

英王立国際問題研究所(チャタム・ハウス)の中東・北アフリカ・プログラム副責任者、サナム・バキル氏は「イランではガス抜きの調整弁が存在しない。経済的な機会も、社会的な機会も、政治的な機会もなく、弾圧の雲が立ちこめるだけだ」と話す。(後略)【10月5日 WSJ】
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イラン抗議デモ  鎮圧姿勢強めるライシ大統領の気になる経歴 イラク・クルド人拠点への攻撃も

2022-09-29 22:13:59 | イラン
(イランの首都テヘランで行われたデモで、髪を覆うスカーフを燃やす人々。(2022年9月22日撮影)【9月27日 AFP】)

【スカーフ女性死亡への抗議デモは、政権への不満、支配聖職者層の解体を求める声にも拡大】
9月22日ブログ“イラン スカーフをめぐる女性死亡で広がる抗議デモで混乱 瀬戸際の核合意再建問題”でも取り上げたように、イランでは今月16日、スカーフのかぶり方が不適切だとして逮捕された22歳の女性が死亡したことをめぐり、警察が心臓発作が原因だと説明しているのに対し、警察官による暴行が原因だとして抗議するデモが各地で起きましたが、未だ収束していないようです。

長引く背景には、単に女性のスカーフの問題だけでなく、保守強硬派政権下での宗教的価値観強要による自由の制約、更には長引く制裁で改善しない経済苦境への市民の不満などが抗議行動の根底にあるように思えます。

そうした不満は「独裁者に死を」といった声にも。

****イランでデモ隊と治安部隊が衝突、「独裁者に死を」唱える動画も****
イランでは女性の頭髪を覆うスカーフの着用が不適切だったとして拘束された女性が死亡したことへの抗議活動が激化しており、国営メディアやソーシャルメディアによると27日、数十の都市で機動隊・治安部隊とデモ隊が衝突した。

ソーシャルメディアに投稿された動画には、テヘランなどで治安部隊と衝突しながら支配聖職者層の解体を求めるデモ隊の姿が映し出されている。ツイッターの動画では、最高指導者ハメネイ師を指して「独裁者に死を」と唱えている様子も見られた。

国際人権団体アムネスティ・インターナショナルはツイッターで、イランの治安部隊がデモ隊に実弾などを使用、「数十人が死亡、数百人が負傷」と指摘した。

一方、国営メディアは、デモ参加者を「偽善者、暴徒、凶悪犯、扇動者」と表現。国営テレビはいくつかの都市で警察が「暴徒」と衝突したと報じた。

インターネット遮断監視組織NetBlocksによると、デモ参加者がソーシャルメディアに動画を投稿することを困難にするため、当局はいくつかの州でネットアクセスを制限している。【9月28日 ロイター】
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【「暴動は許さない」と鎮圧に向けた姿勢を強めるライシ大統領の不穏な経歴】
国営メディアによれば治安当局との衝突などでこれまでに41人が死亡する事態となり(人権団体「イラン・ヒューマン・ライツ(IHR)」によると、抗議デモが続く11日間で、少なくとも76人の抗議者がイラン治安部隊によって殺されたとも)、国内外で当局対応への非難の声が高まるとともに、政権側としてはこれ以上の混乱は体制を揺るがすものとして容認できないところに来ているようにも見えます。

****イラン大統領“暴動はレッドライン” 女性死亡の抗議デモで****
イランでスカーフのかぶり方をめぐり逮捕された女性が死亡したことに抗議するデモが続いていることについてライシ大統領は、レッドラインを越えて暴動に発展しているとして取締りを徹底する姿勢を強調しました。混乱の収束に向けて、デモへの参加を思いとどまらせるねらいがあるとみられます。

(中略)ライシ大統領は28日、国営テレビのインタビューに答える形で、女性の死因に関する調査結果が数日以内に公表される予定だと明らかにしました。

その一方で「デモと暴動は違う。社会の治安を乱すことは許されず、暴動はレッドラインを越えている。人々の命と財産を傷つける者には裁きを受けさせる」と述べ、取締りを徹底する姿勢を強調しました。

(中略)ライシ大統領としては混乱の収束に向けて、デモへの参加を思いとどまらせるねらいがあるとみられます。(後略)【9月29日 NHK】
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2019年11月、ガソリン価格高騰から抗議デモが激化した際には、当局の弾圧によって死者は1000人を超えたとのアメリカ側の観測もあります。(1500人以上との指摘もあります)
ただ、イラン政府は死傷者数などデモの詳細を明らかにしていませんので、真相は不明です。

今回もそうした大規模な犠牲者が懸念されますが、その懸念を膨らませるのはライシ大統領の経歴です。
最高指導者ハメネイ師に近い保守強硬派のライシ大統領は、「イスラム法学者」「司法府でキャリアを積んだ」などと説明されていますが、別の顔もあります。

****「死の委員会」の一員だったライシ氏****
ライシ氏は2019年からイランの法相を務めているが、何よりも若い頃から長年にわたり、検察官として反体制派の弾圧、処刑に関与してきたことで知られる。

特に1988年、当時の最高指導者ホメイニ師の勅命によって実行された反体制派大弾圧の責任者の1人とされていることは重要だ。

ホメイニ師は1988年にいわゆる「死の委員会」を設立、政治犯として拘束されていた反体制派モジャヘディン・ハルク機構(PMOI)の支持者らを直ちに処刑するよう命じた。ライシ氏はその「死の委員会」の一員だった。

数千人から数万人にのぼるとされる犠牲者の遺族を代表するNGO「1988年イラン大虐殺の犠牲者のための正義(JVMI)」は、家族には事前に何も知らされぬまま処刑は秘密裏に行われたため、最後のお別れをする機会もなかった、彼らは6人ずつクレーンに吊るされて処刑され、遺体には消毒液がかけられ、夜のうちに集団墓地に密かに埋められた、としている。

しかしイラン当局は、今もその事実を認めていない。

2021年5月には150人以上の元国連職員や人権専門家が、この1988年イラン大虐殺について調査を行うよう要求する書簡を国連に提出、これを受け取ったミシェル・バチェレ国連人権高等弁務官は「人道に対する罪」に相当する可能性に言及した。(後略)【2021年6月1日 FNNプライムオンライン イスラム思想研究者 飯山陽氏「イラン次期大統領最有力候補の血塗られた過去」】
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ホメイニ時代の数千人から数万人にのぼるとされる反体制派大弾圧の責任者の1人・・・その経歴が今また繰り返されることがなければいいのですが。
情報が統制された国家ですので、仮に大弾圧が行われても、イラン国外にはその情報はなかなか伝わってきません。

【イラク・クルド自治区のクルド人勢力拠点への越境攻撃も】
前回9月22日ブログでも触れたように、死亡した女性がクルド系だったことで、混乱は国境を超えて、隣国イラクのクルド自治区にある反政府活動を続けるクルド人勢力の拠点への攻撃という形にも拡大しています。

****イランがイラク北部のクルド自治区攻撃、13人死亡 国内騒乱巡り****
イランの革命防衛隊は28日、隣国イラク北部のクルド人地域の武装勢力を標的にミサイルと無人機で攻撃を行ったと明らかにした。当局によると、13人が死亡した。

イランでは今月、クルド系女性がを理由に警察に拘束され死亡したことを巡り、大規模な抗議デモが発生。イラン当局はクルド勢力が関与していると非難している。

イラクの国営通信社は、この攻撃でクルド人自治区のアルビルとスレイマニヤ近郊で13人が死亡し、58人が負傷したと、クルド人当局の話として伝えた。

イラクのクルド関係筋によると、28日朝に行われた攻撃はスレイマニヤ近郊のクルド側拠点の少なくとも10カ所が対象だったという。

米中央軍は、アルビルに向かうイラン無人機を撃墜したと明かし、「空爆による米軍の負傷者や死者はなく、装備に被害はない」と声明を発表した。

イラン革命防衛隊は攻撃後、テロ勢力と見なす同地域のクルド人への攻撃を続けると表明した。【9月29日 ロイター】
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イラン革命防衛隊は、イラクのクルド人勢力が「北西部からイランを攻撃して同国に侵入し、不安と暴動を扇動して混乱を広げている」と非難し、攻撃を正当化しています。

“イラク政府はイラン大使を呼び出し抗議。国連イラク支援ミッションはツイッターへの投稿で、「ミサイル外交は壊滅的な結果をもたらす無謀な行為だ」と非難した。米国も、攻撃を「強く非難する」と表明し、さらなる攻撃を行わないようイランに警告した。”【9月29日 AFP】

イラクではシーア派内部の反イラン派と親イラン派の対立から政治混乱が続いていますが、イランの今回のようなイラク主権を無視した越境攻撃のような行動が、イラク国内の対立を激化させているのでしょう。(もっとも、イラク主権無視はトルコもアメリカ・・・といったところでしょうが)

【東隣アフガニスタンではイラン抗議デモに連帯する女性も】
上記イラクはイランの西隣ですが、イランの東隣はタリバン支配のアフガニスタン。
「不適切な服装」云々で言うなら、アフガニスタンではイラン以上に厳しい制約があります。そのことへの女性たちの不満も。

****「イラン抗議運動」支持の女性集会を強制解散 タリバンが空砲で****
アフガニスタンの女性たちが29日、首都カブールで、隣国イランで服装規定違反を理由に「道徳警察」に逮捕された女性の死をめぐって広がった抗議運動を支持するデモを行ったが、イスラム主義組織タリバンにより強制的に解散させられた。

AFP特派員によると、イラン大使館の前に約25人の女性が集まり、イランでの抗議運動で用いられたスローガン「女性、命、自由!」を叫んだ。これに対し、タリバン兵は空砲を撃つなどして集会を中止させた。

女性たちが手にした紙には、「イランは立ち上がった。今度は私たちの番だ!」「カブールからイランへ、独裁にノーと言おう!」などと書かれていた。タリバン兵はこれらの紙を素早く奪い取り、デモ隊の前で破り捨てた。【翻訳編集】
******************

タリバン復権をあっけなく許したアフガニスタン男性でしたが、アフガニスタン女性は粘り強く勇敢なようです。

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イラン  スカーフをめぐる女性死亡で広がる抗議デモで混乱 瀬戸際の核合意再建問題

2022-09-22 22:35:47 | イラン
(テヘランで通りに繰り出したイランのデモ隊=AFP通信が21日入手【9月22日 時事】)

【「スカーフで髪を隠さなかったら拷問死か!」 拡散する抗議デモ 増える犠牲者】
イランでは、2019年にガソリン価格高騰に不満を抱く市民が行った抗議デモなど、しばしば国民の大規模な抗議行動が起きますが、今回イランを揺るがしているのはイスラム女性が義務付けられているスカーフの問題。

「スカーフを被る」と言っても、その対応は個人差があります。
宗教的価値観を重視する女性は髪の毛全体を隠す形できちんと。
逆に、そうした宗教的価値観の強制を嫌う女性は、前髪を大きく出す形で。

現在は保守強硬派のライシ大統領のもとで、スカーフについても厳しくチェックされる状況にあります。
今回問題となった女性は、スカーフのかぶり方が不適切だとして警察に拘束され、死亡しました。

SNSで女性が病院のベッドで治療を受けているとされる写真が拡散。頭部付近に血痕のようなものが見えるため、警察官の暴行を疑う声が強まり、頭を殴打されたとも報じられました。

17日に女性の地元で営まれた葬儀には数千人が参列し、その一部が当局の対応を批判し、最高指導者ハメネイ師も非難する抗議行動に発展、治安部隊と衝突する事態に。

その後も抗議行動は拡散し、死者がでる事態に。

****スカーフ着用めぐり逮捕の女性死亡 抗議で死者3人 イラン****
イランで、頭髪を覆うスカーフの着用方法をめぐり警察に逮捕された女性が死亡したことを受け、抗議デモが広まっている。女性の出身地である西部クルディスタン州のイスマイル・ザレイ・クーシャ知事は20日、同州のデモで3人が死亡したことを明らかにした。

