孤帆の遠影碧空に尽き

年に3回ほどアジアの国を中心に旅行、それが時間の流れに刻む印となっています。そんな私の思うこといろいろ。

ナイジェリア  ボコ・ハラムの女子生徒連れ去り事件 ビデオ映像発表で国際社会の関心高まる

2014-05-07 21:59:00 | アフリカ

(ボコ・ハラムのビデオ映像 【5月6日 AFP】)

【「彼女たちは奴隷だ」「アラーが私に売れと言っている」】
自分の身の回りの常識・価値観では理解しがたい出来事が世界各地で頻発しているというのが現実ですが、ナイジェリアのイスラム原理主義組織“ボコ・ハラム”によるおぞましい犯罪行為もそのひとつです。

今日は、タイ・インラック首相の失職とか、中国・ベトナムの南シナ海でのゴタゴタとかの話題もありますが、どうしてもボコ・ハラムの蛮行は看過できません。

****女子生徒「売り飛ばす」、拉致グループが宣言 ナイジェリア****
ナイジェリア北東部ボルノ州の学校から200人以上の女子生徒が拉致された事件で、犯行を認めたイスラム過激派「ボコ・ハラム」の指導者とされる人物のビデオ映像が5日、明るみに出た。生徒たちを「売り飛ばす」と宣言している。

ボコ・ハラムの指導者アブバカル・シェカウ容疑者を名乗る人物が、現地の言葉で「私が誘拐した。娘たちを売り飛ばす」「人身売買の市場がある。アラーが私に売れと言っている」などと話している。

ビデオは先にAFP通信が入手していた。米国務省の報道官は「本物のようだ」との見方を示した。

ボコ・ハラムの名前は、「西洋の教育は罪」という意味。ビデオの人物は1時間近い演説の中で、女子生徒たちは教育を受けるのをやめて「結婚しなさい」と繰り返している。

ナイジェリアの大統領報道官はCNNとのインタビューで、この発言を強く非難し、「何があっても生徒たちを取り返す」と宣言した。

ジョナサン大統領自身も4日、同様の決意を表明したが、一方で生徒たちの父母が警察の捜査に協力的でないと批判した。父母らは娘が報復を受けることを恐れ、報道陣の取材も拒否している。

事件の報道を受け、生徒らの救出を求めるデモが世界各地で実施されている。ロンドンのナイジェリア大使館前には4日、約100人が集まって「生徒たちを連れ戻せ」「売り物ではない」と訴えた。

インターネットのツイッター上で展開されている運動には同日、クリントン米国務長官も加わり、「教育を受けることは基本的人権であり、罪のない少女たちを狙う理由としては到底受け入れられない」とツイートした。

ボコ・ハラムは近年、国際テロ組織アルカイダの関連組織から訓練を受けているとされ、欧米やナイジェリア政府の施設などを狙った大規模な攻撃を繰り返してきた。

ナイジェリアの首都アブジャでは7日から、世界経済フォーラム(WEF)アフリカ会議が開催される。【5月6日 CNN】
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事件については4月21日ブログでも取り上げましたが、ビデオ映像では、「彼女たちは奴隷だ。奴隷を売る市場で彼女らを売る」「神の指示に従い、少女たちを売り飛ばす。イスラムを信じぬ者の血でこの地が埋め尽くされるまで…。イスラム教を信仰しない者は殺す、殺す、殺す。キリスト教徒との戦争だ」とも発言しているそうです。

また、“AFPによると、彼女たちは、隣接するカメルーンやチャドのブラックマーケットで花嫁として売られているという。1人1200円。ボコ・ハラムは活動資金にしている。”とも。【5月7日 毎日、Jcastより】

“ボコ・ハラムは2002年にボルノ州の州都マイドゥグリで結成されたイスラム過激派。現地語で「西洋の教育は罪」の意味で、政府やキリスト教会、教育機関などへのテロ攻撃を強めてきた。先月14日に70人以上が死亡した首都アブジャ郊外のバス停付近での爆発もボコ・ハラムの犯行が疑われている。”【5月7日 毎日】

