孤帆の遠影碧空に尽き

年に3回ほどアジアの国を中心に旅行、それが時間の流れに刻む印となっています。そんな私の思うこといろいろ。

インド・モディ首相、「友人」トランプ大統領と会談 貿易黒字、高度人材ビザ、アダニ事件が議題か

2025-02-13 23:36:47 | 南アジア(インド)

(共同声明を発表後、インドのモディ首相(右)と抱き合うトランプ米大統領=ニューデリーで2020年2月25日、AP【2月13日 毎日】)

【モディ首相とトランプ大統領 似た者同士の「友人」】
1月17日ブログ“インド 世界でも断トツの「トランプ大好き」 経済関係や中国への対応で米印関係に課題も”でも取り上げたように、“(1月)15日発表の各国世論調査によると、トランプ次期米大統領の選出は「自国にとってよいこと」と考える人の割合がインドが84%で最も高く、欧州や韓国では低迷した。地域による温度差が浮き彫りになった。”【1月16日 産経】と、インドではトランプ大統領は非常に人気があります。

その理由は、バイデン前政権は「弱い」というイメージがあり、そのくせ人権問題などで上から目線の小言が多い、それに対しトランプ氏は「強い指導者」のイメージがあり、実利で折り合えればうるさいことは言わない・・・という評価があるようです。

“つい最近まで山賊が出るほどの国だった”【2024年11月9日 WEDGE】インドでは、ルール遵守よりも、「強い指導者」が好まれる・・・ということで、その「強い指導者」ぶりをインドで演出して人気があるのがモディ首相。

アメリカとインドはともに中国を警戒する共通の立場にあることに加え、「強さ」のアピール、トランプの「アメリカを再び偉大に」政策とモディ首相の「ヒンドゥー・ナショナリズム」にはイデオロギー上の共通点も多いといったことで、二人は似た者同士で馬が合う関係にもあります。

“モディ氏は出発前の声明で、トランプ氏を「友人」と呼んで関係強化に意欲を見せた。第1次トランプ政権時代の2020年、モディ氏は地元の西部グジャラート州にトランプ氏を招いて大規模な集会を開くなど親交を温めてきた。”【2月13日 毎日】

【対米貿易黒字・関税の問題で対策をとるインド】
ただ、トランプ政権での米印関係には問題も。昨日取り上げたベトナム同様に対米貿易黒字・関税の問題です。

***************
インドにとっては貿易赤字削減のために関税を操作するトランプの手法は厄介だ。インドは世界最高水準の関税を維持し、巨額の対米貿易黒字を記録している(2022年は457億ドル)。

前トランプ政権で米通商代表部(USTR)代表を務め、2期目でも要職への起用が取り沙汰されるロバート・ライトハイザーは、インドを「世界最大の保護主義国家」と評しており、貿易摩擦の激化は避けられない。【2024年12月11日 Newsweek】
***************

そこらは十分に承知しているインド・モディ首相は訪米・トランプ大統領との会談にあたって対策を用意しているとも報じられています。

****インド首相、関税引き下げ提案か=トランプ氏と会談へ訪米****
インドのモディ首相は12日、トランプ米大統領との首脳会談に臨むため、訪問先のフランスから米国に向け出発した。会談では「公正な貿易関係」を求める米国との摩擦を回避するため、関税引き下げのほか、エネルギーや防衛装備品の調達拡大を提案する可能性がある。

「(米印)両国の協力関係をさらに向上させ、深める行動計画を策定する機会となる」。モディ氏は外遊に先立つ10日の声明で、そう強調した。米国訪問は13日まで2日間の予定。

ロイター通信は複数の政府筋の話として、インドが米国からの輸入を促進するため、電子部品や医療機器、化学薬品といった10以上の分野で関税引き下げを検討していると伝えた。

インドにとって米国は最大の輸出相手国。インド商工省によると、2023年の貿易総額は約1200億ドル(約18兆4000億円)で、約312億ドル(約4兆7900億円)の対米黒字だった。

