孤帆の遠影碧空に尽き

年に3回ほどアジアの国を中心に旅行、それが時間の流れに刻む印となっています。そんな私の思うこといろいろ。

グリーンランド  トランプ大統領の購入話の背景には、北米に「親中国家」誕生の危機感も

2019-08-26 22:04:21 | 環境

((グリーンランド購入という)現実離れしたような構想を復活させたのは、北米に親中国家が誕生するかもしれないとの危機感だ【826日 朝日】)

 

【いかにもトランプ大統領らしい展開】

トランプ大統領がデンマーク領のグリーンランド購入に関心を示していることが報道され、デンマーク首相が「冗談だろうけど、グリーンランドは売り物じゃない。ばかげている。」と即座に拒否、これにトランプ大統領がいたく不機嫌になり、ヘソを曲げた・・・という話は周知のところです。

 

****「グリーンランド売らないなら行かない」トランプ訪問中止の非礼にデンマークで驚きと怒り****

<グリーンランド買収話を「ばかげている」と中道左派の女性首相に一蹴され、へそを曲げたトランプにデンマーク政界はあきれ顔>

ドナルド・トランプ米大統領が92日に予定していたデンマーク訪問をキャンセルし、これがデンマーク王室に対する侮辱だと怒りの声が上がっている。

トランプはデンマークの女王マルグレーテ2世の招待を受けて、同国を訪問することになっていた。だが、トランプがデンマークの自治領である世界最大の島グリーンランドの購入に関心を示していることに対し、デンマークのメッテ・フレデリクセン首相が「グリーンランドは売り物ではない」と釘を刺すと、すぐさま訪問中止を発表した。

事の発端は、ウォールストリート・ジャーナルが先週、トランプがグリーンランドの購入を示唆したと報道したこと。フレデリクセン首相はこの話を「ばかげている」と一蹴した。

トランプは20日、「デンマークは素晴らしい人たちが住むとても特別な国だ」とツイート。「だがメッテ・フレデリクセン首相の発言によると、彼女はグリーンランドの売買について話し合うことに関心がないようなので、2週間後に予定されていた訪問は延期する」

デンマーク王室はノーコメント
トランプはさらに皮肉を込めて、「首相のストレートな発言のおかげで、アメリカとデンマーク双方が膨大な費用と労力を無駄にせずに済んだ」と、ツイートを続けた。「その点では首相に感謝する。いつかまた訪問の予定を組むのを楽しみにしている」

トランプのツイートでは「延期」という表現が使われたものの、ホワイトハウスは訪問を中止したと発表し、BBCの報道によれば、デンマーク王室も中止と受け止めている。デンマーク王室の広報責任者レーネ・バレビーは「驚きだった」と認めつつ、「この件についてはこれ以上申し上げることはない」と報道陣の質問を突っぱねた。

デンマークとグリーンランド自治政府の政治家は、突然の訪問中止と、トランプが本気で購入を考えていたことに呆れ返り、怒りを露わにしている。

野党・保守党のラスムス・ヤルロフ議員はこうツイートした。「デンマーク人として(また、1人の保守主義者として)、これは信じがたいことだ。トランプは何の理由もなく、わが国の一部である自治領を売り物とみなし、誰もが準備していた訪問をぶしつけにもキャンセルした。アメリカの一部も売り物なのか。アラスカを売るのか? 頼むから、もう少し敬意を払ってほしい」

デンマーク国民党の共同創設者で、デンマーク国会の議長も務めたピア・グラスゴーは、トランプの訪問中止は、デンマーク王室への「敬意を完全に欠いた」決定だとツイートした。(中略)

グリーンランド自治政府のキム・キールセン首相は以前に、「グリーランドは売り物ではないが、アメリカを含め他の国々との貿易と協調には、喜んで話し合いに応じる」と述べている。

デンマーク政府は売買話をすぐさま一蹴したが、グリーンランドにおける米軍のプレゼンスをめぐっては、米政府との連携を密にするため協議を行うつもりだった。

大西洋と北極海の間に位置するグリーンランドは戦略的に重要な島だ。島の西北部にある米空軍のチューレ基地からは、北米に向かう大陸間弾道ミサイル(ICBM)を早期に探知できる。

今後、米軍のグリーンランドにおけるプレゼンスの拡大は「避けられない」と、フレデリクセン首相は語っている。

「(地球温暖化で氷の融解が進む)北極海ではここ数年、幸いにも平和的な開発が行われている。あらゆる理由から、世界は今後もこの動きを支持すべきだ。しかし一部の国々が北極海に関心を示し始め、安全保障面に影響がおよんでいる。これに対しては断固たる対応が必要だ」と、フレデリクセンは地元放送局TV2のニュース番組で語った。【822日 Newsweek
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ちなみに、フレデリクセン首相とトランプ大統領がどういう言葉で応酬しているかについては、“トランプ大統領は、デンマークのフレデリクセン首相に対して「ノーならノーとだけ言えばいいのに、バカげた(absurd)考えだなどと言う言い方をしたのは、底意地が悪い(nasty)な女だ」と激しく罵倒しています。”【823日 冷泉彰彦氏 Newsweek

 

アメリカはこれまでもルイジアナやアラスカなど、「買収」によって国土を拡大してきていますので、今回のグリーンランド買収の話は、唐突のようにも思えますが、決して絵空事とかトランプ大統領の妄言という訳でもありません。

 

****米国による外国の土地買収****

米国は過去に外国からの土地買収を通じて領土を拡張してきた。

 

ジェファソン大統領は1803年、現在の南部ルイジアナ州から北部モンタナ州にまたがる地域をフランスから購入。アンドリュー・ジョンソン大統領は67年、西部のアラスカをロシアから買い取った。

 

ウィルソン大統領は1917年、現在の米領バージン諸島をデンマークから購入した。

 

グリーンランドをめぐっては、トルーマン大統領が46年に1億ドル相当の金塊と引き換えに買収を図ったが失敗している。【823日 産経】

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この騒動は、一応は収拾がついたようです。

 

****デンマーク首相は「素晴らしい女性」 トランプ氏が姿勢転換****

ドナルド・トランプ米大統領は23日、デンマークのメッテ・フレデリクセン首相について、「素晴らしい女性」などと称賛した。

 

トランプ氏はこの2日前、来月に予定していたデンマーク訪問を取りやめ、グリーンランドを購入するという自らのアイデアを拒否した同首相を「意地が悪い」と批判していた。

 

しかし23日、トランプ氏は「素晴らしい女性」と称賛し、同首相に対する姿勢を転換する形となった。

 

主要7か国首脳会議(サミット)出席のためフランスへ向かう準備を進める中、トランプ氏は報道陣に対して「われわれは素晴らしい会話ができた」と発言。「デンマークとはとても良い関係を持っており、後ほど話し合うことで合意した。だが、彼女はとても良い人だった。彼女が私に電話をしてくれて、とても感謝している」と語った。(後略)【824日 AFP】AFPBB News

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このあたりの変わり身の早さは、トランプ大統領の得意技というか真骨頂です。

 

この騒動について、デンマーク訪問をキャンセルするなど“いかにもトランプ大統領らしい”という感じがして、また、不動産業を本業とするトランプ大統領らしい発想という印象もあって、「面白い話」として眺めていたのですが、現在の国際情勢を考えると、もう少し真面目に考えた方がいい案件のようです。

 

【温暖化とともに利用価値が高まる一方で、中国の存在感拡大 将来の独立時には・・・】

世界最大の島グリーンランドについては、これまでも温暖化に伴う環境変化でその利用価値が急速に高まっていることなどを取り上げてきました。

212日ブログ“温暖化の「恩恵」を受けるグリーンランド  自治政府が進める空港建設をめぐる米中のせめぎあい”など)

 

また、北極海におけるアメリカ、中国、ロシアの争いについては、522日ブログ「温暖化に背を向けるトランプ米政権が、中ロの北極海進出を警戒・けん制するという支離滅裂」でも取り上げました。

 

****グリーンランド****

8割以上が氷に覆われ、人口約5万6千人の約9割は先住民系で、1万8千人が中心都市ヌークに集中する。

 

1721年にデンマークからキリスト教宣教師が派遣され、植民地になった。1979年に自治政府が発足。85年に欧州共同体(EC)から脱退した。住民投票を経て2009年に自治権が外交・安全保障を除くほぼ全ての領域に拡大された。

 

コペンハーゲン大とグリーンランド大による昨年の調査では、67%が「将来のどこかの時点で独立すべきだ」と回答した。【826日 朝日】

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こうした事情を踏まえると、以下のような話にも。

 

****氷の島に打ち込まれたくさび 極地の覇権争う米中の思惑****

北極圏にある世界最大の島グリーンランドを米国がデンマークから買収する――。こんな構想が米政権内で検討されていることが明らかになった。

 

「戦略的に興味深い」。トランプ大統領は18日、報道陣にそう語った。

 

日本の約6倍の土地に人口5万6千人ほど。地理区分では北米に属する。米国はトルーマン大統領が1946年に買収話を持ちかけたが成立しなかった。今回もデンマークのフレデリクセン首相は「ばかげている」と一蹴した。

 

現実離れしたような構想を復活させたのは、北米に親中国家が誕生するかもしれないとの危機感だ。

 

6月下旬、島の中心都市ヌークは活気づいていた。

「滑走路が延長され、欧州からジェット機の直行便が飛べるようになるんだ」

タクシー運転手の男性は声を弾ませた。目抜き通りのホテルの壁には、飛行機の絵に新滑走路の長さ「2200メートル」と書かれたポスターが掲げられていた。

 

空港の拡張は、多くの島民が願う独立への一歩になりうる。2009年に自治権が拡大されたが、自治政府の歳入の半分はデンマーク政府の補助金頼みで、経済的自立が課題だった。

 

それが温暖化の影響で氷が溶け始め、資源開発がしやすくなった。島内で大型機が発着できる空港は遠隔地にある旧米軍基地に限られる。ヌーク空港が拡張され、人や投資が直接流れ込めば、突破口が開ける。

 

グリーンランド議会がヌークを含む3空港の拡張計画を決定したのは15年。総事業費36億クローネ(約570億円)は島の域内総生産(GDP)の約2割に当たり、デンマーク政府は負担に消極的だった。

 

自治政府が頼ったのが中国だった。17年、自治政府のキールセン首相が北京を訪問。中国国有の建設大手・中国交通建設や、中国輸出入銀行などを回り、空港計画に協力を求めた。

 

待ったをかけたのが米国だった。米国は島の北部のチューレに空軍基地を置く。米本土に飛んでくる大陸間弾道ミサイル(ICBM)を検知するレーダーがある重要な防衛拠点だ。

 

米軍当局者によると、18年5月、マティス米国防長官(当時)は米国を訪問したデンマークの国防相に「中国に北極圏での軍事力を広げさせてはいけない」とクギを刺した。デンマーク政府は空港拡張への慎重姿勢を一変させ、7億クローネを出資し、4・5億クローネを低利融資すると申し出た。残りは主にグリーンランド自治政府が負担することで決着した。

 

だが、この動きは独立派を刺激した。グリーンランド議会のビビアン・モッツフェルト議長(47)は「米国とデンマークのふるまいは傲慢(ごうまん)だ。中国が私たちに投資をしたいなら、今後も排除しない」と話す。

 

中国はパンダの貸与や投資でデンマークに接近し、レアアース鉱山などへの投資で次第に島へ直接進出するようになった。投資額は島のGDPの1割を超す。空港拡張計画から締め出されたとはいえ、中国への期待は高い。

 

デンマーク王立防衛大軍事作戦研究所のヨン・ラーベック・クレメンセン准教授(36)は「中国には軍事的、戦略的な関心がある。中国の進出を許した場合、いざ独立という時に、グリーンランドが西洋の同盟から押し出される事態もありうる」と指摘する。

 

中国がグリーンランドに打ち込んだくさび。その波紋が北極の静寂を破り始めた。(後略)【826日 朝日】

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なお、上記朝日記事の紙面上の記事見出しは“北米に「親中国家」 危機感”でした。

 

北米に「親中国家」・・・・最初はピンときませんでした。「北米? 南米の間違いじゃないの? 北米っていったらアメリカの他はカナダしかないじゃない。カナダが「親中国家」に?・・・」

 

しかし、冒頭地図を見れば納得です。

普段見ている地図ではグリーンランドは北欧・アイスランドのかなた・・・というイメージですが、実際はまさに北米です。

 

今後、温暖化の進展とともにますますグリーンランドの地下資源利用等の経済的価値は高まり、それとともに「独立」ということが現実的な政治課題ともなってくるでしょう。

 

そのとき、中国の影響力が更に強まっていれば、なるほど“北米に「親中国家」”誕生ともなります。

 

トランプ大統領が「今のうちに・・・」と考えるのも、無理からぬところです。

ただ、「親中国家」になるかどうかは別にして、温暖化進行ですでに動き始めているグリーンランドを買い取るというのはもはや無理でしょう。不動産業に精通したトランプ大統領なら百も承知のところとも思うのですが。

 

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インド「構造的水不足」、アメリカ「巨大帯水層発見」、ペルー「アムナス」 水資源への対応

2019-07-17 22:09:07 | 環境

(【ウィキペディア】インドは昔から水をいかに利用するかが大きな問題でした。画像は巨大な階段井戸のひとつ。「井戸」という言葉が不適当なほど巨大で壮麗な建築物です。)

 

【インドでは、高度または極度の「水ストレス」に6億人が直面している】

インドでは先月まで深刻な熱波・水不足が報じられていましたが、最近の状況はどうなっているのでしょうか?

 

インドでは一番大きな降水量をもたらす南西モンスーン(6月初めごろに南部から雨季が始まり、7月初めごろに国全体が雨季に入る)の季節に入っていますので、水不足も解消しているのでしょうか?

 

ただ、今年の水不足が一時的に解消したとしても、インドも水不足は降水量の長期的減少、人口増にともなう水需要の増大、非効率的水利用といった構造的要因によるものですから、今後も、より深刻な形で繰り返されることが懸念されます。

 

****200人以上死亡の熱波につづき、インドの水不足が深刻****

5月末から記録的な熱波が続くインドで、今度は水不足が深刻な問題となっている......

昨年の南アフリカにつづき、今年はインドで深刻な水不足に

20181月、南アフリカ共和国のケープタウンでは、記録的な干ばつに伴って水不足となったことから、3ヶ月後の412日を「デイ・ゼロ」と称し、その日以降、水道水の供給を停止し、市民には給水所を通じて生活用水を提供すると発表した。

 

その後、市民による節水活動などが奏功し、「デイ・ゼロ」は免れたが、世界的に都市居住者が増加するなか、都市部での水不足について警鐘を鳴らす事象としても注目された。

2019
6月現在、インドも同様の危機的状況に陥っている。慢性的な干ばつに加え、20195月末から続く記録的な熱波が続いている。618日にも、ニューデリーで6月では過去最高の48度を記録し、これまでに200人が死亡している。

インド南東部チェンナイでは、4カ所の貯水池すべてがほぼ干上がっている

こうした影響で人口約465万人を擁するインド南東部の都市チェンナイでは、4カ所の貯水池すべてがほぼ干上がり、チェンナイ都市圏上下水道公社(CMWSSB)が水供給量を約40%削減する措置を講じた。

公営水道を利用する605千世帯では世帯あたり1120リットルが供給されてきたが、この措置により水供給量が170リットルにまで減らされている。

このような深刻な水不足は、市民の日常生活や経済活動に大きな影響を及ぼしている。ロイターの報道によると、私設の給水ポンプには生活用水を求める市民が長時間にわたって列をなし、多くのホテルや飲食店が臨時休業しているほか、企業のオフィスでも食堂やトイレでの水の使用が制限されているという。

インド国内の21都市で地下水が枯渇し、1億人以上に影響が出る
水不足は、チェンナイにとどまらず、インド全土で懸念されている。インドでは、集水システムが十分に整備されておらず、地下水に依存している地域が多い。長年、地下水源を得るために地面を掘削し続けてきた結果、地下水の枯渇も深刻だ。

インドで水不足の解消に取り組む非営利団体「FORCE」の代表ジョティ・シャーマ氏は、米テレビ局CNNの取材に対して「インド政府は、国民が水を確保できるよう懸命に取り組んでいるが、地下水源が枯渇するスピードは年々速くなっている」と述べている。

インドの行政委員会(NITI Aayog)が20186月に水資源省らと共同で策定した報告書によると、インドでは、高度または極度の「水ストレス」に6億人が直面している。

この報告書では「2020年までに、デリーやバンガロールを含むインド国内の21都市で地下水が枯渇し、1億人以上に影響が出る」とし、「2030年までに水の需要量は供給量の2倍となる。多くの国民にとって水不足はさらに深刻となり、インドの国内総生産(GDP)の6%程度のマイナス影響が見込まれる」との予測を示している。

 

シャーマ氏は「降雨量の変化に適応した貯水をしなければ、都市であれ、村落であれ、インド全土で水不足がより深刻になるだろう」と警告している。【624日 Newsweek

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****インド全土の4割以上が干ばつ状態に****
(中略)インドでは年間降水量の75%以上が69月の4カ月間にもたらされる。他方、それらの時期を除けば降水量が少なく、多くの地域で雨の降らない日が続く。

 

また、降水量は地域によって大きく異なり、例年、南部のケララ州などのある西ガーツ地域、北東部のヒマラヤ近郊地域やメガラヤ丘陵地域は年間2,500mm以上の降雨があるが、インド最北端のカシミールや西部ラジャスタンの年間降水量は400mmに満たない。

 

インドでは、農業セクターが水消費量の約8割を占めるとされるが、灌漑インフラが十分に整備されていない地域も多く、降水量の多寡はダムや河川などを介しての水の供給に大きな影響を与える。

 

しかし、このようにインドにとって重要な降水量が、近年では減少傾向にある。19512000年における降水量の記録から算出される標準降水量と、20002017年の降水量を比較すると、2000年以降の18年間の年間降水量は平均1,108.7mmしかなく、これは標準降水量の93%に過ぎない。

 

その間、2001年には102,874万人(国勢調査)だった人口は、2011年に121,019万人(国勢調査)となり、2019年時点では135,177万人(IMF)に上ると推計されている。

 

これは2000年以降の18年間で、降水量がそれ以前より平均7%少ない状態が続く一方で、人口が約30%増加したことを示している。

 

地下水の水位が減少、深い井戸も多く存在

インドでは、地下水も重要な水資源の1つとなっており、水供給の40%を占めるとされる。ところが、近年、この地下水の水位が大きく減少している。

 

政府諮問機関のインド行政委員会(NITI Aayog)は、20186月に発表した「複合的な水管理指標(CWMI)」に関するレポートの中で、世界銀行など外部機関のレポートを引用し、「過剰取水により全国で54%の井戸の地下水位が低下、2020年にインドの主要21都市で地下水が枯渇し、1億人に影響が出ると予想される」とした。

 

