(国境を分断する有刺鉄線【9月19日 GNV】 30年後、50年後には、気候難民の流入を阻止するために、先進国国境でも、富裕層居住エリアでもこうした「壁」が・・・・)
【「プライベートの消防隊」で焼火事から豪邸を守る富裕層】
今朝、TVをつけると聞きなれない言葉が。
「気候アパルトヘイト」「プライベートの消防隊」
****差別?温暖化が広げる格差“気候アパルトヘイト” *****
NHK総合 【おはよう日本】
世界各地で相次ぐハリケーンや洪水などの災害。温暖化との関連も指摘され、対策を求める声が高まっている。
スペインで行われている国連の温暖化対策会議・COP25。危機感を強める世界の若者たちも声を上げた。
そこで注目されたのは「アパルトヘイト」というキーワード。(中略)
アパルトヘイトという言葉は、国連が出した報告書「Climate change and poverty(気候変動と貧困)」で使われ注目を集めたもの。
温暖化が貧困を生み、格差を広げていると指摘していて、このままでは人種差別と同じような事態になりかねないと強い危機感を表したことば。
途上国だけでなく、先進国でも強く意識されるようになってきている。
温暖化との関連が指摘されている、ハリケーンや山火事に相次いで見舞われた米国の状況を取材。
米国ではプライベートの消防隊が富裕層の間で人気を集めている。
温暖化は経済活動によって引き起こされているのに、守られるのは富裕層ばかりで、貧しい人々は放置されている。
今、若者を中心にこうした格差の拡大に怒りの声が広がっている。
国連の専門家によると、こうした同じようなことはほかの国でも起きていると指摘。
国連の報告書で最初に気候アパルトヘイトを指摘したニューヨーク大学・フィリップオーストン教授は、再生可能エネルギーへの転換とともに、温暖化で被害を受けた人たちへの補償も必要だと指摘している。
日本の専門家は今後、こうした災害が繰り返されると、この気候アパルトヘイトを海外の話では済ますことができなくなると指摘。今後の防災のあり方についても、立ち直る力が十分でない人や、場所に関して予防策に尽力すべきだと話している。【12月15日 JCCテレビすべて】
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カリフォルニアの山火事のニュースはよく目にしますが、山火事の現場で富裕層の豪邸の一画だけが焼けずに残っている・・・その理由の一つが「プライベートな消防隊」ということのようです。
いろんな消火剤や方法を使って、火の手が回るのを防いでくれるとか。
当然、貧乏人には手がない出ない費用がかかりますので、貧乏人は自宅が焼けるのをただ眺めるしかない・・・ということです。
****囚人消防士から消火ビジネスまで…「カリフォルニア大火」舞台裏****
(中略)カリフォルニアの火事は毎年のように起きるが、いったいなぜここまで燃えさかるのか。
カリフォルニアでは、乾季は一面が茶色い枯れ草だらけになる。(中略)
そこそこの長さのある枯れ草が密集して生えているので、いったん火が付けば、あっという間に炎は燃え広がる。そこに乾燥した季節風が「ふいご」のように風を送るのだ。
今年は特にこの風が強く、フェーン現象が加わる山の風下側はきわめて乾燥していた。(中略)
トランプ大統領は、「毎年カリフォルニアの火事で出費がかさむ」とニューサム知事をツイッターで非難したが、知事は「地球温暖化を信じていない人間から言われる筋合いはない」とツイートし返している。
この2人は以前から折り合いが悪い。大統領は下草を刈れと言っているが、その作業は火を消すよりはるかに大変だろう。(中略)
ソノマの山火事には、州内506の消防署から応援が駆けつけたほか、他州の159の消防署が消防活動に参加し、ピーク時には5245名の消防士が活動した。
さらに、囚人たちが時給1ドルで消防活動に参加している。カリフォルニアでは1946年からこうした動きがあり、今では州内44カ所の収容所が、消火活動に参加させるプログラムを実施している。およそ2600名の囚人が作業に従事できる資格を持っている。