首脳会談では、米国からの戦闘車両調達や戦闘機用エンジンの共同生産も話し合われる見込み。米側には、インドをロシア製兵器への依存から脱却させ、自陣に引き込みたい狙いもある。【2月12日 時事】 
********************

“インド政府は高級車や太陽光パネルなど32の品目について輸入関税を見直す計画だ。財務省高官が明らかにした。世界的に貿易を巡る緊張が高まる中、米国からの輸入増加を図るのが狙い。”【2月6日 ロイター】

“インド政府は2月に入り、米国製オートバイ「ハーレーダビッドソン」を念頭に、排気量の大きいオートバイなどの輸入関税の引き下げを発表した。インドが関税措置の標的となることを避けるため、トランプ政権の不満に先手を打った形だ。”【2月13日 毎日】

【急増するインド移民 高度人材ビザでは米政権内の「MAGA派」と「テック派」の間で亀裂も】
上記のような貿易問題に加えて、両国にはH-1Bビザ(高度な専門的技能や知識を持つ外国人向けのビザ)の問題もあります。

先のアメリカの大統領選挙でも、民主党の大統領候補ハリス氏は母親がインド出身、共和党のヘイリー元国連大使、大統領選の共和党予備選に出馬したラマスワミ氏もインドにルーツを持ち、バンス副大統領の妻・ウーシャ氏もインド系、グーグルやマイクロソフトCEOもインド系・・・・・・と、近年アメリカ政財界におけるインド系の存在感が増していますが、その背景にはインドから移民急増、そして不法移民も・・・ということがあります。

そした事情を背景にした今後のインド移民受入れのあり方はトランプ政権内で、あくまでも移民を排除したい「MAGA派」と高度な人材を求めるマスク氏などの「テック派」の対立をも生んでいます。

****アメリカとインドの関係は?「ビザ」巡り、MAGA派とテック派に亀裂****
日本時間の13日午前、インドのモディ首相がアメリカを訪問。トランプ大統領との首脳会談に臨む。関税を取引材料に要求を突き付ける「トランプ外交2.0」で、アメリカとインドの関係はどうなっていくのだろうか。

■アメリカに住むインド出身者…10年で1.5倍以上に
米国でインド移民が急増

トランプ大統領は就任直後から不法移民対策に乗り出しているが、それはインドも例外ではない。
 
米国勢調査局のデータによると、アメリカに住む外国人の人口は2023年時点でおよそ4780万人。そのうちインド出身者はメキシコに次いで2番目、およそ470万人。10年で1.5倍以上に急増している。

また、ピュー・リサーチ・センターによると、インド出身の不法移民は2022年時点の推定で72万5000人いるという。これは、メキシコ、エルサルバドルに次ぎ、3番目に多い数字だ。
 
ブルームバーグによると、アメリカとインドの両政府はインド人の不法移民1万8000人を特定。軍用機で強制送還する準備を進めており、5日には104人を軍用機で送還した。

この時、移送された人が手錠をかけられていたことなどから、インドでは抗議デモが起きた。

ただ、インド外務省の報道官は送還に協力したことについて「これはインドからアメリカへの合法移住のルートを増やすためだ」と説明している。

■インドが拡大熱望…アメリカの高度人材ビザ
「MAGA派」と「テック派」の亀裂が浮き彫りに

この合法移住ルートについて、インドが重視しているものがある。 ロイター通信によると、それは「H-1Bビザ」だという。

H-1Bビザは高度な専門的技能や知識を持つ外国人向けのビザのことで、2023年に発給されたH-1Bビザは38万6000件あり、そのうち72%がインド出身者。ビザ取得者の65%はコンピューター関連に従事し、アメリカのテック企業の躍進を支えているという。

このH-1Bビザを巡り、1期目のトランプ政権は「アメリカ人の雇用を保護する」と発給を厳格化。トランプ氏のコアな支持層である「MAGA派」は高度人材ビザの廃止を主張している。