実際に、井戸の地下水位がすでに深くなっている地域も多い。中央地下水委員会の「地下水年鑑2017年度PDFファイル(外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)(14.2MB 」によると、20181月時点で調査された井戸のうち、地下水位が20mより深い井戸が、北西部のラジャスタン州では37%、同パンジャブ州では28%となっている。

 

降水量の減少や人口増加、地下水位の低下など水が不足する中で、今後、インド政府としてどのような対策をとるのかが問われるだろう。 【710日 JETRO

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2000年以降の18年間で、降水量がそれ以前より平均7%少ない状態が続く一方で、人口が約30%増加”ということであれば、水不足が深刻化するのも当然の結果でもあります。

 

そういう状況であれば、少なくとも水資源利用を工夫する必要がありますが、インドの場合、少ない水資源を無駄にしている面が多々あります。

 

モディ政権も、こうした状況を座視している訳でもありませんが、どこまで対応できるのか・・・・。

 

****2期モディ政権、水専門の省庁を設立(インド)****
深刻化するインドの水不足とモディ政権の取り組み

 

(中略)

深刻化する水不足、農業セクターでの非効率的な水利用が課題

インドにおける水不足は、近年の降水量の減少、急激な都市化と人口増加に伴う水使用量の増加、地下水の過剰採取による地下水位の低下、水関連インフラの未整備など複数の要因が重なることで、深刻化していると考えられる。

 

これらの中には抜本的な対策が困難なものも含まれるが、取り組みによって各地で発生する水不足を軽減・改善しうるものもある。

 

まず、水消費量の約8割を占めるとされる農業セクターにおける水の使用を効率化することが求められる。インドの耕作地に対する灌漑普及率は34.5%にとどまっており、農家の多くが地下水を使用しているが、耕作量の増加に伴って水の使用量が増え、地下水の過剰採取につながっているとされる。加えて、農作物に対する水の利用効率が悪いことが、農家の過度な水利用の原因となっているとの指摘もある。

 

供給面では、水道インフラの更新と整備が求められる。インドでは、敷設された配水管の老朽化による破損などで、給水源から各家庭や工場などユーザーに届くまでの漏水率が約40%に上るとも言われる。

 

また、水道普及率が高くなく、農村部での普及率は18%にとどまるため、水道のない家庭の多くが井戸水を利用している。都市部でも水道インフラや水の供給が十分でないところなどでは井戸水が利用されているほか、水が不足する際には水道当局や民間企業が郊外の水源などから水をくみ上げ、タンクローリーで運搬して各ユーザーに届けるなど、非効率な供給が行われている。

 

さらに、多くの地域で年間を通じて雨が降る時期が限られているため、雨季の間に貴重な雨水を無駄なく貯留することや、汚水を処理して再利用することが重要になる。

 

インドでは雨水の利用率が低い上に、汚水の約7割が未処理とされるため、雨水貯留設備や排水処理施設などのインフラを整備することにより、供給可能な水の量を増やす余地がある。

 

水不足軽減・解消に向けた2期目のモディ政権の取り組み

深刻化する水不足を解消していくためには、中央・州政府が協力し、包括的な対策を行うことが不可欠であり、2期目を迎えたナレンドラ・モディ政権もその重要性を認識している。

 

モディ政権は531日、従来の水資源・河川開発・ガンジス川再生省と飲料水・公衆衛生省を統合し、選挙マニフェストに掲げていたジャル・シャクティ(Jal Shakti)省を新設した。ジャル・シャクティとは、ヒンディー語で「水の力」を意味し、同省は水資源の開発や規制に向けた政策やプログラムの策定などを所管する。

 

(中略)インド憲法では水に関する立法権は州政府の所管事項とされているが、モディ政権は州政府と協力し、水不足解消に向けて取り組む姿勢を全面に出している。

 

加えて、同会合(615日、NITI Aayogの第5回会合)の冒頭では、モディ首相が「中央政府の水に関する諸問題に対する統合的アプローチの主な目的の1つは、2024年までに全農村へ水道を普及させることだ」と述べたという(タイムズ・オブ・インディア紙、616日)。

 

1期目のモディ政権は、38%しか普及していなかったトイレ施設を99%Swachh Bharat Mission公表値)まで普及させた。

 

現在、水道普及率が20%以下にとどまる農村に水道を普及させつつ、喫緊の課題である水不足解消に向けた取り組みをどのように推進していくか、2期目のモディ政権の政策が注目される。 【710日 JETRO

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38%しか普及していなかったトイレ施設を99%まで普及させた”・・・・どこから出てきた数字でしょうか?

統計数字の細工は、問題の解決を遅らせるだけで困りますが・・・・。

 

より長期的な話をすれば、インドを含む南アジアおよび東南アジアの水源となっている巨大河川が、温暖化の影響によるヒマラヤ氷河の急速な縮小によって枯渇していくという大問題もあることは、かねて指摘しているところです。

 

【アメリカ 巨大な帯水層の発見】

水資源の不足・枯渇はインドに限らず、世界的にみられる現象ですが、アメリカでは巨大な帯水層が海底下にみつかったという“朗報”も。

 

****水不足に希望!? 巨大な帯水層がアメリカ北東岸沖の海の下で見つかる****

<アメリカ大西洋岸で350キロメートル以上にわたって、巨大な帯水層(地下水を含んでいる地層)があるらしいことがわかった......

 

アメリカ北東岸沖の海底下で巨大な帯水層(地下水を含んでいる地層)が見つかった。この帯水層の長さはマサチューセッツ州からニュージャージー州にわたる50マイル(約80.5キロメートル)以上にわたり、これまでに見つかった帯水層の中で最大級のものだ。(中略)

 

この測定データを分析したところ、帯水層はアメリカ大西洋岸で350キロメートル以上に伸び、2800立方キロメートルの低塩分地下水を擁しているとみられる。氷河期に大量の水が地下の地層に蓄えられたと考えられている。(中略)

 

水不足地域で、貴重な水資源となる......

2018年に南アフリカ共和国のケープタウンで深刻な水不足となり、20196月以降、インド南東部のチェンナイでも水不足が続いている

 

今回アメリカ北東岸沖で見つかった海底下の帯水層から取水する場合、ほとんどの用途で淡水化する必要はあるものの、キー准教授は「淡水化に要する費用は、海水の淡水化に比べてずっと少ない」と指摘。

 

「カリフォルニア州南部やオーストラリア、中東など、水不足の課題を抱える他の国や地域で大きな帯水層が発見できれば、貴重な水資源となるだろう」と期待感を示している。【73日 Newsweek

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【南米ペルーの「アムナス」 先住民の知恵を取り戻して再評価し、現代科学で補って、今ある課題に解決策を与える】

新たな水資源開発だけでなく、水利用の効率化を図っていく必要があるのは、インドの事例でも指摘されているところです。

 

古代より人類の歴史は、水利用の歴史でもありました。

中国・黄河の治水、エジプトのナイル川洪水の利用、アンコールワットに見られる大規模な治水・灌漑システム等々。

 

インドにも、世界遺産にもなっている「階段井戸」と呼ばれる壮麗な巨大井戸が存在します。

 

そうした過去の人類の叡智を現代でも活用できる事例もあるようです。

昔からある水利用システムと言うと、中央アジアから西アジアにかけての水利システム「カレーズ」(カナート)が思い浮かびますが、下記記事は南米ペルーの「アムナス」に関するものです。

 

****1400年前の古代水路が現代の水不足を救う、研究****

南米ペルー沿岸部の砂漠には、長い乾期がある。そしてこの地域で古代に栄えてきた文明、インカやナスカ、チャビン、ワリなどは、いずれも雨期の降水を最大限に活用する方法を知っていた。

 

首都リマから車で2時間のところにあるアンデスの山村、ウアマンタンガでは、住民たちが今も1400年前の技術を利用している。古代水路「アムナス」だ。

 

アムナスは石造りの浅い水路で、雨期に降った雨水はここを通って砂と岩の多い場所まで流れていき、地中にしみ込む。水は地表より地下の方がゆっくりと流れるため、地下に入った雨水は、しばらく経った後で地中から泉となって湧き出る。つまり、雨期の水が乾期に使えるようになっているのだ。

 

このほど、この古代水路アムナスの機能が初めて調査された。アムナスはアンデス高地の各地にあり、放棄されたものも多い。だが、修復して活用することで、世界第2位の砂漠都市であるリマをどれだけ支えられるか、研究者たちが試算した。

 

人口1000万に届こうとしているリマではダムや貯水池を設けているものの、それでも不十分で、平均的な乾期には4300万立方メートルの水が不足する。リマの水の総需要は、年間84800万立方メートルだ。

 

雨期にリマク川流域を流れる水の34.7%をアムナスに移すことで、9900万立方メートルの水を乾期に備えて貯めることができ、これは必要量の2倍以上になると、研究者たちは報告している。この研究結果は、学術誌「Nature Sustainability6月号に掲載された。

 

研究チームは、染料を使った追跡調査と、流路に沿った水量の計測から、古くからの水路によって水が実際に地下に移動し、山を下り、最終的に泉から出てくることを示した。そのタイムラグの長さが、大きな発見の1つだった。水は2週間から8カ月後に再び地表に現れ、地下を流れる平均期間は45日だった。

 

アムナスの利用を増やせば、乾期初めのリマク川の流量を33%増やすことができ、水の管理者が貯水池に頼るタイミングを遅らせることができそうだという。

 

古代水路アムナスの驚くべき正確さ

研究者たちは、地元の人々の助けを得て、どの水路がどの泉につながっているのかという位置を把握した。それが「とても正確」だと染料テストで証明され「驚かされました」と、論文の筆頭著者、ボリス・オチョア=トカチ氏は話す。

 

英インペリアル・カレッジ・ロンドンの土木技師である同氏は「先住民の知恵を取り戻して再評価し、現代科学で補って、今ある課題に解決策を与える」ことに大きな潜在力があるのを示した、と語っている。

 

気候変動の影響で、氷河や雪塊といった自然の貯水機能が失われつつあることを考えると、アムナスの復旧はとても有効ではないかと、米カリフォルニア大学デービス校の水文地質学者、グレアム・フォッグ氏は話す。(中略)

 

大型ダムは水不足の解決策にはならない

(中略)「アムナスは人が作ったものですが、水は土壌の中に蓄えられるので、自然に根差したシステムだと考えられます」と、オチョア=トカチ氏は話す。(中略)

 

アムナスのような解決策は、(大型のコンクリートダムのような)灰色のインフラの約10分の1の費用で済むとオチョア=トカチ氏は話す。

 

しかも、気候変動でペルーの降水パターンは変化しており、雨期はより雨が多く、乾期はますます雨が少なくなる傾向にある。この新たな現実に水の管理者が適応しようとしている今、費用がかさむ大型ダムを建設することは解決にならない、と研究チームは示唆している。

 

むしろ、広い範囲でアムナスを修復する方が安価であり、必要に応じて修復する数を増やすこともできるので、より柔軟なアプローチになる。

 

リマの水の未来を守るには、自然だけでなく古代と現代の技術を用いたハイブリッドの手法をとることが必要だと、論文は結論付けている。【712日 NATIONAL GEOGRAPHIC

****************

 

「先住民の知恵を取り戻して再評価し、現代科学で補って、今ある課題に解決策を与える」・・・・ロマンのある話ですね。

 

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アメリカ  大統領選挙の争点となる気候変動対策 爆弾サイクロンでトランプ支持層でも高まる関心

2019-06-21 22:06:00 | 環境

3月末にパキスタン・フンザを旅行した際に、カラコルムハイウェイ沿いから見たパスー氷河先端)

 

【進む氷河・氷床の融解】

温暖化・気候変動の影響と思われる氷河・氷床の融解に関しては、頻繁に報道を目にしますが、たまたま昨日、そうした記事がいくつか重なっていましたので、今日はそうした温暖化・気候変動関連の話。

 

まず、ヒマラヤ、北極、グリーンランドに関する異なる、しかし、意味するとことは同じ三つの記事。

 

****ヒマラヤの氷河融解、今世紀初めの2倍速に 米研究****

ヒマラヤ山脈の氷河の融解速度が、今世紀初頭の2倍になっているとする研究結果が19日、米科学誌「サイエンス・アドバンシーズ」に掲載された。研究には米国が冷戦時代に衛星を使って撮影し、最近、機密解除された写真が使用されている。

 

研究の結果、気候変動の影響でヒマラヤ山脈の氷河が解け、南アジア一帯に住む数億人のための水の供給を脅かしている最新の兆候が明らかになった。

 

同研究論文の筆頭著者で、米コロンビア大学博士候補生のジョシュア・マウアー氏は、「これはヒマラヤの氷河がこの期間のうちにどれほど速く融解しているのか、そしてなぜそれが起きているのかをこれまでで最も明確に示す研究だ」と述べた。

 

研究者らは、インド、中国、ネパール、ブータンにまたがる全長約2000キロに及ぶ地域を40年にわたって撮影した衛星写真を精査し、2000年以降、毎年45センチ相当のヒマラヤ山脈の氷河が消滅していることを発見した。2000年以降に融解した氷河の量は、1975年から2000年の間に融解した量の2倍に達している。

 

研究は、氷河融解の最大の要因は気温の上昇だと結論付けている。気温は地域によって異なるが、2000年から2016年の平均気温は、1975年から2000年の平均気温と比較して1度上昇している。

 

研究者らはその他の要因として降雨量の変化を挙げ、雨の減少が氷量の減少につながっていると指摘。また化石燃料の燃焼から生じる煤煙が雪で覆われた氷河の表面にかぶさり、太陽光を吸収して融解を促進していることも一因だと説明した。 【620日 AFP】

************************

 

“冷戦時代に衛星”とありますが、もっとはっきり言えばアメリカの「スパイ衛星」KH-9ヘキサゴンが、1973年から1980年にかけてこの地域を撮影した画像が機密解除されて分析できるようになった成果です。

スパイ衛星も、思わぬところで役立っています。

 

ジョシュア・マウアー氏によれば、過去40年間でヒマラヤから4分の1もの氷が失われたとのこと。

 

“平均気温が1℃上昇”ということで、わずかな変化のように思えますが、最終氷期の最中でさえ、年間平均気温は現在よりわずかに3℃低かっただけだそうですから、その影響は甚大です。【621日 NATIONAL GEOGRAPHYより】

 

ヒマラヤの氷や雪は、インダス川、長江、ガンジス川、ブラマプトラ川といった大河の水源となっており、南アジア一帯に住む数億人の生活を支えています。

 

氷河融解の加速によって洪水の発生、また、氷河湖が決壊して壊滅的な洪水を招く危険性も増しています。すでにネパールでは被害も出ています。

 

長期的には大河の水源が失われて、水不足を招きます。

“今のところは、暖かい季節に雪解け水が増えている。だが、氷河が消失するにつれて、雪解け水は数十年以内に次第に減ってゆくと予測される。”【621日 NATIONAL GEOGRAPHY

 

この水不足は人間の生活・経済活動にとって致命的で、現在の石油をめぐる争い以上に深刻な国家間の対立・紛争を生むものと推察されます。(現在でも国際河川の水利用をめぐっては東南アジアでも南アジアでも深刻な対立がありますが、数十年後はその危機は現在の比ではなくなることが懸念されます)

 

「アジアは、極端な熱波とヒマラヤからの水の不足という、未曾有の災害に直面しているのです」(シェーファー氏)【同上】

 

話が少し横にそれますが、熱波が出てきたところで、インドの熱波の件。先日、ひとつの列車内の暑さで4人が死亡したという話題も取り上げましたが、半端ない暑さと水不足に襲われているようです。

 

“酷暑続くインド、北東部の州では1日だけで49人死亡”【616日 AFP】

“インド 最高気温45度超 厳しい熱波で200人超が死亡”【618日 NHK】

“インドの水危機が深刻化、抗議デモで500人以上逮捕”【621日 CNN】

 

話を戻して、次は北極。

 

****北極で記録的高温、進む氷の融解 137億トンの消失も****

北極圏のデンマーク領グリーンランドでは既に観測史上最高気温が記録されているが、2019年は北極にとって再び「ひどい年」となる可能性があると、科学者らは指摘している。グリーンランドの巨大な氷床の融解が進行すると、いつの日か世界の沿岸地域が水没する恐れがあるという。

 

デンマーク気象研究所の気候学者、ルース・モットラム氏は「2012年に記録された北極の海氷面積の史上最小値(中略)とグリーンランドの氷床融解量の史上最大値の両方が、更新される可能性がある」と警告した。「今年は気象状態に非常に左右されている」

 

DMIの科学者ステファン・オールセン氏は13日、グリーンランド北西部で通常より早く氷が解けて、犬が明るい青空の下、雪のない山々を背に水の上を歩いているように見える印象的な様子を撮影した。この写真はネットで拡散した。

 

オールセン氏は係留型の海洋気象ブイと気象観測所の調査中で、写真は自身が乗るそりを引く犬たちがフィヨルドの海氷が解け、数センチ水がたまっている中を進む様子を捉えていた。(中略)

 

モットラム氏によると、オールセン氏の調査旅行に同行した地元の人は「海氷がこれほど早く解け始めるとは予想していなかった。通常は氷が非常に厚いのでこのルートを通るが、海氷の上にたまった水がだんだんと深くなり前に進めなくなったため、引き返さざるを得なかった」と話していたという。

 

この写真が撮影された日の前日12日に、カーナークにある最も近い気象観測所が気温17.3度を記録した。これは2012630日に観測された史上最高気温をわずか0.3度下回っていただけだった。

 

「冬に降雪が少なかった上、最近は暖気と晴天、日照(がある)。これらはすべて、氷がいつもより早く溶けるための前提条件といえる」と、モットラム氏は説明した。

 

■狩猟やホッキョクグマにも影響

(中略)

 

1日で37億トンの氷を消失

(中略)デンマークの気象学者らは、氷の融解時期が通常よりほぼ1か月早い5月初めに始まったと発表している。

 

氷の融解が5月上旬よりも前に始まったのは、データの記録が開始された1980年以降で2016年の1回だけだ。

 

グリーンランドの氷の融解は、年間約0.7ミリの海面上昇の原因となっている。融解が現在の水準で続くとこの値はさらに増加する可能性がある。

 

また、グリーンランドの氷河の融解による海面上昇は、1972年以降で13.7ミリに達している。 【620日 AFP】

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次の記事もグリーンランドに関するもので、より長期的な話題。

 

****グリーンランドの氷、1000年後には完全融解? より正確な新モデルで予測****

温室効果ガスの排出が現在のペースで続けば、北極圏のデンマーク領グリーンランドの氷床は1000年後には完全に解けてなくなってしまうと示唆する研究結果が、米科学誌サイエンス・アドバンシズに発表された。

 

グリーンランドの氷床には、完全に融解すると世界の海面を7メートル上昇させるほどの氷が存在するとされる。(中略)

 

この最新モデルによると、現在のペースでグリーンランドの氷床が融解すれば、今後200年のうちに世界の海面は48160センチ上昇し、従来予測よりも80%高くなる可能性があるという。 【620日 AFP】

***************

 