スキルを身につけたとしても前科者は消防士として採用されないため、出所後のキャリアにはならないが、“Do the right thing.”(いいことをしよう)という掛け声のもと、囚人達が危険な任務を引き受けてくれている。
その一方、プライベートで消防士と契約する人も増加中だ。プライベート消防会社は1980年代から存在し、多くは保険会社のために働いているが、現在は全米に250社ほどあって成長産業になっている。費用は最大で1日3000ドルくらい。昨年はキム・カーダシアンの個人宅で消火活動して、物議を醸した。
カリフォルニアではもうしばらく乾燥した天気が続く予想だ。今回、多くの家庭で、家の保険が10%ほど値上がりした。ここ数年、州内に引っ越してくる人より州外へ越していく人の方が多いのも、物価高や悪化する山火事、電気会社の混乱などが原因だろう。この流れはまだまだ続きそうだ。(取材・文/白戸京子)【11月10日 SmartFLASH】
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カリフォルニア州知事とトランプ大統領のやり取り、囚人消防士も面白いですが、今日の論点は「プライベート消防会社」 “現在は全米に250社”・・・ちょっとした山火事ビジネスですね。
温暖化ガスをまき散らす経済活動で富を築いた富裕層・先進国住民は、その資金力で温暖化被害に対しても「プライベート消防会社」のような対応を準備しているのに対し、温暖化の被害を集中的に受けて、その被害から立ち直ることも困難な貧困層・途上国という「分離」の構図が「気候アパルトヘイト」ということのようです。
【「気候アパルトヘイト」 現状に大きな責任を有する持てる者はしばらくの間うまく対応、しかし、持たざる者はより一層貧困に陥り、生活苦にあえぐ】
まあ、何事につけ富裕層はダメージを免れて更に金持ちとなり、貧乏人は・・・という話はありますが、温暖化もそういう話だとのこと。
****気候変動が生む、新たな「アパルトヘイト」*****
気候変動は私たちの住む地球の姿を大きく変えようとしている。この来たるべき変化に対し、持てる者はしばらくの間うまく対応するだろう。しかし、持たざる者はより一層貧困に陥り、生活苦にあえぐ。
気候変動は、今すでに二分化されたこの世界の格差をさらに広げているのである。それによって導かれるのは新たなる「分離」、「気候アパルトヘイト(climate apartheid)」だ。
なかでも大富豪たちはこの「生存競争」にせっせと備え始めており、想像を超えるような計画をしていると囁かれている。
気候アパルトヘイトとは何か
(中略)アパルトヘイトとは本来、アフリカーンス語で「分離」「隔離」を意味する語であり、かつて南アフリカ共和国で行われていた人種隔離政策を指すことが多い。
(中略)気候アパルトヘイトは、富裕層と貧困層とで気候変動の引き起こすさまざまな問題に対応する能力が異なり、そのためある種の分離が発生すること、さらに結果として現在の貧富格差を広げてしまう現象のことである。
この言葉を初めて使用したのは国際連合人権理事会であるが、発表された報告書には「富裕層がお金を支払うことで猛暑、飢え、武力紛争をしのぎ、残りの人々がそれらを被る状況」と定義されている。
(中略)そもそも気候変動は、人間の活動によって、産業革命時から地球の平均気温が約1℃(現時点で)上昇していることに起因している。これにより猛暑や異常気象、海面上昇、頻繁な森林火災などが発生しており、多くの人の生活が脅かされている。
(中略)例えば中米では、気温上昇のため多くのプランテーション労働者たちが脱水症状を起こしており、それが原因で腎臓病が増えている。
また、極端な豪雨や雨不足により、洪水・干ばつが頻繁に起こることで食糧供給が不安定になり、飢えを深刻化させてしまう。そして海面上昇によって海岸地域や低地が浸水すれば、住処を追われる人々が続出する。
例えば、バングラデシュは洪水や海面上昇の被害が世界でトップレベルに深刻であり、2019年の大洪水では感染症も流行した。
気候変動がゆえに今のままでは生活できなくなる人々は移動を余儀なくされ、「気候難民」となりさらなる貧困や移民問題を招くのである。