一方、2期目のトランプ政権を支えるイーロン・マスク氏などテック企業を率いるエリートの「テック派」は、優秀な移民は必要でビザの発給を拡大すべきとしている。

「MAGA派」と「テック派」の亀裂が浮き彫りになるなか、トランプ氏は去年12月、「すばらしい制度だ」とテック派に歩調を合わせる発言をした。

■政財界にインド系の影響力拡大
インド系の影響力拡大

アメリカ国内ではインド系の存在感が高まっている。
米国勢調査局によると、在米インド人の平均年収はおよそ15万7000ドル(およそ2400万円)で高額となっている。

経済界では、グーグル、マイクロソフト、IBMなど、名だたる大企業の経営トップにインド系が就いている。

また、政治への影響力も大きい  去年の大統領選を争った民主党のハリス前副大統領、共和党のヘイリー元国連大使、大統領選の共和党予備選に出馬したラマスワミ氏はインドにルーツを持ち、バンス副大統領の妻・ウーシャ氏もインド系だ。

■インド新興財閥の不正疑惑 トランプ氏とも接点?
インド新興財閥の不正疑惑
そして、インドのモディ首相の政権運営にも影響するのか?新興財閥の不正疑惑について見ていく。

去年11月、バイデン政権下のアメリカ検察当局がインドの新興財閥「アダニ・グループ」を率いるゴータム・アダニ氏らを起訴した。インド政府関係者への贈賄と賄賂の資金調達で、アメリカの投資家をだました疑いがもたれている。

トランプ大統領との接点も
さらに、このアダニ氏はトランプ大統領との接点も報じられている。

ブルームバーグによると、トランプ一族のメンバーはこれまでにアダニ氏の自宅を訪れたことがあるといい、トランプ氏周辺の関係者らはアダニ・グループを中国の覇権に対抗する重要なパートナーとみているという。

そして、捜査の進展にトランプ氏が影響する可能性も指摘されている。

■大統領令でアダニ氏を救済か
大統領令で救済か?

ロイター通信によると、トランプ大統領は大統領令に署名した。
その大統領令は、アメリカで事業を展開する企業が外国政府関係者に賄賂を贈ることを禁じる「海外腐敗行為防止法」について、訴追の一時停止と法の見直しを求めるものだという。

インドのニュースメディア、ビジネス・スタンダードによると、アダニ氏らの訴追には「海外腐敗行為防止法違反」も含まれているといい、この分野に詳しい弁護士の見解として「大統領令を受けて、司法省が進行中の外国贈賄事件の優先順位を下げたり、却下したりする可能性がある」としていて、アダニ氏らの捜査に影響が出る可能性を指摘している。【2月13日 テレ朝news】
*********************

【インド新興財閥アダニ・グループの創業者アダニ会長の事件ではトランプ・モディ両氏に共通の利害があり幕引きか?】
インド新興財閥アダニ・グループの創業者ゴータム・アダニ会長(62)らが贈賄事件に関与して不正な資金調達を行ったなどとして、ニューヨーク州の連邦大陪審に証券詐欺などの罪で起訴された件については、昨年12月12日ブログ“インド アメリカの「上から目線での介入」、民主主義価値観の押しつけに不満、だからトランプ氏が好き”でも取り上げました。

上記【テレ朝news】ではアダニ氏とトランプ大統領の関係が触れられていますが、財閥トップのアダニ氏がモディ首相と同郷で親密な関係にあり、モディ首相の庇護を受ける形で急成長したのではないかとも見られていることで、そのモディ首相との関係をめぐってインド議会は大荒れとなりました。

しかし、アダニ氏がモディ首相ともトランプ大統領とも近い・・・ということは、トランプ・モディ両氏にとって事件を大きくしたくないという共通の利害があるということでもあり、結果は素人でも分かるという感じがします。

両氏の会談は、日本時間では14日早朝に行われるようです。
コメント    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« ベトナム  米中対立の“漁夫... | トップ |   
最新の画像もっと見る

南アジア(インド)」カテゴリの最新記事