マフサ・アミニさんは、家族と訪れていた首都テヘランで13日、服装規定などを取り締まる「道徳警察」に逮捕され、警察署に連行された。

その後、昏睡(こんすい)状態に陥り病院に搬送され、16日に死亡。警察署で何が起きたのかははっきりしないが、アミニさんの頭部には打撲傷があったとされる。

報道によると、同州では18日、約500人がデモを行い、参加者の一部が車の窓を割り、ごみに放火。警察が参加者を逮捕したり、催涙ガスを使用したりした。テヘランでも19日、デモ隊に対し警察が警棒や催涙ガスを使用した。

同国のファルス通信によると、知事は同州のデモでの死者3人について、死亡日時は明らかにしなかったものの、「敵の企て」により「不審な」死を遂げたと説明。

ディバンダーレで「治安当局が使用していない種類の武器」で1人が殺害され、サケズでは1人の遺体が病院の近くの車の中に置き去りにされた状態で見つかったとした。3人目の死者については詳細に触れなかった。 【9月21日 AFP】
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警察当局はアミニさんが意識を失った理由を「心臓発作」と説明。19日にも改めて暴行を否定し、アミニさんには「5歳の時に脳の手術を受け、以前から身体的な問題を抱えていた」と説明。「警察の対応に問題はなかった」と主張しています。

しかし、アミニさんの父親は19日までに地元メディアに対し、彼女に病歴はなく、逮捕前まで健康上の問題は一切なかったと語っています。

全国各地で数十~数百人規模の抗議集会が開かれ、一部は暴徒化して投石やタイヤの放火に及び、警察車両の窓ガラスが割られることも。
抗議デモは21日も続き、死者も増えています。

****イランの抗議デモ、死者6人に スカーフ巡り女性死亡で****
イランメディアは21日、イランで女性が髪を隠すスカーフのかぶり方が不適切だとして警察に拘束され、死亡したことに対する20日の抗議デモについて、警察関係者1人が南部シラーズで、市民2人が西部ケルマンシャーで死亡したと報じた。一連の抗議デモでの死者は計6人になった。

シラーズでは警察官4人が負傷し、デモ参加者15人が逮捕された。ケルマンシャーでは市民や治安当局者ら計25人がけがをした。

17日から始まった抗議デモはイラン各地に拡大。21日も首都テヘランで市民が抗議活動をし、デモは5日連続となった。【9月21日 共同】
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【大統領・最高指導者は亡くなった女性に寄り添う姿勢を見せて、抗議デモ鎮静化を図る】
ライシ大統領は16日、内務省に徹底した捜査を指示。18日には遺族に電話し、「あなたの娘は私の娘のような存在だ」と哀悼の意を伝え、「何が起きたのかは明らかにされる」と捜査の徹底を約束しています。

最高指導者ハメネイ師の代理人も19日に遺族宅を訪れ、「ハメネイ師も心を痛めている。侵害された権利の擁護のため、すべての機関が行動を取る」と伝えたそうです。

このあたりが、イランに対する欧米の宗教独裁国家イメージとはやや異なるところかも。

確かにイランは最高指導者を頂点とする宗教的権威が最重視される政治であり、今回事件のような宗教的価値観の強制もある社会ですが、一方で、そうした政治体制に批判的で自由を求める国民も多く、保守派とされる指導層も国民からの批判を強く警戒しています。

少なくとも大統領は選挙で選ばれるシステムですから(選挙への体制側の介入はありますが)、国民の批判が拡大すると政治システムが維持できなくなります。その点で、いわゆる民意が重視される民主主義的側面もあります。単なる宗教独裁国家ではありません。

死者は12人なったとの報道も。イランの情報は不透明で何が起きているかよくわからい部分がありますので、実際はもっと多いのかも。「宗教的価値観押しつけからの自由」「警察の横暴・人権無視」に加えて、下記記事が指摘するようにクルド問題が絡んでくると話は更に厄介にも。

****デモ衝突の死者12人 イランの混乱やまず―人権団体****
警察の拘束下での女性死亡を発端とする抗議デモがイラン各地で続き、人権団体によると、治安部隊との衝突などによるクルド人地域での死者は、21日時点で少なくとも12人となった。ロイター通信が報じた。

インターネット上には自動車を燃やすなどして抵抗するデモ隊の動画が相次いで投稿され、混乱がやむ気配は見られない。

女性は少数派クルド人が暮らす西部コルデスタン州出身。頭部を覆うスカーフを適切に着用していなかったことを理由に13日警察に逮捕され、16日に死亡が発表された。

クルド系の人権団体ヘンガウは、コルデスタン州では女性への連帯の意を示すデモに治安部隊が発砲するなどし、死傷者が出る事例が相次いでいると報告している。【9月22日 時事】
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「国家を持たない最大民族」クルド人はトルコやイラクでよく問題になりますが、イランにも多くが暮らしており、その政治行動はイラン当局と対立しています。

【国連総会 イランは欧米側の人権に関する「二重基準」を批判】
折しも開催されている国連総会で、アメリカとイランが核合意再建問題の他、女性の死を受けて人権問題でも批判を応酬する形にもなっています。

****イランと米国、核合意再建・人権問題巡り国連で対立****
米国とイランは21日、国連総会で安全保障や人権問題を巡り対立した。イランのライシ大統領は2015年の核合意への復帰を確約するよう米国に要求。バイデン米大統領はイランに決して核兵器を持たせないと表明した。

ライシ氏は人権分野における一部政府の「二重基準」が人権侵害の 慣行化につながっていると非難。カナダで発見された先住民の墓標のない墓やパレスチナの人々の苦悩、米国で収容された移民の子どもなどに言及した。

イランでは最近、髪を覆うスカーフの着用が不適切として拘束された女性が死亡した事件を受け抗議デモが広がっており、批判をかわす狙いがあるとみられる。

ライシ氏はまた「(15年の核)合意復活に向け、全ての問題を解決しようという偉大で真剣な意志がある」と述べ、「われわれが望むのはただ一つ、約束の順守だ」と指摘。米国が核合意から離脱したことに触れ、「恒久的な合意」を保証する重要性を訴えた。

バイデン氏は核合意復帰への意欲を改めて表明した上で「イランが核兵器を持つことを容認しない」と強調。また、イランのデモ参加者らに同調し、「われわれは基本的権利を守るためにデモに参加しているイランの勇敢な市民、女性たちとともにある」と語った。【9月22日 ロイター】
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【もはや“後がない”核合意再建問題】
一方の、核合意再建問題の方は、一時は“交渉も大詰め”と見られていましたが、結果を出すには至らず、行き詰まりも。

****イランと欧米、核合意巡り平行線 米「国連総会で突破口見えず」****
イランにある3カ所の未申告施設でウランが検出された問題に関する国際原子力機関(IAEA)の調査を巡り、イランと欧米諸国は20日も対立を続けた。

米国のサリバン大統領補佐官(国家安全保障担当)は、今週の国連総会で2015年の核合意再建に向けた突破口が開かれるとは期待していないと述べた上で、米国は合意再建を望んでいると改めて表明した。

フランスのマクロン大統領はこの日、イランのライシ大統領と会談。マクロン氏は会談後、「欧米が正式に設定した条件を受け入れるかどうかイランが回答する番だ」と記者団に述べた。

イランは、核合意再建に向けた提案内容を完全に実行する前に、検出されたウランの痕跡に関するIAEAの調査終了を約束するよう米国に要求している。

欧米諸国はこの要求を拒否し、イランがIAEAに満足のいく回答をしたときにのみ調査は終了すると主張している。

マクロン氏は20日、欧米がIAEAに調査終了を迫ることはないと述べた。

一方、ライシ氏は、イランはIAEAが調査を終了し、2018年に核合意を放棄した米国が再び放棄した場合の影響を制限するための保証を引き続き要求していると語った。

イラン政府によると、ライシ氏はマクロン氏に対し「保証の要求は完全に合理的で論理的な要求だ」と述べ、IAEAが調査を終了することなくイランが合意することは不可能だとの見解を示した。【9月21日 ロイター】
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イラン側は、イランだけが不公平な扱いを受けていると主張しています。
IAEAの調査が続くのは、それだけイランに不審な行動があるためでもありますが。

****核兵器の意図、改めて否定=査察は「不公平」―イラン大統領****
イランのライシ大統領は21日、国連総会で演説し、核開発について「イランは核兵器を製造したり保持したりするつもりはなく、(核兵器は)防衛政策上も存在しない」と表明した。

イランはこれまでも兵器化の意図は繰り返し否定しており、米欧との核合意再建交渉が難航する中、改めてイランの立場を強調して国際社会に理解を求めた。

また、ライシ大統領は国際原子力機関(IAEA)による査察をめぐり「イランで行われている核活動は世界のわずか2%なのに対し、査察の35%がイランで行われている」と主張した。

再建交渉をめぐっては、イランによるIAEAの査察拒否が妥結の障害となっており、「不公平」と訴えることで対応の正当性をアピールした。【9月22日 時事】 
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イランが求めている「保証」は、アメリカで共和党が復権すれば、トランプ前大統領のときと同じように、また合意から離脱し、制裁が復活するという懸念によるもので、それはイランからすれば当然でしょう。

****イラン核兵器保有の土俵際にある核合意再開交渉****
クインシー研究所のパリシイ副所長が、Foreign Affairs誌ウェブサイトに8月26日付けで掲載された論説‘Last Chance For America and Iran’で、現在交渉されているイラン核合意再開交渉で合意すべきであり、米共和党が政権を奪還したら、再開された核合意を廃棄すると公約しているが、そうさせないためには合意の内容をより野心的にする必要がある、と書いている。主要点は次の通り。

・合意への反対者は、新たな核合意はより短期間かつ弱いものだと批判している。確かにイランが核爆弾を製造のために必要な濃縮ウランを得られる期間(ブレイク・アウト・タイム)が当初の合意では12カ月であったが、現在の合意案では6カ月から9カ月に短縮されている。しかし、現時点でイランは数日で必要量の濃縮ウランを手に入れることが可能なので半年というのは遙かにましだ。

・バイデンは2020年の大統領選挙でバイデン候補は、速やかに復帰する旨を公約に掲げていたので、イラン側は米国の核合意復帰を期待していたが、バイデン大統領は核合意復帰を急がず、貴重な数カ月間を、核合意に強く反対しているイスラエル、アラブ首長国連邦、サウジアラビアとの協議に費やす一方、イランとの信頼醸成については気にしなかった。

・イラン政府関係者は、バイデン大統領が、交渉の代わりに対イラン制裁を継続することによって、より厳しい条件をイランに課そうとしていると考え、対抗措置としてウランの濃縮計画を急速に拡大した。21年6月に核合意再開交渉が始まった時には、既に交渉の雰囲気は最悪であった。

・21年8月に就任した保守派のライシ新大統領は、核合意は優先的な課題では無いとして、過去の核合意について見直しを続け、その間もウラン濃縮のための遠心分離機を増設して濃縮ウランの備蓄を増やし続けた。米国側は、イランが事実上の核兵器保有国になるための時間稼ぎをしているとの疑いを強めた。

・米共和党が24年に政権を奪還すれば、再開された核合意を廃棄すると公約しているが、そうさせないためには合意の内容をより野心的にする必要がある。米国が再開された核合意から離脱しない件については、引き続き協議することとし、(米国を含む)全ての合意の当事者が、仮に合意に違反すれば、その対価を払うようにするべきである。

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イランの核合意再開問題は、ボレル欧州連合(EU)外交安全保障政策上級代表が、「最終合意案」を提示したが、案の定、イラン側は、色々とコメントを付けており、交渉を再開して時間稼ぎをしようとしているように見える。交渉が続いている限り、イランは核開発を継続出来る。

更に、問題なのは、8月29日、イランのライシ大統領が、未申告の核物質問題を止めなければ合意再開は難しいと発言したことである。未申告の核物質問題とは、イランが金属ウランを製造していたことついての国際原子力機構(IAEA)の調査の件であるが、金属ウランは、核爆弾の製造に必要不可欠な技術だ。

イラン側は、繰り返し核兵器の保有を否定しているが、核爆弾製造に必要な量の濃縮ウランを備蓄し、IAEAの調査の中止を要求していることは、イランが核兵器を開発しようとしていることを強く疑わせる。

政権交代懸念の米国への対策は
他方、共和党は、24年に政権を奪回すれば、核合意が再開していても廃棄すると公約している由だが、極めて党派的、かつ、無責任と言わざるを得ない。

トランプ政権以来、「過去に例の無い制裁」をイランに課しているが効果を上げていない以上、後は軍事オプションしか残されない様に思われるが、共和党はイランと戦争を行う覚悟があるのだろうか。

上記の記事は、このままでは、たとえ核合意が再開しても2年間しか継続出来ないので、合意を永続的とするために、
(1)米国が再度核合意から離脱する場合に米国にペナルティを科す。
(2)米国・イラン間の経済関係を再開し、米国の経済界にイランとの関係を維持するためのインセンティブを持たせる。
(3)イランと敵対するサウジアラビア等との間に対話を通じて信頼醸成、緊張緩和を進める。
と提言するが、いずれも非現実的と言わざるを得ない。

イランは、既に核爆弾1個を製造に必要な濃縮ウランを備蓄し、半年以内にさらに2個分の備蓄が可能と言われている。

恐らく、濃縮ウランから核爆弾を製造するために必要な金属ウラン製造技術を開発しており、起爆装置の研究も行っている可能性がある。

他方、イスラエルのF-35戦闘機がイランの領空侵犯を繰り返しているという報道があったが、イランの核問題は、いよいよ土俵際に来ているように思われる。【9月21日 WEDGE】
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8月段階の「大詰め」の雰囲気もまた最後を詰め切れずに決裂する可能性が大きくなっていますが、今回決裂すれば、アメリカ・イスラエルにとっては、あとは実力でイランの核開発を阻止するという選択肢しか残らないことにも。世界は新たな厄介の火種を抱えることにもなります。
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イラン核合意再建交渉“大詰め” EUの最終文書提示でイラン・アメリカの回答が出そろう 結果は?

