(シリアの首都ダマスカスで警備に当たる戦闘員(2024年12月20日、ロイター=共同)【12月23日 JBpress】)
【女子教育尊重でタリバンとの違いをアピールするHTS指導者】
アサド政権崩壊後のシリアは、政権を追放して首都ダマスカスをおさえた「シャーム解放機構(シリア解放機構 HTS 旧ヌスラ戦線)とその指導者ジャウラニ氏を軸に動いています。(“シャーム”とはシリア地域の古代名)
HTSをテロ組織に指定しているアメリカも、テロ組織指定解除も視野に入れて接触を始めています。
****アメリカ国務省高官がシリア訪問 「シリア解放機構」と協議へ、米政府高官の訪問はアサド政権崩壊後初めて テロ組織指定解除も議論か****
アメリカ国務省の高官らがシリアの暫定政府を主導する「シリア解放機構」と協議するため、首都ダマスカスを訪問しました。アメリカ政府の高官がシリアを訪れるのは、アサド政権の崩壊後初めてです。
ロイター通信などによりますと、アメリカ国務省の報道担当者は20日、中近東担当のバーバラ・リーフ国務次官補ら3人がダマスカスを訪問中だと明らかにしました。
AP通信によりますと、アメリカ政府の高官がシリアを訪れるのは、2012年2月にアメリカ大使館が閉鎖されて以来、およそ13年ぶりで、アサド政権の崩壊後初めてです。
リーフ国務次官補らは、暫定政府を主導する「シリア解放機構」の代表団などと協議を行う予定で、政権移行やアメリカの支援、少数派の保護などについて話し合うということです。
アメリカ政府は「シリア解放機構」をテロ組織に指定していますが、この指定の解除についても議論されるとみられます。
また、2012年にシリアで行方不明になったアメリカ人ジャーナリスト、オースティン・タイス氏についても、主要な議題のひとつになるとみられます。【12月20日 TBS NEWS DIG】
ロイター通信などによりますと、アメリカ国務省の報道担当者は20日、中近東担当のバーバラ・リーフ国務次官補ら3人がダマスカスを訪問中だと明らかにしました。
AP通信によりますと、アメリカ政府の高官がシリアを訪れるのは、2012年2月にアメリカ大使館が閉鎖されて以来、およそ13年ぶりで、アサド政権の崩壊後初めてです。
リーフ国務次官補らは、暫定政府を主導する「シリア解放機構」の代表団などと協議を行う予定で、政権移行やアメリカの支援、少数派の保護などについて話し合うということです。
アメリカ政府は「シリア解放機構」をテロ組織に指定していますが、この指定の解除についても議論されるとみられます。
また、2012年にシリアで行方不明になったアメリカ人ジャーナリスト、オースティン・タイス氏についても、主要な議題のひとつになるとみられます。【12月20日 TBS NEWS DIG】
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こうした動きの背景にあるのは、12月18日ブログ“シリア 現時点では穏健・寛容で正しいことを言っているHTS指導者 実際の統治は?”でも取り上げたように、HTSおよびジャウラニ氏が“現時点では穏健・寛容で正しいことを言っている”ということがあります。
戦略的に見ても、HTS側に“その気”があるうちに、その考えを実行に導きシリアを穏健な形で安定させるというのは賢明でしょう。
****シリア、「アフガンと違い女子教育も」=旧反体制派トップ、穏健アピール****
シリア暫定政府を主導する旧反体制派「シャーム解放機構」(HTS、旧ヌスラ戦線)指導者のジャウラニ氏は19日までに、シリアをイスラム主義組織タリバンが復権したアフガニスタンのような国にするつもりはなく、女子教育の機会を保障する考えを表明した。首都ダマスカスで英BBC放送のインタビューに応じた。
タリバンは2021年の政権奪取後、極端なイスラム法解釈に基づいて女性への高等教育を禁じるなどし、国際社会からの承認は進んでいない。
国際テロ組織アルカイダの流れをくむHTSは、イスラム過激派と見なされることも多い。ジャウラニ氏はタリバンとの違いを強調することで、穏健な印象をアピールした形だ。
