孤帆の遠影碧空に尽き

年に3回ほどアジアの国を中心に旅行、それが時間の流れに刻む印となっています。そんな私の思うこといろいろ。

香港  進む中国との一体化 「国家安全条例」制定作業開始 市民の意識に変化も

2024-03-06 23:31:52 | 東アジア

(中国広東省深センの大型スーパーで、スーツケースを持参し買い物をする香港人ら(2月2日)【2月26日 読売】)

【「一国二制度」が完全に形骸化 中国に従属する一地域へ】
香港の「一国二制度」が完全に形骸化し、民主派の活動は弾圧・封殺され、中国政府のコントロールが貫徹されるようになっていることは今更のことで、昨年12月の従来は最も民意が反映されるとされていた区議会選挙の様相も、民主派は立候補すらできず様変わりしました。

過去最低の27・5%という低い投票率が、もの言えぬ市民のせめてもの抵抗とも。

****香港から失われたものは何か…区議会選挙の過去最低投票率が示すこと 「愛国者」の資格審査、民主派は立候補すらできず****
香港で12月10日、区議会(18区の地方議会)選挙の投開票が行われ、中国政府寄りの親中派が議席を独占した。

2019年の反政府デモを経て中国主導で香港国家安全維持法(国安法)が導入されて以降、香港では政治面や言論面での自由が急激になくなった。選挙にはしらけムードが漂い、投票率は過去最低の27・5%に沈んだ。

立候補すらできなかった民主派の前区議会議員の話から区議会選を振り返ってみたい。(共同通信香港支局長 一井源太郎)

 ▽「愛国者」の資格
そもそも地方選挙の区議会選が注目されるのは、政府トップの行政長官を選挙で選べない香港では市民の投票機会は立法会(議会)と区議会の二つの選挙に限られているという事情がある。

立法会は既に立候補には厳格な「愛国者」の資格審査があり、親中派がほぼ独占している。香港で「愛国者」とは、香港政治に関する最終的な決定権は中国にあるとの立場を容認し、中国当局に反対しない人のことを指す。民主的な選挙の実現を目指す民主派には受け入れられない条件だ。

2019年の前回の区議会選は、反政府デモの盛り上がりを受け民主派が議席の約8割を獲得した。しかし親中派が支配する立法会は中国当局の後押しを受けて、香港への忠誠の宣誓を義務付ける条例を成立させ、民主派議員の辞職や資格剥奪が相次いだ。

区議会が機能不全に陥ったことを理由に、香港政府は区議会が再び民主派勢力の基盤となることを阻止しようと、区議会選の制度変更に乗り出した。

香港政府が提出し、7月に立法会で成立した区議会選の制度変更は、親中派に圧倒的優位で、民主派政党を事実上、排除するものだった。新制度では、18区で計479あった議席を計470に削減し、このうち住民による直接投票枠は452から88に減らした。

他に行政長官が選ぶ委任枠(179)と、地区委員会などの委員に限定された投票枠(176)ができたが、いずれも親中派しか立候補できない。区議会議長は議員からの選出ではなく、政府の役人が務める。

 ▽不都合な人間を排除
直接投票枠への立候補には、「三会」と呼ばれる、地区、防火、防犯の三つの委員会から3人ずつ計9人の推薦を受ける必要があり、そのハードルを越えたとしても政府が設立した委員会による「愛国者」の資格審査を通らなければならない。

「政府にとって不都合な人間を排除するシステムだ」。香港の油尖旺区議会の現職議員で、民主派政党、民主党に所属する朱子洛氏(32)は立候補すらできず、閉鎖作業を進める自身の事務所で悔しさをにじませた。

朱氏は「三会」の委員に直接会ったり、手紙を送ったりして推薦をお願いした。中には「市民のために仕事をしたいと考えているのは分かるが、今の段階では難しい」と慰めてくれる人もいたが、ほとんどは反応がなかった。

朱さんによると、2020年ごろから三会の委員の任期が切れると、政府は民主派寄りの人を排除して親中派を選び、用意周到に準備を進めてきたという。

「数十年間、地域のために貢献してきたベテラン議員でさえ、民主派寄りだとして推薦を集められなかった」一方で、「経験もないのに、政治的な背景だけで立候補できた人もいる」と嘆いた。