2022-08-25 23:15:25 | イラン
(【8月10日 ARAB NEWS】 8月初旬、ウィーンで再開された核合意再建交渉)

【イラン革命防衛隊のテロ組織指定解除で暗礁に乗り上げたイラン核合意交渉】
イラン核合意のこれまでの経緯に関して超簡単にまとめると以下のようにも。

****イラン核合意 これまでの経緯*****
核合意は2015年に米英仏独露中の6カ国とイランが締結した。イランが核兵器開発につながるウラン濃縮活動を制限する代わりに、欧米側が経済制裁を緩和する仕組み。

18年にトランプ前米政権が一方的に離脱して制裁を再発動し、反発したイランは合意の制限を大幅に超えるウラン濃縮などを進めてきた。

バイデン米政権の発足後、米・イランの両国は21年4月に合意正常化へ向けた間接協議を開始した。

一時は妥結の機運が高まったが、今年2月に核合意当事国であるロシアがウクライナに侵攻し、交渉は中断。6月にカタールで再開したが進展がないまま終了し、8月上旬にウィーンで再開した。【8月25日 毎日】
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上記記事に“一時は妥結の機運が高まった”とあるのは、今年2月、3月段階。
当時は下記のように“今週末にも合意”といった話が出るまでになっていました。

****イラン核合意再建協議、今週末に合意も=ボレルEU上級代表****
欧州連合(EU)の外相に当たるボレル外交安全保障上級代表は4日、2015年のイラン核合意の再建に向けた米国とイランとの間接協議について、今週末に合意に達するかもしれないと述べた。

英国の交渉責任者、ステファニー・アルカク氏もツイッターで間接協議が合意に近づいているとの見解を示した。

ロシアのウリヤノフ在ウィーン国際機関代表は「イランは(米国との)直接会談の準備はできていない」としたものの、「おそらく来週半ばには合意に達するだろう」とした。【3月5日 ロイター】
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その交渉最終段階にきてハードルとなったのが、ウクライナ侵攻で制裁を課されたロシアが、核合意に沿って参画するイランの核関連事業を制裁対象外にすることを求めたことでした。

これについては、アメリカ側が譲歩姿勢をみせて、合意に向けた流れはなんとか維持されました。

****露のイラン核関連事業は制裁対象外 米、核合意妥結へ譲歩姿勢****
イラン核合意の再建に向けた多国間協議をめぐり、米国務省のプライス報道官は15日の記者会見で、ロシアが同合意に沿って参画するイランの核関連事業については、ウクライナ侵攻を受けて発動している対露制裁の対象とはしないと明らかにした。

同協議は妥結間近とされながらも、ロシアが今月に入って自国に科されている制裁の対象からイランとの取引を除外するよう要求したことで停滞。ロシアがこうした除外規定を制裁回避に利用するとの懸念も指摘されていた。

そんな中でバイデン政権は今回、一定の譲歩姿勢を示した格好だ。ラブロフ露外相は同日、米国から「文書での保証」を受け取ったと述べ、協議の進展に前向きな態度をみせた。(後略)【3月16日 産経】
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しかし、イラン側がイラン革命防衛隊(IRGC)のテロ組織指定解除を求めたことで、交渉は暗礁に乗り上げました。

****イラン核合意再建、革命防衛隊のテロ組織指定解除が最後の障害に****
イラン核合意の再建について、複数の外交関係者は、イラン革命防衛隊(IRGC)のテロ組織指定を米政府が解除するかが、交渉の行方を左右するとの見方を示した。

米政府内ではこの問題を受けて核合意再建に反対する声が上がっているほか、IRGCのテロ組織指定解除を公に批判していたイスラエルなどの中東同盟国も反発している。

1年近くにわたる交渉ではほぼすべての意見の対立が解消されてきたが、政府高官らは、この問題でイランとの妥協点を見いだせなければ話し合いが破綻する可能性もあると述べている。

米政府はIRGCが数百人の米国人を殺害したと指摘しているほか、エリート部隊のゴドス軍は中東地域の代理組織やシリアで戦った親イラン勢力向けに兵器などを提供している。IRGCは弾道ミサイル関連のプログラムや、人権侵害疑惑を理由に、長年にわたって米政府から制裁を受けていて、2017年には対テロ制裁リストに加えられた。

米政府高官らによれば、ジョー・バイデン大統領や側近の多くは判断を先延ばしにするのではなく、イランと合意を結んでその後に改善に努めていくことの方がいい選択だと考えている。

ホワイトハウスはまた、イランの核開発プログラムを制限する合意が、中東地域に安定をもたらすカギとなり、これによって政府も中国やロシアに専念することが可能になるとみている。【3月22日 WSJ】
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【8月に交渉再開 EUの最終文書提示でイラン・アメリカの回答・意見が出そろう 内容は不明】
その後はウクライナ問題で交渉も中断していましたが、8月に再開。ただし、あまり期待値は高くありませんでした。

****米国とイラン、核合意建て直しで間接協議再開 事態打開は望み薄か****
2015年のイラン核合意立て直しに向けた米国とイランの間接協議がオーストリアのウィーンで再開された。イランの国営メディアが4日伝えた。

ただ米国、イラン両政府ともこの協議で事態が打開できる公算は小さいとみている。(中略)

(イラン外務次官)バゲリ氏はツイッターで、ボールは米国側にあると主張した上で、米政府は「成熟した態度を示し、責任ある行動を取るべきだ」と述べた。

一方米国家安全保障会議(NSC)のカービー戦略広報担当調整官は4日記者団に「われわれはイランが合意に応じるのをいつまでも待つわけにはいかない。合意実現可能という点で残された時間は非常に短くなりつつあるようだ」と語った。

今年3月、11カ月にわたる間接協議を経て両国は核合意の修正版を巡っていったんは大筋で妥結したものの、その後状況が一転。イラン側が米国に革命防衛隊に対するテロ組織指定解除を要求し、米政府が拒否していることで意見の対立が続いている。【8月5日 ロイター】
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交渉はEUを介した間接交渉で行われていますが、「最後の努力の時が来た」とするEUはイランと米国に「明快で決定的な政治決断」を求めました。

そしてEUは、これ以上変更を加えることはできないとする最終文書を提示。
イラン側は“満更でもない”ようにも。

****イラン、要求満たされればEUの核合意再建案受け入れも=国営通信社****
国営イラン通信(IRNA)は12日、イラン外交官の話として、2015年のイラン核合意の再建に向けた欧州連合(EU)の提案はイラン側の主要な要求が満たされる場合に受け入れ可能だと伝えた。

核合意再建に向けた米国とイランの間接協議が終了した8日、仲介役を務めるEUは合意の最終文書を提示したことを発表。EU高官は、文書にこれ以上変更を加えることはできないとし、数週間以内に当事国から最終決定が得られるとの見方を示していた。

IRNAによると、イランのある外交官は政府がEUの提案を検討中だとし、「セーフガード、制裁、保証の問題についてイランに約束するのであれば受け入れ可能だ」と述べた。

イランは核合意の復活に当たり、将来の米大統領がトランプ前大統領のように合意を破棄しないという保証を求めている。【8月15日 ロイター】
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イランはEU最終文書への回答を示し、「3つの課題が解決すれば数日内に合意が可能」とも。

****イラン、核合意再建「最終文書」に回答 外相は「3つの課題」に言及****
イランは15日、2015年核合意再建に向けて欧州連合(EU)が示した「最終文書」に回答した。EU当局者が明らかにした。ただ、詳しい回答内容は明かさなかった。

イランのアブドラヒアン外相は先に「3つの課題が解決すれば数日内に合意が可能」との見解を示しており、イランが同意か拒否のどちらを回答したとしても、なお変更の余地があることを示唆した。

外相は「われわれはイラン側のレッドライン(越えてはならない一線)を尊重するよう求めた。われわれは十分な柔軟性を示してきた。合意しても40日あるいは2─3カ月後に現場で実現しないようなものは求めていない」と強調した。

米国側はイラン政府が「本題から外れた」要求を撤回して初めて核合意の再建が可能との立場を示している。イランは同国で検知された未解明のウランの痕跡に関する国際原子力機関(IAEA)の調査の停止や、軍事部門「革命防衛隊」の米国のテロ組織指定解除を求めており、これらの要求が念頭にあるとみられる。

アブドラヒアン外相はまた、「交渉が決裂した場合は米国と同様、われわれには代替案がある」と語った。【8月16日 ロイター】
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アメリカ側はイランの回答を慎重に精査、これに対しイランが「アメリカは「先延ばし」しているといる」と批判する展開も。

懸案となっていた「革命防衛隊」のアメリカのテロ組織指定解除については、イラン側が譲歩を示したようです。

****イラン、テロ指定解除の要求撤回 核協議で対米譲歩****
米国務省のプライス報道官は22日、イラン核合意の再建に向けた米イランの間接協議で、イランが軍事組織、革命防衛隊に対するテロ組織指定解除の要求を撤回したと明らかにした。欧州連合(EU)を仲介役にした交渉の主要争点の一つとなってきたが、イランが譲歩を見せた格好だ。

プライス氏は、EUによる妥結案が不十分だとしてイランが今月提出した追加意見も踏まえ「未解決の相違点がいくつか残っている」とも指摘。イラン核開発の制限内容などについて双方の溝が埋まっていないとみられ、合意に到達できるかは不透明だ。【8月23日 共同】
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そして、アメリカもイランの回答に関しの意見を返答。

****米、イラン側に意見返答=核合意再建交渉めぐり****
米国務省のプライス報道官は24日、イラン核合意再建交渉をめぐり、欧州連合(EU)が示した「最終文書」に対するイランの回答に関し、米政府の意見を返答したと明らかにした。イラン外務省も同日、EUを通じて米政府の意見を受け取ったと発表した。

プライス氏は「米側の精査は終了した」と語ったが詳細については触れていない。イラン側は米政府の意見を慎重に検討した上で、EUに伝える方針。【8月25日 時事】 
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イラン、アメリカ双方の回答・意見の内容は明らかにされていませんが、交渉が“大詰め”段階にあるのは確かです。

****核合意正常化へ米が回答 イラン「慎重に検討」 協議大詰め****
イラン核合意の正常化に向けた米国とイランの間接協議で、イラン外務省は24日、仲介役の欧州連合(EU)が8月上旬に取りまとめた最終文書案に対する米国側の回答を受理し、「慎重な検討を始めた」と明らかにした。ロイター通信が伝えた。

イラン側は既に回答を送付している。文書案と各国の回答内容は公表されていないが、協議は大詰めを迎えた模様だ。

ロシアのウクライナ侵攻で資源エネルギー価格が高騰する中、合意正常化によって、原油と天然ガスの主要産出国であるイランへの経済制裁が解除されると、価格引き下げ要因になるとみられる。

