孤帆の遠影碧空に尽き

年に3回ほどアジアの国を中心に旅行、それが時間の流れに刻む印となっています。そんな私の思うこといろいろ。

アメリカ  「影の大統領」? 異例の権限のマスク氏、移民排斥の欧州政党を支持 対中国は?

2024-12-24 22:47:28 | アメリカ

(大統領選の集会に参加し、トランプ氏と握手するマスク氏(右)=2024年10月、米ペンシルベニア(AFP時事)【12月23日 時事】 たまたまカメラアングルのせいですが、目つき悪すぎ)

【「つなぎ予算案」審議で見せつけた「影の大統領」マスク氏の力】
アメリカ議会における「つなぎ予算案」をめぐる混乱、トランプ氏最側近の地位を固めたイーロン・マスク氏の影響力の強さは周知のところ。

トランプ氏にしても、マスク氏にしても、いささか「付き合いきれないね・・・」って感じはありますが、最終的には日本を含めた世界全体に影響を及ぼす二人ですから、呆れているばかりでもすまないので・・・

結局、「つなぎ予算案」はトランプ氏が望んだ“来年1月までと決まっている政府の借入金の限度を定めた「債務上限」の適用停止措置を延期”は共和党の財政規律重視派の反対もあって今回案には含まれませんでしたが、マスク氏が望んだように大幅削減となり、マスク氏はご満悦とか。

「債務上限」の問題はバイデン政権にしろトランプ次期政権にしろ、政策遂行の足かせになりますので、政権側はこれを撤廃あるいは適用停止したがり、野党側は財政規律を盾に政権を揺さぶるという構図がしばしば見られます。 一般に共和党側には財政規律を重視する立場の議員が多いのですが、その点ではトランプ氏の間に意見の相違があるようです。

でもってマスク氏。

****“影の大統領”マスク氏が介入で混乱 つなぎ予算案「無駄が多い」 大幅カットで可決****
(中略)マスク氏は18日、Xで「無駄な支出が多い」として、バイデン政権が主導する来年3月までのつなぎ予算に反対を表明しました。

つなぎ予算が成立しないと、政府職員の給与が支払われなくなり、例えば管制官や保安職員などが無給となります。観光客にも影響が出かねません。

■マスク氏ご満悦「みんなの勝利だ!」
それでもマスク氏は「この予算案は可決されるべきではない」という投稿を皮切りに、1時間のうちに予算案への反対を呼び掛ける投稿を続々と発信しました。

マスク氏のXから 
「法外な予算案に賛成する議員は2年後に落選すべき」「今すぐ当選した議員に電話して意見を言おう」「トランプ次期大統領が就任するまでにいかなる法案も可決されるべきではない。一切だめだ」

こうした投稿を受けてか、与野党で合意していた当初の予算案は否決され、白紙に戻りました。

民主党 下院議員 「議会は実態を知らない億万長者に屈してはいけない」

削減された予算案
CBSによると、予算の項目はどんどん削られ、1500ページ以上あった予算案は10分の1以下の100ページほどになり、ようやく可決されました。

CNNによると、カットされたのは議員の給与引き上げや中国への投資を制限する案などです。「中国に巨額の投資をするマスク氏に有利な形となった」と話す議員もいます。

ご満悦
こうした指摘も何のその。マスク氏はご満悦です。
マスク氏 「みんなの声が議員に届き、ひどい予算案は葬れた。みんなの勝利だ!」【12月23日 テレ朝news】
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こうした状況に、民主党サイドからは「影の大統領」といった声も。“マスク氏の存在感を際立たせることで、「他人が目立つこと」を嫌うトランプ氏との離間を図ろうとする政治的意図”もあるとか。

****米民主党、マスク氏を「影の大統領」指摘 トランプ氏との離間狙いか****
米連邦議会の民主党が、実業家のイーロン・マスク氏による法案審議への「SNS(ネット交流サービス)介入」に批判を強めている。共和党のトランプ次期大統領に代わる「影の大統領」だと指摘。マスク氏の存在感を際立たせることで、「他人が目立つこと」を嫌うトランプ氏との離間を図ろうとする政治的意図も透けて見える。

マスク氏への批判は、当面の政府運営資金を確保するための「つなぎ予算案」に反対したことを契機に強まった。民主、共和両党の上下両院指導部が17日に合意案を発表したが、マスク氏は18日未明にXへの投稿で「この法案は可決すべきではない」と訴えたのを皮切りに「法案は犯罪的だ」「今すぐ議員事務所に電話して、この脅威を止めてくれ」と半日にわたって投稿を繰り返した。