別に先月14日のテロだけでなく、キリスト教徒が多い南部とイスラム教徒が多い北部が対立するナイジェリアで全土にシャリーア(イスラム法)を導入することを目指す彼らは、これまでもキリスト教徒を狙った数十人規模の死者が出るテロ事件を頻繁に繰り返しています。

クリスマス・ミサのため教会に集まった住民を爆破・襲撃するようなことも。
今年2月25日には、ボコ・ハラムとみられる武装集団が公立の寄宿学校を襲撃して寮に火を放つなどし、少なくとも男子生徒58人が死亡する事件がありましたが、このときは女子生徒には手を出さず、家に戻って結婚し、西洋式教育を捨てるよう命じたとされています。

ゆがんだ経済成長
ボコ・ハラムのこうした凶行については、これまでも何回も取り上げてきていますが、ナイジェリアは、4月21日ブログ「ナイジェリア アフリカのイメージを払拭する経済成長 それでも“アフリカ的な”テロの横行」(http://blog.goo.ne.jp/azianokaze/d/20140421)でも紹介したように、経済成長著しい国です。

人口は、2050年にはアメリカを抜いて世界第3位になると予測されています。
先月には、国内総生産(GDP)を再計算した結果、南アフリカを大幅に上回り、アフリカ最大の経済となったと発表されています。
その経済規模は2050年までにカナダやイタリアを抜き、ドイツに迫るとの予想もあります。

にも拘わらず、こうしたテロが繰り返されるのは、経済成長の恩恵が一部の者だけに集中しており、深刻な貧困と格差が存在していることを示していると思われます。

また、治安を維持すべき国家機能が腐敗・汚職で十分に機能していないことも想像されます。

今回の事件が起きた4月14日からすでに3週間以上が経過していますが、なんの進展も見られていません。
進展しないどころか、今月に入ってもからも、新たな連れ去り事件が起きています。

****ナイジェリア、新たに拉致された少女は計11人****
ナイジェリア北東部ボルノ州で4日夜にイスラム過激派「ボコ・ハラム(Boko Haram)」とみられる武装集団に拉致された少女の数は計11人だったことが分かった。地元当局者が7日、明らかにした。

同州グウォザ地域にあるワラベ村の住民たちは先に、銃で武装した集団が4日夜に村を襲い8人の少女を連れ去ったと証言していた。

グウォザ当局のハムバ・タダ氏はAFPの取材に、武装集団にワラベ村が襲撃された事実を認め、さらに同じ集団がワラベ村から5キロほど離れたワラ村も襲い少女3人を拉致したと語った。【5月7日 AFP】
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何十人も死亡するようなテロが頻発する状況では、連れ去り事件などは大した問題ではないのでしょうか?
石油利権にまみれた政府には、住民の命など大した問題ではないのでしょうか?
そういうことではないとは思いますが、「政府はいったい何をしているのか?」とも言いたくなります。

国際社会に衝撃
拉致した女子生徒を奴隷として売り飛ばすという今回のビデオ映像は、国際社会に大きな衝撃を与えています。

****ナイジェリアの生徒解放願う書き込み相次ぐ****
西アフリカのナイジェリアで200人以上の女子生徒が武装集団に連れ去られた事件を受けて、インターネット上では生徒たちの解放を願って世界中から書き込みが寄せられています。

このうち、イスラム過激派から銃撃を受けながらも女性や子どもの権利を訴えているパキスタン人のマララ・ユスフザイさんはツイッター上に「女の子たちを取り戻せ」というメッセージを記した紙を掲げたみずからの写真を載せ、生徒たちの早期解放を求めています。

また、アメリカのクリントン前国務長官もツイッターで「教育を受けることは基本的な権利であり、何も悪くない女の子たちを標的にする理由には決してならない」と書き込み、テロに立ち向かうべきだと主張しています。

さらにユニセフ=国連児童基金の親善大使を務めるプエルトリコ出身の人気歌手、リッキー・マーティンさんもツイッターで生徒の解放を求めたほか、アメリカの俳優で映画「大統領の執事の涙」で主演したフォレスト・ウィテカーさんらハリウッド映画の俳優も相次いでツイッターやフェイスブックなどで事件を批判しています。

