孤帆の遠影碧空に尽き

年に3回ほどアジアの国を中心に旅行、それが時間の流れに刻む印となっています。そんな私の思うこといろいろ。

インド  中国同様、あるいはそれ以上に深刻な大気汚染、石炭不足・電力不足

2021-11-10 23:14:53 | 南アジア(インド)
(【11月5日 時事】11月5日 ニューデリーの大気汚染)

【大気汚染深刻化 環境対策・衛生観念に優先する宗教的情熱】
北京オリンピックの頃などは中国の大気汚染が冬場になるとよく話題になっていましたが、最近はあまり聞かなくなりました。

ひとつは、(共産党支配を続けていくうえで)住民の不満に敏感な中国政府が環境対策に本腰を入れた成果でしょう。
更に、去年あたりからは新型コロナによる経済活動の低下も、結果的に汚染レベルを改善させる方向に作用したようです。

ただ、大規模な電力不足であきらかになったように、脱石炭を急速に進めることはできない経済体質がありますので、汚染の方も当分は一定に続くことが予想されます。

“北京、スモッグ悪化で幹線道路通行止め 校庭も使用禁止”【11月5日 AFP】

大気汚染で言えば、中国以上に深刻なのがインド。
今年もまた・・・しかも、コロナ対策でもそうでしたが、インドの場合、ヒンズーのお祭りとなると歯止めがきかなくなるというところがあって、中国のように政府の規制で大きく改善するということも期待できないようです。

****花火、爆竹で大気汚染深刻=恒例の「正月」祝い―インド首都****
世界最悪レベルの大気汚染で知られるインドの首都ニューデリーは5日、ヒンズー教徒が新年を祝う「ディワリ」で使用された花火や爆竹によるスモッグに包まれた。

インドは今年5月、最大で1日約40万人の新型コロナウイルス感染者を出したものの、最近は新規感染者が1万人程度に落ち着いており、人々は例年通り祭りを楽しんだようだ。
 
ニューデリーではディワリ当日の4日から大気汚染が急激に深刻化。民放NDTVによれば5日、インド当局の微小粒子状物質PM2.5の観測値が最大の「999」に達した。NDTVは「実際の値はさらに高い可能性がある」と伝えた。
 
大気汚染による呼吸器の負担が新型コロナ感染に影響を及ぼす恐れも指摘されている。首都当局は花火や爆竹の使用を全面的に禁じた。しかし、首都では花火や爆竹の音が響き、室内にいても息苦しくなるほどだった。【11月5日 時事】 
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インドの大気汚染の原因は、農家による野焼きの煙だとされています。
その野焼きが本格化するなかで、「ディワリ」で使用された花火や爆竹が更に状況を悪化させたようです。

そもそもインドの場合、環境汚染に対する意識が宗教的情熱に及ばないところがあります。更に言えば、衛生観念が日本や欧米のそれとは違うところも。

****大量の有毒“泡”発生 包まれ沐浴の信者も****
水面を覆う、大量の白い物体。
産業廃棄物や未処理の下水によって発生した有毒な泡。

インドの首都・ニューデリーを流れるヤムナー川では、上流から流れ込んだ排水で、有毒な泡が大量に発生した。
こうした中でも8日、川ではヒンズー教の太陽に祈りをささげる祭典のため、泡に包まれながら沐浴(もくよく)する信者の姿が見られた。

ヤムナー川は、ガンジス川と並ぶ神聖な川として信仰の対象となっているが、水質改善は進んでおらず、有毒な泡の発生は毎年見られている。【11月10日 FNNプライムオンライン】
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聖なる川・ガンジス川は生焼けの死体がよく流れていますが、そういう川で沐浴することが至上の喜びとされるお国柄ですから・・・。

【中国同様の石炭依存からの電力不足】
そうした衛生観念や環境への意識といった面に加えて、経済体質が石炭に大きく依存しており環境汚染を引き起こしやすいところは中国とよく似ています。

