孤帆の遠影碧空に尽き

年に3回ほどアジアの国を中心に旅行、それが時間の流れに刻む印となっています。そんな私の思うこといろいろ。

南シナ海  緊張高める中国の強硬姿勢と“スイカ泥棒”の言い分

2012-04-11 21:09:45 | 南シナ海

(昨年12月 公試中の中国初の空母 ウクライナからスクラップとして購入した本体を改造したもので、訓練用として使用されるのではないかと推測されています。
後続艦を含め、中国空母は戦力的にはアメリカ空母に対抗しうるものではありませんが、南シナ海などにおける存在感で、地域周辺国(アメリカを含む)に対する政治的・戦略的意味合いが大きいと思われます。
写真は“flickr”より By PacificSentinel http://www.flickr.com/photos/pacificsentinel/6535765433/ )

【「どうして駄目なのか。このスイカはいいスイカだし」】
中国では昨年10月、2歳の女児がひき逃げされたのに18人が見て見ぬふりをし、女児が死亡する事件が起き、冷漠社会(他人に無関心な社会)として問題になりました。
今度は、横転したトラックに取り残された男性の救助を運転手が見物人に求めたにもかかわらず、殆んどの人がこれを無視して散乱した積み荷のスイカを持ち去った・・・という衝撃的な事件が報じられています。

****中国:事故で車横転 スイカ持ち去るも救助要請は無視*****
中国・雲南省大宝の高速道路で4日、大量のスイカを積んだトラックが横転事故を起こし、車内に男性1人が取り残されていたのに、集まった人々は散乱したスイカを持ち去るだけで助けようとせず、男性は死亡した。雲南テレビなどが伝えた。

広東省仏山市では昨年10月、2歳の女児がひき逃げされたのに18人が見て見ぬふりをし、女児が死亡する事件が起き、冷漠社会(他人に無関心な社会)として問題になった。インターネット上では「『見死不救』(死にそうな人を助けない)がまた起きてしまった」などと、道徳心の喪失を嘆く声が広がっている。

事故は4日午後4時20分ごろに発生。約35トンのスイカを積んで昆明に向かっていたトラックが、ブレーキが利かなくなり、コントロールを失って横転した。運転手は助け出されたが、後部座席に乗っていた男性が取り残された。運転手は集まった見物人らに「助けてください」と男性の救助を求めたが、ほとんどの人々がスイカを持ち去る一方、救助要請を無視したという。

スイカを持ち去ろうとした男は、現場でとがめた雲南テレビの記者に「どうして駄目なのか。このスイカはいいスイカだし」と悪びれた様子もなく言い、「あなたの良心はどこに行ったのか」との問いには「そんなことは考えたことがない」と言い放った。事故では、通報を受けて救急車が現場近くに来たが、事故による渋滞で近づけず、男性は死亡が確認された。

中国版ツイッター「微博」では、「(こんな時に)強盗をしないと損だという人間のくずのような考えは、いつになったら中国からなくなるのか」、「中国人の素養は千差万別だと思うが、文明の程度が低い人が大多数だ。私たちが当然だと思っていた道徳基準は、彼らの心の中にはまったく現れなかったのだ」といった書き込みが相次いでいる。【4月10日 毎日】
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この事件に関する報道は上記毎日記事しか見ていませんので事実関係がよくわかりませんが、もし上記記事内容が事実だとすれば相当に深刻な事態です。
女児ひき逃げ事件のような、“面倒には関わりたくないので見て見ぬふりをする”というのは、日本を含めて多くの社会で似たようなことは見られます。

しかし、今回の「どうして駄目なのか。このスイカはいいスイカだし」といった言動は、“冷漠社会”というより、基本的なモラルを喪失した社会を思わせます。
自分の利益になることなら何をしてもかまわないし、利益にならないことを無視しても良心の呵責云々は考えない・・・というように見えます。

緊張続く南シナ海
ところで、話はまったく変わりますが、南シナ海では広範囲な領有権を主張する中国と、海域周辺国、特にベトナム・フィリピンの対立が続いています。
今も、中国漁船を取り締まろうとしたフィリピン海軍の艦船と、これを妨害する中国の海洋監視船が洋上でにらみ合いを続けているそうです。