ジャウラニ氏はBBCで、シリアは部族社会のアフガンとは思考が全く違うと指摘。HTSが拠点としてきた北西部イドリブ県では「大学教育が8年以上行われ、大学での女性の比率は60%を超えると思う」と語った。 【12月20日 時事】
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当然ながら、「今はそう言ってるけど、そのうちに本性が・・・タリバンだって復権当時はまともなことも言ってたし・・・」という懸念もありますが、HTSの場合は指導者本人の言葉である点が異なるとも。
****シリアとアフガン 「テロ組織」権力掌握の行く末=松井聡(ワシントン)****
「政府軍はほぼ戦わずに逃げ出した」「国際社会は権力を掌握したテロ組織とどう向き合うべきなのか」――。
シリアのアサド政権崩壊に関する言及だと思う人も多いかもしれないが、2021年に南アジアを担当するニューデリー特派員として、アフガニスタンのイスラム組織タリバンの復権を取材した際に、タリバン幹部や国連関係者から聞いた言葉だ。
現在は北米総局員としてワシントンから米政府の動きを中心にシリア情勢を追う中で、アフガンを巡る情勢との類似性を感じている。国際社会が、権力を掌握した「テロ組織」とどう向き合うのかという課題は最も大きな共通点だ。
米政府はタリバンを「特別指定グローバルテロ組織(SDGT)」、シリアで反体制派を主導してきた「ハヤト・タハリール・シャム」(HTS)を「外国テロ組織(FTO)」に指定している。
HTSは国際テロ組織アルカイダ系が源流だが、現在はキリスト教徒や少数派の保護など穏健な政策を強調している。
実は、タリバンも復権に前後して、「恐怖政治」だとして批判された旧政権時代(1996〜2001年)からの穏健化を強調していた。
ただ復権後も中学以上の女子教育を禁止するなど強硬路線は続いており、いまだにどの国からも国家承認されていない。これを引き合いに、「HTSは信用できない」と指摘する専門家もいる。
ただHTSとタリバンには違いもある。当時タリバンで積極的に「穏健化」を発信していたのは、各国との交渉窓口になっていた「政治事務所」のメンバーだった。国際社会と協調する重要性も理解しており、私も何度も取材したが、「タリバンは変わるだろう」と思う場面が少なからずあった。
だが復権後、実際に意思決定しているとみられるのは強硬派で最高指導者のアクンザダ師だ。タリバン内には同師に対して不満の声があるとも伝えられるが、国際社会は手詰まりのように見える。
一方、HTSで穏健路線を明言しているのは指導者のジャウラニ氏自身だ。内部の力学は不透明だが、タリバンに比べれば、その発言が実現される可能性は高いかもしれない。国際社会はHTSの穏健路線を支援しながら、情勢の安定化を目指す必要がある。【12月22日 毎日】
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“国際社会はHTSの穏健路線を支援しながら、情勢の安定化を目指す必要がある”・・・まさに、そういうことでしょう。HTSがその期待に応えてくれることを願いながら。
なお、本来HTSとアルカイダの関係は単なる「名義貸し」に過ぎず、HTSおよびジャウラニ氏は思想的にも、実際やってきたことも非常に寛容で穏健であるとの指摘も(12月23日 JBpress 黒井文太郎氏“「シリアで新たな独裁が始まる」は本当か? アサド政権を倒した反体制派組織「HTS」の意外な素顔”)
【トルコvs.クルド人勢力 クルド人にとって内戦の象徴的拠点コバニ トルコはコバニ攻撃準備】
シリア国内での戦闘再燃の火種としてくすぶっている問題のひとつがクルド人勢力とトルコの対立。
18日ブログでは“米国務省のミラー報道官は17日、トルコとの国境に近いシリア北部のマンビジュ周辺における、米が支援するクルド人主体の組織「シリア民主軍(SDF)」とトルコとの間の停戦が今週末まで延長されたと発表した。先週、米政府が停戦を仲介したものの、期限切れになっていたという。”【12月18日 ロイター】との報道をもとに、“現時点ではコントロールされているようです”とも書いたのですが、トルコはその後、この報道を否定しています。