共和党内には元々、「つなぎ予算案」に付随して他の政策が法案に盛り込まれていることへの不満が高まっていた。ただ、11月の議会選に基づいて共和党が上下両院で多数派になるのは2025年1月からで、年内は上院で優勢な民主党にも配慮しないと法案は通らない。

つなぎ予算が20日までに成立しなければ、政府機関が一部閉鎖に追い込まれる。ジョンソン下院議長は党内の説得を試みたが、マスク氏が反対論をあおり、18日午後にはトランプ氏も反対を表明。法案可決の見通しが立たなくなり、審議は頓挫した。

一連の経緯について、民主党は「選挙で選ばれていない大金持ちが超党派の合意をつぶした」とマスク氏に批判の矛先を集中させた。

急進左派のサンダース上院議員(民主党系無所属)は「(当初のつなぎ予算案は)地球上で最も金持ちのイーロン・マスク大統領のお気に召さなかった」と指摘。マーフィー上院議員(民主党)は流動的な議会審議の状況について「大金持ちの意見が大事だ。15分後にはマスク氏のXへの投稿で状況は変わり得る」と形容した。

さらに共和党内でマスク氏を来月から始まる新会期の下院議長に推す声が出たことで、批判の声が高まった。下院議長は憲法の規定では現職議員である必要はなく、理論上はマスク氏も就任可能だ。ラスキン下院議員(民主党)は「既に(立法、司法、行政と並ぶ)第4の権力なのだから、下院議長なら降格だ」と皮肉った。

民主党がマスク氏を標的にするのは、11月の大統領選で勝利したばかりのトランプ氏よりも批判しやすいからだ。マスク氏は「世界一の富豪」だが、民意の後ろ盾はない。さらにマスク氏を「実質的な大統領」と言い続ければ、トランプ氏が不快感を示し、両者の不和を誘える可能性もある。

マスク氏もこうした政治的意図は意識しているとみられる。19日に共和党が示したつなぎ予算の代替案について、民主党が「マスク・ジョンソン提案」とレッテルを貼ったのに対して、「立案者は私ではない。トランプ氏、バンス氏(次期副大統領)、ジョンソン議長の功績だ」とトランプ氏を立てる姿勢を見せた。

自身への批判を強める民主党左派を念頭に、次の民主党予備選で「より穏健な候補を資金面で支援する」との考えも示し、民主党をけん制している。

マスク氏は11月の大統領選で、少なくとも2億6200万ドル(約409億円)を投じてトランプ氏を支援。次期政権では政府外助言機関「政府効率化省(DOGE=ドージ)」を率いて、歳出削減や規制緩和に取り組む見通しだ。【12月21日 毎日】
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“トランプとマスクはいずれも注目と権力を欲しがる強烈な個性の大富豪同士であるため、両者の間に緊張が生じる可能性は少なくないと専門家は指摘する。
同時に、マスク氏の莫大な富と、それを政治的な力として使う意思は、トランプと共和党に恩恵を与え、二人は良いコンビになる可能性もあるかもしれないが。”【12月24日 Newsweek】

【移民排斥を主張する独AfD、英「リフォームUK」を支持】
マスク氏の“言いたい放題”は内政だけでなく、外交面でも。

****マスク氏、ドイツ右派支持表明 ショルツ首相を「ばか」と批判****
米実業家イーロン・マスク氏は20日、X(旧ツイッター)で、排外主義を掲げて支持を拡大するドイツの右派政党、ドイツのための選択肢(AfD)への支持を表明した。ドイツのショルツ首相を「無能なばかだ」と批判し、辞任すべきだと投稿した。

ドイツは来年2月に下院選を実施する。マスク氏は2億人以上のフォロワーを持つ自身のアカウントで「AfDだけがドイツを救える」と述べた。

最大野党で支持率首位のキリスト教民主・社会同盟がマスク氏のように政府業務の効率化を進めようとしておらず、AfDとの連携も拒否しているとの女性インフルエンサーの投稿を転載し、コメントした。【12月21日 共同】
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更にマスク氏は「ドイツ極右政党AfDはオバマ政権と同じ」とも。その意味するところはよくわかりませんが。