ロイターによると、イラン側は精鋭軍事組織・革命防衛隊を米国の「外国テロ組織」指定から解除せよといった要求を示していたが、最終案への回答では取り下げたという。双方が妥協し、協議が妥結するか注目される。(後略)【8月25日 毎日】
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合意が成立すれば、イラン核開発に対し一定の歯止めがかかり、中東の安定化が図られることになります。
もっとも、イスラエルは合意はイランの核開発を隠す隠れ蓑に過ぎないと見ており、“中東の安定”が直ちに実現される訳でもありませんが。

イランは制裁の一定の解除で、困窮する経済の立て直しを図ることが可能になります。
アメリカは中東の安定で、ロシア・中国対応に専念することが可能になります。ウクライナ情勢を受けて進むイランのロシア接近にも一定に歯止めをかけることができます。

【合意成立・イラン産原油の市場復帰の影響】
また、イラン産原油の市場復帰で、ロシア産原油排除の穴を埋めて原油市場を安定化させることができる・・・ひいては、アメリカ国内のガソリン価格高騰の鎮静化にも・・・との期待も。アメリカ・バイデン政権が合意復帰に取り組んできたのも、その石油の話があってのことでしょう。

ただし、世界経済の景気後退で需要減少を心配しているサウジアラビアなど産油国は、イラン原油の市場復帰で値崩れすることを恐れており、イランが復帰するならその分を減産するという動きもあるようです。

****OPECプラス、イラン産原油の市場復帰に合わせ減産も=関係筋****
石油輸出国機構(OPEC)を主導するサウジアラビアは今週、非加盟産油国も含む「OPECプラス」の減産に触れたが、関係筋によると、直ちに減産に踏み切るとはみられず、イランが核合意再建で米欧と合意し、原油の輸出を再開するのに合わせて実現する可能性が高い。

報道によると、サウジのアブドルアジズ・エネルギー相は22日、先物市場の流動性の乏しさとマクロ経済への懸念を背景とする原油安に対応するため、OPECプラスは減産する用意があると述べた。

9人のOPEC筋によると、9月5日に予定されるOPECプラスの会合はあまりにも時期が近いため減産は見送られると想定され、イラン産原油の復帰によって実際に市場の供給量が増えてから減産が必要となる可能性がある。

関係筋の1人は「OPECプラスは(対イラン)制裁解除後のイラン産原油の市場復帰に準備を整える必要がある」と述べた。

イランの現在の産油量は日量260万バレルで、制裁解除後に最大能力の400万バレルに達するまでに約1年半を要するとみられる。関係筋によると、同国はすぐにでも、貯蔵されている原油の一部売却に着手する可能性がある。

OPECプラスは、7月と8月の増産幅をそれぞれ日量64万8000バレルに小幅拡大することに合意。9月については、米国など主要消費国からの圧力を受けて、さらに10万バレル増産することを決めている。【8月24日 ロイター】
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上記のような減産となれば、イラン産原油の市場復帰でも原油価格は直ちには下がらないかも。それでも産油国と言えども需給バランスに抗する形での価格コントロールは容易ではなく、結局は需給バランスが求める均衡点に落ち着くというのが経済原則でもあります。
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イラン  ロシアと接近、中国も加えて反米協調 現実にはロシアとの競合も 実力行使のイスラエル

2022-05-29 22:54:05 | イラン
(5月26日、ギリシャ海運・島しょ政策省の関係筋などは、米国がギリシャ周辺でロシアの運航船に積まれたイラン産原油を押収したと明らかにした。写真は同日、ギリシャ沖で原油の積み替えを受けるイラン船籍のタンカー「ラナ」【5月27日 ロイター】)

【イラン・ロシア・中国で反米協調】
イラン核合意再建協議について革命防衛隊のテロ組織指定解除をめぐって“膠着状態”にあることは、5月16日ブログ“イラン 核合意再建協議は膠着状態、決裂の可能性も 国内では食料品補助金廃止で抗議行動が拡大”で取り上げましたが、その後の動きについてはほとんど報じられていません。「望み薄」との見方も。

****イラン核協議「妥結は望み薄」 米、テロ指定解除を否定****
米国のマレー・イラン担当特使は25日、上院外交委員会の公聴会で、イラン核合意の修復に向けた同国との間接協議について「ひいき目に見ても妥結する可能性は乏しい」と証言した。

イランが合意と無関係な要求をする限り「拒否し続ける。合意はない」と述べ、イランが求める革命防衛隊に対するテロ組織指定の解除に否定的な見方を示した。
 
革命防衛隊はイラン指導部の親衛隊的な性格を持つ軍事部門。2018年に核合意を一方的に離脱したトランプ前米政権が19年にテロ組織に指定しており、合意とは直接の関係はない。指定を巡って間接協議は折り合いがつかず、行き詰まっている。【5月26日 共同】
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こうした欧米との歩み寄りが進展しない状況の結果なのか、あるいは逆に、欧米との歩み寄りを阻害する背景なのかはともかく、このところはイラン同様に欧米の制裁を受けるロシアとの接近が目立ちます。

****ロシアとイラン、石油・ガス相互供給を協議****
 ロシアのノバク副首相は25日、イランと石油・ガスの相互供給や物流ハブの設置について協議したと明らかにした。欧米の対ロシア制裁に対応する措置となる。

同氏はイラン訪問中にロシア国営テレビに対し、何年も制裁下にあるイランの経験について話し合ったと語り、「相互に商品輸送を図るためにイランは主要な物流ハブになり得る」と述べた。

両国間のモノの貿易量は現在の年間1500万トンから数年内に5000万トンに拡大する潜在性があるとの見方を示した。

ロシアがイラン北部にエネルギーを供給し、イラン南部からアジア太平洋地域に石油・ガスを輸出する可能性に触れ、近い将来に合意締結があるかもしれないと述べた。【5月26日 ロイター】
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実際に、イラン産原油を積んだロシア運用の船舶が拿捕されるということも起きています。

****露イラン、原油密輸で協力か ギリシャ拿捕 米没収****
ウクライナに侵攻したロシアに対する欧州連合(EU)の制裁の対象だとして、ギリシャ当局がロシアの運用する船を拿捕(だほ)したところ、イラン産の原油を積んでいたことが判明した。

米国は26日、原油を没収して別の船に積み替え、同国に送ることを決めた。ロイター通信が複数の関係者の発言として報じた。

拿捕された船は「ペガス」で、米国はEU同様、露国防省に関係があるとして制裁対象に指定していた。ギリシャが拿捕したのは先月のことで、ペガスには19人のロシア人が乗っていた。イラン政府は在テヘランのギリシャ大使館の責任者を呼んで抗議した。

ペガスはロシアの侵攻後、船名や船籍が変わっており、ロシアとイランが協力して偽装した疑いがありそうだ。米財務省は今月25日、イランの最高指導者に直属する革命防衛隊の原油密輸や資金洗浄に関与したとして、ロシアに拠点を置く企業などを新たな制裁対象に指定、監視を強める方針を示していた。

核合意の修復を目指すイランと米国の間接協議は休止状態で、両国の対立が深まる可能性もある。【5月26日 産経】
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「敵の敵は味方」ということで、ともに欧米と対立し制裁を受けるイランとロシアが接近するというのは、ある意味自然な流れにも思われます。

【ロシアがイランの天然ガス顧客を奪う動きも】
しかし、現実はもう少し複雑。
イランにしても、ロシアにしても制裁を受けながらの生き残りに必至。自分が生き残るためには・・・

****液化石油ガス、ロシアが値引き輸出 イランから顧客奪う****
ウクライナに侵攻し、米欧から事実上の貿易制限を受けるロシアが主要輸出品の一つ、液化石油ガス(LPG)の値引き販売に乗り出した。アフガニスタン、パキスタンなど、イランの大口顧客が相手だ。

イラン核合意の再建協議でも、ロシアは土壇場で新たな条件を持ち出し、イランへの制裁解除を遅らせている。ロシアとイランの「蜜月」が揺らいでいる。

イランも核開発を理由に貿易制限の制裁を受けている。暖房、調理だけでなく自動車の燃料にも使うLPGの輸出は重要な外貨獲得の手段だ。

だが、イランの石油輸出業界のトップは地元紙に「アフガニスタンに1トン約600~700ドル(約7万7000~8万9000円)で販売していたが、最近では450ドルへの値下げを求められる」と打ち明ける。

ロシアの安値攻勢はカザフスタン、ウズベキスタンといったほかのガス供給国にも値下げを迫る。

統計サイトのワールドメーターによると、(メタンが多く液体が生じない)乾性の天然ガスをイランは年9兆立方フィート(約0.25兆立方メートル)生産する。米国、ロシアに次ぎ世界で3番目に多い。このうち3分の1程度を輸出する。

イランがガスを販売する契約を結ぶ相手はイラク、トルコ、アフガニスタン、パキスタンだ。アゼルバイジャンとはガスのスワップ取引の契約がある。その中で、長期の顧客になりそうなのはイラクだけだと複数のアナリストは指摘する。

イラン国営ガス会社(NIGC)のトップは5月中旬の記者会見で、イラクがガス購入契約の更新を求めていると明らかにした。一方、現在の契約が間もなく失効するトルコとは新たな年間契約を巡る交渉を続けていると説明した。

イランのジャーナリストは最近、ロシアがトルコへのガス供給を想定し、これから3年間、トルコのガスタンクを借りる契約を結んだという業界情報をツイッターに投稿した。これが事実ならば、イランのガス輸出には打撃となる。

NIGCのトップは日本経済新聞に対し、トルコやアフガニスタンのような顧客をロシアに奪われる可能性を否定しなかった。「効率よく安いエネルギー資源を確保する自由はどの国にもある」と述べ、仮に顧客を失っても仕方がないという姿勢をみせた。

米欧がロシア産の原油や天然ガスの輸入を停止あるいは制限する制裁を発動することで、イランは核合意の再建交渉が前進すると期待した。米国がイランに歩み寄って核合意の枠組みに復帰し、イランに科していた制裁を解除して石油や天然ガスの輸出拡大を容認すると見込んだからだ。

ところがロシアは3月、核合意の再建交渉をまとめる条件として、同国への制裁をイランとの貿易・投資に適用しないよう米国に迫った。交渉の妥結後、イランへの制裁がある程度、解除されることを見越しての対応だ。米国は応じず、交渉は宙に浮いている。国際社会でイランはロシアを頼りにしていたが、いまは、いら立っている。

イラン核合意は同国の核開発を抑制するのが目的だ。2015年、米国、英国、フランス、ドイツ、ロシア、中国の6カ国がイランとまとめた。18年、トランプ政権だった米国が離脱を表明すると、ロシアは中国とともにイラン寄りの姿勢を示した。【5月25日 日経】
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互いに利用しようという動きと、相手を押しのけてでも・・・という動き。
イラン国営ガス会社が“仮に顧客を失っても仕方がないという姿勢”というのは、国家としてはロシアとの協調を重視する意思決定がなされているということでしょうか?

