孤帆の遠影碧空に尽き

年に3回ほどアジアの国を中心に旅行、それが時間の流れに刻む印となっています。そんな私の思うこといろいろ。

外国人向けの代理母出産  タイ・ジョージア・ウクライナの事情 

2025-02-11 23:45:02 | 国際情勢

(引き取りを待つ代理出産で生まれた赤ちゃん。ウクライナ・キエフのホテルにて(2020年5月15日撮影)【2020年6月6日 AFP】)

【タイ 外国人向けの代理母出産を再解禁検討】
タイでは1月23日、同性婚を認める法律が施行され、同性同士のカップルでも男女の夫婦と同様に婚姻を認めることになりました。同性同士の結婚を認める法律の施行は東南アジアで初めて。

それに伴って「代理母出産」に関する法律の改正も進んでいるようです。

****同性婚認めたタイ 同性カップルの「代理母出産」も容認へ****
23日に同性婚を認める法律が施行されたタイでは、同性カップルに子どもを持つ道を開くことになる「代理母出産」に関する法律の改正も進む。10年前に禁止された外国人向けの代理母出産を再解禁することも検討されている。

現行法で代理母出産を利用できるのは、法律婚をした男女のカップルで、いずれかがタイ人であることなどが条件。代理母は、カップルの親族である必要がある。

地元メディアによると、タイ保健省は、結婚に関する規定の文言が変わったのに合わせ、代理母出産の関連条文も従来の「夫」「妻」から「配偶者」に変更することを検討している。今後、改正案を議会に提出する方針だ。

一方、元々タイは代理母出産の世界的な拠点として外国人にも知られていた。しかし2014年、タイで代理母出産を利用したオーストラリア人のカップルが、生まれてくる双子の1人に先天的な病気があることを知り、引き取りを拒否したとされる問題などが判明した。

翌年、外国人カップルの依頼を受けた代理母による出産を禁止するなどしたが、逆に違法な代理母ビジネスの横行につながった。

今回の改正案には、代理母出産を再び外国人カップルに解禁する内容も盛り込まれている。タイ保健省のパヌワット局長は「代理母出産のプロセスを透明化し、違法なビジネスの撲滅にもつながる」と説明している。【1月23日 毎日】
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タイで外国人依頼の代理母出産が禁止になったのは、日本人男性がかかわる事件もあるとされています。

****代理出産で子ども13人、裁判所が日本人男性の親権認める タイ****
タイで日本人男性が多数の子どもを代理出産させていた問題で、バンコクの裁判所は20日、タイ政府の保護下にある子ども13人を引き渡すよう求めた男性の訴えを認めた。

この問題は2014年、バンコクのアパートで乳幼児9人が見つかったことで発覚。タイの警察当局は後に、DNA鑑定によって男性がこの9人を含め、代理出産で生まれた少なくとも13人の子どもの実父であると確認されたと発表した。

裁判所は声明で、「子どもたちの幸福と機会のため、代理出産で生まれた13人はすべて原告の法的な子どもであると認定する」と述べた。

男性は日本の有名企業創業者の息子で、騒動発覚後にタイを出国。しかしその後、子どもたちの引き渡しを求めてタイの社会開発・人間安全保障省を相手取って訴えを起こした。

裁判所によれば代理母となったタイ人女性らも親権を求めて訴えを起こしていたが、その後に親権を放棄しており、男性が子どもたちの「唯一の親」とみなされた。

また、男性は豊富な資産を持ち、日本で子どもたちを世話するための保育士やベビーシッターをすでに雇っていると裁判所は指摘した。

この件が明るみに出たことで、規制のなかったタイの代理出産ビジネスに対して厳しい目が注がれるようになり、当局は2015年、外国人が現地女性に金を支払って代理出産させることを法律で禁止した。【2018年2月20日 AFP】
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【ジョージア 代理母出産違法ビジネス タイ人女性100人超に手術強制か】
ただ、強い需要がある状況で禁止されると違法なビジネスが横行し、被害が水面下で拡大するというのが世の常。

****東欧で中国系犯罪組織が「卵子農場」、タイ人女性100人超に手術強制か タイ当局が捜査****
100人以上のタイ人女性が東欧のジョージアで中国系犯罪組織が管理する「卵子農場」と称される施設に軟禁されているとみてタイ当局が捜査している。

タイ人女性らは毎月強制的に卵子を採取されているといい、脱出した被害女性を保護するタイの「パヴェナ子供・女性財団」は採取された卵子は販売目的で他国に密輸されているとみている。

被害女性3人を救出
タイの英字紙「バンコク・ポスト」紙などが報じた。
子供・女性財団は昨年9月、中国系犯罪組織に身代金を支払って釈放されタイに帰国した被害女性から事件の相談を受けた。