中国が石炭不足で大規模停電に陥ったように、中国ほど大きな話題にはなりませんでしたが、インドも同様の電力不足に見舞われています。

****未曾有の電力危機に瀕するインド 経済回復に大打撃****
欧州や中国などで電力不足が深刻化しているが、実は14億人近い人口を抱え、アジア第3位の経済規模を持つインドでも電力の需給がひっ迫している。原因は火力発電所で使われる石炭の不足だ。

新型コロナの第2波からようやく抜け出したインドでは、経済再開で電力需要が増しており、産業や国民生活への影響が心配されている。

◆発電は石炭メイン 各地で在庫激減
インドは発電の70%を石炭火力に頼っている。政府のデータによれば、10月6日時点でインドの135ある石炭火力発電所の80%で、石炭の在庫が8日分以下になっていたという。そのうち半分以上では、2日分以下しかなかった。

通常であれば、平均18日分はストックされているはずだという。インドの信用格付け機関CRISILのヘタル・ガンディー氏は、ストックが以前の水準に戻るのは来年3月以降だろうとしている。(CNBC)
 
インドは石炭の埋蔵量が多く国内生産が盛んだ。国営のコール・インディア社(CIL)が生産量の80%を占めている。BBCによればこの10年間で石炭の消費量はほぼ2倍になっている。

今後十数ヶ所の新規の炭鉱開発を計画しているが、実は国産だけでは需要を賄えず、輸入も世界第3位の規模となっている。

◆原因はさまざま コロナからの復活に冷や水
石炭不足はさまざまな要因が絡み合って発生した。まず、今年は雨季が長引いたため、石炭の供給が通常のレベルに戻るのが大幅に遅れた。

そして、パンデミックの第2波によって経済活動に影響が出て、石炭の在庫が必要なレベルまで蓄積されなかった。さらに、世界的な需要増のため輸入炭の価格が高騰して購入することができず、これが問題を複雑化させているという。(インディアン・エクスプレス紙)
 
需要面を見ると、経済活動が急回復し、大部分がパンデミック前の水準、またはそれ以上になっており、電力需要が予想外に急増した。

インディア・トゥデイ紙によると、CILは今年の上半期に記録的な量の石炭を生産して対応している。しかし需要の急激な増加に追いつけず、現在の状況を招いている。
 
インドの石炭価格はCILが決めているため、国際価格が上昇しても国内価格にはそれほど影響はないという。電力会社はコスト上昇分をほとんどの一般消費者に転嫁することはできない。よって石炭価格の上昇分は主に産業界の負担となる。(CNBC)
 
政府は石炭不足の懸念を払しょくするため、供給は十分だと発表しているが、現在の危機が続いて高い輸入炭が増えれば、電力コストが急増し、製造業が影響を受ける。

また、電力需要が大幅に増加すれば、電力を大量消費する産業の輸出を制限する措置がとられる可能性もあるとガンディー氏はCNBCに述べる。さらに、企業はコストを消費者に転嫁するため、インフレ懸念が強まっている。

◆石炭がないと生活できない、途上国インドの現実
インドはいまこそ石炭への過剰な依存をやめて再生可能エネルギーへの移行を貪欲に進めるべきだという声もあるが、現実はそんなに簡単ではないとBBCは述べる。

国内では直接的および間接的に400万人の人々が石炭産業に従事しており、貧しいコミュニティのライフラインになっている。炭鉱がなくなればこれらの人々は生活の糧を失うため、再エネシフトにはよく練られた戦略が必須だ。
 
さらにインドにはいまだに電気を使えない人が数千万人いるとされる。炭鉱近くのスラム街では、石炭を使った屋外のかまどで料理をし、夜の明かりも石炭を燃やして確保している。

政府は2030年までに電力の4割をクリーンエネルギーで賄うという目標を掲げているが、石炭のない未来はまだまだ先のことと言えそうだ。(BBC)【10月14日 NewSphere】
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“石炭のない未来はまだまだ先のこと”ということで、COP26でも「脱石炭」の動きには距離を置いています。
日本も同様ですけどね。