イラン・ロシアの協調に、同じくアメリカと対立する中国も加われば、反米協調の出来上がりです。

****露、イランに接近 市場拡大、中国含め反米協調狙う****
ロシアが経済を中心にイランとの関係強化を進めている。ウクライナに侵攻したロシアは米欧の強力な制裁で経済が疲弊しており、イランを自陣に引き留めて市場拡大につなげる狙いがうかがえる。

米欧がウクライナでの戦闘への対応で忙殺される裏側で、ロシア、イランに中国を含めた反米3カ国が連携を強めている可能性も否定できない。

ロイター通信などによると、露のノバク副首相は25日、イランの首都テヘランで同国の高官と協議し、協力強化を盛り込んだ複数の文書に署名した。ノバク氏は侵攻後、米欧など「非友好国」の対露圧力が強まったため、「イランとの関係発展の必要性が高まった」と述べた。

イランでは干魃(かんばつ)による不作が続いており、露は小麦など穀物500万トンをイランに供給する見通しだ。核開発問題で米国の制裁を受けているイランの高官は、外貨を介さず、両国の通貨で決済を行うことに意欲を示した。

ノバク氏は、露がイランにエネルギーを供給し、イランは南部の港からアジア諸国に原油・天然ガスを輸出する枠組みでも近く合意するとの見通しを述べた。イランは米制裁で原油輸出が禁じられているが、中国は非公式にイランから原油を購入して同国の経済を支えている。

一見不可解なこの枠組みからは、欧州が依存脱却を進めて行き場を失う露産原油をイラン経由で搬出する狙いさえちらつく。

露とイランはすでに、協調して原油の不正取引を行っている疑いもある。ギリシャ政府が先月、同国近海で停船を命じた船にはロシア人約20人が乗っていたが、イラン産原油を積んでいたことが判明。同船は露の侵攻後、船籍や船名を変えて偽装を図ったとみられ、米国は監視を強化する方針を打ち出している。

露の侵攻で原油は高値傾向が続き、中国という〝販路〟を持つイランは、核合意を修復して対米関係を改善することへの意欲を失っていると指摘される。

昨年、25年もの長期に及ぶ包括的な協力協定をイランと結んだ中国と違い、露は近年、イランとの間で目立った協力強化を打ち出してこなかった。侵攻後のイランへの接近は、露が制裁で深刻な影響を受けていることを示すとともに、中国とイランを頼りにそのダメージの緩和に動いている可能性を示している。【5月27日 産経】
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アメリカは欧州ではNATOの同盟関係でロシアに対抗し、アジアではクアッドやAUKUS、更にはIPEFといった枠組みで中国包囲網を形成しようとしていますが、ロシア・中国更にイランが協調する形で欧米主導の枠組みに対抗する・・・そういった情勢にもなりつつあるようです。

【きな臭いイスラエルの動き】
イランにとって、アメリカ同様に・・・というか、アメリカ以上に厄介な“天敵”が、イラン核開発を絶対阻止する構えのイスラエル。アメリカはその影響を考えて直接的な実力行使には慎重ですが、イスラエルは手段を選ばず実行します。

イスラエルは、核合意などイランの時間稼ぎに過ぎないと眼中にありません。“実力”で核開発を阻止しないと・・・という立場です。

****革命防衛隊大佐を射殺=首都自宅前、イスラエル関与か―イラン****
イラン国営メディアによると、精鋭の「革命防衛隊」の大佐が22日、首都テヘラン市内の自宅前で何者かに射殺された。実行主体は不明だが、イラン側は殺害の手口から敵対するイスラエルなどの関与を疑っているとみられ、何らかの報復によって緊張が高まる恐れもある。
 
報道によれば、殺害されたハッサン・サイアド・ホダイ大佐は車で自宅に着いた際、オートバイ2台に分乗した何者かから銃弾5発を受けて死亡した。革命防衛隊は「反革命勢力のテロで暗殺された」と非難した。同大佐は革命防衛隊で対外工作を担うコッズ部隊に所属し、シリアなどでの戦闘歴があるという。
 
革命防衛隊は大佐暗殺に先立ち、イスラエル諜報(ちょうほう)機関とつながりがある集団を摘発したと発表していた。「窃盗や破壊行為、誘拐」などの容疑を主張しているが、殺害事件との関連性は不明だ。【5月23日 時事】 
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****イランの大佐暗殺に関与=イスラエルが米に伝達―NYタイムズ****
米紙ニューヨーク・タイムズ(電子版)は25日、イラン革命防衛隊の大佐が自宅前で何者かに射殺された事件で、イスラエルが暗殺への関与を米側に伝えていたと報じた。

イランは当初からイスラエルの関与を疑っており、ライシ大統領は「偉大な殉教者が流した血に対し、報復は避けられない」と宣言していた。
 
大佐は革命防衛隊で対外工作を担うコッズ部隊に所属していた。同紙が情報当局者の話として伝えたところによると、イスラエル側は、コッズ部隊の中で外国人の拉致や暗殺を担う秘密部隊「840ユニット」の活動に警告を発するために殺害したと説明したという。【5月26日 時事】 
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イランのライシ大統領は「間違いなく報復する」と報復を確約しています。

****イラン大統領「間違いなく報復する」 革命防衛隊の大佐暗殺****
(中略)イランのライシ大統領は23日、国際的組織が関与した暗殺だと非難し、「間違いなく報復する」と述べた。複数のイランメディアが伝えた。(後略)【5月23日 産経】
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その「報復」より先に、イスラエルによるイランの研究施設攻撃が報じられています。

****ドローンでイラン軍研究所攻撃か=イスラエル関与濃厚―米紙****
米紙ニューヨーク・タイムズ(電子版)は27日、イランの首都テヘラン近郊パルチンにある国防軍需省の研究施設で25日に起きた「事故」について、イラン国内から飛び立ったドローンによる攻撃だったと伝えた。

ドローンが建物内に突っ込んで爆発したとみられ、その手法からイスラエルの関与が濃厚という。【5月28日 時事】
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イランは欧米制裁によって経済苦境にあり、食料品価格高騰をめぐって国内にデモや混乱が起きています。食料品価格を落ち着かせるためにはロシア・中国との関係だけでは不十分でしょう。
アメリカはロシア産石油の禁輸で同盟国の足並みをそろえ、エネルギー市場を安定化させるためには、イラン産石油が欲しいところ。

そうした両者の歩み寄りを促す事情もありますが、ここのところ目立つのは上述のようなロシア・中国との協調、あるいはイスラエルとの衝突といった離反の流れです。

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イラン核合意再建協議大詰め アメリカは今月中にも交渉の継続に見切りをつける方針

2022-02-07 23:06:04 | イラン
(イラン核合意再建に向けた協議 2021年12月撮影【1月21日 ロイター】)

【国内経済は物価上昇や高失業率など厳しい状況が続く】
欧米による経済制裁に苦しむイラン国内状況については最近ほとんど情報を目にしません。

やや古い記事になりますが、昨年11月段階のJETROによれば、GDP成長率は比較的堅調だったものの、前年同月比で50%台後半~60%を超えるような物価上昇や11%前後の高失業率 など厳しい状況が続いているようです。

****イラン経済状況*****
2020年のイランの実質GDP成長率は、米国による経済制裁や新型コロナウイルス感染症拡 大の影響を受けつつも、1.5%のプラス成長となった。一方で、国内経済は物価上昇や高失業率など厳しい状況が続いている。(中略)

■プラス成長も、インフレなど混乱が続く国内経済  
(中略)世界銀行はプラス 成長の背景について、イラン経済が過去 2 年間で既に12%も縮小していたことから、新型コロナによ る生産の損失が他国ほど顕著ではなかったとしている。

また、通貨リアルの下落により国内生産品の 競争力が高まり、製造業が非石油部門の回復を牽引し、特に第 3 ~ 4 四半期は、石油部門と非石油部 門ともに予測よりも景気回復が進んだとしている。  

為替レートは、市場レートが2020年10月18~19日に 1 ドル=31万9,000リアルとなり、 1 ドル= 4 万2,000リアルの公定レートとの乖離が約7.6倍にまで広がった。(中略)

通貨下落の結果、輸入価格の上昇などのインフレ圧力が高まり、イラン統計センターが発表した 2020年度(2020年 3 月20日~2021年 3 月20日)の消費者物価上昇率は、通年で36.4%となった。

2020 年は特に後半以降に大きく上昇し、2020年 9 月以降は40%超で推移した。2021年に入ると 6 月まで40%台後半が続き、 7 月23日~ 8 月22日も43.2%と、引き続き高い値となっている。特に2020年11月ご ろからは食品・飲料品の値上がりが激しく、前年同月比で50%台後半~60%を超える月が続いている。  

(中略) 2021年 8 月 5 日には、穏健改革派のハサン・ローハニ大統領に代わり、保守強硬派のイブラーヒー ム・ライーシー大統領が就任した。汚職撲滅や新型コロナ対策に加え、インフレの抑制と人々の生活保障を新政権の最優先事項として強調している。

新型コロナ拡大は、人との接触の多いサービス業な ど、多くの労働集約的な仕事や収入に深刻な影響を与えている。IMFは2020年の失業率を10.8%、 2021年は11.2%と推計(2021年 4 月時点)しており、経済状況の改善が喫緊の課題となっている。【2021年11月24日 JETRO】
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物価上昇や高失業率の一方で、賃金は上がらない・・・ということで、国民の不満も高まっているようです。

****教職員の抗議デモ(イラン)*****
イランでは、確か数年前に各種職能組合が抗議デモデモまたは座り込み等を行い、その中には教職員組合も含まれていたように記憶しますが、al sharq alawsat net は31日、首都テヘランの他複数都市で教職員による経済情勢に対する抗議のデモがあったと報じています。

記事によるとテヘランでは、彼等は議会の前に集まり、政府及び議会の空約束に抗議したとのことですが、その他特にイスファハン及びシラズでは多くの教員が、文部大臣の罷免を要求したとのことです。

彼らはイランのインフレ率が60%にもなるのに給料等が上がらないことに抗議している由【2月1日 「中東の窓」】
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【停滞する核合意再建協議】
こういう経済情勢にありますので、反米・保守強硬派のライシ大統領としても、核交渉において何とか制裁解除を取り付けたいという思いは強いでしょう。

トランプ前大統領が合意から離脱したアメリカとイランの間を他の参加国とEUが仲介する形で協議が行われています。

協議が決裂すれば、核開発再開の勇ましい動きとは裏腹に、国内的には制裁継続で市民生活困窮が続き、政権を揺るがす不満爆発にもなりかねません。

ただ、反米・保守強硬派としても立場というか、メンツもありますので、一方的譲歩はできません。

逆に、アメリカから譲歩を引き出し、経済回復の流れを作ることができれば、ライシ大統領はかねてより囁かれているハメネイ師の後継たる次期最高指導者への道もひらけることになります。

そんなこんなの状況で行われているイラン核協議ですが、進んでいるのか、動きがないのか・・・よくわからない状況。

よくわからないのは当事国も同様なようで、欧米側にはこれ以上の引き伸ばしには応じられない、もう決着を着けないと・・・という苛立ちもあるようです。

先月20日段階で、「このような遅々としたペースで協議を継続することはできない」「2月は間違いなく決定的な月になるだろう」との声が出ていました。

****核合意再建協議、数週間以内に「決定的」局面迎える=欧米高官****
米国および欧州の高官は20日、イラン核合意再建に向けた米イラン間接協議について、今後数週間で「決定的な」局面を迎えるとの見方を示した。

ブリンケン米国務長官はベルリンで英仏独の閣僚と会談。その後の記者会見で「われわれはまさに決定的な瞬間にいる」とした上で、緊急性は高まっており、今後数週間のうちに核合意の相互順守に戻れるかが決まるとの見解を示した。

また、ドイツのベーアボック外相は「協議は今、決定的な局面を迎えており、極めて緊急に進展が必要だ。そうでなければ核不拡散という重要な問題に十分な付加価値をもたらすような合意に達することはできない」と語った。

フランスのルドリアン外相は核合意再建協議の進展は限定的とし緊急性を強調。「部分的かつゆっくりとした進展が見られるが、イランによる核開発が急速に進む中で、このような遅々としたペースで協議を継続することはできない」と述べた。

フランスの外交筋は、進展は見られたが「協議の中心にある」最も重要なテーマはカバーされていないと指摘。「アプローチを変える必要がある。2月は間違いなく決定的な月になるだろう」とし、現在のような状況を5月まで続けるつもりはないとした。【1月21日 ロイター】
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1月28日には協議は一時中断となり、交渉参加各国がそれぞれ論点を持ち帰って検討することに。

【アメリカ側の動きもあって、交渉継続か否か、大詰め段階に】
2月4日、米国務省高官は対イラン経済制裁一部免除の「復活を決めた」と明らかにしましたが、イラン側は「不十分だ」としています。

****イラン制裁の一部免除復活=米、核合意再建へ詰め****
米国務省高官は4日、対イラン経済制裁一部免除の「復活を決めた」と明らかにした。これにより欧州や中国、ロシアの企業が、イラン国内の核燃料の搬出事業などに参加することが再び可能となる。この免除措置はトランプ前政権が2020年に更新を終了させていた。
 
国務省高官は、今回の決定について「イランにおける『核不拡散』の活動に第三者を関与させられる」と指摘。「最終局面にある核合意再建交渉で必要な技術的議論を促すことになる」と説明した。
 