****南シナ海:中国とフィリピンの艦船 にらみ合い続く*****
中国とフィリピンが領有権を争う南シナ海で10日、中国漁船を取り締まろうとしたフィリピン海軍の艦船を中国の海洋監視船が妨害した。11日も両国艦船のにらみ合いが続いている。

フィリピン外務省によると、海軍偵察機が8日、ルソン島の西約250キロにあるスカボロー礁の浅瀬に中国漁船8隻が停泊しているのを発見。海軍の艦船が近づき、10日に漁船を立ち入り調査したところ「違法」に採取されたサンゴや貝、生きたサメなどが見つかった。
フィリピン側は漁船員らを拘束しようとしたが、中国の海洋監視船2隻が現れて間に入り、妨害されたという。

フィリピンのデルロサリオ外相は10日、中国側に「海域はフィリピンの排他的経済水域(EEZ)内で、海軍は法律に従って行動している」と申し入れた。
しかし、在マニラ中国大使館は、浅瀬の領有権は中国にあるとし、「漁船は悪天候のため浅瀬に避難していたところをフィリピン海軍の艦船に進路妨害された。フィリピン側は違法行為を直ちにやめるべきだ」と主張している。【4月11日 毎日】
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【「中国にどんなに刃向おうとも、それは卵が石に体当たりするようなものだ」】
個々の案件に関する事実関係はよくわかりませんが、南シナ海における中国の一連の行動には、力づくで自分の言い分を押し通そうとするような姿勢を感じます。
中国からすれば、フィリピンがアメリカとの関係を強めて中国の意に沿わないのは、力もない小国の分際で身の程知らずだということになるようです。

****フィリピンに告ぐ、中国は「平和」に最後のチャンスを与えているだけだ―中国紙****
2012年4月9日、中国紙・環球時報(電子版)は、中国軍事科学研究会副秘書長の羅援(ルオ・ユエン)少将の寄稿記事を掲載した。中国と南シナ海の領有権をめぐり対立するフィリピンに対し、「中国は今の平和な状態に最後のチャンスを与えているだけだ」と警告している。以下はその概略。

最近、フィリピンが頻繁に演習を行うようになった。またしても米国の虎の威を借り、ASEAN(東南アジア諸国連合)首脳会議を主導して、大勢で中国を袋叩きにするつもりなのだろう。フィリピンがこれほどわがもの顔に振る舞う目的は▽南シナ海の天然ガスを強奪したい▽米国のアジア回帰の手先となり、米国の機嫌を取りたい▽ナショナリズムをあおり、国民の目を国内のゴタゴタからそらしたい▽中国と南シナ海の領有権を争っている国々との仲を引き裂き、ASEANの主導権を握ろうという分不相応の野望を抱いている、の4つに分けられるだろう。

だが、残念ながらフィリピンは大きく勘違いしている。米国が世界第2の経済大国である中国といざこざを起こす勇気があると思っているのか。フィリピンにとっても中国は米国、日本に次ぐ第3の貿易相手国だ。アキノ3世の支持率も低下していると日本メディアが報じている。経済政策に対する不満が高じているようだが、中国を敵に回せば、その経済的損失は計り知れない。国民に豊かな生活を提供できなければ、どうなるのかは分かっているはずだ。

フィリピンは、中国が最大の我慢と誠意で今の平和な状態に最後のチャンスを与えていることに気付いていない。中国の善意を単なる「弱腰」だと勘違いしている。フィリピンの政治家たちは分かっているはずだ。国力でも軍事力でもフィリピンは中国の足元にも及ばない。中国にどんなに刃向おうとも、それは卵が石に体当たりするようなものだ。

良いことをしても、悪いことをしても、必ずその報いがある。今すぐでなくとも、時期が来れば必ず相応の報いを受けることになるのだ。フィリピンもそのことを肝に銘じておいた方がよい。【4月11日 Record China】
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“中国軍事科学研究会副秘書長の羅援少将”という人物がどういう立場の者かはわかりませんが、これではやくざの恫喝です。
フィリピンが米軍と4月下旬に南シナ海での合同演習を予定しており、また、アメリカから中古のフリゲート艦を購入するなど協力を深めていることへの牽制でしょう。
中国の最大の我慢と誠意で今の平和な状態が守られている・・・という認識も、理解に苦しむところです。

限定的な軍事衝突発生の可能性
別の報道によれば、中国の考え方では、フィリピンなどはアメリカが出てくる前に叩いてしまえば事は収まる・・・というものだで、短期間の局地的軍事衝突の可能性があるとのことです。
ロシアのグルジア侵攻がモデルケースだとか。