数十年後が危惧されている状況では“1000年後”の話はあまり現実味もないので、大幅に省略しました。(人類が生き残っているかさえ定かではありませんから)

最後の部分で、200年後に海面上昇が48160センチの可能性ということは、より現実的な話として100年後は100センチ内外といったところでしょうか。

 

【温暖化対策を後退させるトランプ大統領】

この種の話は枚挙にいとまがありませんが、世界の将来に大きな影響力を持つアメリカ・トランプ政権の対応は相変わらずのようです。

 

****米、CO2規制を大幅緩和 温暖化対策後退、批判も****

トランプ米政権は19日、発電部門の温室効果ガス排出を削減するためにオバマ前政権が定めた厳しい規制に代わり、二酸化炭素(CO2)排出量の多い石炭火力発電を存続しやすくするなど大幅に規制緩和する政策を最終決定した。米メディアによると30日以内に導入される予定で、温暖化対策の後退と批判の声が出ている。

 

トランプ政権は地球温暖化防止の国際枠組み「パリ協定」からの離脱を表明するなど温暖化対策に消極的で、化石燃料産業の優遇姿勢が改めて鮮明になった。【620日 共同】

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トランプ大統領のこうした姿勢は、オバマ前大統領のレガシーをひっくり返したいという衝動と、石炭産業労働者の支持票目当てという側面がありますが、現実にはトランプ政権下でも経済的優位性を失った石炭火力発電は全く増加していません。

 

****米国の石炭火力発電所、トランプ政権下で50か所閉鎖 新設わずか1か所****

20171月にドナルド・トランプ氏が米国大統領に就任して以降、米国内で50か所の石炭火力発電所が閉鎖されていたことが分かったと、環境保護団体シエラクラブが9日、明らかにした。

 

シエラクラブによると、閉鎖の発表があった51か所のうち50か所の閉鎖が確認できたという。

 

米国では2010年以降、国内の石炭火力発電の容量の4割に当たる289か所の発電所が閉鎖されており、現在も稼働しているのは241か所。トランプ政権下で新たに開設された石炭火力発電所は最近アラスカ州で操業を開始した1か所のみだという。

 

また10年ほど前から水圧破砕法(フラッキング)による天然ガスの採掘が広く行われるようになって以降、石炭は掘削コストの面で不利になってきており、天然ガスが石炭に代わって急成長を続けている。

 

米国のエネルギー発電比率では、2015年には35%を占めていた石炭発電は今年夏までに25%に落ち込む見通し。一方、米エネルギー情報局によると天然ガスは電力供給の40%を占めるという。

 

エネルギーに関する公式統計によると、米国の石炭生産量はピーク時の2008年から3分の1減少しており、炭鉱は2008年から半数以上が閉鎖している。 【510日 AFP】AFPBB News

******************

 

トランプ大統領の石炭火力発電重視政策は、環境問題への理解だけでなく、経済合理性も欠いているように思われます。

 

【爆弾サイクロンで、トランプ支持農家でも高まる気候変動への関心】

トランプ大統領がこのまま温暖化・気候変動に背を向け続けていられるかと言えば、必ずしもそうも言いきれない事態がアメリカで(トランプ支持層の間で)で進行しているとの指摘があります。

 

****爆弾サイクロンで農作物が壊滅被害  「トランプ支持」やめる農家も****

「気候変動」が新たな争点に

 アメリカのトランプ大統領が、来年11月に行われる大統領選で再選を目指す考えを正式に表明した。新たなスローガンは「Keep America Great(アメリカを偉大なままに)」。今後、選挙戦を本格化させ、自身が掲げた公約実現を強硬に進めるものとみられる。

 

前回の選挙戦では、メキシコ国境の壁建設などの過激発言で旋風を巻き起こし、劇的な勝利を遂げたトランプ大統領だが、次の選挙の争点は何なのか。

 

4月下旬にNBCニュースとウォールストリートジャーナルが実施した世論調査によると、移民政策、雇用創出に続く形で注目されるのが気候変動問題だ。日本でニュースになる貿易問題への関心は2%に過ぎない。

 

■政府が優先的に取り組むべき課題は?(NBC&ウォールストリートジャーナルによる調査)

ヘルスケア 24

移民 18

雇用創出 14

安全保障 11

気候変動 11

国家債務・歳出 11

銃規制 5

貿易協定 2

 

日本ではあまり争点化しない気候変動問題だが、アメリカでは共和党と民主党で大きくスタンスが異なり政治イシューになる。

 

トランプ大統領は、パリ協定脱退表明以降も、オバマ政権の環境規制を次々と後退させ、環境問題に背を向けている。そのため「気候変動は信じない」と公言する有権者も多い。

 

一方、民主党側は包括的な環境対策「グリーン・ニュー・ディール」を打ち出すなど、選挙戦の新たな対立軸として積極的に取り組みをアピールしている。

 

「爆弾サイクロン」の襲撃

実は、この問題で、トランプ大統領の支持基盤を揺るがす新たな事態が起きている。

今年3月、「爆弾サイクロン」と言われる歴史的な暴風雨が中西部ネブラスカ州などを襲った。ミズーリ川が氾濫し、発生から3カ月が経つ今も一帯の大豆、コーン畑は浸水状態となっている。中西部の農家といえば、共和党の伝統的な支持基盤だ。その農家が壊滅的な打撃を受けている。

 

この洪水被害は、気候変動の影響と指摘されている。ネブラスカ大学で気候変動を研究するマーサ・シュルスキー准教授によると、一帯では、気候変動により、近年冬がより寒く、春に雨量が多い傾向で、大量の雪解け水が発生するようになった。3月には、爆弾サイクロンによって川に大量の氷が押し寄せ、ダムが決壊するという異常事態も発生した。

シュルスキー氏は「このような傾向は今後強まると予測される。気象条件だけをみれば、洪水の可能性はさらに高まる」と警鐘を鳴らす。

 

トランプの「無策」を批判する農家も

こうした状況を受け、被害にあった農家が気候変動へ関心を寄せ始めているのだ。

 

ネブラスカ州北部で6代続く農家を営むアンソニー・ルジスカさんの土地には、洪水によって大量の氷の塊が押し寄せ、自宅や畑が壊滅的被害を受けた。古い時代に建てられた屋敷や手作業で作った小屋、飼っていた牛や豚300頭も失った。アンソニーさんは「政治のことは詳しくわからない」と言葉を濁す一方、「気候変動は起きている。振れ幅がひどくなっていて、時に非常に暴力的だ」と語る。

 

(中略)周辺には、前回の選挙でトランプ大統領に投票したものの、貿易戦争と大雨でトランプ支持をやめると話す農家も多いという。

 

(中略)次の選挙戦で気候変動が大きな焦点になることは確実だ。トランプ大統領の支持基盤を揺るがす地殻変動につながるのか、注目が集まる。【620日 FNN】

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地球温暖化 「最悪シナリオ」可能性5%は深刻リスクか? 変わらない米大統領、変わる米議会

2019-06-08 22:58:35 | 環境

(夕食会に出席したドナルド・トランプ米大統領(右)とチャールズ皇太子(201964日撮影)

バッキンガム宮殿でのチャールズ皇太子との茶会では、会話の大半が気候変動の話題だったとか【65日 AFP】)

 

【「最悪のシナリオ」の可能性は5%】

災害などにおける「最悪のシナリオ」の起こる“確率”を、個々人がどのようにイメージ・認識するかはもちろん各人によって異なります。楽観的な人もいれば悲観的な人もいるでしょう。

 

地球温暖化による海面上昇幅はが2100年までに2mを超え、18000万人以上が住む場所を追われるという「最悪のシナリオ」の可能性が「5%」・・・・という報告が。

 

5%の可能性・・・・小さいか? 大きいか?

 

この研究報告を主導した英ブリストル大学のジョナサン・バンバー教授は以下のようにも。

 

「もし道路を渡るときに20回に1回の確率で車にぶつかると言われたら、道路には近付かないだろう。1%の確率だって、あなたが生きている間に100年に1度の大洪水が起こる可能性を示している。5%という可能性は、なかなかどうして、深刻なリスクだと思う」

 

確かに、そう言われれば・・・という感も。

 

****海面上昇、従来予測の2倍に 氷解が加速=英研究****

海面上昇、従来予測の2倍に 氷解が加速=英研究

 

グリーンランドや南極大陸の氷解が加速していることから、海面の高さがこれまでの予測を大きく上回り、2100年までに最大2メートル上昇する可能性があることが、最新の研究で明らかになった。

 

これまで、海面は2100年までに最大でも1メートル弱しか上昇しないと考えられてきた。

 

しかし今回「米国科学アカデミー紀要」で発表された専門家の評価に基づく研究によると、実際にはこの2倍ほど高くなる可能性があるという。

 

研究者は、これによって数億人が住んでいる土地を失うかもしれないと指摘している。

 

海面上昇は、気候変動に関する政府間パネル(IPCC)が2013年に発表した第5次評価報告書の中で最も議論を呼んだ問題だ。

 

この報告書では、排出ガス削減が進まず地球温暖化が続けば、海面は2100年までに5298センチ上昇すると指摘した。

 

しかし多くの科学者が、この試算は極めて保守的な数値だとみている。

 

また、海に浮かぶ大きな氷床の影響を予測するために使われている現在のモデルでは、氷床が解けていく際の不確定要素全てを考慮に入れられないことを問題視している。

 

審判の日

より明確に状況を把握するため、この領域の科学者が集まり、専門家による組織的な評価研究を行った。この研究では、科学者がグリーンランドや南極大陸で起こっていることに対する知識や理解をもとに、推測を行った。

 

その結果、もし温室効果ガスの排出が現在と同じように続けば、世界の海は2100年までに62238センチ上昇するという試算が出た。その頃には世界の気温は5度ほど上がっていることになる。これは、地球温暖化の中でも最悪のシナリオのひとつだ。

 

研究を主導した英ブリストル大学のジョナサン・バンバー教授は、「2100年までに、氷床の融解による海面上昇は7178センチとなる可能性が非常に高いが、これに氷河や氷床の周りの冠氷の影響、さらに海水の熱膨張を含めれば、200センチを超えることはたやすい」と説明した。

 

IPCCの第5次評価報告書は何が起こる「可能性が高いか」だけを記しており、これは科学的には1783%の確率だという。

 

一方、今回の研究ではより広範囲の可能性をカバーしており、確率は595%に広がった。

 

2100年までに地球の気温が2度上がった場合、海面上昇の主原因はグリーンランドの氷床のままだ。しかし気温がこれ以上、上がった場合は、より大きな南極の氷床も考慮に入れなくてはならないという。(中略)

 

「しかしこうした現象が始まる可能性が高くなるのは、気温が5度上昇した場合だけだ」

 

それでも、このシナリオは地球にとって大きな示唆になると研究チームは指摘している。

氷が解けることで、地球は179万平方キロメートルもの陸地を失うことになるからだ。これは、リビアの国土と同じ大きさだ。

 

水面下に沈んでしまう陸地の大半は、ナイル川のデルタのような重要な農業地域だ。バングラデシュも大部分が人間が住み続けられない場所になるだろう。ロンドンやニューヨーク、上海といった世界的な大都市も脅威にさらされる。

 

「シリア危機では100万人の難民が欧州にやってきたが、海面が2メートル上昇した場合、住む場所を追われる人はこの200倍になる」とバンバー教授は指摘した。

 

研究チームは、向こう数十年にわたって温室効果ガスの排出を大幅に削減すれば、このシナリオを回避する時間はまだ残されていると強調している。また、このシナリオの上限が現実のものとなる可能性は5%と小さいものだとしている。(後略)【521日 BBC】

*******************

 

「確率」の問題もさることながら、この種の報告の妥当性は素人ではなかなかわからないという問題が基本にあって、評価が難しくなります。

 

2050年人類滅亡の可能性?】

“刺激的”“衝撃的”(あるいは“真実を描き出している”)報告は多々あるようです。

 

****2050年人類滅亡!? 豪シンクタンクの衝撃的な未来予測****

<オーストラリアのシンクタンクが、今後30年の気候変動にまつわるリスクを分析し、最悪の場合、人類文明が終焉に向かうかもしれないという衝撃的な方向書を発表した>

2050
年には、世界人口の55%が、年20日程度、生命に危険が及ぶほどの熱波に襲われ、20億人以上が水不足に苦しめられる。食料生産量は大幅に減り、10億人以上が他の地域への移住を余儀なくされる。最悪の場合、人類文明が終焉に向かうかもしれない──。(中略)

「気候変動は人類文明の脅威である」
豪メルボルンの独立系シンクタンク「ブレイクスルー(Breakthrough-National Center for Climate Restoration)」は、今後30年の気候変動にまつわるセキュリティリスクをシナリオ分析し、20195月、報告書を発表した。(
中略)


2015
1212日に採択された「パリ協定」では、世界の平均気温の上昇を産業革命前に比べて2度未満に抑えることを目標に掲げているが、報告書は、この目標値が未達に終わると予測する。

永久凍土が消失し、アマゾン熱帯雨林は干ばつに
報告書のシナリオによると、人為的な温室効果ガスの排出量が2030年まで増え続け、2030年までに気温が1.6度上昇する。

温室効果ガスの排出量は2030年をピークに減少するものの、炭素循環フィードバックやアイス・アルベド・フィードバックなど、気候プロセス上の要因も加わり、2050年までに気温が3度上昇する。1.5度の気温上昇で西南極氷床が融解し、2度の気温上昇でグリーンランド氷床が融解する。

気温が2.5度上昇すると、永久凍土が広範囲にわたって消失し、アマゾン熱帯雨林は干ばつに見舞われて立ち枯れる。ジェット気流が不安定となることで、アジアや西アフリカの季節風にも影響が及び、北米は熱波や干ばつ、森林火災など、異常気象の被害を受ける。陸地面積の30%以上で乾燥化がすすみ、南アフリカ、地中海南岸、西アジア、中東、米国南西部、豪州内陸部で砂漠化が深刻となる。

ゼロ・エミッションベースの産業システムを構築すべき
元オーストラリア国防軍最高司令官のクリス・バリー氏は、報告書の序文で「この世の終わりを避けられないわけではないが、直ちに思い切った行動をとらなければ望みは薄い。

 

政府、企業、地域コミュニティがまとまって行動するべきだ」と訴えている。また、この報告書では、一連のリスクを軽減し、人類文明を維持するために、廃棄物をゼロにするゼロ・エミッションベースの産業システムを早急に構築するべきだと提唱している。【67日 Newsweek
********************

 

【持論を変えないトランプ大統領「天候は変化していて、どちらにも転がると思う」】

もちろん、上記のような報告について、「出来の悪いハリウッド映画じゃあるまいし・・・」と嗤う人もいるでしょう。

 

そうした一人が“政府、企業、地域コミュニティがまとまって行動する”ことを不可能にしているトランプ米大統領。

 

****トランプ米大統領 「気候変動はどちらにも転がる」 英テレビ番組に出演****

35日に訪英していたトランプ大統領は、英ITVの番組「グッドー・モーニング・ブリテン」に出演。3日にチャールズ皇太子と90分にわたって会談した際に気候変動について話したと述べた。そのうえで、「天候は変化していて、どちらにも転がると思う」と話した。

 

トランプ氏は、皇太子の「良い気候」を求める気持ちに共感したと述べた半面、汚染の拡大は他国のせいだと非難した。(中略)

 

情熱に感動、でも意見は変えず

トランプ大統領はチャールズ皇太子の「次世代への情熱」に心を動かされたと話した一方、気候科学に関する自身の意見は変わらなかったと述べた。

 

その上で、中国やインド、ロシアが大気や水質を悪くしていると避難。半面、アメリカは「最もきれいな気候」を持つ国の1つだと話した。

 

「忘れないで欲しいのは、これは昔は地球温暖化と呼ばれていて、それがうまくいかなくなると気候変動と呼ばれ、今は異常気象と呼ばれている。異常気象は避けられないからだ」

 

また、気候変動の影響で「異常気象」が増えたという考えを否定するため、過去の自然災害の例を挙げた。

「アメリカの竜巻が今ほど深刻だった覚えはないが、40年前にも史上最悪の竜巻被害があった。1890年代にも史上最悪のハリケーンがあった」

 

トランプ大統領はかつて、気候学者は「政治的目的」を持っていると非難し、気候変動を「嘘っぱち」だと述べた。この発言は後に撤回された。

 

2017年には、気候変動への国際的な取り組みを決めた2015年のパリ協定から離脱すると宣言。地球の気温上昇を産業革命前と比較して2度以下に抑えるとするこの協定が、アメリカの労働者に不利だと訴えた。

 

政府機関からの警告も無視し続けており、昨年には気候変動によって経済に深刻な悪影響が出るという報告書を「信じない」と一蹴した。

 

トランプ政権は環境保護や気候変動にまつわる政策を次々と後退させる一方、石炭工場や石油掘削に対する規制を取りやめる法案を提出している。(後略)【66日 BBC】

****************

 

「天候は変化していて、どちらにも転がると思う」というのは、「気象は人間の活動とは無関係で、悪化を防ぐための努力を行うつもりはない」ということの表明でもあります。

 

“アメリカは「最もきれいな気候」を持つ国の1つだ”・・・・例年の大規模山火事とか、大型ハリケーンの襲来とか、必ずしもそうとも言えないように思うのですが・・・・。

 

仮に、今はアメリカは「最もきれいな気候」を持つ国の1つだとしても、そのことと「将来の世界全体のために何をすべきか」という問題は別だとも思うのですが・・・。

 

****米政権、気候変動巡り証言妨害 ホワイトハウス職員らが****

米紙ワシントン・ポストは7日、ホワイトハウスの職員らが、気候変動が「壊滅的な結果を引き起こしかねない」との国務省分析官の議会への書面証言がトランプ政権の立場と相いれないとして、提出を妨害したと報じた。複数の政府高官の話としている。

 

トランプ大統領は地球温暖化の悪影響を認めない立場を取っている。米政府内には、トランプ氏と異なる見解を排除する空気が強まっていると指摘されている。【68日 共同】

***************

 

【アメリカ議会で活発化する温暖化論議】

“米政府内には、トランプ氏と異なる見解を排除する空気が強まっている”かどうかは知りませんが、野党・民主党が下院を制したことで、議会では大統領と異なる動きも出ているようです。

 

****温暖化にGND、米で政策論争 民主議員が提案、弱者救済と両立****

トランプ政権下で停滞していた地球温暖化対策の議論が米議で再び活発になっている。野党・民主党の一部議員による提案「グリーン・ニューディール」をきっかけに、与党・共和党からも対案が出始めた。

 

 ■急進的内容、党内外で賛否

(中略)温暖化対策と弱者救済策を組み合わせたGNDは、民主社会主義者を自任するオカシオコルテス氏と、環境派のマーキー上院議員(民主)が起草、2月に議会に提出した。その名は1930年代の経済政策ニューディールにちなむ。

 

拘束力のない決議案だが、2050年で世界の温室効果ガス排出の「実質ゼロ」を目指して今後10年間、国家総動員をすると明記。

 