研究によって推測されている気候変動の実質的な影響を見てみよう。気候変動による海面上昇や砂漠化・異常気象のため、2050年までには1億5千万から2億人もの気候難民が発生すると予想されている。
また気候アパルトヘイトが進むことで、2030年までに1億2千万人の人々が貧困に陥るという国連の報告書も発表されている。気候変動はここ50年における開発、保健、貧困対策などの進歩を巻き戻してしまう可能性さえあるという。
国連の特別調査員であり、人権の専門家であるフィリップ・オールストン氏は、国連による気候変動への対策は「明らかに不十分」であり、このままでは人権だけでなく、民主主義や法の支配さえも脅かされると示唆した。
これらの事態を一時的にもうまく逃れるには、金銭的余裕がものを言う。お金のない貧困層から気候変動に対応できなくなる一方で、富裕層だけがこの事態をうまく対処できる。
富裕層は貧困層に比べ、気候変動に対応するための選択肢が多く用意されているということだ。
ここで言う富裕層とは単に資産家を意味するものではなく、常にエアコンや丈夫な家、ライフラインや食糧へのアクセスがある工業先進国に住む人々を含む。
彼らは貧困層と違って科学技術に頼ったり、値上がりした食糧を手に入れたり、より涼しく標高の高い地域に移動したりするための費用を負担するだけの金銭的余裕があるのだ。
しかし、気候変動へ対応するのにかかる諸経費を負担できない貧困層は、その害を真正面から被る。かくして新たなるアパルトヘイトが生まれるのである。
国連による持続可能な開発目標(SDGs)に掲げられた理念「誰一人取り残さない」は、早くも失敗に終わりそうだと批判された。
ここには特筆すべき矛盾が存在する。気候変動を引き起こしている温室効果ガス排出量のうち半分は、世界で最も裕福な10%の人間によって排出されてきたものであり、一方で最貧層(総人口のうち35億人)が責任を負うのはたった10%未満なのだ。
だが皮肉なことに、気候変動が引き起こす害のうち75%を被ってしまうのは後者の貧困層である。
つまり気候変動の原因を作った人々は勝ち残り、責任のない人々が苦しむのだ。
さらに、気候変動という問題の存在だけで、貧富の格差を25%悪化させているという研究もある。
気候は人の生産性を大きく左右させる一因であり、例えば熱帯地域にあるモーリタニアやニジェールなどは、気温が上昇していなければ一人当たりGDPが現在よりも40%高かったと予想される。
一方、元から比較的に涼しい気候であった先進国の一部では、気温が上昇したことで生産性が増したのである。
このような状況では、問題の根本解決を図らない限り気候変動・気候アパルトヘイトに拍車をかけかねず、特に先進国にはこの負の連鎖を断ち切る責任があると言える。
しかしながら、これは富裕層のなかでもトップに君臨する大富豪たちにとっての脅威では必ずしもない。彼らは少々大それた計画を用意しているようだ。
気候アパルトヘイトの上流階級
このアパルトヘイトの中でも、とりわけ上流階級はすでに策を講じている。大金持ちたちは、人口が少なく住みやすい場所に新たな拠点を設けたり、地下壕を建設、さらにはプライベートの消防隊を雇うなどの備えを用意しているのだ。
例えば、決済サービスを提供する大手企業PayPal(ペイパル)の創業者であるピーター・ティール氏は、有事の際にニュージーランドに移住できるよう現地の市民権と土地を確保した。(中略)
また、フェイスブック社の元プロダクトマネージャーであるアントニオ・ガルシア・マルティネスが米国の一部の森林を買い取り、発電機や何千セットもの弾薬を備蓄していることも報じられた。
ここでも、安心・安全の居住に適した地域に金持ちが集まり、住みづらい場所に貧困層が取り残されてしまうという気候アパルトヘイトが顕著になってしまう。
このような「準備家(prepper)」たちの懸念は底知れぬものだ。貨幣に価値がなくなってしまった時のために貴金属やビットコインなどの仮想通貨を購入したり、さらには2つ目のパスポートを手にいれる方法を模索している者もいる。
このように、大富豪たちが気候変動だけにとどまらない、来たるべき「最悪の事態」を憂慮して周到な準備をし始めていることが、アメリカのメディア研究者であるダグラス・ラシュコフ氏の記事でも暴露された。