****「脱石炭」で温度差、声明に日本不参加 COP26****
国連気候変動枠組み条約第26回締約国会議(COP26)で、二酸化炭素(CO2)の排出量が多い石炭からの脱却に向けた取り組みが加速している。議長国の英国は4日、40カ国以上が石炭火力発電を段階的に廃止することを目指す声明に賛同したと発表した。

ただ、日本や米国、中国、豪州、インドなどは声明に加わっておらず、脱石炭をめぐっては溝も明らかになっている。

声明は、石炭火力が気温上昇の「唯一最大の原因」であり、クリーンエネルギーへの移行を早急に進めるべきだと指摘。先進諸国は2030年代まで、世界全体では40年代までに石炭火力を廃止する方針を盛り込んでいる。

これまでに石炭火力からの撤退を宣言していた英国やフランスなどに加え、石炭火力の建設計画が進むベトナムや石炭産出国のポーランドなど23カ国も声明に加わった。英政府によれば、金融機関や企業なども含めて190の国・機関が賛同しているという。

COP26の議長を務めるシャルマ氏は「石炭の終わりが目前に迫っていると信じている」と強調した。

発電コストの安い石炭火力を主要電源とする中国やインド、石炭産業を擁する豪州、日本などは声明に加わらなかった。

日本は、30年度に総発電量の19%を石炭火力でまかなうとしたエネルギー基本計画を10月に閣議決定した。中国の石炭使用量は世界全体のおよそ半分とされる。【11月5日 産経】
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【中国・インドの石炭不足・電力不足は世界経済への影響も】
中国とインドで石炭不足が深刻化し、電力供給が不安定になっている状況は、世界全体のインフレ圧力を高め、サプライチェーンを混乱させる可能性もあります。

****中国・インドの電力不足によるグローバル・インフレ懸念 ― 冬場にサプライチェーンが混乱する可能性も ****
中国とインドで石炭不足が深刻化し、電力供給が不安定に。新型コロナ対応の活動規制の緩和で内需回復が進む一方、①中国・インド両国で豪雨等により石炭採掘量が減少していること、②中国政府が脱炭素のための急激なエネルギー構造変化を推進し、供給が細ったことが背景。

電力供給の安定化に向けて、中国政府は、電力料金の引き上げなどで電力会社を支援しながら、発電量の増加を目指すことを表明。また、中国・インドともに、石炭や他の一次エネルギーの供給を拡大させる措置。

今後は、暖房需要の高まる冬場にかけて石炭需要がひっ迫する可能性大。両国は、国内での採炭を今後加速させる構えであるが、当面は輸入拡大で対応する方針。すでに大幅に輸入額を増やしている中国にインドも続く見込み。世界の石炭消費1位と2位の両国の石炭輸入増は、世界の石炭価格をさらに押し上げ、世界的にインフレ圧力を高めるおそれ。

さらに、不安定な電力供給が停電などの問題に発展し、生産活動に支障を来せば、世界経済の重しに。

わが国は、電子・電気機器など製造業の多くが中国に依存。ASEANの経済停滞により一部の製造業でサプライチェーンがすでに混乱しているなか、中国・インドの電力不足がこれに拍車をかける可能性に要注意。【10月13日 日本総研】
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インドの石炭不足・電力不足が話題になったのは約ひと月前。
その後どうなったのか・・・よくわかりません。メディアも“その後”をフォローしてくれないので・・・。
発電用石炭の“ストックが以前の水準に戻るのは来年3月以降だろう”という指摘もありましたので、基本構図は変わっていないのでは。

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ジェンダーに関する意識  アメリカ、スウェーデン、そして中国

2021-11-09 23:25:04 | ジェンダー
((スウェーデンのLGBTの人のためのシニアハウス)レインボーシニアハウスの入居者ら【11月9日 47NEWS】)

【当世アメリカ若者気質 LGBTQと自称するのが「無難でクール」】
いわゆるLGBTといった言葉であらわされる性的少数者の場合、差別の対象となるという面で問題となりますが、今時のアメリカの若者にあっては、“LGBTQと自称するのが「無難でクール」だ”という認識が生まれているとか。