電力からの温室効果ガス排出をゼロにし、建物の改修、高速鉄道網整備などで雇用を生み出す一方、温暖化対策の影響を受ける地方やマイノリティーなど社会的弱者に配慮。最低賃金引き上げや国民皆保険につながる考えも盛り込む。

 

トランプ大統の就任後、米国で温暖化対策の議論は低調だった。トランプ氏は「温暖化は中国のでっち上げ」と主張し、17年には温暖化対策の国際ルール「パリ協定」離脱を宣言。石炭火力発電の排出規制などをことごとく覆した。上下院で多数を占めてきた共和党も議論を避けてきた。

 

ところが昨秋の中間選挙民主党が8年ぶりに下院の過半数を取り、状況は変わった。議長についたペロシ氏は特別委員会を設置し、温暖化の公聴会も復活させた。温暖化対策民主党がトランプ政権に対抗する柱。GNDがさらなる議論に火をつけた。

 

発表されるや、急進的な内容に党内外で賛否両論が巻き起こった。共和党は「社会主義だ」と激しく攻撃。保守系のFOXニュースは「温暖化対策のために自家用車やハンバーガー、飛行機が取り上げられる」とあおった。上院トップのマコネル院内総務は、3月末に多数を握る上院で否決してみせた。

 

 ■共和も対案、支持者に変化

実現が難しく、将来のアキレ腱(けん)になりかねないため、民主党でもペロシ氏ら主流派は距離を置くが、大統領選の同党候補は共同提案者に名を連ねたり支持を表明したりしている。

 

有力候補のバイデン前副大統領は4日、「GNDは重要な枠組みだ」とその考えを踏襲し、2050年までに米国内からの排出ゼロを目指し、10年間で連邦予算1・7兆ドル(約180兆円)をつぎ込む構想を発表した。

 

イエール大などの世論調査では、昨年12月は「GNDを全く聞いたことがない」有権者が8割以上だったが、今年4月には4割に低下した。

 

主党支持層の9割が賛同し、共和党支持層でも穏健派に限れば6割が賛同している。

 

GNDを進める若者を中心とした環境団体「サンライズムーブメント」のアラセリー・ヒメネスさんは「社会主義でも急進派でもない。我々は多数派だ」と胸を張る。

 

ハリケーン山火事、洪水など温暖化の影響とみられる災害が頻発。共和党支持者でも若い世代を中心に温暖化対策を求める声は強まっている。

 

16年に超党派の気候問題解決議連を設立した共和党のクーベロ前下院議員はGNDを批判するものの「以前は議論すらしたくなかった多くの共和党員が、温暖化を現実の危機と捉え、解決策を議論している。好ましいことだ」と評価する。

 

5月2日、下院でパリ協定から米国が離脱するのを阻止する法案が可決。共和党からも3人が賛成に回った。下院で温暖化対策関連法案が通るのは約10年ぶりだ。

 

共和党からも対案が次々と発表されている。二酸化炭素(CO2)の排出に税金を課す炭素税導入法案のほか、再生可能エネルギーやCO2回収・貯留技術の研究を加速させる「ニューマンハッタンプロジェクト」、規制緩和と技術革新で温暖化対策を進める「グリーン・リアルディール」などだ。

 

GND起草者のマーキー氏は「前回の大統領選では温暖化は悲しいほど論点にならなかったが、今度はそんな心配はない。候補者は答えを用意する必要がある」と話す。(後略)【67日 朝日】

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こうしたリベラルな主張は、全国ベースの選挙ではマイナスになるとこれまでは見られていましたが、今後はどうでしょうか?

 

 

 

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プラスチックごみ  東南アジア諸国から「我が国はゴミ捨て場ではない!」との批判

2019-05-04 23:15:48 | 環境

(マレーシアのごみ廃棄場で、再利用できるプラスチックを探す男性【2018年11月21日 NATIONAL GEOGRAPHIC】)

 

【中国の輸入禁止で東南アジア諸国に流入する先進国のプラごみ】

以前も何度かとりあげたことがあるプラスチックごみによる海洋汚染(プラごみが溢れているのは途上国の陸上も同じですが、そうしたゴミが海洋に流れ出ると、人間を含む生物に大きな影響を及ぼします)に関して、最近、フィリピンとマレーシアから、「我が国はゴミ捨て場ではない!」といった同じ趣旨の問題提起が報じられています。

 

****フィリピン大統領、カナダに「宣戦布告」 ごみ輸出巡り****

カナダからフィリピンに輸送された大量のごみを巡り、フィリピンのドゥテルテ大統領がカナダに対して「戦争になる」と警告した。

 

ドゥテルテ大統領は23日、「多分来週にも、(ごみを)引き払った方がいいとカナダに警告する」と述べ、「彼らに対して宣戦を布告する」と宣言した。CNNフィリピンが伝えた。

 

CNNフィリピンによれば、2450トンのごみがコンテナ103個に収められ、2013〜14年にかけてフィリピンに輸送された。

 

コンテナにはリサイクル用のプラスチックと表示されていたが、フィリピン当局が点検したところ、リサイクルできないごみだったことが判明。輸送したカナダの民間企業が輸入通関手続きを済ませていなかったことから、不法輸入と見なされた。

 

コンテナの一部は今もマニラの港に置かれたままになっているという。

 

「彼らがなぜ我々をごみ捨て場にしているのか理解できない」とドゥテルテ大統領は訴え、自らカナダにごみを捨てに行ってもいいと発言、「ごみを帰国させる」と強調した。

 

フィリピンは何年も前からカナダに対し、自分たちのごみを引き取るよう求めていた。これに対してカナダのトルドー首相はかつて、「解決策を見つけるために努力する」と表明していた。

 

ごみの処理を巡る問題は世界的に深刻化しつつある。先進国はこれまで、リサイクル可能な廃棄物を海外に輸送して処理していたが、その状況は変わりつつある。【4月25日 CNN】

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****中国に拒まれ…欧米のプラごみ、マレーシアに流れて環境破壊****

2019年4月29日、環球網は、中国が外国からのごみ輸入を禁止したことで、欧米からのごみがマレーシアに大量に流れ込み、現地に環境破壊をもたらしていると報じた。

記事は米CNNが27日「中国が昨年1月に外国からのごみ輸入を禁止して以降、米国は大量のプラスチックごみをマレーシアに運ぶようになった。昨年1〜7月だけで、米国や英国から45万6000トンのプラスチックごみが輸入されたが、これはマレーシアが2016、17年の2年間に輸入したプラスチックごみの合計量に相当する。現地で処理可能な量をはるかに超えており、資格のない工場による無秩序なごみ処理方式により、現地の自然環境が著しく破壊されている」と伝えたことを紹介した。

そして、この状況に対してマレーシアのヨー・ビー・イン・エネルギー・科学・技術・環境・気候変動大臣が「われわれはバーゼル条約に基づき、不法なプラスチックごみをそのまま送り返している。これは第一歩に過ぎない。今後国内の港を全面調査し、不法行為を取り締まる」とコメントしたこととともに、同国政府がすでに今年1〜2月の間に140カ所の不法輸入ごみ関連工場を閉鎖に追い込んだとする同国華字紙・南洋商報による報道を伝えている。

さらに、CNNが「現在、環境保護意識の高まりに伴い、ますます多くの発展途上国が環境破壊を経済発展の代価にしなくなっている。マレーシアのほかにタイ、ベトナム、フィリピンなども外国ごみの輸入を制限または禁止する政策を続々と打ち出した」とし、仏AFPが「現在欧米やオーストラリアなどの先進国はごみのやり場に困っていると同時に、自国の高額なごみ処理コストにも直面しており、一部地域では埋め立て方式を再度採用し始めている。環境保護関係者は、プラスチックごみ問題を長期的に解決できる唯一の方法は、プラスチック製品の生産と使用を減らすことだとしている」と報じたことを紹介した。【5月4日 レコードチャイナ】

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フィリピンやマレーシアなど東南アジア諸国に欧米のプラごみが流れ込んでいるのは、世界の従来プラごみ処理を一手に引き受けていた感があった中国が、環境衛生意識の向上もあって、そのほとんどを輸入禁止にしたためです。

 

その時点で、今のようなプラごみの押し付け合いの状況が出現するであろうことは予測されていました。

 

****中国の「プラスチックゴミ輸入禁止」が世界にどれほどの影響を与えるのかが判明****

2017年末に中国はこれまで世界各国から輸入してきた廃プラスチックの輸入を禁止し、世界のゴミ処理・リサイクル事情に大きな影響を与えました。

 

新たな研究で、中国のプラスチックゴミ輸入停止に伴い、世界中で発生する「何らかの方法で処理する必要があるプラスチックゴミ」がどのくらいの量になるかが示されています。

中国はこれまで、国内の製造業の原料を補うために外国から資源ゴミを購入しリサイクルしてきました。(中略)しかし、2017年末から一部の資源ゴミの輸入を禁止しており、輸入元の国々では新しいゴミ処理の方法を見つけ出す必要性に迫られています。

そんな中、ジョージア大学が発表した新たな研究では、1988年から2016年までの中国のゴミ輸入のデータが解析された結果、研究者は「2030年までに行き場をなくしたプラスチックゴミは1億1100万トンに上るだろう」と結論づけました。これらのゴミはリサイクルや埋め立てなど、なんらかの方法で処理される必要があります。(中略)


研究チームによると、世界中で発生したゴミの5分の4は埋め立て地といった陸地にとどまり、10分の1は焼却されます。数百万トンのゴミは海へと流れ出て、リサイクルされるのは全体のほんの9%とのこと。中国は、2016年のリサイクル量の半分以上を自国で引き受けていました。


産業が発達し、環境や公衆衛生への影響が明らかになってきたため、中国は輸入する資源の内容を選択するという方向にありました。

 

2013年には食べ物・金属・汚染物質が未分類の場合は輸入しないということになり、輸入量が減少。この傾向は2017年になるまで続き、最終的にプラスチックゴミや未分類の紙類など24種類の廃棄物の輸入が停止されるとの発表に至ったわけです。

中国の措置は世界中に影響を与え、オーストラリアではリサイクル可能な廃棄物をリサイクする余裕がなくなり、埋め立て地に回すようになり、イギリスでは質の低いプラスチック素材が貯蔵施設に保管後焼却処理されていると伝えられています

研究を行ったAmy L. Brooks氏はゴミを処理する方法を見つけ出す以前に、最初からプラスチックのストローやカップのような使い捨てのアイテムを使わないなど「ゴミを生み出さない方法」を取ることを推奨しています。

 

「これはあなたが取り得る方法のうち、もっとも容易なことです」「『そんな事では変わらない』と人々は感じると思いますが、何百万もの人々が行動を起こせば、確実に違いを生み出すことができます」とBrooks氏は語りました。

【2018年6月22日 Gigazine】

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行き場を失ったプラごみは、東南アジア諸国に流れ込むことになって、冒頭のフィリピン・マレーシアなどの怒りを招いています。ベトナムも昨年プラごみ輸入を一時停止しました。タイも2021年までに廃プラスチックの輸入を全面的に禁止する方針を掲げています。

 

****「世界の廃プラ処理場」は中国から東南アジアへ****

中国の輸入禁止によって、世界のプラスチックごみがあふれつつある

 

トランプ米大統領は先日、新たな海洋ごみ関連法の署名式典において、世界の海を汚している元凶としてアジアをやり玉に挙げた。彼は日本や中国を名指しし、「いくつもの国」がプラスチックごみを海に捨てるせいで、米国の西海岸にまでそれが漂ってきていると述べた。(参考記事:「海洋ゴミ、最も効果的な対策は?」

 

「そのごみを除去する費用はわれわれが負担している。これは非常に不公平な状態だ」

トランプ氏はこう述べているが、海を汚しているプラスチックごみの責任は、アジアだけにあるわけではない。米国をはじめとする富裕国は、プラスチック廃棄物をリサイクル資源としてアジアに売却しているからだ。(参考記事:「プラスチックごみ問題、アジアの責任は?」

 

自国で処理せず遠い国に運んでしまうという、富裕国にとって便利なこの図式はしかし、2017年1月に大きく変化した。プラスチックごみの最大の輸入国である中国が、リサイクル用廃棄物の購入をほぼ全面的に禁止したのだ。25年にわたって世界のごみを回収し続けてきた中国が、純度99.5%以下のプラスチック廃棄物の輸入を一切禁じるという決定を下したことで、2000億ドル(約22兆円)規模の世界のリサイクル産業は、大きく揺らいでいる。

 

ごみの輸出側の国々が新たな買い手を探しまわっている間、米カリフォルニア州や英国、オーストラリアなどでは、ごみが山のように積み上げられていった。

 

インドネシアやタイ、ベトナム、マレーシアなどで操業している東南アジアのリサイクル業者がその一部を買い取ったが、かつて中国が引き受けていた恐ろしいほどの量をカバーすることは到底できなかった。(参考記事:「使い捨てプラスチックの削減を、米版編集長が声明」

 

「わたしの国を先進国のごみ捨て場にするのはごめんです」と語るのは、マレーシアのエネルギー・技術・科学・気候変動・環境相であるイェオ・ビーイン氏だ。

 

ナショナル ジオグラフィックの取材に対してイェオ氏は、米国への苦言を呈している。「自分のごみは自分の裏庭で処理すべきでしょう。それがリサイクルできないごみであればなおさらです」

 

うずたかく積もるごみの山

海洋に蓄積されるプラスチックごみは増え続けており、その現状は、廃棄物の未来に関する2つの暗い予測にも現れている。世界銀行の予測によると、地球上のごみは今後30年間で70%増加するという。また、驚くべき勢いで増加するプラスチックの生産量(中略)は、途上国の処理能力を超えている。

 

つまりこの先、ごみ問題は悪化の一途をたどるということだ。(参考記事:「【動画】餓死したクジラ、胃にビニール袋80枚」

 

アジアがごみを出しているというトランプ氏の主張にも、理がないわけではない。2015年に初めて行われた世界のプラスチックごみの量に関する調査では、毎年平均850万トンが海へ流出しており、海に面した192カ国のうち、最もプラスチックの排出量が多いのは中国であることがわかった。

 

また中国以外の上位19カ国中、11カ国がアジアの国々だった。(参考記事:「南太平洋の無人島にゴミ3800万個、日本からも」

 

2017年に学術誌「ネイチャー」に発表された、プラスチックを最も多く海に運んでいる川に関する調査では、上位20本中15本がアジアの川だった。そのうち6本が中国の川だった。

 

プラスチック汚染に関して、アジアが重大な問題を抱えているのは確かだろう。しかし、ごみをアジアに輸出し続ければ、状況はさらに悪化するばかりだ。(参考記事:「人体にマイクロプラスチック、初の報告」

 

2017年6月に学術誌「Science Advances」に発表された研究によると、輸入したプラスチックごみのせいで、中国国内で排出されるプラスチックごみは毎年平均12%増加しているという。(参考記事:「太平洋ゴミベルト、46%が漁網、規模は最大16倍に」

 

NPO「国際環境法センター」の最高責任者キャロル・マフェット氏は、中国がごみの受け入れを禁じたことをきっかけに、「米国には自国のプラスチック問題に対処する能力があるという神話の嘘が暴かれました」と話す。

 

「これまでわが国ではごみを輸出することでごみ問題を解決してきました。輸出してしまえば、プラスチック問題は脇に追いやられ、目に見えなくなります。この事実はまた、これがアジアだけの問題ではないことを示しています」 【2018年11月21日 NATIONAL GEOGRAPHIC】

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プラごみの持って行き場に困っているのは欧米だけでなく、日本も同様です。

 

****中国のごみ輸入禁止で日本はプラスチックごみに埋もれている―露メディア****

2018年10月24日、中国メディアの環球網によると、ロシア政府系テレビ局「RT」のニュースサイトは21日、「中国が海外からのごみ輸入をストップした後、日本は自分たちがプラスチックごみに埋もれていることに気付いた」とする記事を掲載した。

記事は「中国が海外からのごみ輸入をやめたことを受け、世界中の国々が廃棄物の増加に苦しみ始めている。日本は、リサイクル産業の深刻な負担が伝えられる最新の国になっている」とし、「昨年、150万トンのプラスチックごみの約半分を中国に輸出していた日本では現在、ごみがますます高く積み重なっており、地方自治体の多くがこの問題に対処するために苦労している」とした。

記事は、中国のごみ輸入規制を受け、日本の環境省が今週発表した産業廃棄物の処理業者と業者を監督する都道府県や政令指定都市などを対象に行った調査結果を紹介。

 

102の地方自治体の約4分の1が、業者に保管されている量が「増加した」と回答し、基準を超える量を保管していたケースもあること、日本国内の廃棄物処理費用が跳ね上がったことを受け、少なくとも34の地方自治体がプラスチックごみの新たな輸出先を見つけられないと回答したこと、プラスチックごみの受け入れを制限しているか制限を検討中と回答した業者が全体の34.9%に上ったことなどを伝えた。(後略)【2018年10月25日 レコードチャイナ】

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自分の出したごみは自国で処理する・・・というのは当然のことです。

処理しきれないなら、使用量を減らすしかありません。(原発も同じ問題を抱えています)

 

【使用量を減らす取り組み】

ゴミ処理がある程度行われている日本・欧米にあっては、“プラスチックのストローやカップのような使い捨てのアイテムを使わない”といったプラごみ減量が必要になってきますが、東南アジアなど、ごみ処理が十分に行われていない国あっては、まずゴミ処理システムを構築し、そこら中にプラごみが散乱している現状を是正する必要があろうかと思います。

 

いずれにしても、プラごみ減量は世界的な流れとなっています。

 

****使い捨てプラ禁止正式承認 EU議会、21年法制化へ****

欧州連合(EU)欧州議会は27日、使い捨てプラスチック食器や発泡スチロール容器を禁止する新規則案を正式承認した。

 

加盟国でつくる閣僚理事会の承認を経て同案は成立。2021年までに加盟国で法制化される。

 

規則原案を策定したEUの行政執行機関、欧州委員会は、実現すれば欧州の海岸を汚すごみが70%減ると推計している。

昨年12月に欧州議会と加盟国側が基本合意した内容を可決した。新規則案には29年までにペットボトル回収率90%を達成することやペットボトルの原料に回収ボトルの素材を25年までに25%、30年までに30%以上用いることも盛り込まれた。【3月28日 共同】

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回収されたゴミで見ると、世界的には捨てられたプラスチックの約80%がリサイクルされず、廃棄されています。

 

プラスチック製品は金属製品と異なり、価値が低く、不純物が多く、さまざまなポリマーが混ざり合っており、現実問題としてリサイクルがビジネス的に成立しにくい面があります。

 

そのため多くが廃棄されたり、かつては中国などへ輸出されたりということにもなります。

 

リサイクルが困難なら、使用料を減らすしかないという話にもなるようです。

(個人的には、焼却してしまえばいいのでは・・・とも思うのですが。高温焼却すればダイオキシンの問題もクリアできると聞いていますので。「リサイクル=善、焼却=悪」という信仰に近い発想もいかがなものかとも)