一方で、核合意再建に向けて相互理解に達しつつあることを意味しないと指摘し「イランへの譲歩ではない」とも強調した。【2月5日 時事】
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****米、イラン制裁免除を復活 イラン外相「不十分」****
イランのアブドラヒアン外相は5日、イラン関連制裁の免除を復活させる米国の動きは不十分だと指摘し、2015年のイラン核合意立て直しに向けて米国は政治や経済などの分野で保証を提供すべきだと述べた。(中略)

イラン国内メディアが伝えたところによると、アブドラヒアン外相は記者団に「紙に書かれている内容は良いが、十分ではない」と指摘。

核合意立て直しに向けたウィーンでの協議における主要問題の一つは、「西側諸国から義務を果たすという保証を得ることだ」と述べた。「われわれは、政治、法律、経済の分野で保証を要求している。一定の合意は既になされている」と語った。【2月7日 ロイター】
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イラン側は「不十分」としてはいますが、一応の「動き」が出たことで、これで合意の方向に向かうのか否か、ダメなら「見切り」の声も取り沙汰されるなかで、協議は大詰めを迎えているようです。

一時中断した交渉は8日に再開される予定です。

****イランとの核協議が山場に 米国は今月中にも「見切り」か****
核合意の復活を探る米国とイランの間接協議が山場を迎える。イランが核開発の制限に合意し、交渉が妥結するのか、決裂して米国が圧力を強めるのか。米国側は、今月中にも交渉の継続に見切りをつける方針だ。
 
米国とイランの代表団はウィーンで間接協議を続けてきたが、1月末に一時帰国して今後の方針について検討を進めている。イラン外務報道官は7日の定例会見で「8日にウィーンに戻って協議を再開する予定だ」と明らかにした。協議の再開後、数週間の内に結論を出すとされる。
 
イランのアブドラヒアン外相は5日、地元メディアに「米側から具体的な保証を必ず得る」と述べた。イランでは昨年8月に保守強硬派のライシ政権が発足。11月末、5カ月ぶりに協議の場に戻ると、米国に強く譲歩を迫ってきた。
 
イランは米国に対し、トランプ前政権が科したすべての制裁を一斉解除することに加え、核合意が復活した後の経済的な利益が確保されることや、米国が合意を二度と破らない確約といった「保証」を求めてきた。
 
核合意は2016年1月、イランと米英仏独中ロが履行した。しかし、18年5月にトランプ前政権が一方的に離脱し、イランへの経済制裁を再開。イラン側は19年5月から核合意の制限を超える核開発に着手した。昨年4月には、核兵器の原料になるウランを濃縮度60%まで高めた。
 
昨年1月に就任したバイデン米大統領は核合意に復帰する意向で、4月に間接協議が始まった。米イランの間を核合意の他の参加国と欧州連合が仲介する。
 
しかし、双方の条件がかみ合わず、協議は年越しに。米政府高官は先月末、「交渉の期限は数週間しか残されていない。イランは政治的な決断が必要な時だ」と促した。合意に応じない場合には「経済、外交、その他の手段によって圧力を強めることが必要になる」と警告した。
 
協議の行方は事実上、イランの要求次第となりそうだ。テヘランの外交筋は「イランは自らに非がないと認識しており、譲歩する姿勢を見せれば、米側に貸しがつくれると考えているだろう」と話す。
 
イランは制裁の影響で物価の高騰や若年層の高失業率といった課題に直面する。核合意の復活を経済再建の足がかりにできれば、最高指導者ハメネイ師の後継者の最有力候補でもあるライシ大統領にとって大きな実績になる。【2月7日 朝日】
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イラン  アゼルバイジャンとの緊張、背後にいるイスラエルを意識か イラン国内でサイバー攻撃

2021-10-31 23:23:52 | イラン
(【10月31日 朝日】)

【ナゴルノ・カラバフ紛争でのアゼルバイジャン勝利の陰にイスラエル製兵器】
10月27日ブログ“ウクライナ ナゴルノ・カラバフ紛争で威力を発揮したトルコ製AIドローンで親ロシア勢力を攻撃”で、“ナゴルノ・カラバフ紛争で威力を発揮したトルコ製AIドローン”について取り上げましたが、実際トルコ製ドローンがどういう役割を担ったのか、書いていて私自身よくわからない部分もあったので、その点について追加・補正します。

結論から言えば、トルコ製AIドローンが威力を発揮できたのは、その前段階にアゼルバイジャンがイスラエル製対レーダー自爆突入機を使ってアルメニアの防空システムを破壊したことが戦略的勝因だったとのこと。
“第二次カラバフ戦争の防空網制圧ドローン戦術”【2020年12月11日 JSF氏 YAHOO!ニュース】

先ず、旧式の複葉輸送機アントノフAn-2を大量に無人で飛ばして敵陣に突っ込ませ(パイロットは途中でパラシュート脱出)アルメニアの防空網に迎撃を行わせて地対空ミサイル(SAM)のレーダーを発信させて布陣された位置を確認。

次に、レーダー波を感知して自爆突入するイスラエルIAI社製「ハーピー」「ハーピーNG」「ハロップ(ハーピー2)」という徘徊型兵器である対レーダー自爆突入機を送り込み、アルメニア側の防空システムを自爆攻撃で破壊。

そのあとに、トルコ製AIドローンのバイラクタルTB2が敵陣を攻撃したとのこと。

“バイラクタルTB2は第二次カラバフ戦争で最も多くの戦果を挙げました。ただし飛行性能はセスナ機と同程度の速力のプロペラ機であり中高度を飛ぶ運用なので、強力な敵防空網が生きている場所では満足な活動はできません。つまりバイラクタルTB2の戦果は事前に行われた防空網制圧の対レーダー攻撃があればこそだったのです。”【同上】

“この囮を使う戦術は過去にアメリカ軍が何度か行っているものであり、今や定番とも言える方法”【同上】だそうです。

軍事的知識が全くありませんのでよくわかりませんが、アゼルバイジャンの勝利はトルコ製ドローンだけでなく、イスラエル製対レーダー自爆突入機の成果でもあったそうです。

なお、使い捨てとなるイスラエル製対レーダー自爆突入機は1機あたり数千万円~1億円近くするそうですが、“アゼルバイジャンはカスピ海油田を擁する産油国であり購入資金があったこと、その油田の大口顧客がイスラエルであり関係が深いアゼルバイジャンはイスラエル製のハーピーやハロップを大量購入することができたことなどが作戦成功の下地にあったと言えます。”【同上】とのこと。

【イスラエルと関係が強いアゼルバイジャンとイランの間の緊張】
なるほどね・・・ということで、上記のアゼルバイジャンとイスラエルの関係を前提にして、(イスラエルと犬猿の仲の)イランとアゼルバイジャンの間で緊張が高まっているという次の記事です。

****イラン、隣国へ不信感 アゼルバイジャンが検問所****
イランが北に接するアゼルバイジャンへの不信感をむき出しにし、軍事的な圧力を高めている。背景には宿敵イスラエルの存在がちらつく。
 
イランは北西部のアルデビル州や東アゼルバイジャン州などでアゼルバイジャンに接する。国境沿いのいくつかの街では夏以降、トラックが長蛇の列をつくる異様な光景が度々目撃されているという。アルデビル州アルデビルの70代女性は「数キロぐらい連なって止まっていた。見たことのない不思議な状況だった」。
 
発端は8月、東アゼルバイジャン州ヌルドゥズとアルメニアの首都エレバンを結ぶ道路の一部区間に、アゼルバイジャンが検問所を置き始めたことだ。
 
全長約400キロのうち、検問所ができた区間は約20キロ。イランから荷物を運ぶ運転手たちは突然、通行するための許可証や「税」を求められることになった。9月には、イラン人運転手2人が検問所で拘束される事態も起きた。
 
アルデビル州からエレバンへ向かう際も同じ区間を通るため、各地の国境地点で大渋滞を引き起こすことになった。

 ■イスラエルの関与、意識
背景には昨年、アゼルバイジャンとアルメニアが争うナゴルノ・カラバフ地域をめぐる軍事衝突がある。
 
同地域はアゼルバイジャン領だが、アルメニアが1991~94年の軍事衝突後、周辺地域を含めて実効支配してきた。
 
だが、昨年の軍事衝突でアゼルバイジャンが勝利し、地域の4割などが支配下に戻った。その中に20キロの区間が含まれていた。
 
アゼルバイジャンの対応にイランは不満を強める。
 
10月1日、アゼルバイジャンとの国境近くで大規模な軍事演習を実施。陸軍司令官は、「この地域に安全保障上の邪魔者がいる」と語った。
 
アゼルバイジャンを意識した発言だが、イスラエルの関与にも神経をとがらせている。
 
昨年の軍事衝突をアゼルバイジャンが制したのは、最新鋭ドローン(無人機)の存在が大きく、その多くはイスラエル製とされる。
 
ストックホルム国際平和研究所によると、アゼルバイジャンにとってイスラエルは過去30年間でロシアに次ぐ2番目に多い兵器の調達先だ。
 
イランとの国境線は760キロに及び、米シンクタンクの中東研究所はアゼルバイジャンがイスラエルに、対イラン作戦の「足場」を提供していると指摘する。
 
イランでは昨年11月以降、著名な核科学者が暗殺されたり核施設が破壊されたりし、イラン側はいずれもイスラエルの犯行だと非難する。
 ナ
ゴルノ・カラバフをめぐる紛争では、イランも紛争地域から飛来した爆発物で被害を受けた。イランは当事国に沈静化を呼びかけたが、昨年11月の停戦合意はロシアが主導するなど、影響力には限界が見えた。

 ■不安定化リスク、解消急ぐ
アゼルバイジャンも黙っていない。
 
9月12日には、トルコやパキスタンと合同で軍事演習を実施。アリエフ大統領は10月15日、昨年の軍事衝突を振り返るなかで、検問の強化に触れ、「イランからアルメニア、欧州に至る薬物の密輸ルートを封鎖した」と主張した。
 
在テヘランの外交関係者は「アゼルバイジャンを舞台にイランとイスラエルの対立が激化すれば、ロシアやトルコを巻き込み、不安定な状況が広がりかねない」と懸念する。
 
ナゴルノ・カラバフ地域の地位問題は未解決で、軍事衝突の再燃は今後も常に起こりうる。イランは安全保障上の「空白地域」との認識で対応を急いでいる。【10月31日 朝日】
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アゼルバイジャンがナゴルノ・カラバフ紛争勝利の余勢をかってイスラエルと連携して対イラン圧力を強めると、アゼルバイジャン・イスラエルとイランの衝突、更にそこにトルコ、ロシアも加わって・・・という危険性も。

【イランのドローンに対する米制裁】
なお、ドローンに関してはイスラエルは高い技術力を有しますが、イランもタンカー攻撃に使ったり、レバノンのイスラム武装勢力ヒズボラなどに供与したりと、大いに“活用”している国です。

そのことにアメリカは制裁を発動して警戒しています。

****対イラン制裁発表 タンカーへの無人機攻撃関与 米財務省****
米財務省は29日、中東オマーン沿岸で7月に発生したイスラエル系企業運航のタンカーに対する無人機攻撃などに関与したとして、イラン革命防衛隊の無人機部隊司令官ら4人と関連企業2社を制裁対象に指定したと発表した。米国内の資産が凍結され、米国人との取引が禁じられる。(中略)

米財務省によると、無人機部隊司令官は2019年にサウジアラビアであった石油施設への攻撃にも関与したという。関連企業2社などは革命防衛隊の無人機攻撃への兵器供給や部品調達に関わったとしている。(後略)【10月30日 毎日】
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上記制裁理由には、ヒズボラへのドローン供与も含まれています。

****米、イランのドローン提供巡り新たに制裁 イラン側は非難***
米財務省は29日、イラン革命防衛隊がレバノンのイスラム教シーア派組織ヒズボラなどイランが支援するグループに無人航空機(UAV)やドローン(小型無人機)を提供し中東地域の安定を脅かしているとして、イランに関連する新たな制裁措置を発動した。

アデイエモ副長官は「イランによる地域全体へのUAV拡散は国際的な平和と安定を脅かす」と指摘。「財務省は引き続きイランの無責任かつ暴力的な行動の責任を追求していく」と述べた。(中略)