****トルコ、米支援クルド勢力SDFとの停戦否定 「米発表は誤り」*****
トルコ国防省関係者は19日、シリア北部で米国が支援するクルド人主体の組織「シリア民主軍(SDF)」とトルコが停戦合意に達したという米側の発表は誤りだと述べた。
米国務省は17日、トルコとの国境に近いマンビジュ周辺での停戦は今週末まで延長されると発表していた。
トルコ政府関係者は匿名を条件に「トルコとしては、いかなるテロ組織との協議もあり得ない。米国の発表は間違いだ」と記者団に述べた。
一方、SDFはトルコが停戦に向けた国際的な努力に反し攻撃を続けていると非難し、戦闘を続ける構えを示した。
シリアのアサド政権が崩壊し、各地で武装勢力による戦闘が勃発する中、米政府は先週、トルコが支援するシリアの元反体制派とSDFの最初の停戦を仲介した。
SDFは過激派組織「イスラム国」(IS)掃討を目指す米主導の連合と協力しているが、トルコはその中核である「クルド人民防衛隊(YPG)」について、国内で非合法化されている武装組織「クルド労働者党」(PKK)の派生組織と見なしている。
トルコ政府高官は、シリア北部への地上作戦を再検討しているかとの質問に、依然としてシリア北部から国境への脅威を感じていると述べた。【12月20日 ロイター】
米国務省は17日、トルコとの国境に近いマンビジュ周辺での停戦は今週末まで延長されると発表していた。
トルコ政府関係者は匿名を条件に「トルコとしては、いかなるテロ組織との協議もあり得ない。米国の発表は間違いだ」と記者団に述べた。
一方、SDFはトルコが停戦に向けた国際的な努力に反し攻撃を続けていると非難し、戦闘を続ける構えを示した。
シリアのアサド政権が崩壊し、各地で武装勢力による戦闘が勃発する中、米政府は先週、トルコが支援するシリアの元反体制派とSDFの最初の停戦を仲介した。
SDFは過激派組織「イスラム国」(IS)掃討を目指す米主導の連合と協力しているが、トルコはその中核である「クルド人民防衛隊(YPG)」について、国内で非合法化されている武装組織「クルド労働者党」(PKK)の派生組織と見なしている。
トルコ政府高官は、シリア北部への地上作戦を再検討しているかとの質問に、依然としてシリア北部から国境への脅威を感じていると述べた。【12月20日 ロイター】
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一方のクルド人勢力「シリア民主軍(SDF)」側は、トルコに対し停戦と引きかえの一定の譲歩も提案しています。
****シリア民主軍、トルコと全面停戦なら非シリア系兵は撤退へ=司令官****
米が支援するクルド人主体の組織「シリア民主軍(SDF)」のマズロウム・アブディ司令官は19日、ロイターに対し、トルコとの国境に近いシリア北部でのトルコとの紛争が全面的な停戦に至った場合、支援のために中東各地から来た非シリア系クルド人兵士らが撤退するとの見通しを示した。
アブディ氏の発言は、トルコ国内で非合法化されている武装組織「クルド労働者党」(PKK)のメンバーを含めた非シリア系クルド人兵士がSDF支援のためにシリアに来たことを初めて認めた。トルコや米国などはPKKをテロリスト集団と見なしている。
アブディ氏は「シリアにはこれまでとは違った状況があり、政治的な段階を始めようとしている。シリア人は自分たちで問題を解決し、新しい政権を樹立しなければならない」とし、「トルコ軍および同軍の同盟勢力との間で全面的に停戦した後、この段階に加わる準備を進めている」と言及。
アブディ氏の発言は、トルコ国内で非合法化されている武装組織「クルド労働者党」(PKK)のメンバーを含めた非シリア系クルド人兵士がSDF支援のためにシリアに来たことを初めて認めた。トルコや米国などはPKKをテロリスト集団と見なしている。
アブディ氏は「シリアにはこれまでとは違った状況があり、政治的な段階を始めようとしている。シリア人は自分たちで問題を解決し、新しい政権を樹立しなければならない」とし、「トルコ軍および同軍の同盟勢力との間で全面的に停戦した後、この段階に加わる準備を進めている」と言及。