 

一方、回収されないプラごみとしては、ポイ捨てによるものの他、ゴミ箱からあふれ出して風に飛ばされたり雨に流されるもの、人工芝の劣化による破片、タバコのフィルターのようなものがあるようです。

 

【対応が遅れる日本】

ゴミ分別には熱心な日本ですが、プラごみに関してはやや取り組みが遅れています。

 

****「プラスチックごみ」対策意識が低い日本の現状****

(中略)

プラスチックごみの国際動向

生態系への悪影響が可視化されるに伴い、海洋プラスチック問題に関する国際動向も活発化している。

 

持続可能な開発目標(SDGs)の目標の一つには、「2025年までに、海洋ごみや富栄養化を含む、特に陸上活動による汚染など、あらゆる種類の海洋汚染を防止し、大幅に削減する」と掲げられている。

 

2018年6月、カナダで開催された先進国首脳会議(G7サミット)では、「海洋プラスチック憲章」が採択された。これは海洋プラスチック問題に対して、プラスチックの使用量を削減するなど世界各国に具体的な対策を促すもの。しかし、アメリカと日本は署名を拒否し、波紋を広げた。

 

拒否した理由について環境省は、数値目標が義務的かつ期限のあるものだったことを挙げ、「産業界と条件調整を行う時間が足りなかった」と説明している。

 

これに対して、前出の高田教授が「使い捨てプラスチックの削減は、2017年の国連海洋会議などでも提案されており、『時間がなかった』というのは言い訳に過ぎないのではないか」と指摘するなど、批判の声もある。

 

いずれにしても、多くの国が使い捨てプラスチックの規制に動くなか、日本はプラスチックごみの問題において“後進国”とされている。その背景には、これまでプラスチックごみ問題が、日本国内で深刻に捉えられていなかったことがある。(後略)【4月27日 東洋経済online】

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正直なところ、個人的には現状のゴミ分別についても、あまり熱心な方ではありません。この上にプラごみもいろいろうるさくなったら・・・という思いはありますが、そうも言ってはいられない現状もあるようです。 

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気候変動 「(大人には)私たち(若者)が日々恐れていることを感じてほしい。そして、行動してほしいのです」  気候変動は「好機」

2019-03-16 22:01:29 | 環境

(気候変動対策として、マンハッタンを防波堤の役割を果たす高台で囲む「ビッグU」のイメージ図【3月4日 GLOBE+】)

【プラごみ対策 気候変動対策のデジャブ】
これまでもたびたび取り上げてきたように、プラスチックごみによる海洋汚染等に国際的関心が集まっており、日本を含めて各国が使用禁止などの規制を強化する流れにあります。
(3月6日ブログ“プラごみ海洋汚染対策の国際的ルールづくり インドの深刻な大気汚染 韓国は中国との協議を提起”等)

こうした流れを受けて開催された国連環境総会でしたが、アメリカの反対で目標設定が低く抑えられ、更に、そのアメリカは大幅削減に関しては不参加ということに。

****使い捨てプラ、閣僚宣言案が後退 国連環境総会、米が反対****
ナイロビで開催中の第4回国連環境総会(UNEA4)で協議している閣僚宣言案の修正版が12日、判明した。原案にあった、2025年に使い捨てプラスチックを廃絶するとの文言が消え「30年までに大幅に減らす」と表現が大きく後退した。
 
交渉関係者によると、欧州連合(EU)などは「廃絶」の表現を支持したが、米国などが反対し日本も支持しなかった。環境保護団体などからは「野心的な目標が失われた」と批判が出ている。交渉は続いており会期末の15日の採択を目指す。【3月12日 共同】
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****使い捨てプラ、2030年までに大幅削減へ 米国不参加****
深刻化する世界の海洋プラスチックごみ問題について、世界約160カ国が2030年までに使い捨てプラスチック製品を大幅に削減する方向でほぼ合意した。

ケニアの首都ナイロビで開かれている国連環境総会で15日、閣僚宣言を採択した。しかし、米国は閣僚宣言のうち、大幅削減に関しては「特定の製品だけをターゲットにすべきでない」として不参加を表明した。
 
世界経済フォーラム(ダボス会議)は、世界で少なくとも年800万トンのプラスチックごみが海に流出しており、50年には海のプラスチックが魚の重量を上回ると試算している。
 
11~15日に開催された総会では、海洋プラスチックごみや微細化して生きものの体内に入り込む「マイクロプラスチック」について世界各国が協議。30年までに使い捨てプラスチック製品を大幅削減するという文言を閣僚宣言に盛り込むことでほぼ合意した。
 
一方、米国は持続可能な社会を目指す閣僚宣言の方向性には賛成しつつも、使い捨てプラスチック規制には「流出量の多いアジア諸国の廃棄物管理を優先すべきだ」などとして部分的に不参加を表明した。加盟国は今後も議論を続けるという。【3月16日 朝日】
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アメリカ・トランプ政権が気候変動に関するパリ協定からの離脱を決めたことのデジャブを見ているような感じも。

【世界各地で「学校ストライキ」 「私たちが生き残るために、グレーの部分はありません」
一方、気候変動・温暖化に関しては、2月23日ブログ“地球温暖化対策を呼び掛ける16歳少女の訴え、欧州各地に拡大 世界で広がるプラごみ対策”でも取り上げたように、スウェーデンの高校生グレタ・トゥンベリさん(16歳)の抗議行動をきっかけに、世界各地の高校生らに「学校ストライキ」などの抗議運動が広がっています。

一番深刻な被害を受けるのが、これから数十年この地球上で生きる若者であることを考えれば、当然の要求でもあります。

****120カ国で授業ボイコット 温暖化止める「学校スト」*****
授業をボイコットして地球温暖化を食い止めるために行動を迫る若者たちの「学校ストライキ」が15日、世界各地で一斉に開かれた。

スウェーデンの高校生グレタ・トゥンベリさん(16)の抗議行動をきっかけに昨年から欧州各地で始まった運動は、日本や米国など世界約120カ国2千カ所に広がった。
 
米首都ワシントンでは、連邦議会議事堂前に約1500人が集まった。呼びかけ人の一人、メリーランド州のナディア・ナザールさん(16)は「私たちは温暖化の影響を受ける最初の世代。そして温暖化に対処できる最後の世代だ。政治家は我々の声を聞くべきだ」と訴えた。
 
トゥンベリさんが触発されたのは、銃規制を求めて授業をボイコットした米国の高校生の運動だ。

今回ユタ州でストライキを企画したケイト・デグルートさん(17)は「どうやって運動を起こしたらいいのか知らなかった若者を後押しした。それが米国に戻ってくるのは素晴らしいことだ」と話す。昨年5月には、保守的なユタ州で高校生の運動から温暖化対策を進める決議が成立した。
 
連邦議会には、若者らが後押しして温暖化対策と社会正義を実現する「緑のニューディール」決議が出されている。民主党の大統領選候補も温暖化対策を訴えており、次回選挙の争点になる可能性もある。
 
温暖化対策の国際枠組み「パリ協定」では、気温上昇を産業革命前と比べて2度未満、できれば1・5度未満に抑えることを目標に掲げる。国連の報告書は現状のままでは30年にも1・5度に達するという。
 
国連のグテーレス事務総長は英ガーディアン紙への寄稿で、「我々の世代は気候変動に速やかに対応することに失敗した。若い世代が怒るのも無理はない」と述べ、9月に開く温暖化対策の首脳級会合で各国の取り組みの加速を求めた。【3月16日 朝日】
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“国連のアントニオ・グテレス事務総長は、この活動に強い支持を表しており、英紙ガーディアンへの寄稿で「野心的な活動なくしては、パリ合意は無意味になる」と指摘した。”【3月16日 AFP】とも。

“日本や米国など”とありますが、日本でも「学校ストライキ」みたいな取り組みが行われたのでしょうか?(多分、未成年者の政治参加を極度に嫌う日本ではそうした行動はないようにも思います。)

トゥンベリさんは1月、世界経済フォーラム年次総会(ダボス会議)にも招かれ、「やるか、やらないか」と行動を国際社会に迫っています。

****グレタ・トゥンベリさんの世界経済フォーラム年次総会での演説要旨*****
ダボスのような場所で、人々は成功を語りたがります。でも、彼らの経済的な成功は、気候変動について考えられないほどの代償を伴いました。私たちは失敗したということを認めなければなりません。
 
ただ、まだ時間はあります。最大の解決策は、とても単純で、小さな子どもでも理解できることです。温室効果ガスの排出をやめなければなりません。
 
白黒つけられる問題などないと言われますが、それはとても危険なウソです。地球の気温上昇を1.5度未満に抑えるか、抑えないか、私たちが生き残るために、グレーの部分はありません。
 
大人たちは、こう言い続けています。「自分たちには、若者に希望を与える責任がある」と。でも、そんな希望は望んでいません。大人たちは、私たちが日々恐れていることを感じてほしい。そして、行動してほしいのです。【3月15日 朝日】
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とかくものごとをグレーとして見がちな大人にとっては(そのこと自体は多くの場合、賢明な対応ではありますが)耳の痛い16歳の直言です。確かに、大きな流れを変えるためには、不退転の決意で臨む覚悟が必要であり、白黒をはっきりさせる必要があるでしょう。

【「気候変動は脅威でなく好機」「気候変動で稼ぐ」「よき災害を決して無駄にするな」】
ただ、現実問題として対応を進めていくうえでは“覚悟”だけではなく、具体的な方策が必要です。

そのとき最大の問題となるのが、3月5日ブログ“地球温暖化の進行を止められる新技術となるか? 大気中のCO2除去技術”でも取り上げた、規制強化が経済活動の足かせになるという問題です。

ここを突破するには、気候変動対策が“カネ”になるという道筋をつくり、多くの民間資本や人材がこの分野に流入する枠組みをつくるのが一番効率的です。

気候変動対策を“制約”としてではなく、“ビジネスチャンス”としてとらえる発想です。
更に、その“チャンス”を生かすことで、“”規制を受ける生活ではなく“新たな生活環境”を作っていくという姿勢も重要です。

3月5日ブログでは、大気中のCO2を吸収して新たな燃料に変えていく事業を紹介しましたが、海面上昇や異常気象に対応するための防災都市建設も新たなビジネスチャンスの場となります。

****NY市、マンハッタン洪水対策に560億円 気候変動に備え****
米ニューヨーク市は14日、米国の経済・文化の中心地マンハッタンの一部地域を気候変動による洪水から保護するため、5億ドル(約560億円)を投資すると発表した。
 
投資対象は、洪水リスクの高いマンハッタン南端地域の保護を目的とした4事業。うち一つは、ウォール街の数ブロック先にあるバッテリーパークシティーの南に恒久的な防護壁を建設するもの。
 
民主党のビル・デブラシオ市長が14日に発表したところによると、マンハッタン南部の保護に必要な金額は推定100億ドル(約1兆2000億円)で、今回の投資はそのほんの一部にすぎない。予算の大部分はまだ確保できておらず、連邦政府の支援が必要になる可能性が高い。
 
米政府は気候変動に関する報告書「全米気候評価」で、炭素排出による気候変動がこのまま進めば膨大な経済損失が生じると警鐘を鳴らしているが、共和党のドナルド・トランプ大統領はこの報告書の内容を否定している。
 
マンハッタン南部は、2012年10月の大型ハリケーン「サンディ」で特に深刻な被害を受けた。サンディはニューヨーク市で約40人の死者を出したほか、ニューヨーク、ニュージャージー両州の沿岸部が高さ3メートルの洪水に見舞われ、ニューヨーク州の被害総額は420億ドル(約4兆7000億円)に上った。
 
ニューヨーク市経済開発公社が14日に発表した調査結果によると、マンハッタン南端にある建物の37%が、2050年までに洪水に見舞われる恐れがある。 【3月16日 AFP】AFPBB News
*****************

マンハッタン南部を保護する全体計画は「ビッグU」と呼ばれるもののようです。
いま、そこに多くの企業が参入しようとしているとも。治水対策では歴史的実績があるオランダの企業もそのひとつです。

****水を食い止めろ ニューヨークで進む巨大事業、多国籍企業が治水で稼ぐ****
気候変動対策という巨大ビジネス
東京、ニューヨーク、上海、ジャカルタ……。気候変動に伴い、河口付近の低地に発達した世界中の大都市で大洪水のリスクが高まっている。これらの都市に治水の知恵を売り込むのが、「低地の国」オランダだ。

治水計画の策定・マネジメントを得意とするオランダ発の多国籍エンジニア企業アルカディスは、売上高32億ユーロ(約4千億円)と、この10年で倍増する急成長を遂げている。(中略)

マンハッタンでもっとも低地となる地下鉄駅付近は、2005年にハリケーン「サンディ」が来襲した際、約2メートルの深さの水に覆われて駅は水没。インターネットも長期間使用不能になった。

「10年後にこのあたりに来ると、オランダ式の多機能堤防が見られるはずです」。(アルカディス社の北米部洪水対策担当リーダー)ヴェスターホフは公園の一角を指さして、そう話した。

「低地の国」の知恵の結晶
ニューヨークでは今、アルカディス社も参加する「ビッグU」と呼ばれる気候変動対策が進む。マンハッタンのU字形沿岸部約10マイル(16キロ)を堤防の役割を果たす高台で囲み、洪水や海水面の上昇から守ろうという壮大な計画だ。

見込まれる費用は70億~80億ドルに達する。

高台には商店街やレクリエーション施設、海水面の上昇が観察できる水族館などが設けられ、外観は堤防には見えない。気候変動対策と都市の活性化という「一石二鳥」を狙う。

私はニューヨーク取材の前にオランダのロッテルダムで見た光景を思い返した。一見、ショッピングモールにしか見えない建物は、屋上部分が広い公園になっている。

だが、港から水が押し寄せてきた際には、長さ約1.2キロの施設全体が堤防として機能し、背後にある住宅街を洪水から守る。

国土の多くが海面よりも低く、何百年にもわたって水と闘い続けてきた低地の国、オランダならではの「知恵の結晶」だった。(中略)

「気候変動は脅威でなく好機」
「気候変動と都市化が進む現代にあっては、治水事業は大規模な輸出産業だ」
アルカディスの水管理部門グローバルリーダー、ピート・ディルケは断言する。

米国・ニューオーリンズ市にハリケーン「カトリーナ」来襲した05年の1年前から、ディルケはこの地で治水対策の売り込みに努めていた。

そして、カトリーナ来襲の前日、治水事業を担う米国陸軍工兵隊を相手に、やっと200万ドルで最初の契約を結んだことを、ディルケは「後になって思えば、最も幸運な瞬間だった」と話す。

軍に再び呼ばれ、こう言われたのは、その数日後。「前の契約のことは忘れてくれ。やってもらうことが山ほどできた」。アルカディスが関与する契約の額は、あっという間に2億ドルに膨らんでいた。

そして、最終的に、市の洪水対策事業総額145億ドルの約半分について、プランニングとマネジメントを請け負うことになる。

アルカディスの躍進のもう一つの鍵は、ロッテルダム市にある。

市は05年以降、「気候変動を脅威ではなく、街づくりと経済を活性化させる好機と捉える」というコンセプトを掲げ、気候変動対策で世界中の都市をリードすることをめざしている。

商業施設を備えた堤防はその一環だが、ほかにも大雨に備えた排水施設・貯水池を市民の憩いの場として活用する「ウォーター・プラザ」などのアイデアを民間企業の協力で続々と実現させている。

市でこれらの事業を統括する責任者のアモウド・モレナーは「アルカディスはロッテルダムの成果を世界に伝える大使の役割を果たしている」と話す。一方、アルカディスはロッテルダムを「巨大なショーケース」として、ブラジル・サンパウロ、中国の武漢など、世界の各都市でビジネスを展開する。

コラボという新文化
もう一つ、オランダが米国の治水計画に持ち込んだものとして「コラボレーション」の文化がある。

米国では従来、水害に対して、個々人や各企業が損害保険に加入するなどして自力で備えようとする一方で、統合された対策を講じようとする傾向が乏しかったという。

現在、オランダ政府の国際水資源問題特使を務めるヘンク・オヴィンクは「サンディ」被災後の再建計画についてオバマ政権にアドバイス。デザインコンペによって民間から広くアイディアを募り、合意を形成してゆく手法を確立させた。「ビッグU」はその成果の一つだ。

ヴェスターホフは言う。「治水事業は『AかBか』という単純な選択で成立するものではなく、行政府や企業、地元住民らが協力し、『最適解』を求めて作り上げていくものだ。

オランダには『よき災害を決して無駄にするな』ということわざがある。災害の経験を必ず生かし、次に備えること。この精神を根付かせたい」【3月4日 GLOBE+】
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プラごみ海洋汚染対策の国際的ルールづくり インドの深刻な大気汚染 韓国は中国との協議を提起

2019-03-06 21:42:46 | 環境

(ジャカルタで昨年11月撮影【3月6日 ロイター】 世界各地の海は悲惨な状況が進行しています)

【プラごみ海洋汚染対策で進む国際的ルールづくり 日本も支援】
プラスチックごみによる海洋汚染等の問題については、2月23日ブログ“地球温暖化対策を呼び掛ける16歳少女の訴え、欧州各地に拡大 世界で広がるプラごみ対策”でも取り上げましたが、プラごみ対策強化の流れは国際的なルール作りの形で加速しつつあります。

****汚れた廃プラ、輸出入規制案 飲み残しペットボトルなど、バーゼル条約で****
有害廃棄物の国境を越えた移動を規制するバーゼル条約の対象に、汚れた廃プラスチックを加えようとする提案が、4月末からスイスで開かれる同条約締約国会議で議論される。日本もノルウェーとともに共同提案国になる。
 
リサイクル資源として輸出入されてきた廃プラスチックは、条約の規制対象外だ。だが、飲み残しの飲料が入ったペットボトルや食べもので汚れたプラスチック皿など、他の廃棄物が混じったリサイクルに適さない廃プラスチックが、途上国を中心とした輸出先でリサイクルされずに放置され、環境汚染を招いていることが問題視されている。
 
プラスチックによる海洋汚染が地球規模の課題となるなか、ノルウェーが「リサイクルに適さないほど汚れている廃プラスチック」を規制対象物に加える条約付属書の改正案を、4月末からの締約国会議に提案。

具体例として、飲み残しの飲料や食品で汚れた紙、おむつなどが混じった廃プラスチックを挙げている。同条約は187カ国・機関が締結している。提案は締約国会議で反対する国が1カ国もなければ採択される。
 
日本は、廃プラスチックのリサイクルの一部を、途上国を中心とした海外に頼っている。昨年は約101万トン、一昨年は約143万トンが輸出され、その中には汚れたプラスチックも多く含まれている。