それによると、彼らは食糧供給網に自分たちしか知らない特別なロックをかけることや、生存を保障するのと引き換えに奴隷に近いような労働力を雇う、または(開発可能であるならば)警備ロボットを確保し、自身の財産を守るのに利用することなど、想像を絶するような策謀をめぐらせている。
また、チェコ共和国には世界最大の地下壕「オッピドゥム」が建設されており、大富豪専用の避難シェルターとして、地上が大惨事に見舞われても彼らの身を守ることができる。同じような避難所はドイツやアメリカなどにも建設されている。(中略)
このように公共サービスが間に合わなくても、大金持ちは個人的に人を雇うことで(プライベート消防会社のように)、災害を生き延びる術を手に入れるのである。
気候変動は各国の政策にも影響を及ぼしている。アメリカ大統領のドナルド・トランプ氏による「壁」の建設計画や、イギリスの欧州連合離脱(ブレグジット)などの政策は、萌芽しつつあるこの気候問題への初期反応なのではないかという指摘がある。
2019年9月に大型ハリケーンがバハマを直撃した際にも、多数の人々が家を失いライフラインを絶たれた状況で、トランプ氏は被災者の受け入れに難色を示し拒否した。
気候変動の責任
以上で見てきたような「気候アパルトヘイト」を止める術はないのだろうか。先述のフィリップ・オールストン氏によれば、この問題を解決するには世界経済の構造を大きく変える必要があるだけでなく、各国政府や国連、人権団体が率先して気候変動への対策だけに徹するほかないようだ。
また、具体的な対策としては炭素税が有効だとも言われている。産業が、なんの代償もなく二酸化炭素を排出することを許さないという狙いだ。
しかも再生可能エネルギーへの切り替えは決して非現実的なものではなく、長期的に見ればコストの削減にも繋がるということがスタンフォード大学での研究で分かっている。(中略)そ
しかし、富豪たちの計画を暴露したラシュコフ氏も指摘しているように、富豪たちはこのいかがわしい未来を一瞬で良い方向に変えられるほどの富と権力を持ち合わせているはずだ。それにも関わらず、気候変動を悪化させてきた責任をいとも簡単に逃れているのはいかがなものかと問わずにはいられない。(中略)
ただ「勝ち組」として生き残るのではなく、気候アパルトヘイトで苦しむ貧困層の損害を最小限にとどめるよう取り組み、コストを負担するのが先進国・富裕層の責任ではないだろうか。
そして、気候変動そのものが差し迫った危機であることだけでなく、付随する気候アパルトヘイトが世界の秩序を歪めてしまうことを正しく認識し、国際社会で対策を打つ潮流を作るのが得策だとも思われる。
いずれは富裕層も、富や権力だけでは気候変動から逃げ切れなくなってしまうことは明らかだ。各国政府や企業、国際機関が事態を深刻に受け止め、問題の優先順位を高くし、提言だけでなく実質的な対策を打つことが早急に望まれる。(後略)【9月19日 Mina Kosaka氏 GLOBAL NEWS VIEW】
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気候アパルトヘイトの問題を提起した貧困と人権に関する国連の特任リポーターであるフィリップ・アルストン氏によれば、今世紀において貧しい国の人々が自然災害で亡くなる可能性は、裕福な国の市民の7倍にも達しており。そしてこのギャップは気候変動が進むほどに広がるとのこと。【7月20日 TOCANAより】
二酸化炭素排出の責任が最も低い国と地域が、海面上昇による水没などこうした問題を最も深刻な影響を受けるという現実、なのに二酸化炭素排出の責任が高い先進国が応分の責任を果たそうとせず、途上国にも一律的な対応を求めてくる・・・というのは毎年のCOPで繰り返し議論となる問題です。
「気候アパルトヘイト」という言葉は、こうした問題を含めて、改めて富裕層・先進国の責任を問う概念です。
映画・ドラマが描くディストピアでは、しばしば「気候アパルトヘイト」の行くつく世界が描かれますが、現実はこうしたディストピアを回避できるのか、それとも・・・・。