その上で「シリアで新たな動きがあるため、私たちの戦闘を支援してくれた兵士たちは誇りを持ってそれぞれの地域に戻る時だ」との認識を示した。
非シリア系クルド人兵士の撤退は、トルコ側の主要な要求の一つとなっている。トルコはSDFを国家安全保障上の脅威と見なし、シリア北部でのSDFに対する新たな軍事作戦を支援している。
アブディ氏は、トルコおよび同国の同盟勢力がトルコ国境に近いシリア北部の町アインアルアラブ(クルド名、コバニ)を攻撃する準備をしている中で、SDFは撤退を提案していることも表明。
非シリア系クルド人兵士の撤退は、トルコ側の主要な要求の一つとなっている。トルコはSDFを国家安全保障上の脅威と見なし、シリア北部でのSDFに対する新たな軍事作戦を支援している。
アブディ氏は、トルコおよび同国の同盟勢力がトルコ国境に近いシリア北部の町アインアルアラブ(クルド名、コバニ)を攻撃する準備をしている中で、SDFは撤退を提案していることも表明。
提案によると、国内治安部隊と「全面的な休戦を条件としてこの地域を監督するために」米軍が駐留することになる。一方で「もしも攻撃があった場合には撃退する準備をしている」とも付け加えた。
シリアではアサド政権が約2週間前に崩壊して以来、内戦がエスカレートしている。トルコおよび同国と組むシリアの武装勢力は今月9日、SDFからシリアの都市マンビジュを奪取した。【12月20日 ロイター】
シリアではアサド政権が約2週間前に崩壊して以来、内戦がエスカレートしている。トルコおよび同国と組むシリアの武装勢力は今月9日、SDFからシリアの都市マンビジュを奪取した。【12月20日 ロイター】
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現在トルコ側が攻撃を準備しているとされるコバニはシリア北部のトルコに接するクルド人居住地域の拠点都市ですが、2014年から2015年年明けにかけて、ISに包囲されたものの、一時は陥落したとも言われながらもクルド人側が多大な犠牲を払いつつも死守しました。
“コバニをめぐる攻防は、当時シリア内戦で最も注目される戦いだった”“周囲はISによって包囲され、住民はどこへも逃げられない状況が続いていた”“クルド人にとってはこの町が陥落することは住民の虐殺が起きることを意味していた”“クルド人はこの戦いを通じて団結したと言われている”【ウィキペディア】という経緯があるこのコバニをクルド人勢力としてはどうしても失いたくない思いがあると推測されます。
アメリカ、国連もクルド人勢力を支持、クルド人勢力と敵対していたトルコ・アエルドアン大統領もトルコ国内のクルド人情勢が悪化するおそれもあるため、コバニ支援に向かうイラクのクルド人がトルコ領内を通過するの許可する異例の対応も。
クルド人勢力とアメリカの「対IS」協力関係は現在まで続いています。
【アサド政権の残した化学兵器争奪戦 イスラエルは破壊のため容赦ない空爆実施 汚染リスクは?】
一方、今もシリアを空爆しているのがイスラエル。アサド政権が残した武器がイスラム過激派の手に渡るのを阻止する狙いと言われています。
1週間前の16日時点で“シリア人権監視団(英国)は16日、アサド政権崩壊後のシリアでイスラエル軍が行った空爆は470回を超えたと伝えた。”【12月17日 産経】とも。
****イスラエルのシリア空爆は主権侵害、直ちに停止を=国連事務総長****
国連のグテレス事務総長は19日、イスラエルによるシリア空爆は主権と領土の一体性への侵害であり「中止しなければならない」と述べた。
グテレス氏は記者団に「シリアの主権、領土の統一と一体性は完全に回復されなければならず、全ての侵略行為は直ちに停止されなければならない」と述べた。
アサド政権が今月崩壊して以来、イスラエルは戦略兵器と軍事インフラの破壊を目的に数百回の空爆を実施。1973年のアラブ・イスラエル戦争後に創設され、国連平和維持軍が巡回しているシリアとイスラエル占領下のゴラン高原の間の非武装地帯に進軍した。
