孤帆の遠影碧空に尽き

年に3回ほどアジアの国を中心に旅行、それが時間の流れに刻む印となっています。そんな私の思うこといろいろ。

香港・中国  今回は“民主派”が選挙で勝利・・・

2007-12-05 14:04:32 | 世相

(香港で2日行われた選挙で当選した“民主派”の陳方安生(アンソン・チャン)氏 “flickr”より By Wai-hung )

ロシア、ベネズエラと同日の2日に投票が行われたもうひとつの選挙が香港の立法会(議会)議員補欠選挙でした。
事実上有力女性候補二人の争いになりましたが、結果は民主派候補の陳方安生(アンソン・チャン)氏(67)が54.8%の票を獲得し、親中派の対立候補、葉劉淑儀(レジーナ・イップ)氏(57)の42.9%を上回り当選しました。

今回選挙は欠員を埋める補欠選挙にすぎないものの、先月行われた区議会選挙でいわゆる民主派が惨敗し、親中派が大きく躍進した結果を受けて、「一国二制度」というかたちで10年前の中国返還時に約束された民主主義がどのように評価され、今後どう推移するのかを占う意味で注目されていました。

民主派・親中派の争点のひとつが、行政長官の直接選挙による選出です。
ウィキペディアによると次のとおり。
【香港は「高度な自治権」を享受しているが、「完全な自治権」を認められているわけではない。首長である行政長官は職域組織や業界団体の代表による間接選挙で選出されることになっており、その任命は中央政府(国務院)が行う。現在、行政長官ならびに立法会議員の「直接選挙(普通選挙)による選出を何時からにするか」が議論の焦点になっており、民主派は2012年からを、親中派は2024年からを主張している。】

陳方氏は、中国返還を挟んで8年間香港政府ナンバー2を務め、内外メディアから“香港の良心”と呼ばれた知名度もカリスマ性もある方のようです。
今回選挙で直接選挙について「(次回行政長官選のある)12年での実現」を掲げ、「中国政府の同意が前提」とした葉劉氏を「偽りの民主」と批判していました。

民主派の陳方氏勝利を受けて、「区議会選挙で惨敗した民主派が一矢を報いた」【12月3日 産経】と 評価する向きもありますが、「有権者の反応は鈍く、得票率は民主派が直接選挙で伝統的に維持してきた6割を下回る54%にとどまった。候補者のカリスマ性や民主化の理念に頼る限界が示され、民主派は来年の立法会選に課題を残した。」【12月3日 朝日】と、カリスマ性のある“香港の良心”を擁しながらも“辛勝”の評価もあります。

香港というと、89年の天安門事件のとき香港で行われた100万人の抗議デモの印象が強く残っています。
返還6周年を迎えた03年にも「国家安全法」の制定をめぐって、「一国二制度」を骨抜きにするものとして、人口の約7%にあたる50万人規模の抗議デモが行われました。

香港は返還と同時にアジア通貨危機による不況にみまわれ、更に03年にはSARSによって基幹産業の観光業が大打撃を蒙りました。
その香港経済を支えたのが中国本土との一体化でした。

しかし、返還当時中国にとって香港は世界経済への窓口として特殊価値を持つ存在でしたが、その後の中国開放経済の進展、WTO加盟という流れの中では、次第にその価値も薄れてきているとも言われています。

強まる香港の本土経済への依存、中国本土からみた香港の価値の低下・・・そうした推移をみると、政治的にも親中派が増加するのはある意味“必然”とも思えますし、50年間は変えないという「一国二制度」も、香港内部から変質していくことも考えられます。

最近、香港・中国という同じ組み合わせで注目を集めた事件が、アメリカ艦船の香港寄港を中国が拒否した件です。
97年の香港返還後、米艦艇の香港寄港は年平均約50回だそうですが、中国政府は今年11月に入って、荒天回避と給油を求めたガーディアンなど掃海艦2隻、休暇目的の空母キティホーク戦闘群の香港寄港を拒否しました。
更に、30日ミサイル・フリゲート艦が、新たに寄港申請を拒否されて11月以降3件連続となり、米中間の確執が注目を集めました。

中国側の対応には、アメリカによるダライ・ラマ14世に対する栄誉授与や台湾への武器売却に対する不快感があるとも言われています。

空母キティホーク戦闘群については、21日の寄港予定日の後、22日なって中国外務省は寄港許可を発表しました。
しかし、寄港をあきらめ北上していたキティホークはそのまま進路を変更しませんでした。
中国外務省は、寄港許可後に米艦隊が進路変更しなかったのは「米側の問題」としています。

一方アメリカは、そのキティホークが、横須賀基地に帰投の途中、23日頃台湾海峡を通過したことを明らかにしました。
米空母の台湾海峡通過は、確認された範囲では、中国の大規模な軍事威嚇で中台関係が緊迫した96年3月の「中台危機」以来だそうです。【12月3日 産経】
米海軍当局者は「天候による判断だと思う」として、寄港拒否への報復との見方を公式には否定しているとのこと。

中国側の態度がどの程度の不快感に基づくものなのかは分かりませんが、お互い表向きは何事もなかったような顔をしながら、テーブルの下では足を蹴飛ばしあうような展開は、相手に対して優位なポジションを取ろうとする“ゲーム”の一端でしょうか。

結局、この寄港問題は、「米中の当局者は今後この問題をお互いに持ち出さないことで合意」したそうです。【12月5日 共同】
東アジアの住人としては、物騒なゲームはどこか他所でやってもらいたいものです。

バリ島で行われているCOP13で中国は、京都議定書に入っていない米国に対しても事実上名指しで温室効果ガス削減の数値目標を設定するよう提案しているそうです。
アメリカは京都議定書から離脱した際に理由の一つとして、中国など排出量の多い途上国に削減義務がないことを挙げていますので、お互いに削減義務を突きつけ合った格好になっています。【12月5日 朝日】
これは、お互いがせめぎあって、事態の進展につながれば結構なことかと思います。

中国のプレゼンスの増大に伴って、このような米中対立はいろんな場面で今後も生じると予測されますが、お互い大人の対応で、結果的に生産的な方向に向かってくれるといいのですが。
もちろん、日本がどういうポジションをとるのかというのは、日本にとって重要な問題になってきます。

コメント
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