インターネット上には生徒たちの解放を呼びかける専門のウェブサイトも立ち上げられ、世界中から生徒たちの無事を願うことばが寄せられ早期の事件解決を求めています。【5月7日 NHK】
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これまでアメリカ、イギリス政府が生徒救出の支援を申し出ていましたが、ナイジェリア政府はほとんど動いていないとも言われていましたが、騒ぎが国際的に大きくなって、ようやく支援を受け入れることになったようです。

****ナイジェリア女子生徒救出へ、米国が特殊チーム****
米国務省のサキ報道官は6日の記者会見で、武装勢力がナイジェリア北東部の学校から100人以上の女子生徒を拉致した事件の解決に協力するため、現地に特殊チームを派遣すると発表した。

ケリー国務長官が同日、ナイジェリアのジョナサン大統領と電話で会談し、協力に合意したという。

チームには、 諜報 ( ちょうほう )活動や人質救出交渉の専門家らが参加する。オバマ米大統領は6日、米NBCテレビのインタビューで、女子生徒を救出するため「必要な協力は何でもする」と語った。

拉致はイスラム過激派組織「ボコ・ハラム」が実行犯とされる。米国内では、拉致された多数の女子生徒が、武装勢力に「花嫁」として売られていることなどが大きく報じられ、「少女の救出を」と訴えるデモが起きるなどしている。【5月7日 読売】
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オバマ大統領は、事件を「痛ましい出来事で、言語道断だ」と非難。その上で、女子生徒らを救うために国際社会が団結すれば、この恐ろしい組織に何かできるかもしれないと述べています。
ただ、すでに隣国カメルーンやチャドのイスラム武装勢力の戦闘員たちに売られているとも思われ、救出は困難が予想されます。

****ナイジェリア少女拉致、身元確認にDNA鑑定を****
ナイジェリアでイスラム過激派「ボコ・ハラム(Boko Haram)」に拉致され、近隣国に連れ去られた可能性のある200人以上の少女たちの身元を確認するために、米国とスペインの科学者らが6日、DNA鑑定技術を無償提供するとAFPに語った。

この技術は、人身売買の防止と家族再会を目指して10年前から活動する「DNAプロキッズ」に協力する米国の北テキサス大学人物同定センターが開発した「M-FISys(エンファシス)」と呼ばれるソフトウエアシステムを用いてる。

親族の唾液または血液からDNAサンプルを採取しておき、拉致された少女と疑われる人物と出会った際に少女の唾液または血液を採取して照合する仕組み。

DNA情報を暗号化するため、国境をまたいだ事件でも潜在的な外交問題を回避しやすい。またナイジェリアにDNA鑑定を行う設備がない場合にも、サンプル採取用の道具一式が提供され、採取したサンプルを米国またはスペインの研究室に送り鑑定を行うことができる。

米国務省は、4月14日にチボクから拉致された少女たちが近隣諸国に連れ去られた可能性があると発表。地元指導者らも、16~18歳の少女たちが、カメルーンやチャドのイスラム武装勢力の戦闘員たちに花嫁として売られたと述べていた。

もしこれらが事実であれば、身元確認を行う上で重要な(サンプル採取などの)部分は、連れ去られた地域の住民などの協力が鍵となるかもしれない。(後略)【5月7日 AFP】
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200人もの大人数を連れ去った訳ですから、事件発生と同時にナイジェリア当局が適切な対応をしていれば、その居場所等は確認できたのでは・・・と悔やまれます。
その意思も能力もないということであれば、仕方ありませんが。

ナイジェリア政府のために付け加えれば、当局もこれまでボコ・ハラムを放置していたわけでもなく、1年前には激しい掃討作戦も実施しています。
2013年5月24日ブログ“ナイジェリア イスラム過激派「ボコ・ハラム」に対する大規模掃討作戦が進行”(http://blog.goo.ne.jp/azianokaze/d/20130524

この掃討作戦は良い結果を出せずに終わったようです。
また、一般住民を巻き込んだ強引な軍のやり方は、結果的に住民の協力が得られないという問題も引き起こします。
コメント
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