****イーロン・マスク氏「ドイツ極右政党AfDはオバマ政権と同じ」と主張。物議を醸す****
「極右政党・ドイツのための選択肢(AfD)はオバマ氏が就任した時の米民主党と全く同じ」というイーロン・マスク氏の主張が批判を招いている。(中略)

マスク氏は12月20日、このAfDだけが「ドイツを救える」とXに投稿。
これに対し、米民主党のクリス・マーフィー上院議員は「AfDは本質的にドイツのネオナチ政党で、ナチスのイメージを回復しようとしている。ドイツで生まれていない人々を排除するという危険な考えを持っている」とCNNで異議を唱えた。

マスク氏はこのマーフィー議員の意見に反論し「なんという大嘘つき。AfDの政策は、オバマ就任時のアメリカ民主党の政策と完全に同じだ!何一つ変わらない」という主張をX上で展開した。

しかし、ドイツの極右政党をオバマ政権と同一視する考えは、様々な人たちから批判されている。
実業家でビリオネアのマーク・キューバン氏は、「最もAfDと近いアメリカの政党は」とxAI社の対話型AI・Grokに質問したところ「アメリカ共和党、特に現在の右寄りから極右に最も近い」と回答したとXに書き込んだ。

アメリカの政治学者イアン・ブレマー氏は、AfDと民主党オバマ政権を同じだとするのは「なかなかの見解」だとマスク氏に返信する形で投稿。AfDは気候変動や移民などの様々な問題で「はるかに『ドイツ第一主義的』である」と述べた。

また、ドイツ社会民主党(SPD)のショルツ首相は、マスク氏の「ドイツを救えるのはAfDだけ」という発言について「言論の自由というのは、彼のような大富豪が正しくない、もしくは良い政治的アドバイスを含まない発言ができるということでもある」と記者会見で述べた。

ショルツ首相は11月に、自由民主党(FDP)の党首のクリスティアン・リントナー財務相を解任して三党連立政権の崩壊を招いた。その後、12月16日には議会で信任投票が否決され、2025年初めに解散総選挙が行われる。
世論調査によると、AfDはドイツキリスト教民主同盟(CDU)に次ぐ支持率を得ている。

AfDは9月にテューリンゲン州議会選挙で勝利して第1党になった。ドイツで極右政党が州議会選挙で勝利したのは第二次世界大戦以降初めてだ。

しかしテューリンゲン州のAfDトップであるビョルン・ヘッケ氏は、政治集会でナチスのスローガンを故意に使用した罪で有罪となり、罰金を科されている。(後略)【12月23日 HUFFPOST】
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“AfDはオバマ氏が就任した時の米民主党と全く同じ”云々の真意はよくわかりませんが、よくわかったのはマスク氏が移民排斥的な極右主張と波長がよく合うようだ・・・ということ。

移民排斥的極右ポピュリストは欧州各国で台頭していますが、イギリスではファラージ党首率いる「リフォームUK」。
マスク氏はこの「リフォームUK」に数百万ドルを寄付するとか。

****マスク氏、次は英国政界を席巻か 米国に続き****
ドナルド・トランプ次期米大統領のホワイトハウス復帰を支えたイーロン・マスク氏が、次は英首相の官邸があるダウニング街10番地にも政治的変動をもたらす可能性がある。

マスク氏は、キア・スターマー英首相を厳しく批判してきた。ポピュリスト政党の「リフォームUK」に数百万ドルを寄付し、変革をもたらすことも考えられるとして、英政界では危機感が高まっている。

英政府は外国人による巨額の政治献金を防ぐため、法改正を望んでいるとすでに表明している。

トランプ氏の支持者として知られるリフォームUKのナイジェル・ファラージ党首は、最近になりマスク氏と会談。反移民を掲げて急成長する同党に対し、世界一の富豪が寄付を検討していると述べている。これを受けてリフォームUKの支持率が急上昇することも考えられる。(後略)【12月23日 WSJ】
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【上海に巨大工場を持ち中国政府に従順なマスク氏と対中国強硬論をウリにするトランプ氏はどのように折り合いをつけているのか?】
このあたりがマスク氏とトランプ氏の波長が合う理由のひとつでもあるのでしょうが、よくわからないのはトランプ氏が高率の追加関税という対中国強硬策を主張し、同様の対中国強硬論者が多い次期トランプ政権にあって、マスク氏のテスラは中国に大規模工場を持ち(テスラ社のEV生産台数の半分は上海のギガファクトリーが担っている)、中国に対しては協調的な姿勢であることです。