これに対し、イラン外務省のハティーブザーデ報道官は国営メディアで「新たな制裁措置は核合意再建協議を再開する意向を示しながら制裁を続けるホワイトハウスの完全に矛盾した行動を反映している」と非難。ドローン提供プログラムは防衛目的とした。【10月30日 ロイター】
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【11月から核合意協議再開】
上記のような“不協和音”を伴いつつ、イランにとって最大課題である核合意問題の交渉は11月から再開させることにはなっています。

****イラン、11月末までの核協議再開に同意****
イランの核開発をめぐる協議のイラン側の交渉責任者、アリ・バゲリ・カーニ氏は27日、ツイッターで、イランは11月末までに核協議を再開することに同意したと明らかにした。

バゲリ・カーニ氏はこの日、ベルギーの首都ブリュッセルで欧州連合(EU)のエンリケ・モラ欧州対外活動庁事務次長と会談。6回の会合を経て6月に中断した核協議の再開について話し合った。

イランは中断前、オーストリアの首都ウィーンで中国やドイツ、フランス、ロシア、英国と協議を重ね、米国とも間接協議を行っていた。

交渉の目的は「包括的共同行動計画(JCPOA)」の正式名称で知られる核合意を復活させることにある。イランはこの合意の下、経済制裁の解除と引き換えに核開発を制限することに同意した。

だが、トランプ前米大統領が2018年に核合意から離脱し、「最大限の圧力」政策で新たな厳しい制裁を科したのを受け、イランは合意の履行を停止。バイデン現政権はイランの協議復帰を継続的に求めてきたものの、先月にはイランが核開発を続けて交渉に復帰しない場合に備えた対応策を練っていると述べていた。

イランのライシ大統領は9月の国連総会演説で、イランは核兵器を追及しておらず、米国には核合意から離脱した責任があると主張。まず米国側が制裁解除により核合意の義務を履行すべきだと強調した。【10月28日 CNN】
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核開発停止と制裁解除、双方が「相手が先に」という対立状態が変わった訳ではないようですが、協議再開で双方の譲歩が実現するのかは不明です。

【アメリカ 「あらゆる手段検討」と圧力】
アメリカは強硬手段もちらつかせて、イラン側の譲歩を求めて圧力を強めています。

****米国務長官、イラン核開発に対し「あらゆる手段検討」****
ブリンケン米国務長官は13日、イランが核合意に復帰することが困難となった場合は「(イランの核開発などに対し)あらゆる選択肢を検討する」とイランをけん制した。核合意再建に向けた交渉への早期復帰を強く促した形。首都ワシントンでイスラエル、アラブ首長国連邦(UAE)両外相との3者会談後、共同記者会見で述べた。
 
ブリンケン氏は「イランの核兵器保有を決して許さないという立場をイスラエルと共有している。外交的手段が最も効果的だ」と強調した。

しかし、イランはウラン濃縮度を引き上げるなどの核開発を続けており、核合意維持でも「合意の利益を取り戻せない時点に近づいている」と指摘。「残された時間は限られている。イランには外交的な解決に対する意欲がみられない」と批判した。
 
イスラエルのラピド外相は「イランは核兵器保有の直前まで来ている。我々は、悪から世界を守るために国家が武力行使しなければならない時があることを知っている」と、強硬手段に出る可能性にも言及した。
 
イランの核開発を制限する核合意を巡っては、トランプ前政権が一方的に離脱した後、バイデン政権は欧州連合(EU)などを仲介役にイランと間接的に協議していた。しかし、イランで反米保守強硬派のライシ師が大統領選で当選した6月以降、協議は中断している。【10月14日 毎日】
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【イラン国内でサイバー攻撃 米・イスラエルか、反政府勢力か・・・不明】
強硬手段には、イスラエルによりイラン核施設への攻撃などほかに、以前アメリカとイスラエルが行ったサイバー攻撃みたいなものも含まれるのでしょう。

そのサイバー攻撃に関して、イラン国内でサイバー攻撃が行われてガソリン販売システムが混乱しました。

****イラン、ガソリン販売システムにサイバー攻撃 各地で長蛇の列****
イラン国営メディアによると、ガソリンの販売システムがサイバー攻撃を受け、各地のガソリンスタンドに長蛇の列ができた。

国営放送IRIBは「サイバー攻撃により、ガソリンスタンドの供給システムで障害が発生した」と報じた。イラン石油省が運営するシャナ通信によると、影響を受けているのはスマートカードを利用した割安価格のガソリン販売で、高価格のガソリンの販売は影響を受けていない。

ソーシャルメディアに投稿された動画によると、サイバー攻撃を受けたとみられる街頭の電光掲示板に「ハメネイ、ガソリンはどこに行った?」などのメッセージが表示されている。

ロイターはこうした画像の信ぴょう性を確認できていないが、メヘル通信は、一部の電光掲示板がハッキング行為を受けたと報じている。

イランでは2019年11月に燃料価格引き上げに抗議するデモが発生。同デモでは死者も出た。【10月27日 ロイター】
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“詳細は明らかではないが、攻撃は米国、イスラエル、または様々な地元のイランの反政府勢力から来たとの憶測がある。”【10月26日 VOI】

アメリカ・イスラエルによる「圧力」の一環の可能性もありますが、上記【VOI】によれば、反政府勢力の可能性について以下のようにも。

****大規模なサイバー攻撃を経験し、イランのガソリンスタンドネットワーク麻痺****
(中略)しかし、ここ数ヶ月、アマチュアハッカーは洗練されたランサムウェアやその他の攻撃で米国とヨーロッパの大国に大きな問題を引き起こし、ハメネイのリーダーシップはイランの多くの少数民族から多くの地元の敵を持っています。

8月、チェックポイント・ソフトウェア・テクノロジーズは、インドラというイランの反体制派グループが7月9日にイスラエルではなくイランの列車システムに対してメガハックを実行したという報告書を発表した。

チェックポイントは、インドラのイランの鉄道システムのハッキングは「1つのグループが重要なインフラに混乱を引き起こす方法の世界中の政府への例」であると言いました。

これらの攻撃について珍しいのは、非国家組織が国家レベルでイランの物理的インフラに損害を与えていることだ。非国家グループは、伝統的にウェブサイトやデータをハックする以上のことを行う能力を欠いていると考えられていますが、これは現実世界で大規模な被害を引き起こすそのようなグループの例です。(後略)【10月26日 VOI】
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イラン  困窮する市民生活 ライシ新政権を待ち受ける難しい経済・内政対応 

2021-07-25 23:17:19 | イラン
(ソーシャルメディア上で拡散された映像で、テヘラン・メトロで停電発生後に様々な駅で待っていた数千人の人々が「くたばれイラン政府」と叫んでいる様子が見て取れた。【7月20日 TRT】)

【ペルシャの誇り】
一昨日のオリンピック開会式でのイランに関する話題。

****NHK五輪開会式でイラン入場時に「アラブ諸国」と言い間違え豊原アナ謝罪****
NHKが、東京オリンピック開会式の生中継の中で、イランの選手の入場行進を紹介した際「アラブ諸国」と言い間違うミスをした。 

イランが入場し、女性の選手が多数、笑みを浮かべて歩く姿を映し出した中、豊原謙二郎アナウンサー(48)が「アラブ諸国もね、徐々に女性の活躍というのが、目立つようになってきましたね」と口にした。そして和久田麻由子アナウンサー(32)も「増えてきましたね」と続け、そのまま生中継を続けた。 

約50分後、中国が入場した後に、豊原アナが「先ほど、イランの行進の場面でアラブ諸国についてのコメントをしましたが、イランはアラブ諸国ではありません。大変失礼しました」と訂正し、和久田アナも「失礼しました」と訂正した。【7月24日 日刊スポーツ】
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NHKアナの間違いはともかく、イランがアラブではないということは、イランという国のあり方、イランをめぐる中東情勢に大きな影響を与えている側面です。

イランはペルシャ系の民族で、アラブとは異なるペルシャ文化に強いアイデンティティ・誇りを持っています。

****強烈なペルシャの誇り今も 暦も独自****
(中略)
西暦気にせず、イラン暦で生きる
 ――中東といえばアラブという言葉を思い浮かべますが、イランもその仲間なんでしょうか。
 
◆中東イスラム諸国の言葉と民族をふまえ、あえて大きく分けると、アラビア語を話すアラブ諸国、ペルシャ語のイラン、トルコ語のトルコに大別されます。日本から見れば、人々の見かけも言葉も同じように感じますが、実際はかなり違います。欧米の人たちにとって日本、韓国、中国の人々が区別しにくいのと同じ構図でしょうか。
 
イランは古い起源を持つペルシャ語を公用語とし、3月下旬を新年とするイラン暦(太陽暦)を今も使っています。(中略)

イスラム教の国のため、教典コーランが書かれているアラビア語も学び、アラブの文化も取り入れますが、同時に大事にしているのは古代から続くペルシャ文化です。
 
日本の4・5倍ほどの広さの国土に約8000万人が住んでおり、民族的には約半数がペルシャ系で、他にアゼリ系、クルド系、アラブ系など多くの民族が混在します。(中略)

2500年前からの誇り、今も
 ――イラン人は誇り高い民族と言われますが、その背景は何でしょうか。

 ◆イランの原点は、紀元前550年にできた世界初のペルシャ帝国(アケメネス朝)にあります。当時の宗教は、世界最古の一神教とされるゾロアスター教です。アケメネス朝はマケドニアのアレキサンダー大王に滅ぼされますが、その後も領土を復活、縮小を繰り返しながら、ペルシャの歴史は続きます。

近世のサファビー朝でも経済的、文化的に繁栄し、当時の首都イスファハンはその豊かさから「世界の半分」と言われました。イランがイスラム教シーア派を国教としたのもこの時代です。
 
しかし、近現代に入り、イランの領土は縮小傾向で、英国やロシアに半ば植民地化された時期もありました。パーレビ朝では米国と蜜月関係になり、都市部を中心に潤う一方、貧富の差も広がります。イスラム革命(1979年)以降は、石油生産や製造業などで独自の発展を目指しますが、欧米諸国との対立が続き、不振にあえぎます。
 
一方で、近年はサウジアラビアやアラブ首長国連邦など湾岸アラブ諸国が、欧米と良好な関係を築きながら豊富な石油資源や金融などで経済発展をとげます。

長い間、イランとライバル関係にあるトルコも一定の欧米化、世俗化を図りながら発展します。長い歴史を持ち、誇り高いイラン人は、湾岸アラブ諸国やトルコに対して強烈な対抗心を持っています。(後略)【2020年1月15日 毎日】
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日本でも、世界でも、イランはイスラム原理主義国家とかイスラム神権政治というイメージで見られていますが、数年前、イランを観光した際、現地のガイド氏は「イランはイスラムではない」とまで言っていました。

言わんとするところは、イスラムは後世にアラブ世界から入ってきた一つの文化に過ぎず、イランのアイデンティティは遠くペルシャ帝国に遡るペルシャ人としての文化にあるという強い誇りでしょう。

【新政権が直面する経済・内政問題】
そのイランでは、周知のように穏健派(そういう呼称は正しくない、イランに穏健派など存在しない・・・という批判はありますが)ロウハニ大統領から、厳しい市民弾圧の暗い過去もある保守強硬派のライシ師に政権が変わります。

核合意で制裁解除を期待したものの、トランプ前大統領のイラン敵視政策によって制裁は解除されず、市民生活は苦しくなるばかり・・・という国民の不満が穏健派ロウハニ政権に向けられたことを背景に、ハメネイ師を頂点とする現体制による穏健派・改革派候補者を選挙から締め出すという干渉もあっての結果でした。

****「ハメネイ推し」ライシ大統領の誕生で新生イランはこう変わる****
(中略)
三権のすべてを強硬派が抑えたイランの今後
(中略)次期大統領として職務に専念したいとするライシ師の申し出を受け、ハメネイ最高指導者は7月1日、早々に後任人事を発表し、司法府の次長であったエジェイ師(強硬派。アフマディネジャド政権時の情報相)をスライド人事で新たな司法府長に任命した。これにより三権は全て強硬派によって占められる「一枚岩」が完成した。
 
