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(カンダハルで “flickr”より By Brian_Fornear
http://www.flickr.com/photos/22841865@N05/4632275207/ )
【「この戦争に勝つとは思わない。」】
今更言うまでもない話ではありますが、アフガニスタン情勢はアメリカにとって厳しい状況が続いています。
****アフガン軍事作戦10年目 成果示せぬ米政権*****
■戦費に国民不満 12月戦略再検証
米国史上最長となったアフガニスタンでの軍事作戦が7日、10年目に突入した。来年7月の撤退開始を公約するオバマ米政権は、米兵約9万5千人を投入してイスラム原理主義勢力タリバンの掃討を続けている。しかし戦況は好転せず、不況下で戦費のかさむ軍事作戦への国民の不満が高まっている。12月に控えるアフガン戦略の再検証を前に、オバマ政権は「目に見える成果」を国民に示したい意向だが、出口の見えぬ対テロ戦の行方に米国には悲観論も広がっている。
「基本的な方針の変更が必要になるとは考えていない」
ゲーツ国防長官は9月23日の記者会見で、アフガン軍事作戦を再検証する年末に向けて、戦略の大幅な見直しは必要ないとの考えを強調。同席した制服組トップのマレン統合参謀本部議長も「いくらかの調整はあるだろうが、現在の戦略は正しい」と自信を示した。
米国はアフガンでの対テロ戦に「掃討、確保、構築」と呼ばれる反政府武装勢力の平定戦略を採用。タリバンを掃討し治安を確保した上で、住民の生活向上を支援することによりタリバンとの関係を断絶させる青写真を描いている。
しかし、米国の戦略はその第1段階で早くもつまずいた格好だ。2月に始まった南部へルマンド州マルジャの戦闘は現在も続いており、第2段階の治安の確保にはほど遠い。9月下旬に始まったタリバンの拠点、南部カンダハル州の掃討作戦も目立った成果はない。
アフガンでの米兵死者数は、今年7月に66人と月間で過去最悪を記録するなど、すでに1300人を超えている。
戦費総額は約3360億ドル(約28兆円)。米紙ワシントン・ポストによると、現在も1年で約1千億ドル(約8兆円)が支援目的で支払われ、一部は汚職がはびこるアフガン高官の手に落ちていく。米国の失業率が10%前後で推移する中、米国民には効果がはっきりしない出費への嫌悪感が広がっている。
9月29日に発表されたCNNテレビの世論調査では、アフガンでの軍事作戦を肯定したのは44%で3月の調査から11%も減少し、不支持は58%に達した。
オバマ大統領はテロの脅威から米国を守る上で「アフガンでの戦争は必要だ」と強調。昨年12月には、来年7月の撤退開始を条件に3万人の増派を決めた。
だが、戦果に乏しい状況で、あらかじめタリバンや国際テロ組織アルカーイダに撤退時期を通知するような手法への疑問もあり、政権内に亀裂を生んでいるとの指摘も多い。
ワシントン・ポスト紙の著名ジャーナリスト、ボブ・ウッドワード氏は新著「オバマの戦争」で、現在アフガン駐留米軍トップを務めるペトレイアス司令官が「この戦争に勝つとは思わない。子供の時代まで戦い続けることになろう」と吐露した-と明かしている。【10月8日 産経】
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上記記事ではアメリカ世論のアフガニスタン軍事作戦不支持増加を取り上げていますが、それが直ちに撤退を求めるような厭戦気分というものでもないようです。
06年の前回中間選挙では、ブッシュ政権の進めるイラク戦争が最大の争点のひとつになりましたが、今回中間選挙ではアフガニスタンでの戦争は殆んど争点になっていません。
それだけ経済・雇用という国内問題が深刻だということもありますが、“アフガン戦争は、01年9月の米同時多発テロを実行した国際テロ組織アルカイダの指導者、ウサマ・ビンラディン容疑者の身柄の引き渡しを、当時のタリバン政権が拒んだことで始まった。
(米スタンフォード大フーバー研究所のトーマス・ヘンリクソン)上級研究員によると、共和党議員だけでなく、イラク戦争には反対した民主党議員もアフガン戦争は「正しい戦争」とみなしており、そもそも争点になりにくいという。米軍死者数も過去の戦争よりは少なく、国民やメディアからは、4400人を突破したイラク戦争ほどの批判はない。さらにオバマ大統領は来年7月までに米軍撤退を開始するとしている。上級研究員は「来夏には何かが変わる、と多くの米国民が考えている」と述べ、大統領の「出口戦略」の効用を指摘する。”【10月7日 毎日】という見方があります。