****アメリカの若者の30%以上が「自分はLGBTQ」と認識していることが判明****
<ミレニアル世代の中でも最も若い「Z世代」に絞ると、39%がLGBTQを自認しているという>

米若年層の約3人に1人がLGBTQ(性的少数者)を自認することが、アリゾナクリスチャン大学などによる世論調査で分かった。

調査対象は1984~2002年生まれのミレニアル世代だ。彼らのうち、自分はLGBTQだとした人の割合は30%で、年長世代の3倍以上。ミレニアル世代の最年少層である18~24歳(Z世代)に絞ると、39%に達した。

彼らにとってLGBTQと自称するのが「無難でクール」だからだと調査担当者はみる。

一方、ギャラップは今年2月、全成人層を対象とした調査結果を発表。「異性愛者でない」と回答したのはわずか5.6%だった。

39%  アメリカのZ世代のうちLGBTQだと自己認識する人
30%  ミレニアル世代のうちLGBTQだと自己認識する人
5.6%  自分は異性愛者ではないとギャラップ調査で回答した人
【10月26日 Newsweek】
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全成人層を対象とした調査結果とは大きな差異があるようです。
ただ、ジェンダーに関する意識が、従来の「男らしさ」「女らしさ」という固定的なものから変わりつつあるのは事実でしょう。

****男女分けないおもちゃコーナーを。大手小売店に義務付ける法律成立 カリフォルニア州****
おもちゃや育児用品を、男女で分けずに陳列するコーナーを設けることを大手の小売店に義務付ける法律が、アメリカ・カリフォルニア州で成立した。BBCによると、同国で初の法律となる。

新法は、子ども向け商品の「ジェンダーバイアス」に対処することを目的としている。男女別のコーナーを設置すること自体を禁止するものではないが、性別で区別しない一角を設けなければいけないとしている。

対象は、500人以上の従業員がいる州内の大規模小売店。初回の違反には250ドル(約2万8000円)の罰金、それ以降は500ドル(約5万7000円)の罰金が科される。2024年に施行される見通しだ。

子どもの素朴な疑問で動いた
ロサンゼルス・タイムズによると、法案を提出した民主党のエヴァン・ロー議員は、スタッフの幼い娘が、母親に「どうして男の子のコーナーに行かないと、(ほしい)おもちゃが見つからないの」と尋ねたという話を聞いたことが、法案作成のきっかけになったという。

ロー議員は、「女の子がパトカーや消防車、周期表、恐竜のおもちゃなどを見つけられるようにすることが目的のひとつです」と明かす。「同じように、あなたが男の子で、芸術的な感性を持っていて、キラキラしたもので遊びたいと思った時、なぜそうしてはいけないのでしょうか?なぜスティグマ(間違った認識や根拠のない認識)を感じ、『ああ、これは恥ずかしいこと』と言って、別の場所に行かなければならないのでしょうか」と問題提起している。

「私は州としてダイバーシティ(多様性)とインクルージョン(排除しない包括・包含)の価値を示すことが重要だと考えています」(ロー議員)

BBCによると、アメリカの小売業者の中には、ビジネスにおけるジェンダーの固定観念から脱却するための措置をすでに取っている企業もある。

ディスカウントストア大手のTarget社は2015年、店内においてジェンダーに基づく表示の一部の使用を止めることを発表している。【10月15日 HUFFPOST】
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【現実には選挙戦の争点ともなるダイバーシティとインクルージョン】
しかしながら、LGBTを社会的にどのように受け入れるかということでは様々な現実的問題も起きてきます。
その一つが学校などのトイレをどのように使うかという問題。

LGBTと言っても、その内容は様々。
いろんなケースを包摂しようとすると、略称の方もどんどん長くなります。

****「LGBT」から「LGBTQIA+」へ、言葉が長くなってきた理由****
(中略)レズビアン、ゲイ、バイセクシャル、トランスジェンダー、クィア、クエスチョニング、インターセックス、アセクシャルなど、コミュニティーを表す言葉はとても幅広い。