朱さんは政治に関わりたい思いはあるが、民主派を排除する動きは当面は変わらないとみている。「いつか状況が良くなれば、また市民のために働きたいが、今後はビジネスに進路を変えざるを得ない」と寂しそうに話した。

 ▽パズルのピース
投票後、政府トップの李家超行政長官は「建設的で市民のために成果を出すための区議会となることを望む」と述べ、新制度での選挙の正当性を強調した。また10日には「(今回の選挙は)愛国者による香港統治の原則を実行に移す上で、パズルの最後のピースだ」とも語り、民主派を一掃したことに自信を示した。

香港の社会システムからの民主派排除を進めてきた香港政府にとって、今回の選挙はなりふり構わぬ取り組みの総仕上げと言える。民主派メディアも国安法に基づく取り締まりで壊滅的な打撃を受けた。中国や香港政府を真っ正面から批判する勢力は力を失った。

反政府的な言動をすれば身柄が拘束される危険があるため、多くの市民は沈黙を貫いている。過去最低の投票率は無言の抗議のように思われる。【23年12月24日 47NEWS】
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中国政府の香港に対する扱いも、従来の特別行政区に対する特別の扱いから、完全に中国に従属する一地域への扱いに変化しています。
中国・香港関係は外交ではなく内政になっています。

****もはや滑稽! 14億国民も呆れた習近平の「皇帝ぶりっこ」****
林愛華「中南海ディープスロート」第13回

香港特別行政区長官との会談で異変
香港の李家超特別行政区長官が北京へ来て、12月18日に中南海で、習近平主席に政務報告した。会談の出席者などの変化には、大きなメッセージが隠されている。

なんと会見の場で、李家超長官の向かいに座っていたのは、李強国務院総理(首相)だった。慣例に従うなら、彼がその場にいるはずはない。

本来であれば、香港特別行政区長官が北京で政務報告する場合、まず国務院総理に会い、そのあと、国家主席に報告してきた。それは香港が特別行政区で、中国と対等な関係にあることを示していた。

昨年まではルール通りだった。すなわち、2022年12月22日午後に上京した李家超行政長官は、まず李克強総理(当時)と会い、翌日の23日午後に習近平主席と会って、それぞれに報告した。

しかし、今年はまったく違った。報告は一回だけとなり、李強総理との単独会見はなくなった。
異変と言ってよいだろう。李強総理は習近平主席が李家超長官の報告を聞く会見の一列席者にされたのだ。(中略)

会談から消えた外交メンバー
異変のその2は、外交関係者が同席しなかったことだ。以前は香港の特別行政長官との会見の場には、必ず外交関係の長がいた。例えば楊潔篪や王毅など歴代外交部長(外相)が常連であった。しかし、今回から外交メンバーがいなくなり、中共中央書記処の蔡奇筆頭書記などが初めて同席した。

香港は、かつてのような中国との対等な関係ではなくなり、完全に中国に従属する一地域に成り下がった。李家超長官はもはや、ひとつの省のトップにすぎなかったのだ。(後略)【23年12月28日 林 愛華氏 現代ビジネス】
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【「国家安全条例」制定に向け作業開始 「パブリックコメント」では98%以上が条例に賛同】
こうした状況で香港政府は、以前は香港市民の反対で制定できなかった「国家安全条例」の制定に向けて動き出しています。

****香港政府が「国家安全条例」制定に向け作業開始 言論統制を強化へ 2003年にも検討 市民の反対で撤回****
香港政府のトップ・李家超行政長官らが会見を開き、「国家安全条例」の制定に向けた作業を開始すると発表しました。条例が成立すれば、言論統制が一層厳しくなりそうです。

李家超行政長官らは30日に会見を開き、「国家安全条例」の制定に向け、市民から意見を募る「パブリックコメント」を来月末まで行うことを明らかにしました。

李長官は「2019年の大規模なデモなどによって、多くの人が国家安全の重要性を知りリスクは深刻」などと説明。条例案では、国家主権を脅かす暴動や扇動行為について現行の法律を補完するほか、スパイ行為については、「国家秘密」とは何かについて具体的に定義するということです。