同条約の規制対象物になれば輸出は難しくなるが、国内でリサイクル処理能力を増やすなどして対応する方針だ。【2月26日 朝日】
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日本は、すでに中国の受け入れ中止により、プラごみ受け入れ先を東南アジアなどに変更する対応もみせてきましたが、上記のようなルールが実現すれば(“締約国会議で反対する国が1カ国もなければ”というのも随分厳しい条件ですが)、そうした“抜け道探し”も難しくなり、国内での処理システム確立に向けて一層の努力を求められます。

ただ、共同提案国として問題提起しているということは、それなりの覚悟・目算があってのことでしょう。

最もプラごみ対策が急務となっている地域でもある東南アジアでも、問題意識が共有される状況にもなっており、日本は資金拠出などでこの流れを支援しています。

****アジアの高水準海洋プラごみに懸念 ASEAN首脳会議で「バンコク宣言」へ****
東南アジア諸国連合(ASEAN、加盟10カ国)の海洋ごみに関する特別閣僚会合が5日、バンコクで開かれ、「域内における(深刻度が)高水準の海洋プラスチックごみに大きな懸念」を示す共同報道声明を発表した。

6月にタイで予定される首脳会議で、対策指針を取りまとめた「バンコク宣言」の採択を目指す。

インドネシアは海洋プラスチックごみの排出量が中国に次いで世界で2番目に多いと指摘されるなど、ASEAN域内から海に流出するごみの量は世界でも目立っている。加盟国間でも「被害を受けるのも自分たち」との認識が共有されるようになり、削減に向けた取り組みが少しずつ広がりつつある。

域外国も含めた拡大会合には日本も参加し、秋元司副環境相が出席。東南アジアの大河メコン川流域などでのごみの排出源や経路の特定に向けて、国連環境計画の活動に資金を拠出することや、ジャカルタに情報収集拠点を創設することなど、日本政府の支援策を説明した。

会合後、秋元氏は「日本も通ってきた道だ。海洋ごみを含めた廃棄物管理などの経験をASEAN各国に伝えたい」と話した。【3月5日 毎日】
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更に、日本を含むG20の場での世界的ルールづくりの動きも進んでいます。

****プラゴミなど海洋汚染の対策提言、G20に向け=科学アカデミー****
G20(20カ国・地域)各国の科学アカデミーで構成するサイエンス20(S20)は6日、主催の日本学術会議がまとめた海洋汚染対策を共同声明として採択した。

海洋プラスチックなど海の生態系を破壊・汚染する要因を低減・除去するため、各国の科学者によるデータ管理システムの構築など6つの提言から成る。6月に大阪市で開催されるG20首脳会議をにらみ、具体的な対策の立案に向けて日本政府内でも議論が加速する見通し。

S20は、各国科学アカデミーがG20首脳会議での政策提言を行うために2017年に発足。今回が3回目の開催となる。

提言内容は、
1)海洋資源開発に対し、好ましくない影響を防ぐための科学的根拠に基づく助言の必要性
2)水産資源の乱獲や汚染など、海洋生態系へのストレスとなる要因の軽減を目的とした行動
3)科学的根拠に基づく目標設定
4)研究船、観測・監視技術等の調査・研究基盤の強化や人材育成
5)世界中の科学者がアクセス可能なデータ保管装置と管理システムの確立
6)国際協力の下で推進される調査・研究活動と情報の共有化──など。

例えば、抗生物質や殺虫剤などによる河川汚染の海への影響、海洋プラスチックゴミが海洋生物に取り込まれる可能性など、様々な要因で進む海洋汚染を定量的に把握するため多くの研究が必要と主張し、地球環境の悪化に対応する必要性を強調している。【3月6日 ロイター】
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問題がこれ以上深刻化する前に世界的規模で一定の歯止めをかける必要があり、公害問題以来、環境問題への取り組みには実績もある日本の積極的関与が期待されます。

【南アジア、特にインドで深刻な大気汚染】
一方、海洋汚染以上に“一目瞭然”というか、日々の暮らしに密着しているのが大気汚染。
こちらも、連日のように世界各地での劣悪な状況が報じられていますが、その中心地はインド・パキスタン・バングラデシュなどの南アジア、特にインドは最悪です。

****インドのニューデリー、2018年に大気汚染が世界で最も深刻=調査****

(スモッグに覆われたニューデリー市内。昨年12月に撮影)
インドの首都ニューデリーは、2018年に世界で最も大気汚染が深刻な都市だった。各都市の大気汚染状況を監視するエアビジュアルと環境保護団体グリーンピースが5日に調査結果を公表した。

調査は世界の61都市の大気中の微小粒子状物質「PM2.5」の濃度を測定。それによると、ニューデリーの2018年の「PM2.5」濃度は平均1立方メートル当たり113.5マイクログラムで、中国の首都、北京の平均(50.9マイクログラム)の倍以上だった。

ニューデリーに続いて大気汚染が深刻なのは、バングラデシュの首都ダッカ、アフガニスタンの首都カブールだった。北京は8位だった。

ニューデリーでは、車や工場などの排気ガス、建設現場のほこり、ごみの焼却による煙などが大気汚染につながっている。

世界保健機関(WHO)が定める大気中の「PM2.5」の濃度基準値は、1立方メートル当たり25マイクログラム。

エアビジュアルとグリーンピースによると、中国本土では「PM2.5」の水準が前年から大きく改善したと指摘。

一方、インドには、世界で最も大気汚染が深刻な20都市中15都市があると説明した。【3月6日 ロイター】
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インドは、“世界で最も大気汚染が深刻な20都市中15都市”と、ぶっちぎり状態です。

上記記事は「PM2.5」に着目したものですが、多分同じ調査だと思われますが、下記はPM2.5など、汚染物質の濃度を基に算出される「空気質指数(AQI)」に着目しています。

いずれにしても、南アジア、特にインドの独走状態は同じです。

****世界の大気汚染指数、インド7都市がワースト10入り****
世界の都市の大気汚染を比べた新たな調査で、インドがワースト10のうち7都市を占めることが分かった。

国際環境保護団体「グリーンピース」と大気汚染の実態を監視する民間機関「エアビジュアル」が世界3000都市について、米環境保護局(EPA)が定めた汚染の程度を示す指標「空気質指数(AQI)」などのデータを発表した。

それによると、AQIが最も高い数値を示したのはインドの首都ニューデリー郊外のグルグラム。昨年のAQIの平均は135.8と、EPAが「良好」と定める値の3倍近くに上った。EPAが「全ての人に非常に有害」とする境界の200を超えた月も2カ月あった。

AQIは大気中の微小粒子状物質(PM2.5)など、汚染物質の濃度を基に算出される。

報告書によると、世界では大気汚染が原因で死亡する人が、今後1年間で約700万人に達する見通し。グリーンピース東南アジア支部のサニョ事務局長は、世界全体で労働力の損失が2250億ドル(約25兆円)、医療コストも数兆ドルに及ぶと指摘した。

中でも南アジアの状況は深刻で、ワースト20の中ではインドとパキスタン、バングラデシュが18都市を占めた。

報告書に挙げられた3000都市のうち、PM2.5濃度が世界保健機関(WHO)の年間基準値を超えていたのは全体の64%。中東とアフリカの全都市、南アジアで99%、東南アジアで95%、東アジアで89%の都市に及んだ。

中国では平均濃度が前年より12%下がり、北京がワースト100から姿を消すなど改善がみられたものの、インドネシアや韓国、ベトナム、タイの大気汚染は悪化していることが分かった。【3月5日 CNN】
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【韓国 大気汚染対策で中国に共同対策を提起】
日本では大気汚染に関しては中国・北京の状況がひと頃よく報道されましたが、さすがに中国政府も危機感を感じたようで、(北京では)一定に対応が進んだようです。(中国のような国は、“やる”となると容赦ないところがありますので、進出日本企業も対策に苦慮しているところがあるのと話も聞きます)

【3月6日 ロイター】のPM2.5では北京は8位とのことですが、【3月5日 CNN】のAQIではワースト100から姿を消したとのこと。

隣国の韓国・ソウルの大気汚染もしばしば話題になります。

****史上最悪PM2.5 韓国で大気汚染が深刻****
2019/03/06 12:15
韓国のソウルでPM2.5の濃度が観測史上最悪を記録した。韓国では自動車の排ガスや中国から大気汚染物質が飛来していることなどを受け、大気汚染が深刻化している。

ソウルでは5日、PM2.5の平均濃度が1立方メートルあたり135マイクログラムとなり観測史上最悪を記録。日本の基準では1日の平均が70マイクログラムを超えるとみこまれる場合、外出を控えるなどの注意が呼びかけられるが、ソウルではその倍近くの濃度となった。

韓国の大気汚染はしばらく続く恐れもあり、抜本的な対策を求める声が高まっている。【3月6日 日テレNEWS24】
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韓国は、中国から汚染が自国に飛来してきている・・・との不満が強く、中国は韓国自身に由来する汚染だと反論して、しばしばもめていましたが、韓国・文在寅大統領は中国との共同作業で人工降雨などを使った対策を提起しています。

****大気汚染対処へ中国と協議を 「必要なら補正予算編成も」=文大統領****
韓国の文在寅(ムン・ジェイン)大統領は6日、大気汚染が深刻化していることに関し、「中国から飛来する粒子状物質(PM)の影響を最小限に抑えるため、中国政府と協議して緊急対策を講じてほしい」と指示した。青瓦台(大統領府)の金宜謙(キム・ウィギョム)報道官が発言を伝えた。

文大統領は、大気汚染物質の濃度が高い場合に韓中がこれを減らすための措置を同時に取る案を協議し、汚染物質を洗い流すための人工降雨の韓中共同実施を推進するよう指示した。

韓中がすでに人工降雨の技術協力で合意していることを挙げながら、「中国側は韓国の粒子状物質が上海に飛来すると主張しているが、黄海上空で人工降雨を実施すれば中国にも有益だ」と指摘した。また、中国と共同での大気汚染予報システム構築も推進するよう求めた。

文大統領は「必要なら補正予算を組んででも、粒子状物質の低減に尽力してほしい」と強調。金氏は、この補正予算は空気清浄器の設置を増やすなどの支援事業や中国との共同事業に使われると説明している。

文大統領はあわせて、稼働30年以上の老朽化した石炭火力発電所の早期閉鎖を積極的に検討するよう指示した。

金氏によると、青瓦台は独自の大気汚染対策を実施する。粒子状物質の非常低減措置が発令されている間は青瓦台の業務用車両51台のうち電気自動車(EV)6台と燃料電池車(FCV)1台のみを使用し、職員にも原則として自家用車での通勤を禁じる。【3月6日 聯合ニュース】
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もっとも、文在寅大統領の提起の根底には、中国からの汚染飛来で韓国が犠牲を被っているという考えがありますので、中国側がこの提案に乗るのかどうかはわかりません。

もし、こうした対策が有効なら、毎年大陸からの黄砂および付着する汚染物質に悩まされる日本としても、協力するのにやぶさかではないでしょう。

政治的には問題が多い三か国ですが、協力できるところで共同作業ができれば、それはまた有意義なことです。

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地球温暖化の進行を止められる新技術となるか? 大気中のCO2除去技術

2019-03-05 16:07:04 | 環境

(二酸化炭素を吸収する未来の設備の想像図【2018年06月8日 BBC】)

【経済活動を抑制する排出削減 まとまらない具体策】
アメリカのトランプ大統領など一部の人々を除けば、地球温暖化阻止の取り組みが今後の人類社会にとって非常に重要であるということが、ほぼ共通の認識になってきています。

そのために、「パリ協定」が合意され、国連気候変動枠組み条約締約国会議で議論が続けられていますが、その進捗は問題の切実さに比べて非常に遅いように思われます。

その原因は、具体策に関しての国際的合意が非常に困難なためですが、その困難さは、CO2排出を制限することは、現在の技術環境下では経済活動に抑制的に作用するという現実によるものです。

より効果的な具体策を求める欧州などは、途上国にも先進国と同等、あるいはそれに近い厳しい制限の実施を求めていますが、途上国側からすれば、「現在の問題は経済活動を主導してきた先進国が好き放題にCO2をまき散らした結果であり、これから経済活動水準を上げていかねばならい我々途上国に、その“つけ”を回すのはおかしい。先進国が大きな責任を負うべきであり、途上国を同列に扱うのは間違っている。」という主張にもなります。

途上国側の主張も“もっとも”です。ただ、大量排出国の中国やインドまでも“途上国”ということで厳しい制約を逃れては、有効な対応はできません。

毎年繰り返される議論で、明快な答えはみつかっていません。
アメリカ・トランプ政権が「パリ合意」から離脱する理由も、そもそもの「温暖化」への疑念や石炭産業保護に加え、温暖化効果ガス排出制限がもたらす経済活動への悪影響があります。

【C02除去技術で地球環境を改善できる日も近い?】
経済活動を抑制することなくCO2を抑制・削減できたら、この種の議論による「停滞」を打ち破ることも可能になります。

例えば、大気中のCO2を吸収・回収することはできないのか?
そんな都合のいい技術は・・・ないことはないようです。

****ベンチャーが挑む「フェーズ2」の新技術****
CO2の排出量を抑えるだけでは、予測を超える気候変動のスピ-ドに追いつけない。大気中のC02を科学の力で取り除けないか。従来の気候変動対策を「フェーズ1」とすれば、「フェーズ2」に相当する新たな試みが始まっている。
 
最先端を走るのがスイスのスタートアップ「クライムワークス」だ。チューリヒ近郊では、同社が世界で初めて開発・製造に成功した商業用C02回収プラントが、すでに稼働を始めている。
 
田園地帯にあるゴミ焼却施設の屋上に、エアコンの室外機のような装置が据えつけられていた。

18機のファンが吸い込んだ空気を約100度に加熱し、特殊なフィルターでC02を吸着させる。1年で回収できるC02は約900トンで、1機が数千本の樹木に相当。回収したC02は約400メートル先にある畑の温室にパイプで送り、作物の光合成を活発化させる「肥料」になる。

広報部長のルイーズ・チャールズは「2025年には地球全体で排出されるC02総量の1%を回収したい」と意気込む。

1トンの回収に600ドルかかる高コストが課題だが、コカ・コーラの発売する炭酸水「VALSER」に回収したC02が使われるなど、付加価値を高める試みも始まっている。
 
大規模プラントを試験運用するカナダの「カーボンエンジニアリング」、安全性の高い技術で注目を集めるオランダの「アンテシー」など、世界のスタートアップも次々とC02除去に名乗りを上げる。

きっかけは2016年に温暖化防止の国際ルール「パリ協定」が発効したことだ。「産業革命以降の気温上昇を2度未満に抑える」などの厳しい目標を前に、見込みのある技術は何でも試す機運が広がった。EUの長期戦略では、除去技術を使うことがすでに前提となっている。
 
C02除去技術の発展を支援する米国のNGO「カーボン180]代表、ノア・ダイヒは言う。「30年前は太陽光発電も非常に高コストだったが、技術の進歩でコストが下がり、それが投資を呼び込み、さらなる技術の発展を促すというサイクルで、100分の1にまで下がった。この好循環が起これば、C02除去技術で地球環境を改善できる日も近い」(後略)【3月3日 CLOBE+】  
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【大気中のC02から液体燃料をつくることでカーボンニュートラルを実現】
“1トンの回収に600ドルかかる高コスト”では、まだまだ実用化は先のように思われますが、上記記事にも名前がでてくるカナダの「カーボンエンジニアリング」などは100ドルを切る水準にコストを下げられるとしています。

カナダ「カーボンエンジニアリング」の特徴は低コスト実現のほか、画期的新技術ではなく既存の技術・施設を利用する仕組みとなっていること、回収したCO2を液体燃料に変えることで、プラスでもマイナスでもない「カーボンニュートラル」な状況を実現しているという点です。

****二酸化炭素を大気から吸収する新技術 加企業、低コストで****
空気中の二酸化炭素を低コストで吸収する新技術を、カナダの企業がこのほど公表した。二酸化炭素1トンを取り出す費用は100ドル(約1万1000円)以下と、従来の技術の6分の1になるという。

米マイクロソフト創業者のビル・ゲイツ氏が後押しするカーボン・エンジニアリング社は、二酸化炭素と再生可能エネルギーから合成液体燃料を生産することが目下の目標だとしている。

新技術に関する専門家によるピアレビュー(査読)を経た論文は、科学誌「ジュール」に掲載された。

科学者たちの疑念
気候変動の原因になる二酸化炭素ガス問題を解決する技術的な「解決法」には常に、科学者たちから一定の疑いの目が向けられてきた。

宇宙に太陽光の遮光板を建設したり、二酸化炭素を吸収する物質を海中に投入したりといったアイデアは、温暖化ガスの排出削減を人々に訴えるという、平凡ながらも困難な取り組みから関心をそらしてしまい、危険でもあると指摘されてきた。

しかし、二酸化炭素を空気から直接吸収する計画は実質的に森林保護と同じで、幾分かはより現実的な方策だと考えられてきた。

このアイデアは、1990年代半ばに科学者のクラウス・ラックナー氏が最初に提唱したもので、その後、いくつかのハイテク企業が二酸化炭素を取り除く設備の高価なプロトタイプを建造してきた。

スイス企業のクライムワークス社は昨年、炭素を空気から直接取り出す設備を発表し、取り出された炭素を、近隣の温室設備で栽培されているトマトやキュウリの肥料として供給した。

カーボン・エンジニアリング社は今回、空気から直接取り出す技術の大幅な低コスト化に成功したと話している。
同社は2009年に、マイクロソフトのゲイツ氏やカナダのオイルサンド産業に投資するノーマン・マリー・エドワーズ氏から出資を受け設立された。同社は2015年から試験場を操業しており、一日当たり1トンの二酸化炭素を空気から取り出しているという。

同社の技術では、工夫が施された冷却塔に送風機によって空気が運ばれ、二酸化炭素と反応する液体に接触する。
その後いくつかの工程を経て、より純度の高い二酸化炭素が抽出され、二酸化炭素と反応する液体は空気接触器に戻される。

2011年に米国物理学会が行った研究では、空気から二酸化炭素を直接取り出す費用は1トン当たり600ドルだと示唆されていたが、カーボン・エンジニアリング社は、既存の技術を応用することで大幅なコスト削減が可能になったと説明する。

カーボン・エンジニアリング社を創業した米ハーバード大学のデイビッド・キース教授はBBCに対し、「大きな前進だと言っているのは我が社だけではない」とし、「本当はそうでないのに、我々を救ってくれる魔法の解決策だとか、あまりに高額でばかげていているとか、人々に言われてしまうものから、実現でき有用な形で開発可能な産業技術だと、この技術が考えられるようになるきっかけになると期待している」と語った。

カーボン・エンジニアリング社は二酸化炭素とクリーンエネルギーを組み合わせた液体燃料によって排出ガス削減に貢献したい考えだ

キース教授は、「有用な形」が意味するのは、ただ二酸化炭素を空気から取り出すのではなく、合成液体燃料の主要原料にできることだと話す。

カーボン・エンジニアリング社は現在、純粋な二酸化炭素と再生可能エネルギーを使って水から取り出した水素を組み合わせた液体燃料を一日約1バレル生産している。

キース教授は、「カーボン・エンジニアリング社が市場に提案しているのはまず、二酸化炭素の量がプラスマイナスゼロになるカーボンニュートラルな燃料で、その意味では排出ガスを削減する技術の一つに過ぎない。最終的には大気中の二酸化炭素を取り除いてはいない」と語った。