【「事態打開に前向き」】
一方、カルザイ政権はタリバンとの交渉を探っています。
****アフガン政権とタリバン、和平へ秘密交渉か****
米紙ワシントン・ポスト(6日付)は、アフガニスタンのカルザイ政権と旧支配勢力タリバンが、戦闘終結に向けた高官・幹部級の秘密交渉を始めたと報じた。
双方は以前、サウジアラビアの仲介による和平交渉を行い、物別れに終わっている。
今回は、タリバン側の交渉団は、最高指導者オマル師と、パキスタンを拠点とする意思決定機関「クエッタ・シューラ(評議会)」から全権を委任されており、「事態打開に前向き」(関係筋)だという。
タリバンはこれまで、駐留外国部隊の全面撤兵なしに同政権と交渉はしないと主張していた。しかし、ワシントン・ポスト紙によると、タリバンは、交渉を通じて政権への参加や、米軍と北大西洋条約機構(NATO)軍の期限付き撤収などを探り始めたとみられる。【10月7日 読売】
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今回は初めてタリバンの最高指導者オマル師と、タリバンの意思決定機関であるクエッタ・シューラ(評議会)の了承を得ているという点が注目されるところですが、どうでしょうか・・・
ISAFとアフガニスタン軍は先月25日ごろから、タリバン本拠地・南部カンダハル州での掃討作戦を本格化しています。この「ドラゴン・ストライク」と命名された作戦は約7千人規模で、カンダハル市周辺の地区で陸と空からの攻撃が続いています。作戦は当初、今年6月に開始される予定でしたが、同州住民の強い反発や、ヘルマンド州での作戦の難航によって大幅にずれ込んでいたものです。
一方、タリバンは、ISAFが南部で攻勢を強めるのに伴い、各地で報復テロを増加させています。【9月30日 産経より】
軍事衝突が激化するなかでの秘密交渉というのは、難しそうです。よっぽどタリバン側追い詰められれば別ですが。
【「和平評議会はアフガン国民の希望の源だ」】
カルザイ政権側は、タリバン側との和解を目指す「高等和平評議会」を立ち上げています。
****アフガニスタン:和平評議会を開催 武装勢力と和解目指し****
アフガニスタンのカルザイ大統領は7日、旧支配勢力タリバンなど武装勢力との和解と平和構築を目指す「高等和平評議会」を首都カブールで開催した。ただし、米軍主導の武装勢力掃討作戦が継続中であることなどから、和平実現は困難を極めそうだ。
この日は、米国が01年同時多発テロの報復として同年10月7日に首都カブールなどを空爆し、アフガン戦争に突入してからまる9年の節目。現地からの情報によると、開催数日前からアフガン政府はタリバン政権の駐パキスタン大使ら旧体制の高官らと水面下で接触を持ち、開催にこぎつけた。
AP通信によると、カルザイ大統領は「和平評議会はアフガン国民の希望の源だ」と述べ、長引く紛争からの脱却への期待を表明した。
タリバンとの和解の方向性は、今年6月にカルザイ政権が開催した「国民和平会議」(ピース・ジルガ)で打ち出されていた。今回発足した評議会のメンバーは約70人で、元タリバン戦士らが含まれる。人権団体や女性団体は、女性蔑視のタリバンとの和解に懸念を表明している。(中略)
タリバン側は、表向きには、「駐留外国軍が撤退しない限り、カルザイ政権との和解はない」と表明している。【10月8日 毎日】
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“メンバーには、ラバニ元大統領とムジャディディ上院議員(元大統領)や、ワルダク教育相などの閣僚が含まれている。一方ではサイアフ下院議員など軍閥指導者や、元タリバンメンバーらの顔ぶれも。汚職や腐敗で知られる人物が並ぶことは国民に複雑な感情をもたらしそうだ。また、タリバンとの強いパイプを持つ人物を欠く点や、女性メンバーの少なさなども指摘されており、評議会への期待度は高いとはいえない” 【9月30日 産経】といった評価もあります。
南部カンダハル州で掃討作戦とカルザイ政権による和解交渉・・・事態打開へ向けた“硬軟両様”の模索が続いています。
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