タイ外務省も国際刑事警察機構(インターポール)と連携し、1月30日に被害女性3人をタイに送還させた。ジョージア内務省も2月6日に3人の送還を発表した。(中略)

合法的な代理母目的で渡航も
当初、SNSで女性向けの求人広告を通じ、不妊夫婦のため「代理母」になる目的でジョージアに渡ったという。

合法的な仕事と紹介されていたが、ジョージア到着後、中国系犯罪組織側にパスポートを没収された。案内された4軒の施設には少なくとも100人のタイ人女性が住み、健康状態は悪そうだったという。

代理母を求める夫婦は現れず、タイ人女性らは卵巣を刺激するホルモンを投与され、毎月1度麻酔をかけられて卵子採取手術を受けさせられたと訴えた。

財団代表のパヴェナ・ホンサクル氏は採取された卵子は体外受精に使用されるため、海外に密輸されていると指摘する。パヴェナ氏は3日、フェイスブック(FB)に「被害にあったタイ人女性は今も数百人いる」と訴えた。

財団は3日、中国系犯罪組織の取り締まりのため中国政府の協力を求めるようタイ政府に要請している。【2月10日 産経】
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【“代理出産王国”のウクライナやロシア ウクライナ戦争で中心はジョージアへ】
ジョージア(旧グルジア)もそうですが、ウクライナやロシアなど旧ソ連圏では外国人向けの代理出産ビジネスが定着しているとか。

ロシアのウクライナ侵攻後はロシアとウクライナという“代理出産王国”でのビジネスが困難になり、上記事件が起きたジョージアに中心が移っているようです。

****ともに代理出産王国のロシアとウクライナ 「女性搾取ビジネス」も侵攻2年で変化の波****
外国人向けの代理出産ビジネスが、ウクライナやロシアなど旧ソ連圏に定着している。不妊に悩む欧州や日本、中国のカップルにとっては子を得る貴重な手段だが「貧しい女性を搾取している」との批判も根強い。

(2024年2月)24日で2年となるロシア軍のウクライナ侵攻によって変化も生じている。

◆手続き簡単、安価なウクライナ 侵攻前は年2000人誕生
ウクライナは各国人からの代理出産の依頼を多く引き受けてきた。英BBC放送によると、侵攻前は約50の専門病院があり、代理出産で年2千人以上が生まれた。ウクライナでは、依頼主が出生証明書で両親と記載され、養子縁組などの手続きは不要だ。

「欧州諸国より数倍安い」「ウクライナ女性は責任感が強い」。代理出産を扱う首都キーウの産婦人科病院のホームページには外国人向けの宣伝文句が並ぶ。
地元女性を代理母に勧誘するページもある。出産経験があり、非喫煙者で過度に酒を飲まず、遺伝性疾患がないことなどが条件だ。報酬は2万~2万7千ユーロ(約320万~432万円)。

ウクライナの平均年収の5~6年分に相当する。食費や住居が支給されるケースも多く、代理出産で収入を得ようとする女性は少なくない。

卵子を提供すればさらに報酬がある。依頼主が選べるよう顔写真や学歴、民族的出自を事前に登録するという。

◆「女性の奴隷化」批判も 侵攻後はジョージアへシフト
ウクライナで代理出産は合法だが、批判もある。2020年に大統領全権・児童の権利委員ムイコラ・クレバ氏は「女性の搾取、奴隷化だ。障害児は捨てられ、外国の同性愛カップルや(幼児性愛などの志向がある)性犯罪者が親になる可能性もある」と主張した。

侵攻の影響もある。米メディアによると、外国人の依頼主が減り、代理出産の中心地はジョージア(グルジア)に移りつつある。(後略)【2024年2月7日 東京】
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コロナ禍とウクライナ戦争で、代理出産を依頼したものの、依頼主が赤ちゃんを引き取れないというケースも多発したようです。

****日本も無視できぬ「ウクライナ代理出産」深刻問題****
新型コロナとロシアの侵攻で子を引き取れない
日本人のカップルがウクライナ女性に「代理出産」を依頼し、すでに60人以上の子どもが生まれている――。その実態は前編で報告した。ただ、ウクライナでの代理出産にはさまざまな問題もある。

もちろん、それらは同国に限っての話ではない。どうしても子どもがほしいというカップルの望みをかなえる可能性のある代理出産。そこには、どんな問題が潜んでいるのか。

代理出産の実情を伝えるリポートの後編は、新型コロナウイルスの流行とロシアとの戦争によって生まれた子どもを引き取ることが難しくなっている現状を報告し、代理出産の課題を考える。