香港の憲法に相当する「香港基本法」には「国家安全条例」を自ら制定すると記されていて、2003年には議会に相当する立法会で草案をもとに議論されましたが、「言論や表現の自由を規制するものだ」と市民らが大規模な抗議活動を行い、条例案は撤回されていました。

香港では現在、中国政府が制定した「香港国家安全維持法」が施行されていますが、条例が成立すれば、言論統制が一層厳しくなりそうです。【1月30日 TBS NEWS DIG】
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市民から意見を募る「パブリックコメント」では98%以上が条例に賛同するものだった・・・とのこと。
それはそうでしょう。「反対」という意見を出したら、その後どうなるか・・・。100%でなかったのが不思議なくらいです。

*****香港「国家安全条例」 98%以上が賛同と政府発表*****
香港政府が制定を目指す「国家安全条例」について、政府は、市民から寄せられた意見の98%以上が、条例に賛同するものだったと発表しました。

香港では現在、中国政府が定めた「香港国家安全維持法」が施行されていますが、香港政府は独自に「国家安全条例」の制定を目指し、条例案の原案を発表していました。

スパイ行為や扇動など「国安法」を補強する内容で、政府によると、先月行ったパブリックコメントには、1万3000件以上の意見が寄せられ、そのうち98.6%が支持する内容だったということです。

5日に中国で開幕した「全人代」に参加した香港の代表団は。

香港代表団「(条例が成立すれば)香港に存在する安全保障の抜け穴の一部をブロックでき、香港はより安定し、国家安全保障もより良く保証されることになる」

香港では「国安法」により反政府的な言動が禁じられ、既に「言論の自由」が制限されていますが、条例が成立すれば、更に統制が強まるとみられます。

香港政府は今後、出来るだけ早く条例案を議会に当たる立法会に提出し、制定を目指す方針です。【3月6日 TBS NEWS DIG】
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【変わったのは政治状況だけでなく、香港市民の意識も・・・・】
ただ、変わったのは自治から中国支配へという政治的な力関係だけでなく、香港市民の意識にも中国支配を受け入れる方向での変化が起きているのかも。

****香港から中国本土へ旅行・買い物ブーム…反感一転「時代は変わった」「品ぞろえ良く安い」****
香港から中国本土への旅行や買い物がブームとなっている。物価の安さが香港人を引きつけているようだ。2019年の反政府抗議活動から一転したような動きの背景には、統制が強まる香港でじわりと進む政治離れもある。(中国広東省深セン 鈴木隆弘、写真も)

香港に隣接する広東省深セン市にある米系の大型スーパーは今月上旬、スーツケース持参で日用品や食品を買い込む香港人でにぎわっていた。夫婦で来た男性(65)は「品ぞろえが良く香港より安い」と満足げだ。十数年ぶりに本土をよく訪れるようになったという。

香港の旅行社・EGLツアーズは1月、広東省の大型スーパーや観光地を巡る1泊2日ツアーを始めた。1月に約2000人が参加し、2月も約3000人の予約が入る。新疆ウイグル自治区など遠方を巡る10日前後のツアーも人気だ。本土への旅行者は昨年、コロナ禍前の3倍の約3万人に増えたという。

香港メディアによると、中国本土を訪れた香港人は昨年延べ5300万人でコロナ禍前の水準に戻った。消費熱は高い。香港ドルが人民元に対し、2年前に比べて1割ほど強くなり、買い物を安価で楽しめるためだ。「選択肢が多く、サービスもいい」(58歳男性)との納得感もある。

中国本土に赴く動きは、反政府デモに否定的だった中高年層が中心だ。若者層でも週末を本土で楽しむ人たちが出始め、会社員男性(27)は「香港より遊べる場所は多い。以前は中国への反感があったが時代は変わった」と話した。

香港中文大学による昨夏の世論調査では、「政治に興味がない」との回答が前年より7・4ポイント高い62・9%だった。20年に反政府活動を取り締まる国家安全維持法が施行されて政治離れが進み、もともと実利重視と呼ばれる香港人の考えが改めて強まっているようだ。