また、あまり注目されていないが、大統領選挙と同時に実施された3つの選挙、すなわち市評議会選挙(注2)、国会補欠選挙及び専門家会議補欠選挙でも、強硬派が総なめにしている。(中略)

本来、行政府を監視する役割を担う立法府も、ハメネイ師直轄の軍事機構も、ライシ新政権と一丸となって進む決意を示している。
 
それでは、ライシ新政権でイランの政策はどのように変わっていくのだろうか。(中略)
(1)外交・安全保障政策
(中略)

(2)経済
8月から船出するライシ新政権にとって、制裁とコロナ禍で疲弊した国内経済の救済が最重要課題であることは間違いない。しかし、ハメネイ師の「抵抗経済」路線をなぞる同師の主張からは、どのような処方箋が用意されているのか見通すことは難しい。
 
ハメネイ最高指導者は、かねてより、「外国に依存することなく、自国の能力を活性化させることで、あらゆる困難を乗り越えることができる!」と国内を鼓舞している。人口8400万のマーケットと一定水準の工業力を有するイラン経済は、ある種「制裁慣れ」しており、外国製品が途絶えた穴を自国で生産したそれなりのモノで埋めてしまう逞しさがある。制裁を回避し、すり抜ける術も身につけてきている。
 
国際通貨基金(IMF)は4月、イランの実質国内総生産(GDP)成長率を1.5%のプラス成長と発表し、2021年は2.5%、2022年は2.1%のプラス成長を予測している。これは、トランプ大統領(当時)による核合意の離脱と経済制裁の強化によって大幅に落ち込んだ反動(2018年:マイナス6.0%、2019年:マイナス6.9%)とも見られるが、イラン国内では「抵抗経済」路線の奏功だと自信を深めている向きもあるだろう。

必ずしも制裁解除を望んでいないイラン人
「ウィーンの核交渉がまとまったら大惨事だ」
これは、外国資産や外貨での収入があるイランの友人の偽らざる告白だ。過去1年半の間に現地通貨リアルの価値は半分以下(一時は3分の1にまで下落)になった。国内の物価高にあえぐ一般国民とは逆に、この友人にとっては、自らの外貨収入のイランにおける価値は倍増したことになる。しかし、核合意の再生を通じて制裁が解除されれば、市場はリアルの価値を戻す方向に動くため、それを危惧しているのである。
 
別の悪友は長年の経済制裁に耐える中で、「ボンヤード」と呼ばれる各種財団(注4)や経済マフィア化した革命防衛隊のコングロマリット「ハタモル・アンビア」など、この状況に適応しつつ、制裁ビジネスにより蜜を吸う「革命貯金箱」体制ができあがっていると指摘している。
 
つまり、イランは「米国による経済制裁は悪」と非難しつつも、必ずしもその全面解除を本当に望んでいる者だけとは限らないのである。(中略)

このように、諸外国、特に西側との交易を推進することを阻む要因は多い。しかし、それなくして国内経済の再生は困難であることも事実である。
 
国際金融協会(IIF)は、6月末、イラン経済の大きな飛躍には、やはり核合意再生を通じた制裁解除が不可欠との見方を示している。IIFの発表によると、2015年当初の条件に戻す合意に達すれば、2021年のイランの実質GDPは3.5%増、2022年は4.1%、2023年は3.8%成長となる可能性があるとした。
 
さらに、これはかなり野心的であるが、2015年合意以上の包括的な新核合意が成立した場合、今年のイランの実質GDPは4.3%増加し、2022年には5.9%、2023年には5.8%もそれぞれ増加すると試算している。(中略)

(3)内政
ライシ師は、その敬虔なイメージとは裏腹に、これまでも女性の社会進出や国民の音楽活動などに肯定的な発言も見られる。選挙キャンペーンでは、インターネット規制への反対を表明するなど、ソフトなイメージを打ち出している。
 
一方で、昨年2月の選挙で大勝し、強硬派が大多数を占める国会(※一院制。定数290議席のうち、200人以上の強硬派議員がライシ師支持を鮮明にしている)は、早くも幾つかの強硬な法案を準備しているようだ。
 
例えば、WhatsAppやInstagramなど外国製のアプリやネット規制を回避する仮想プライベートネットワーク(VPN)の利用を禁止する案や、対イラン制裁に荷担した諸外国をイランへの投資から除外する案などが当地の紙面を賑わせている。ライシ師自身の考えがどうあれ、このような国会から「相乗効果を」と迫られる可能性はあるだろう。
 
イラン国民の間では、かつてのアフマディネジャド政権(強硬派)期のような、国民の自由への締め付け、例えば女性のヘジャブに代表される規制が強化されるのではないかとの警戒感も根強い。

さらに、ネット空間はイラン国民にとり、経済苦や表現の自由に制約のある実生活から逃れ、当局の規制とのギリギリのラインで自己表現を行ったり、孤立したりしがちなマイノリティーらが居場所を得られる「最後の楽園」となっている。この最後の砦すら失うのではないかと危惧する若者は多い。
 
大統領は国民からの直接選挙により選出されることから、人々の期待と同時に、不満を受け止める「サンドバッグ」になるとも表される。大統領を含む三権の長の上に君臨する最高指導者にとっても、大統領は国民からの直接の非難を防ぐ「盾」となりうる。
 
果たして、ライシ新大統領は広く国民の声を受け入れる政策を採りうるのか、それとも2019年11月のガソリン値上げに端を発する国内の暴動への対応のように、ネット遮断も含め徹底して鎮圧する「矛」となるのか、注目していきたい。【7月18日 角 潤一氏 JBpress】
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制裁によって逆に利益を得る勢力・既得権益層は存在するものの、やはり経済全体としては“核合意再生を通じた制裁解除が不可欠”です。その核合意交渉は、すでに死に体となった現政権下では停止し、次期政権に委ねられています。

****イラン核協議、ライーシー次期大統領就任後に再開の見通し****
(中略)イラン代表団を率いるアッバース・アラーグチー外務次官は7月17日、「権力の民主的な移行が進行中だ。従って、ウィーンでの協議はわれわれの新しい政権を待たなくてはならない」と自身のツイッターに投稿したことで、交渉再開は8月5日に予定されるイブラーヒーム・ライーシー次期大統領の就任後になる見通しとなった。

(中略)これ先立つ14日には、ハサン・ローハニ大統領が閣議で「準備はできていたが、第12期(現)政権は(交渉を妥結する)機会を奪われた。しかし、第13期(次期)政権でこれが成し遂げられることを期待している」と述べ、交渉妥結を次期大統領に委ねることを示唆していた(7月14日大統領府ウェブサイト)。

(中略)イラン国内報道では、IRNAは「米国の経済制裁に起因する国民の問題を解決するために、新政権はJCPOA立て直しの交渉に取り組むべき」としている(7月19日付IRNA)。

一方、保守系のファールス通信(7月6日付)は「新政府の外交は、核合意の立て直しだけに焦点を当てたものではない」とし、「イランは核協議に関して、既に米国に譲歩をしているため、これ以上譲歩すべきではない」とする論説を掲載した。【7月21日 JETRO】
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【高まる国民不満 難しい経済・内政対応】
“最高指導者にとっても、大統領は国民からの直接の非難を防ぐ「盾」”ということは、大統領は国民批判にさらされる立場にあるということで、保守強硬派であろうがなかろうが、何とか国民不満を和らげたい思いは強いはずです。その国民の不満は限界に近い所まで高まっています。

****停電に水不足 イラン新政権を待ち受ける国民の怒り****
(2021年7月20日付 英フィナンシャル・タイムズ電子版)

ここ1週間、イラン南西部の街頭では、反体制的なスローガンを唱えながら飲用や農業・畜産用の水をもっと使わせろと要求する抗議活動が続いている。

デモは南西部フゼスタン州のアフワズ、シャデガン、スサンゲルドで発生した。最近、首都テヘランやコルドクイなどでは、1980年代の対イラク戦争以来最悪の停電をめぐり、参加者が「独裁者を打倒せよ」と唱える抗議活動が起こったばかりだ。水不足をめぐるデモでは少なくとも1人が死亡したが、イラン政府は治安当局ではなく暴徒のせいだとしている。

貧弱な公共サービスに対する国民の強い怒りには、1979年に神権国家を誕生させたイラン革命に裏切られたという思いも込められている。革命の指導者ホメイニ師が喜びに沸く国民に「貧しい人々には水と電気を無料にする」と約束したことは有名だ。

多くのイラン人は、安価な公共サービスを生まれながらの権利ととらえている。「我が国は豊かな国であり、世界最大の富の上に成り立っている。しかし、その富は体制につながりがある人々にしか行き渡っていない」と36歳の主婦ザハラさんは言う。「誰もが平等に天然資源の恩恵を受けるべきだ」

そのため政治家は、余裕がないにもかかわらず世界でもとりわけ気前よく振る舞う補助金のカットを躊躇(ちゅうちょ)している。水と電力の消費量上昇に、過去半世紀で最悪の干ばつが追い打ちをかけ、当然ながら公共サービスが政治的緊張のはけ口になったとアナリストはみている。

あるアナリストは「電力などの非政治的な分野は、国民にとっては自分の政治的な要求を追求できる領域だ」と話す。「国民は(より貧しくなっており)当局を信用せず、補助金制度のいかなる変更も拒否しているため、補助金の削減は不可能だ」

需要を下回る電力生産
8月4日にライシ政権への交代を控えるロウハニ政権は、工場の労働時間の短縮やイラクへの電力輸出の削減、暗号資産(仮想通貨)ビットコインのマイニング(採掘)に対する取り締まりによって停電に対処した。少なくとも一時的には電力不足をめぐる国民の怒りを抑え込んだものの、米国の制裁によって苦しむ経済をさらに悪化させることにもなった。(中略)

(中略)国際エネルギー機関(IEA)の20年の報告書によれば、イランのエネルギー補助金総額は世界最高で、国内総生産(GDP)の4.7%に上る。

ロウハニ大統領が電力消費量を削減しようとしたにもかかわらず、公式統計によれば、イランの電力需要量は今年、猛烈な夏の暑さも手伝い約6万6000メガワットという記録的な水準に急上昇した。一方で電力生産量は5万5000メガワットしかない。

電力業界最大の非政府組織(NGO)であるイラン電気事業連合会の研究部門副代表アリレザ・アサディ氏は「ロウハニ大統領が前任者の政策である発電所建設にブレーキをかけ、代わりに電力消費量の上昇を抑えようとしたのは正しかった」と語る。「しかし、政府は電力消費量を減らすよう国民を説得するのに失敗した」

電力消費量は毎年平均5%上昇する一方で、生産量は年間3%しか伸びていないとアサディ氏は指摘する。同氏の試算によれば、莫大な補助金のおかげでイラン国内の消費者は実際の電力費用の15%、産業界は30%しか負担していない。

問われる補助金問題への対応
新型コロナウイルスのパンデミック(世界的大流行)が経済をさらに荒廃させているなか、イランは過去1年間、最も貧しい3割の国民に水道、電気、ガス料金を請求せず、革命の約束を果たしたと主張している。

このことは、さらなる経済的課題となって、補助金問題には取り組まないだろうとアナリストがみる次期大統領のライシ師にのしかかる。

アサディ氏は「恐らく(ライシ師の)次期政権は補助金削減に踏み込まずに、発電所を建設する政策に回帰するだろう」と予想する。「どの政権だろうと、電気料金を引き上げれば退陣するしかなくなる」(後略)【7月21日 日経】
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経済を立て直し、不満を和らげるためには制裁解除がどうしても欲しい、しかし、保守強硬派としての立場、あるいは議会の政治圧力からすれば、これ以上の譲歩は難しい。

現ロウハニ政権が交渉を事実上停止したのも、「自分たちで責任取る形でやれよ!」という次期政権に対する思いかも。

更に、財政・経済立て直しには、本来は水道・電気・ガスなどへの補助金を削減し、コストを価格に反映させることで市場メカニズムを通じた需給バランスを回復することが必要ですが、国民に補助金削減を求めることもできない。

自由やSNS環境改善を求める女性や若者らの不満も、不用意に抑えつけると政府批判となって噴出します。

新大統領としても難しいかじ取りです。

なお、今回は触れませんでしたが、増加する新型コロナ感染、ワクチン接種の遅れという問題もあります。
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