イスラエル当局はこの措置について国境の安全確保のための限定的かつ一時的なものと説明しているが、撤退時期は示唆していない。【12月20日 ロイター】
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アサド政権の残した武器の行方はイスラエル以外の関係国・関係機関も気になるところで、特にアサド政権が使用していた化学兵器が注目されています。
****アサド政権が残した化学兵器の「争奪戦」が始まった****
シリアのアサド政権が突然崩壊したことで、残された化学兵器の所在を突き止め、確保する競争が始まった。長年にわたり内戦と強権支配が続いてきたこの国では、さまざまな武装勢力やテロ組織が対立し合ってきた。
かつてシリアは世界最大級の化学兵器保有国だった。内戦中にアサド政権が東グータで猛毒の神経ガス・サリンを使用し、1400人が死亡すると、国際的な圧力が高まり、シリアは2013年に化学兵器禁止条約(CWC)に加盟した。
当時のアサド大統領は国際社会と協力して国内の化学兵器を解体することに同意したが、アメリカと同条約を管轄する化学兵器禁止機関(OPCW)は長年、アサドが致死性の高い一部の兵器を備蓄し続け、新たな兵器の開発も進めているのではないかと疑っていた。内戦中にアサド政権が化学兵器を使用し続けたことで、懸念はさらに高まった。
シリアは現在、アメリカなどがテロ組織と見なすイスラム系組織シャーム解放機構(HTS)が主導する勢力の管理下にあり、アメリカは残された化学兵器を捜索していると、匿名の米当局者は外交誌フォーリン・ポリシーに語った。
OPCWもシリア情勢を協議する緊急会合を非公開で開催した。
「シリアの政治・治安情勢は依然として不安定だ。化学兵器関連施設の状況に影響を与え、拡散リスクを生み出しかねない」と、OPCWのフェルナンド・アリアス事務局長は会議の冒頭で警告した。
シリアの反体制派指導者アフマド・アッシャラア(別名モハマド・ジャウラニ)は12月11日、HTSは化学兵器の潜在的な貯蔵場所を押さえるため、国際社会と協力しているとロイター通信に語った。
2011年の内戦開始以来、アサド政権が塩素、サリン、マスタードガスを使用した事例は何百件も記録されている。国際社会が残された化学兵器の所在確認を急ぐ多くの理由の1つは、シリア国内で活動する過激派組織「イスラム国」(IS)の残党の手に渡る危険性があるからだ。
ISは不完全な粗製の化学兵器をイラクとシリアで何十回も使用したとみられている。ただし、シリアの化学兵器はISの残党が活動する地域から遠く離れた西部の旧政権支配地域に保管されている可能性が高い。
それ以上に懸念されるのは、新たな内戦やアサド家が属するアラウィ派の組織的反乱の際に、旧政権の当局者や科学者が化学兵器に手を伸ばす事態だと、化学・生物兵器に詳しいジョージ・メイスン大学のグレゴリー・コブレンツ准教授は言う。「私に言わせれば、ISよりも心配だ」
同様に化学兵器がテロ組織の手に渡ることを懸念するイスラエルは、早速動き出している。イラスエル軍は国連がゴラン高原沿いに設置したシリア領内の緩衝地帯に入った。
「私たちは多くの情報を持っている。自国民を守るため、必要なことは何でもする」と、オフィル・アクニス総領事(在ニューヨーク)はフォーリン・ポリシーに語った。
イスラエル軍はアサド政権崩壊直後から、化学兵器の貯蔵施設と疑われる場所への空爆を実施している。OPCWのアリアスは12日、「汚染のリスクがある」と空爆に懸念を示し、国際的調査の妨げになりかねないと警告した。
アクニスはこうも強調する。「もはや危険はないと確信できるまで、必要なことをやり続ける」【12月23日 Newsweek】
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対象が化学兵器ですから空爆による「汚染のリスクがある」というのは誰しも考えるところですが、「自国民を守るため、必要なことは何でもする」というイスラエル現政権にとってはシリア住民の生命ごときは眼中にないようです。