習近平シージンピン政権は、広東省と香港、マカオの経済一体化を進める。本土行きのブームは「香港は本土と融合してきた」(李家超行政長官)との宣伝材料となる。社会には閉塞へいそく感も漂い、ネット上では「(自らを)中国人であると受け入れた」との嘆きの声も多い。【2月26日 読売】
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****中国で物価下落、香港住民が買い出し旅行で殺到****
中国本土で物価の下落が続いている。これは香港で暮らす人々にとってはありがたいことだが、企業にとっては大きな問題だ。(中略)

香港では中国との境界を越えて深セン市を訪れ、コストコやサムズ・クラブなどの大型量販店で冷凍食品や安い家具を買い込む人が増えている。香港の企業は中国企業と価格で勝負できず、厳しさを痛感している。

「今、街を歩くと、香港の小売業者が大きな苦境に陥っているのが分かる」。前香港財政官の曽俊華氏は最近、ソーシャルメディアにそう投稿した。(中略)

少しでも安く
中国本土が提供するものを香港の住民が喜んで受け入れるようなことは、反政府デモに飲み込まれていた5年前には考えられないことのようにみえた。

香港住民は当時、自分と同じ政治的立場の店を支援するため、立場ごとに色分けされた地図でそうした店を探し、中国本土とつながりがあるとみられる店は避けていた。

しかし、新型コロナウイルス対策で長期間にわたり香港からの移動が制限されたことや、不安を感じた住民の節約志向のおかげもあって深センの魅力が高まった。

「香港と深センの経済的な相互依存性を示す生活様式の再調整が起きている」と香港城市大学のエドマンド・チェン氏(政治社会学)は話す。(後略)【2月28日 WSJ】
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【周庭さん 日本向け活動再開】
一方、日本ではアイドル的な人気があるかつての「民主の女神」周庭さんは、亡命したカナダから日本に向けての活動を再会しています。

****周庭さん 3年ぶりにXを再開 「日本のみなさんと色々話したい」****
カナダに亡命後、香港警察から指名手配されている活動家の周庭さんが3年ぶりにXに日本語のメッセージを投稿しました。

日本時間の5日午前、周庭さんはXに「3年ぶりになりますが、ツイッターをまた始めたいと思います。これからも日本のみなさんと色々話したいと思います。ただいま」という日本語のメッセージを投稿しました。 その後、8時間余りで4万件近い「いいね」が付いています。

周庭さんは3年前までXの前身「ツイッター」に日本語で頻繁にメッセージを投稿していました。【3月5日 テレ朝news】
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香港警察は2月6日に同氏を指名手配し、「自ら出頭しない限り、生涯にわたって追われる」「外国の反中勢力に庇護(ひご)を求めることは恥ずかしい」と圧力をかけています。

“周氏らへの弾圧が浮き彫りにしているのは、中国共産党の強権政治と、香港で加速する「中国化」という現実だ。香港に自由を保障していた「一国二制度」の崩壊である。”【2月9日 産経】

今のところ、カナダと中国の間では「犯罪人引き渡し条約」が停止しており、また、カナダ
トルドー政権の性格からして、表だって中国・香港当局が周庭氏に手を出すことはできません。

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今回、香港の警察が逮捕状を取ったと言っても、カナダに通用するわけではありません。実はカナダ政府は2020年7月、香港が「国家安全維持法」を施行したことを受けて、香港との間にあった「犯罪人引き渡し条約」を停止しているからです。つまりカナダにいる限り安全なのです。(中略)

カナダには香港出身者が約30万人いるとされますが、「引き渡し条約」を停止した際、トルドー首相は「香港の人々を守る」と表明しています。中国は世界各地に勝手に「警察」の出先機関を置いていると報道されていますが、カナダ政府が「守る」と言明している以上、勝手な振舞いはできないでしょう。【3月5日 池上 彰氏 文春オンライン】
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もちろん、非合法に拉致という話になれば別ですが、中国・香港当局もカナダ及び国際社会を敵に回してまでそうしたことを行うメリットはないでしょう。香港に残る家族がいるのであれば、そちらへの圧力はあるかも。

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