****紛争海域での軍事衝突、中国はその責任を負える―香港メディア*****
2012年4月6日、香港のアジア・タイムズ・オンラインによると、中国は東シナ海や南シナ海で局地的な軍事衝突を起こす可能性があるが、国際問題専門家は中国政府はその結果に耐える能力を持っているとみている。8日付で環球時報(電子版)が伝えた。

東シナ海や南シナ海で発生する中国と周辺国との軋轢がトップニュースとして毎日のように取り上げられている。同海域に大量のエネルギー資源が埋蔵されていることが明らかになるにつれ、軍事力を拡大中の中国はこれによってエネルギーの安全と需要を確保しようとしている。仮に中国政府が米国は介入しないと確信したならば、ドック型揚陸艦や駆逐艦、戦闘機など最新の軍事力を配備し、数千人の兵士を直ちに争いのある島々に派遣するだろう。

中国は限定的な軍事衝突という手段を通じて目的を達成する可能性がある。英ノッティンガム大学中国政策研究所のスティーブ•ツァン所長は「その可能性は、どの国に対してどのように実施するかなど、小規模な戦争の概念にかかっている」とし、例えば、韓国については、「米国が強硬な態度をとる可能性があり、限定的と言えども衝突は有り得ない」と語る。

しかし、ベトナムやフィリピンに対してはまったく異なるという。「中国は簡単にベトナムを打ち破ることは出来ず、しかもこの衝突はその他の国々の不安をかきたてることになるが、コントロール可能だ」と分析。米国と軍事同盟関係を強化しているフィリピンについては、「その他の東南アジア諸国も同盟が中国の攻撃の抑止力になると考えているが、協議条項をよく読めば、『事態が米国議会で議論される前に治まれば、何も起こらない』となっている」と話した。

また、限定的な軍事衝突発生の可能性について、経済学者も「中国に大きな障害はない」とみている。中国問題の専門家は「08年にロシアとグルジア間で発生した南オセチア紛争の結果が、中国の軍事行動によって中国経済がどれだけの影響を受ける可能性があるかの指標になる」とし、「当時、ロシアは圧倒的な軍力をもってグルジア軍を南オセチアから撤退させたが、この戦争はグルジア以外の国には深刻な経済的影響を与えなかった」と指摘した。【4月10日 Record China】
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上記報道内容に沿えば、韓国について「米国が強硬な態度をとる可能性があり、限定的と言えども衝突は有り得ない」なら、日本については言うまでもない・・・ということになります。
まあ、そうなんでしょうが、そうした考え方には、本来国家間の関係がどうあるべきかという理念とかモラルが全く見えません。
まるで、「どうして駄目なのか。このスイカはいいスイカだし」「(良心なんて)そんなことは考えたことがない」と悪びれた様子もなく言い放つスイカ泥棒のようにも見えます。

中国指導部は、国際社会からそのように見られることの損得、あるいはプライドについて考慮してもらいたいものです。

東シナ海を「平和・協力・友好の海」に
日中間では東シナ海を「平和・協力・友好の海」にすることで一致しているそうで、そのための海洋協議が5月北京で開催されます。

****日中が5月にも初の「海洋協議」、東シナ海を「友好の海」へ―米華字メディア****
2012年4月4日、日中両政府は東シナ海などの海域で問題が発生した場合の危機管理や協力体制などについて話し合う「海洋協議」の初会合を5月下旬に北京で開催する方向で調整に入った。5日付で米華字サイト・多維新聞が日本メディアの報道を引用して伝えた。

日中韓外相会談に参加するため訪中する玄葉光一郎外相が7日に中国外交部の楊潔●(ヤン・ジエチー、●は竹かんむりに褫のつくり)部長と会談し、合意を目指す。日本側はこれをきっかけに、2010年9月に起きた尖閣諸島沖での漁船衝突事件以降中断している東シナ海ガス田共同開発の条約締結に関する交渉を再開させたい考え。

昨年12月に野田佳彦首相が訪中した際、胡錦濤(フー・ジンタオ)国家主席と会談し、東シナ海を「平和・協力・友好の海」にすることで一致、海洋協議を開くことで合意していたが、具体的な日程は決まっていなかった。

初会合は双方の外務省の参事官級がトップとして参加する。日本側は外務省の山野内勘二アジア大洋州局参事官のほか、海上警察権を持つ海上保安庁、防衛省の責任者らも出席。中国側は外交部のほか、国家海洋局、農業部漁政局、国防部といった顔触れとなる。【4月6日 Record China】
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