ウクライナでの代理出産に関する海外の報道などを調べてみると、ウクライナで代理母が出産してくれたにもかかわらず、子どものパスポートが発給されず、同国で足止めされたというケースが複数報告されている。
なぜ、そんなことが起きるのか。

代理出産を合法とするウクライナでは、依頼者に親権があるが、依頼者の国では代理出産によって子どもが生まれた場合、依頼者をその親と認めないことがある。このため依頼者の国のパスポートが子どもに発給されなかったというケースが出てくる。

ウクライナが注目を集めるようになったワケ
海外での代理出産で最も多いのが、赤ちゃんと代理母、依頼者カップルの3者をめぐる法的地位の問題だ。
誰が子どもの親なのかをめぐって、法廷で争われたこともある。

タレントの向井亜紀さんがアメリカ人に代理出産を依頼して双子を得たケースでは、生まれた子どもを「実子」として出生届を出したが、受理されなかったため、不受理の取り消しを求める裁判を起こした。最高裁は2007年、不受理を認める決定を出した。結局、向井さん夫婦と子どもたちは特別養子縁組による「法的な親子」を選択せざるをえなかった。

2008年には「マンジちゃん事件」と呼ばれる出来事があった。インドで日本人夫婦の依頼によって子どもが生まれたが、夫婦が離婚し、子どもは無国籍状態となったケースだ。

赤ちゃんは現地で「マンジ」と名付けられ、世界で大きく報じられたことから、記憶している方がいるかもしれない。このケースでは子どもは特例として亡命者の扱いで日本に入国し、夫とその母(子どもの祖母)に引き取られた。

2014年にはタイで日本人の独身男性が代理出産によって十数人の子どもをもうけていたことが発覚した。これらがきっかけとなって、インドとタイでは代理出産に関する規制が強化され、外国人が代理出産することは難しくなった。

こうした結果、注目を集めるようになったのがウクライナだった。
活況を呈していたウクライナの代理母ビジネスは、新型コロナウイルスのパンデミックとロシアによる軍事侵攻で状況は一変した。ウクライナへの入国が困難となり、代理出産によって生まれた子どもを依頼者が引き取ることも難しくなった。

「代理出産で生まれた子どもを引き取ることができない。助けてほしい」
エージェントA社は、日本人夫婦からこんな相談を受けたとネットで報告している。それによると、この夫婦は依頼先のエージェントB社と連絡が取れなくなったため、別のエージェントであるA社に相談してきたという。

その時点で赤ちゃんは生後1カ月半。A社が調べたところ、赤ちゃんはキーウの病院で置き去りになっており、A社が病院から赤ちゃんを救出。最後はポーランド国境まで連れていき、日本人夫婦に引き渡したとしている。

各国の依頼者を悩ませる新型コロナと戦争
新型コロナウイルスと戦争で混乱するウクライナで代理母が産んだ子どもをどう引き取るか。この問題は今、各国の依頼者を大きく悩ませている。(中略)

新型コロナウイルスの流行が始まった2020年、キーウで代理出産を手掛けるクリニック「Bio TexCom」は、依頼者が引き取ることができず、ウクライナにとどまっている数十人の赤ちゃんがずらりとベビーベッドに寝かされた写真をホームページに掲載した。

「赤ちゃんたちは専門のスタッフが24時間世話をしており、安全です。クリニックは1日も休まず医療活動を続けています」とするビデオも公開した。ビデオではスタッフが赤ちゃんを抱っこしたり、ミルクを飲ませたりしている。

依頼者の国籍はフランスやドイツ、メキシコ、ポルトガル、中国などさまざまだ。ロシアによる軍事侵攻が始まると、依頼者の不安を和らげようと、多くの物資を保管したシェルターの動画も公開した。(後略)【2022年8月23日 森本修代氏 東洋経済ONLINE】
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“依頼者が引き取ることができず、ウクライナにとどまっている数十人の赤ちゃん”・・・上記記事で紹介されている病院は良心的な病院ですが、引き取りができないまま闇から闇へ流された赤ちゃんも存在したのかも・・・というのは私の全くの想像です。

最近目にした記事で、ウクライナで胎児の臓器が「若返り治療」の名目で欧米の超富裕層に提供されている、そうしたことに政府機関が関与しているという、信用しがたいものがありましたが、あまりに荒唐無稽で信用しかねます。ロシア側のプロパガンダでしょうか。もしかしたら臓器ではなく「胎盤」プラセンタの誤解ではないでしょうか。

一方で、“ロシア、捕虜の内臓切除か 臓器移植の闇市場存在?―ウクライナ報道”【2024年7月26日 時事】といった報道もありますが、こちらはウクライナ側のプロパガンダかも。


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