****対中強硬派ぞろいのトランプ政権に紛れ込んだ「親中」イーロン・マスクはどう動く****
<米中国交正常化の仲介役となったキッシンジャーのような役割を期待する声もあるが、実業家として利益だけが目当てと思われる節もある>

アメリカのジョー・バイデン大統領と中国の習近平国家主席は11月16日、アジア太平洋経済フォーラム(APEC)首脳会議に出席するため訪問中のペルーの首都リマで首脳会談を行った。バイデンと習の直接対談はこれが最後となるとみられる。

ドナルド・トランプ次期大統領が実業家のイーロン・マスクを閣僚に指名したことで、次期政権は複雑な「事情」を抱えることとなった。今後の米中関係も見通しにくい状況だ。

習は慎重な言葉選びで、トランプにはあえて言及せずに外交の継続性を求める中国政府の希望を強調した。「中国はアメリカの新政権と協力して対話を維持し、協力を拡大し、違いに対処し、両国民の利益のための中米関係の堅実な移行に向けた努力を行う用意がある」と、習は通訳を通して述べた。

電気自動車大手テスラのCEOであり、トランプの選挙運動に数千万ドルの寄付を行ったマスクは、実業家のビベック・ラマスワミとともに新設される予定の「政府効率化省」を率いることになっている。

新政権の内部では、対中政策に関して意見の激しい相違が見られる。トランプは対中タカ派のマルコ・ルビオ上院議員とマイク・ウォルツ下院議員を、それぞれ国務長官と大統領補佐官(国家安全保障担当)に指名した。トランプは中国からの輸入品に60%の関税をかけ、メキシコで製造された中国メーカーの電気自動車に制裁措置を取ると主張。

9月には8000億ドルの対中貿易赤字に触れ、「関税は最も偉大な発明品だ」と述べてもいる。

一方でテスラにとって、上海のギガファクトリーは生産台数の半分を担うドル箱であり、マスクの対中姿勢はトランプとは大きく異なる。

「テスラとしても私としても、こうした関税を求めたことはない」と、マスクはパリで行われた技術系イベントで述べた。「通商の自由を阻害、もしくは市場をゆがめるものはよくない。テスラは中国市場における競争で、関税や政府の支援がなくともおおいに善戦している。私は関税なしを支持する」

マスクは以前から、中国政府との友好的な関係を維持してきた。2020年にポッドキャストで「中国はすばらしい」とほめたたえ、中国共産党の創立100周年を祝って以降、彼は一貫して中国当局に従順な態度を示している。

2021年に中国当局がテスラに対し、28万5000台の自動車のリコールを求めた時も素直に応じたし、2022年に新型コロナウイルスのパンデミックでテスラの上海工場が閉鎖された際もおとなしく従った。カリフォルニア州で同じような流行対策が採られた際に「ファシスト」的だと激しく非難したのとは対照的だ。

米中間の問題は貿易に留まらない。アメリカの情報当局は、ウクライナ侵攻を続けるロシアにとって必要なハイテク製品について、中国からの輸入が増えているとの報告書を出している。

FBIは先ごろ、アメリカ政府やアメリカの政治家に対して中国が行っている「幅広く大規模な」サイバースパイ行為に関する詳細を明らかにした。

昨年、中国の偵察用気球がアメリカ領内で撃ち落とされた一件で、両国の緊張はさらに高まった。

一部の専門家からは、マスクがかつてのヘンリー・キッシンジャー国務長官に似た外交における仲介者の役割を果たす可能性があると指摘する声も出ている。

今年4月、マスクは中国の李強首相と会談。李はテスラを、米中の通商協力の成功例だと持ち上げた。(後略)【11月18日 Newsweek】
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マスク氏はトランプ氏支持を明確にするにあたり、当然に看板政策でもある対中国問題について意見のすり合わせを行っているはずです。

どういう話になっているかは知る由もありませんが、結局のところトランプ氏の対中国強硬姿勢は「ディール」のうえでのパフォーマンスであり、最終的にはウィンウィンの合意で結着をつける・・・そうしたトランプ氏の説明をマスク氏が了解したということでしょうか? 全くの想像ですが。

あるいはテスラを切り捨てても、トランプ政権のもと、宇宙起業スペースXなどでもっと稼げると踏んだのか?
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