「我々の燃料工場の1日当たりの生産量は、長期的にはざっと2000バレルになると想定しているが、次に建設する工場は、初の本格的な商業目的ながら大きさは10分の1になる。我々は今それを開発していて、太陽光発電あるいは風力発電による非常に安価なエネルギー供給や、投資家を探している」

バイオ燃料よりも良い?
カーボン・エンジニアリング社は、バイオ燃料に対する同社の液体燃料アプローチの優位性は、必要となる土地や水がずっと少ないことだと考えている。

キース教授は、もし同社の技術がほかのカーボンニュートラルな技術と同等の補助金を得られるなら、資金調達が可能になり、かなり早期に工場を建設できると話した。

同業者からは、カーボン・エンジニアリング社が低コスト化を実現したことを歓迎する声が出ているが、二酸化炭素を大気から取り出して、活用し貯蔵することの潜在性を生かすためには、政府からさらなる後押しが必要だと考えている。

レイキャビク・エネジー社のエッダ・シフ・アラドティール氏はBBCに対し、「空気から直接取り出す手法が1トン当たり100ドルというのは、同様の技術の奨励策が全くない我々の現状からすると多少、大幅(な低下)だが、コストを引き下げるには、個別の技術や代替可能な工程について、さらに開発し効率化するしかない」と語った。
アラドティール氏はアイスランドで、大気中の二酸化炭素を吸収し、地中奥深くに固体として保存する計画にかかわっている。

同氏は、「我々が直面している最も大きな課題は、パリ協定で合意された文言の後には行動がなくてはならないということだ。気候変動の技術的解決策はすでにあるが、技術が幅広く実用化されるための奨励策あるいは義務化については、各国議会の取り組みは十分でない。パリ協定を守るためには、この状況が早急に変わらなくてはならない」と指摘した。

カーボン・エンジニアリング社の関係者は課題の大きさを痛感している。キース教授は、「我々が失敗する可能性はあらゆるところに転がっている」と語る。

しかし、キース教授は航空機や大型輸送の排出ガス問題は、電気自動車技術だけでは解決できないと考えている。
「液体燃料面でより良い革新が必要だ。二酸化炭素と再生可能エネルギーによって取り出された水素を組み合わせるという、このアプローチは突破口になる」【2018年06月8日 BBC】
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既存の技術の利用ということに関しては、以下のように説明されています。

“水酸化物の水溶液を擁する改造済の産業冷却塔がCO2を吸収して、炭酸塩に変換する。
変換された炭酸塩は、元々は浄水場において鉱物の抽出のために作成された装置で、ペレットになる。
そしてペレットは、金を焼くために本来設計された窯で熱せられ、純粋なCO2ガスに変換されてから、最終的に合成燃料となるのだ。”【2018年6月16日 IDEAS FOR GOOD】

大気中から吸収したCO2を原料に液体燃料をつくるという、“カーボンニュートラル”“排出ガスを削減する技術の一つに過ぎない”という点には、やや物足りない感も素人的にはありますが、“現実性”という面では大きな意味があるかも。

どんなに優れた技術でも、要した費用を回収できる道がなければ現実のものとはなりません。

せいぜい、公的な補助金で・・・というところでしょうが、昨今はどこの政府も財政難で、目の前の課題を抱えた状況で、遠い将来のための費用を負担する余裕はなく、やろうとすると “黄色いベスト運動”に直面しているフランス・マクロン政権(燃料税引き上げで気候変動対策など脱炭素社会を目指す)のように“政治問題”にもなります。

「地球環境は心配だけれど、今はそれどころではない」(黄色いベスト運動参加者)【3月3日 GLOBE+】

一方、CO2を原料に液体燃料をつくるというコスト回収方法があれば、政府が一定に誘導・補助さえすれば、あとは民間資金が市場ベースで世界各地で活動を始める・・・という話にもなります。

コストの問題は、これも素人の勝手な推測ですが、必要とされている技術であれば日進月歩の技術革新によって、そう時間を要することなく飛躍的に引き下げることも可能ではないでしょうか?きわめて楽観的ですが。

もちろん、CO2回収のルートができたとしても、長年増え続けてきたCO2を海中に蓄積するなど、すでに変容している地球環境の変化を押しとどめるためには、化石燃料などの使用削減は並行して進める必要があります。

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地球温暖化対策を呼び掛ける16歳少女の訴え、欧州各地に拡大 世界で広がるプラごみ対策

2019-02-23 22:43:48 | 環境

(去年8月から毎週金曜日に学校を休んで首都ストックホルムの議会の前で座り込み、地球温暖化対策を呼びかける活動を1人で始めたスウェーデンのグレタ・トゥーンベリさん16歳【2月22日 NHK】
ボードに書かれているのは、google翻訳にかけると「気候のための学校ストライキ」といった内容のようです)

【「政治家たちはこの数十年間を何もせずにむだにしてきた」】
長い時間をかけて変化する地球温暖化の話は、正直なところ私のような老い先短い者にとっては、あまり切実な影響は感じない“他人事”でもあります。

その意味では、今後数十年地球上で暮らす子供たち・若い人にとっての方がより切実な問題でもあり、大人たちのいい加減な対応に抗議の声をあげるというのも、もっともなことです。

****“未来のための金曜日”16歳少女がEUの会議で温暖化対策訴え****
スウェーデンの16歳の少女が、毎週金曜日に学校を休んで地球温暖化対策を呼びかける活動を始めたのをきっかけに世界各地に活動の輪が広がっています。

その少女が、21日、EU=ヨーロッパ連合の会議で演説し、「温暖化の問題を解決するまで活動をやめない」と決意を語りました。

スウェーデンのグレタ・トゥーンベリさん16歳は、去年8月から毎週金曜日に学校を休んで首都ストックホルムの議会の前で座り込み、地球温暖化対策を呼びかける活動を1人で始めました。

この活動は、「未来のための金曜日」と呼ばれ、世界各地に広がっていて、トゥーンベリさんは、21日、ベルギーのブリュッセルで開かれたEUの会議で演説しました。

この中でトゥーンベリさんは、「私たちは、今、起きている気候変動に注目すべきだ。そうしないと、これまでに築き上げてきたものが台なしになってしまう」と述べ、温暖化対策の必要性を訴えました。

さらに、「『大切な勉強の時間をむだにしている』と言われるかもしれないが、政治家たちはこの数十年間を何もせずにむだにしてきた。私たちは、温暖化の問題を解決するまで活動をやめない」と決意を語りました。

これに対し、EUのユンケル委員長は、「若い人たちが行動を起こし、政治家に課題を投げかけたことを歓迎する」と述べ、対策に取り組む考えを示しました。【2月22日 NHK】
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チコちゃんなら「ボーっと生きてんじゃねーよ!」といったところでしょうか。
上記記事にもあるように、グレタ・トゥーンベリさん16歳の訴えは、欧州各地に波及しています。

****英で児童・生徒数千人が気候変動デモ 学校は授業欠席容認****
英国各地で15日、数千人の児童や生徒が気候変動への対策を求めるデモを行い、ロンドン中心部の議会議事堂前にある広場「パーラメントスクエア」での集会には数百人が参加した。子どもたちの多くが、学校側は授業を休んで抗議に参加することに理解を示したと述べている。

抗議にはあらゆる年齢層の児童・生徒が参加し、「地球を救え」と声を上げた。広場では発煙筒がたかれて参加者から喝采が起こる場面が見られたほか、議事堂から目と鼻の先にある像によじ登って対策を訴え、問題への認識向上を呼び掛ける生徒らもいた。

今回のデモは「気候のための青少年ストライキ」と銘打って実施されたもので、ベルギー、フランス、ドイツ、スウェーデンでも行われた欧州規模のボイコット活動の一環。

ブリュッセルなどベルギーの各都市では、若者らが約6週にわたり毎週木曜日に抗議行動を実施。14日にブリュッセルで行われた抗議には約1万1000人が集まった。また、各地の抗議主催者によれば、15日には仏パリ、独ポツダム、ミュンヘンなど欧州の諸都市で街頭デモが行われた。

一連の運動は、スウェーデンのグレタ・トゥンベリさんが昨年、ストックホルムの議会前で一人で続けた抗議行動から広まった。 【2月16日 AFP】
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****ベルギーで高校生1万人がデモ 温暖化で行動要求****
ベルギーで21日、地球温暖化対策での政治家ら大人の行動は怠慢だとして抗議する高校生らのデモが、首都ブリュッセルなど各地で行われた。

教室を飛び出した1万人超の若者が「私たちは気候変動で正義を求める」「今すぐ行動を」などと訴えた。(後略)【2月22日 共同】
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****温暖化阻止訴える少女 パリのデモ参加「子どもたちは抗議を」*****
毎週金曜日に学校を休んで地球温暖化対策を呼びかける活動を始めたスウェーデンの少女が、フランスで行われたデモに参加し、来月15日に世界各地で予定されている抗議活動に参加するよう呼びかけました。

北欧スウェーデンのグレタ・トゥーンベリさん(16)は、去年8月、学校を休んで首都ストックホルムの議会の前で座り込み、地球温暖化対策を呼びかける活動を始めました。

その様子をSNSで発信すると世界中の若者の共感を呼び、ツイッターのフォロワーが20万人を超え、同じような活動がヨーロッパなど世界中に広がっています。

こうした中、トゥーンベリさんは22日、フランスの首都パリで行われたデモに参加し、およそ1000人の若者たちとともに「連帯して温暖化対策を進めよう」などと訴えました。

来月15日には、フランスやアメリカ、日本など世界各地でデモが行われる予定で、トゥーンベリさんは、このデモをこれまで温暖化対策に取り組んでこなかった政治家など、大人たちへの抗議活動と位置づけ、「地球温暖化対策を呼びかけるストライキに、たくさんの子どもたちに参加してほしい」と呼びかけました。

学校の昼休みを利用して参加した16歳の少年は、「大勢で集まって声を上げれば、政府だって動かすことができると思う」と話していました。【2月23日 NHK】
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フランスなどでは、以前から高校生ぐらいの若者の政治参加が一般的で、ときには社会を動かすような力を発揮してきました。

18歳で投票権を与えられても「政治のことはよくわからないから・・・」と当事者がしり込みするような日本では、高校生が授業を休んで政治的とも思われるような行動に参加する、それを学校・社会が容認するということは到底想像もできないことです。

日本では、“未熟な”子供は“余計なことは考えず”学校の勉強に専念していればいい・・・といったところでしょう。

そのあたりが、社会における子供や若者の位置づけ、本人たちの自覚の違いでもあり、経済的にも一定水準に達し、同じような民主主義的価値観を共有するとは言いながらも、“社会の懐の深さ”の違いでしょうか。

【プラごみ対策に腰を上げる日本】
環境問題関連では、温暖化のほかに最近よく話題になるのが、深刻な大気汚染とプラスチックごみ問題です。
その後者のプラスチックごみ問題に関する最近の記事をいくつか。

日本を訪れた中国人観光客が、日本の街はきれいだと感嘆し、分別ごみ収集の徹底ぶりに驚く・・・といった類の話はよく聞きますが、プラスチックごみ関しては、最後の処理を中国に持ち込むことで(経済取引ですので、“押し付ける”とはまでは言いませんが)日本の“きれいさ”は成立していました。

その中国が資源ごみ受け入れを禁止したことで、日本はプラスチックごみの持って行き場がなくなり困っているのが実情です。

*****プラごみ輸出、18年3割減 中国が規制、行き場失う****
日本が2018年に輸出したプラスチックごみの量が、17年と比べ3割減ったことが地球環境戦略研究機関(IGES)の分析で21日、分かった。

再生材の原料としての需要が高く、最大の輸出先となっていた中国が、環境汚染を懸念して輸入を厳しく制限したことが影響した。代わりに東南アジア向けが増えたが規制を強める動きがあり、受け入れの大幅拡大は難しい状況だ。
 
行き場を失ったプラスチックごみは日本国内にあふれており、分析した森田宜典・IGES客員研究員は「製品に再生材の使用を義務付けるなど国内対策を一層進めるべきだ」と指摘する。【2月21日 共同】
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上記のような状況、また、世界で広がるプラスチックごみ対策の流れといった現状もあって、日本もプラごみ対策に本腰を入れるようです。

****レジ袋有料化を義務付け プラごみ25%削減決定****
中央環境審議会は22日の小委員会で、ペットボトルなど使い捨てプラスチックの排出量を2030年までに25%削減する環境省の「プラスチック資源循環戦略案」を決定した。小売店へのレジ袋有料化の義務付けも盛り込んだ。ただ排出削減の比較対象となる基準年は、産業界の異論などに配慮して明示しなかった。
 
原田義昭環境相への答申を経て、政府の「循環戦略」に格上げする。深刻な海洋汚染を招くプラごみ問題は世界的な関心が高まっており、6月に大阪で開催する20カ国・地域(G20)首脳会合へ向けて、日本政府の姿勢をアピールする。
 
レジ袋は早ければ20年にも有料化する。【2月22日 共同】
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“25%削減”と言いながら、比較対象となる基準年は明示しないというのも、実にいい加減というか奇妙な話です。会社内でこんな起案文書を見たら「お前、馬鹿じゃないか!」という話にもなるのですが・・・。

【「地上の楽園」バリ島の海を覆うプラごみ】
個人的なことを言えば、現在仕事でレジ袋を使用しています。使う側からすればレジ袋は“渡すべきものを間違いなく相手に渡す”ための有効な手段でもあり、この使用が制約されると困った場面も想定されます。

ただ、東南アジアやインドなどを旅行すると、空き地・道路わき・海岸をプラごみが覆いつくしているような光景も珍しくなく、特にゴミ回収がうまく機能していない国では使用制限が急務であることは理解できます。

昨年11月に観光したインドネシア・バリ島の海洋汚染も深刻です。

****(地球異変)プラごみ漂う「地上の楽園」 インドネシア・バリ島****
「地上の楽園」とも言われるインドネシア・バリ島の海が、プラスチックに侵されている。マンタが見られる透明度の高いダイビングスポットに、大量のプラスチックごみが浮かんでいた。

飲料ケースに隠れるように小魚が泳いでいる。漂うポリ袋はクラゲのようだ。雨期に、陸地から大量に流れ込むという。
 
世界経済フォーラム年次総会(ダボス会議)で示された報告書によると、世界で年800万トン以上のプラスチックごみが海に流れ出ているという。海の生態系への影響が懸念される。

細かく砕けた粒「マイクロプラスチック」は、食物連鎖で人間を含む多くの動物に悪影響を及ぼす恐れがある。海洋プラスチック汚染は地球規模の脅威だ。【2月17日 朝日】
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背景には、ゴミ回収システムが十分に機能していないことがあります。

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プラスチックごみが海にどっと浮かぶのは、毎年、12月中旬~2月。雨期にあたり、大雨で陸地から押し流されてくる。インドネシア政府は「海洋ごみの80%が陸地からの流入」とする。(中略)
 
ペニダ島では、断崖から見下ろすビーチなどがインスタ映えするとして観光客が急増。ホテルやレストランの建設ラッシュに沸き、ダイビング店だけでも1年半の間に5店舗から11店舗に増えた。
 
ごみが増える一方、「ごみ処理の習慣もシステムも不十分」と、島で1年以上前から清掃の市民活動を率いるキリル・ポポブさん(34)は訴える。

地元政府によれば、大半の住民がごみを燃やすか埋めるか、ポイ捨てしている。収集車が走るのはごく一部で、月額3千~1万5千ルピア(23~117円)の回収料を払う家もわずか。最終処分場は、ただ山積みにしているだけだ。
 
インドネシア政府は、海洋ごみを25年までに70%削減する目標を掲げ、プラスチック製品への課税も検討している。ただ、プラスチック業界の反発もあり、ルフット海事調整相は「目標達成は可能だが、そう簡単ではない」と話す。(中略)

米・ジョージア大などの推計によると、プラスチックごみを海に流出させている上位20カ国中、半数以上がアジアの国々だ。中国が年最大353万トンで最も多く、最大129万トンのインドネシアが続く。日本は5・7万トンで30番目だ。
 
日本の約4倍の24万トンが流出しているとみられるインド。人口が過密している都市部ではごみの処理が追いついていない。

人口が2千万人を超えるインド・ニューデリーのごみ処理場では、ポリ袋などを多く含むごみが高さ40メートルほどに積み上がっていた。こうしたごみの山がいくつもある。雨の日にはごみが崩れると近くの川に大量に流れ込み、海へと運ばれていく。(後略)【同上】
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海洋に流失したプラごみは紫外線などで劣化し、細かく砕けた主に5ミリ以下の粒「マイクロプラスチック」となります。「マイクロプラスチック」は有害な化学物質を吸着しやすく、生きものの体内に入ったときの影響が心配されていますが、魚・貝を介して濃縮されて人へも取り込まれます。

上記のインドネシアでは、プラごみ回収の取り組みも行われてはいるようです。

****プラスチックの山が広がる海岸、30トンのごみ回収 インドネシア・スマトラ島****
インドネシア・スマトラ島の南端に位置するランプン州で21日、大量のごみで荒れ果てた海岸の清掃が行われた。インドネシアでは全国的に膨大な量の海洋ごみが問題となっており、ランプン州の海岸では2010年から毎年清掃活動が実施されている。
 
海辺に集まった子ども、軍関係者、地元住民ら約200人が、プラスチックのごみの山の上を苦労して歩きながら、ビーチサンダルなどのごみを拾った。3時間の清掃で拾ったごみの量は30トンにも上った。
 
ランプン州で清掃活動が始まったのは、地元漁師の網に大量のごみがかかるようになったのがきっかけだった。ごみの大部分は州都であるバンダルランプンから流れてきたものだという。
 
約1万7000の島々から成るインドネシアは、2025年までに海洋プラスチックごみを70%削減する目標を掲げている。 【2月22日 AFP】AFPBB News
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【世界で広がるプラ製品禁止の動き】
しかし、“広大な海に漂うマイクロプラスチックの回収は不可能に近い。近年、海洋汚染がクローズアップされ、脱「使い捨てプラスチック」が世界の潮流だ。世界的な企業が相次いで使い捨てプラ製ストローなどの廃止を表明したり、国レベルで使い捨てプラ製品禁止の動きが始まったりしている。”【2月17日 朝日】とも。

昨日も、そうした取り組みのひとつが報じられています。

****南太平洋の島国バヌアツ、プラごみ削減で使い捨ておむつ禁止へ****
南太平洋の島国バヌアツが、使い捨ておむつを禁止すると発表した。環境汚染の大幅な改善を目指す取り組みの一環だという。
 
ラルフ・レゲンバヌ外相は今週、首都ポートビラで開かれた会議で、使い捨ておむつのほかプラスチック製のスプーンやフォーク、マドラー、ポリスチレン製のコップ、複数の食品包装についても使用を禁止する方針を表明した。12月1日の施行を目指している。
 
レゲンバヌ氏は、ポートビラで出る家庭ごみの中で最も量の多い品目は使い捨ておむつだということが研究で分かったと指摘。「この品目を排除するだけで、プラごみを一気に削減できる」とツイッターに投稿した。
 
バヌアツは気候変動で深刻な影響を受ける太平洋諸国の一つで、環境保護の取り組みでは世界をリードする立場を自負している。昨年には世界で初めてプラスチック製レジ袋の全面禁止に踏み切った。
 
米シンクタンク「ワールドウオッチ研究所」は2007年、世界では年間4500億枚の使い捨ておむつが消費されているとの推計を出している。 【2月22日 AFP】AFPBB News
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使い捨ておむつを大量に使用されている方の自宅わきに、“おむつの山”が出来ているという悲惨な光景を目にしたこともありますので、問題であることは確かです。

ただ、禁止して代わりに・・・・どうするのでしょうか?

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地球温暖化対策「COP24」開幕  石炭など“レトロ・アメリカ”への偏重が際立つトランプ大統領

2018-12-03 22:18:10 | 環境

(【12月3日 東京】 世界の未来は中国とアメリカの対応にかかっていることを改めて感じるグラフです)

【トルコやサウジアラビア、ロシアなどの消極姿勢など、いつもどおり難航が予想】
地球温暖化対策を話し合う国連の会議「COP24」が2日、ポーランドで開幕しました。
「COP24」は、「パリ協定」の実施に必要なルールを決める期限となっていて、実効性のあるルールを採択できるかが焦点となります。

****「パリ協定」とは****
「パリ協定」は2020年以降の地球温暖化対策の国際的な枠組みで、3年前の2015年にフランスのパリで開かれた「COP21」で採択され、おととし11月に発効しました。

世界の平均気温の上昇を産業革命前に比べ2度未満に保つとともに、1.5度に抑える努力をすることや、そのために、世界全体の温室効果ガスの排出量を今世紀後半に実質的にゼロにすることを目標に掲げています。

そして、先進国だけに排出削減を義務づけた「京都議定書」とは異なり、発展途上国を含むすべての国が削減に取り組むことを定めていて、各国は、削減目標を5年ごとに国連に提出し、取り組みの状況を報告することが義務づけられています。

今回の「COP24」では、その報告をどのように行うのかなど、「パリ協定」を実施するためのルールの中身について決めることになっています。

地球温暖化をめぐっては、近年、日本を含む世界各地で洪水や高潮、猛暑、それに干ばつなどの異常気象による被害が相次いでいるほか、ことし10月には世界の科学者などでつくる国連のIPCC=「気候変動に関する政府間パネル」が、今のままでは、早ければ2030年には、世界の平均気温が産業革命前に比べて1.5度上昇すると予測する報告書を公表したことなどから、世界各国で危機感が強まり、対策を強化する機運が高まっています。

このため、対策の根幹となる「パリ協定」のルール作りが、今回の「COP24」でどれだけ進むのか、注目されます。【12月2日 NHK】
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先日のG20でも、「パリ協定」は「撤回不可能」だとして、完全に履行することで合意したと明記されたものの、トルコやサウジアラビア、ロシアなどの消極姿勢、それに苛立つ欧州などの間で“大論争”もあったとかで、離脱を表明しているアメリカは、この混乱を楽しんでいる(あるいは、煽っている)・・・といった感も。

****G20、気候変動めぐる各国のひずみが浮き彫りに****
アルゼンチンの首都ブエノスアイレスで開催された20か国・地域首脳会議は1日、首脳宣言を採択して閉幕した。会議では米国が気候変動に対する地球規模の行動の支持を拒否し、保護主義と闘うとのこれまで盛り込まれてきた文言を骨抜きにしたため、米国と他のG20参加国との間で意見の相違が目立った。
 
首脳宣言では、米国以外のすべてのG20参加国が地球温暖化対策の国際枠組み「パリ協定」は「撤回不可能」だとしてそれを完全に履行することで合意したと明記された。「米国はパリ協定から脱退する意思を改めて表明している」とも記された。
 
ホワイトハウスの高官によると、気候変動問題で米国と対立する「連合国」の一部がいら立ち始めており、トルコやロシア、サウジアラビアといった複数の国々は首脳宣言を最終的に支持したものの、署名に尻込みしていたという。
 
匿名を条件に語った高官は、「雇用をなくす協定から離脱する理由についてわが国の見解を明確にありのまま記して説明する一文を盛り込ませた」と述べた。パリ協定は米経済界に不利益となるというドナルド・トランプ大統領の主張に沿うものだ。
 
高官は「連合国のごく一部のいら立ちが明らかになり始めている。トルコやサウジアラビア、ロシアといった国々は、後でなにか言い始めるかもしれない」と述べ、「あらゆる点で、あれは本当に大成功だったと思う」と語った。
 
パリ協定は2015年に合意され、米国はバラク・オバマ前大統領在任中の2016年に批准したが、トランプ政権になって離脱する意向を示した。ロシア、トルコ、イランは未批准となっている。
 
交渉に近いフランス筋によると、「一定数の国々」が「パリ協定へのコミットメントの確約」をちゅうちょしていたため、19か国をまとめるのに大論争があったという。【12月2日 AFP】
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まあ、地球温暖化対策の国際協議の歴史は対立・混乱の歴史ですから、多少のゴタゴタは仕方ないところではありますが、異常気象が増加し、気温上傾向が明らかになっているこの期に及んで・・・という感も。

最近の国連研究によると、4年間横ばいだった二酸化炭素排出量は再び上昇しています。
(11月28日ブログ“地球温暖化 気温上昇抑制の目標達成が遠のく現況 トランプ、「ブラジルのトランプ」という政治要因も”)

【例によって「途上国」の立場を主張する中国】
****温暖化めぐるアメリカの動き****
世界で二酸化炭素などの温室効果ガスを最も多く排出している国は中国で、2番目に多いのがアメリカです。

地球温暖化対策の国際的な枠組みである「パリ協定」は、中国とアメリカが率先して締結し、リーダーシップを発揮することでおととし11月に発効しました。しかし、その2か月後に大統領に就任したアメリカのトランプ大統領は去年6月、「パリ協定」から脱退する方針を示しました。

一方で規定では、実際にアメリカが脱退できるのは早くても再来年、2020年11月4日以降で、脱退表明後もCOPの議論には「国益を守るため」などとして関係者が参加しています。【12月2日 NHK】
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「パリ協定」からの脱退を表明しているアメリカ・トランプ政権が目立ちますが、世界最大の温室効果ガス排出国である中国も、アメリカとは異なり国際協力の先頭に立っていることをアピールしつつも、実際のルール作りにおいては相変わらずの「途上国」の立場を主張する形で、“せめぎあい”の中心にいます。

****COP24 存在感増す中国に厳格ルール適用でせめぎあい****
12月2日、ポーランド・カトウィツェで開幕する気候変動枠組み条約第24回締約国会議(COP24)。パリ協定の実施ルールづくりで合意を目指すが、先進国と中国のせめぎあいが大きな焦点の一つとなりそうだ。

温室効果ガスの最大排出国の中国の対策を確実にするため、厳格なルール適用を目指す先進国に中国は抵抗。米国の協定離脱で中国が存在感を増す中、その出方は議論の行方に影響を与える。
 
「受け身の参加者だったのが今では積極的だ。大きな変化だ」。中国の交渉責任者は11月、欧州メディアに対し、地球温暖化対策の議論への関与について語った。一方、欧州の専門家からは「問題はそれがどう出るかだ」との声も上がる。
 
パリ協定は先進国と途上国がともに対策をとる点で画期的だが、自主的取り組みとの位置づけ。実効性を担保するには目標や進捗(しんちょく)状況を透明な形で検証する仕組みが重要だ。だが、中国を含む途上国にできるだけ同じ基準を適用したい先進国に対し、途上国側に立つ中国は柔軟性を求める。
 
これまでの議論では、協定離脱を通知した米国も2020年11月までは離脱できず、代表団を派遣し、厳格なルールのため積極的に関与。

途上国でも温暖化の影響に弱い島嶼(とうしょ)国などは欧州連合(EU)とともに厳しい取り組みを目指すが、中国の影響力増大は否めないというのが関係者らの認識だ。
 
NGO関係者は中国について国内の環境対策などの事情から協定推進を目指す一方、「厳格な削減を迫られるのを避けるため、ぎりぎりまで交渉するだろう」と指摘。英紙フィナンシャル・タイムズは「中国の影響でルールが柔軟性を増せば、温暖化対策が遅れる可能性がある」とも伝えた。【11月30日 産経】
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【政府報告を「信じない」トランプ大統領 背後には石炭産業の影も】
実質アメリカ抜きのルール策定も重要ですが、やはりアメリカが抜けることで生じる穴は大きいと言わざるを得ません。

でもって、11月28日ブログでも取り上げたように、アメリカ政府(NASA=航空宇宙局やNOAA=海洋大気局など13の省庁)がまとめた温暖化に伴って巨大な経済的損失が生じるとする報告書を「信じない」と一蹴したトランプ大統領です。

トランプ大統領の頑な姿勢の背後にあるものは・・・

****地球温暖化を否定し続ける米大統領の内輪事情****
11月23日、地球温暖化がアメリカに及ぼす深刻な影響と対策を論じた注目の米政府専門家委員会報告書が公表された。しかし、就任前から温暖化そのものを否定、パリ協定からの脱退まで言明したトランプ大統領は、報告書の内容を頭から否定、ホワイトハウスは激しいマスコミ批判を浴び対応に苦慮している。
 
トランプ大統領の反環境主義は今に始まったことではない。実業家だった2012年11月7日、自らのツイッターで「地球温暖化という概念は、もともとアメリカ製造業の競争力をそぐために中国によって中国のために作り出されたものだ」と断じ、内外で話題を集めた。

それ以来、ことあるごとに「温暖化は人間の活動とは無関係」と気候変動説を否定し続けてきた。こうしたツイートによる自説展開は昨年6月までの間に115回にも達しているという(電子メディアVox)。

そして、きわめつきが、同年6月1日「パリ協定離脱」の大統領発表だった。

しかし、今回のように、米政府の公式報告書(1656ページ)を大統領自らが否定するのは、異例中の異例であり、議会、学界、産業界、マスコミを巻き込んでハチの巣をつついたような騒ぎとなっている。
 
まず、報告書が作成された経緯と内容、発表のタイミングを振り返ってみよう。(中略)

いずれにしても前回までの報告書とくらべ、2018年版は、全米国民向けにわかりやすいかたちで気候変動の深刻さと自国への影響を、経済的側面から詳細にわたり説明した衝撃的内容であることだけは確かだ。
 
このため、気候変動を一貫して否定してきたトランプ・ホワイトハウスとしては、できるだけ国民の関心をそらすため、マスコミ発表のタイミングを慎重にうかがってきた。
 
その結果が、「感謝祭」明けでクリスマス・ショッピングに多くの国民が浮足立つ「ブラック・フライデー」として知られる休日扱いの11月23日金曜日だった。
 
この点について、報告書作成に携わって来た政府当局者によると、発表は当初は12月第1週を見込んでいたが、ホワイトハウス内部で検討の結果、予定を繰り上げ、ニュース報道があまり目立たない同日発表となったという。
 
発表後、ホワイトハウスは「同報告書はオバマ政権の時に始まったものであり、おおむね地球温暖化の最悪シナリオに基づいた内容だ。4年後の次回報告書はよりバランスのとれたものとなるだろう」とのそっけない声明を出した。

「アメリカの大気はかつてないほどクリーンだ」
しかし、トランプ大統領は3日後の26日、報道陣を前に「報告書を部分的に読んだが、私は内容を信じない」とこれを全面否定した上「アメリカの大気はかつてないほどクリーンだ」として、現状以上の大気汚染規制措置にも反対の態度を見せた。
 
問題は、なぜトランプ氏が、このように先進諸国が一様に認める温暖化対策の必要性をかたくなに否認し続けるのかだ。そのひとつのカギを握っているのが、国内石炭、石油産業とのかねてからの癒着関係だといわれてきた。
中でも際立つのが、石炭業界とのディープな関係だろう。

ワシントンに本部を持つ政治献金調査機関「センター・フォー・レスポンシブ・ポリティクス」の調査データによると、2016年大統領選でトランプ候補に大口政治献金したトップ企業10社のうち、第1位と2位は、ロッキード・マーチン社、バンク・オブ・アメリカなどを抜いてマレー・エナジー社、アライアンス・コール社のいずれも石炭採掘会社だったことが明らかになった。
 
このうちウェスト・バージニア、オハイオ、ペンシルバニアのいわゆる“炭鉱州”に鉱山を持つマレー・エナジー社のワンマン経営者ロバート・マレー氏は会社労組としての献金のほかに、個人的にも選挙期間中に22万6000ドル、トランプ氏当選直後にも「大統領就任式関連費用」として30万ドルという大金を寄付していたという。
 
マレー氏がこれだけの踏み込んだトランプ支持を決断した裏には、当然のことながら、政治的賭けと打算があったことはいうまでもない。
 
ニューヨーク・タイムズ紙が暴露したところによると、マレー氏は昨年3月、ホワイトハウスに招かれた際、トランプ大統領に3ページ半の「アクション・プラン」(行動計画)と題する秘密要求リストを提出、その中には、「温室効果ガス排出規制の撤廃」「石炭採掘安全基準の大幅緩和」「地球温暖化対策を念頭においた環境基準の撤廃」など、トランプ政権が実行に移すべき13項目が列挙されていた。(同紙2018年1月8日付)
 
注目されるのは、トランプ・ホワイトハウスはその後、この「アクション・プラン」に沿った環境規制緩和策を忠実に実現させてきたことだ。 
 
大統領はまず、秘密メモを示された直後の同年6月、他の大多数の先進諸国からの批判をよそに、地球温暖化対策の国際的枠組みである「パリ協定」からの離脱を発表した。
 
この発表に際しては、令嬢のイバンカ・トランプ氏らが反対したものの、最後は石炭、石油産業からの政治献金を受けてきた共和党上院議員22人の強硬意見に押し切られるかっこうになったという。
 
トランプ政権は続いて同年10月には、オバマ政権時代に地球温暖化対策の看板政策ともいわれ、一酸化炭素排出量を2030年までに2005年レベルより32%削減を義務付けた「クリーン・パワー・プラン」の廃止を発表した。

同政権がこれらを含め、2017年から2018年にかけて環境保護に逆行する規制撤廃または緩和のために打ち出した方策は、全部で80項目近くにも達している。
 
しかし、このようなトランプ政権による際立った肩入れにもかかわらず、“20世紀のお荷物産業”化しつつある石炭業界の現状と将来は、実に暗澹たるものがある。
 
全米炭鉱労組(UMWA)のデータによると、今世紀にはいり顕著に下降線をたどり始めたアメリカの石炭生産量は2016年には1978年以来、最低を記録、この間の電力会社などによる石炭需要も1984年以来、最低にまで落ち込んだ。失業者数も過去数年で3万人にも達し、採掘労働者数は全体で約5万1000人程度となっている。
 
ただ、2017年には、厳しい寒波襲来が続いたこともあって生産量は一時持ち直し、雇用も前年より8000人程度増加した。これを受けてトランプ大統領は今年1月の年頭教書の中で「石炭業界の復活」と高らかに謳いあげ、実際の数字を5倍近くも膨らませた上で「われわれは短期間のうちに4万5000人もの新たな雇用を炭鉱業界にもたらした」と豪語してみせた。
 
これに対し石炭業界の専門家は「この一時的な雇用と生産量の増加は、昨年の気候状況と天然ガス価格上昇にともなう海外からの需要増によるもので、トランプ政権による環境規制緩和とはほとんど関係ない」と冷ややかな反応を示している。
 
さらにトランプ政権にとって気がかりなのが、強力な組織力を持つUMWAが、2018年に入って共和党から民主党シフトの動きを見せていることだ。
 
ロイター通信によると、UMWAは11月中間選挙に向けて民主党議員候補への政治献金を2016年にくらべ20%近くも増やし、その額は全体の8割近い91万ドルにも達したという。
 
その理由について、同労組スポークスマンは、「全米各地で炭鉱閉鎖が続く中、残された炭鉱労働者たちにとっての最大関心事は、失業手当や退職年金に対し、どちらの政党が理解を示してくれるかという点だ。これまで共和党議会は炭鉱閉鎖にともなう救済措置に否定的だった」と説明している。

”レトロ・アメリカ”への偏重
最後まで大接戦となった2016年大統領選では、ペンシルバニア、ウェストバージニア、オハイオ、ワイオミングなどの”炭鉱州”が、いずれもトランプ支持に回り、同大統領当選に決定的に重要なカギとなった。
 
21世紀に入ってからの米国地勢マップの推移を見ると、都会のサラリーマン、近郊居住者、女性、大卒若年層、マイノリティなど有権者層の民主党支持が拡大する一方、共和党の支持基盤は農鉱業従事者、閑村白人層など過去の伝統にしがみつく”レトロ・アメリカ”への偏重が目立ちつつある。

それだけに、2020年大統領選で再選を目指すトランプ氏としては今後、何としても石炭、石油などの化石燃料関連事業への肩入れを一層強化、白人保守層の支持つなぎとめに腐心せざるをなくなっている。【12月3日 WEDGE】
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米自動車大手ゼネラル・モーターズ(GM)が北米5工場の操業停止計画を示したことについて、トランプ米大統領は11月27日、「GMへのすべての補助金カットを検討している」とツイッターに投稿して、怒りをあらわにしています。

石炭産業にしても、自動車産業にしても、トランプ大統領の“レトロ・アメリカ”への偏重は際立ったものがあります。

支持基盤対策というのはわかりますが、“レトロ・アメリカ”への偏重は時計の針を無理やり逆に回そうとするようにも思え、あまり有効な方策とは思えません。その点では、失業後をにらんだ石炭労組のほうがまだ合理的かも。

【開催国ポーランドも石炭使用継続を表明】
なお、石炭ということで言えば、「COP24」開催国ポーランドは石炭依存国です。

****開催国は石炭依存国****
今回のCOP24開催国ポーランドは、石炭への依存度が高く、電力の80%近くを化石燃料から発電している。さらに、寒い時期を中心に、質の悪い石炭が家庭で暖房として広く使われており、スモッグや呼吸器疾患の原因となっている。

加えて開催都市は、石炭採掘が盛んな地域にあり、EU最大の石炭企業の拠点がある。各国交渉担当者や一般参加者にとって、このことは心配の種になっている。

しかしポーランド政府は石炭の使用を続ける方針を表明し、同国南部のシレジアに新しい炭鉱を建設するため、来年投資する計画だと発表している。

こうした強気な取り組みを糾弾する声も上がっている。(後略)【12月3日 BBC】
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