多様な性自認やジェンダー表現に対する理解、認識、受容が進むにつれて、コミュニティーの頭文字を並べた言葉(アクロニム)も長くなってきた。(後略)【10月21日 NATIONAL GEOGRAPHIC】
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多様な性自認の一つがジェンダー・フルイド(gender-fluid)。
ジェンダー・フルイドとは、性自認(こころの性)が複数の性のあいだで揺れ動くことで、 不規則に変わることもあれば、場面や状況に応じて変化することもあります。

多くのメディアが報じているように、先日のバージニア州知事選における民主党候補敗北、共和党候補勝利はバイデン政権及び中間選挙を控えた民主党にとって大きな痛手となりましたが、ジェンダー・フルイドを自任する高校生が起こしたトイレでの暴行事件もその選挙戦に影響したようです。

****トランスジェンダー生徒の「トイレ問題」米州知事選の争点に 性的暴行を機に****
米国のジョー・バイデン政権の今後を占う試金石とみられているバージニア州知事選で、性自認が流動的である「ジェンダーフルイド」とされる高校生による校内女子トイレでの性的暴行事件が争点の一つとなっている。
 
バージニア州の少年裁判所は今週、ラウドン郡の15歳の高校生に対し、今年5月に校内の女子トイレで同級生に性的暴行をしたとして有罪判決を言い渡した。
 
被害者の父親は加害者がジェンダーフルイドだと地元メディアに語っているが、AFPは独自に検証できていない。米紙ワシントン・ポストによると、この問題は25日の公判では取り上げられなかった。
 
事件は「加害者が犯行当日にスカートをはいていた」という被害者の父親の主張を含め、全米で注目を集めている。
 
加害者は今月、公判中に転校先でも同級生を暴行したと伝えられており、転校させた教育委員会は激しい非難を浴びている。
 
ラウドン郡は今年8月、トランスジェンダーの生徒が学校で自認する性別のトイレを使用できるようにしたが、事件への反発からこの方針をめぐる議論が再燃した。
 
共和党候補のグレン・ヤンキン氏は、教育委員会に対する保護者の怒りを自身の選挙戦に利用している。
 
性別で分けられた空間を自身の性自認に合わせて使用できるようにするべきかについては、共和党と民主党は正反対の立場を取っている。
 
共和党の保守派は、トランスジェンダーの人々がトイレや更衣室を使用する際は生まれつきの身体的性別に従うべきであり、「男性」が女性用トイレに入るのを認めるのは危険だと主張している。
 
民主党は、そうした考えは根拠のない不安をあおり、罪のない人々が不当に攻撃されかねないと非難している。
 
ヤンキン氏は、先日の演説ではトランスジェンダーの人々に関する政策に言及しなかったものの、「リベラル急進派」が「私たちの学校制度に教育委員会に見せ掛けた政治工作員」を送り込んでいるとこき下ろし、トランスジェンダーの権利運動を急進的とみなす保守派にアピールした。 【10月30日 AFP】
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【北欧・スウェーデン 長年の当事者・支援者の活動を通じて性的少数者が社会に受け入れらる】
所変わって北欧・スウェーデン。
新聞記事や公的文書の中でも、ジェンダーをあえて区別をしない代名詞を使用するようになっているとか。

****ジェンダーニュートラルな社会、スウェーデン 三人称代名詞「hen」にも反映****
スウェーデンには「hen(ヘン)」というジェンダーニュートラルな三人称代名詞がある。英語の「she」や「he」のように男女を区別する代名詞はスウェーデン語にもあるが、あえて区別をしない代名詞がhenである。

この代名詞は2000年代ごろから新聞記事や公的文書の中でも利用されている。筆者自身も仕事で行政文書を作成する際、henを使っている。名前だけでは男性か女性かは分からない。だから代名詞を使うときは性的な区別をしないように気をつける。

スウェーデンでは50年以上かけて性的少数者が社会に受け入れられるようになった。その結果が言葉にも反映されたのである。(スウェーデン在住ジャーナリスト、共同通信特約=矢作ルンドベリ智恵子)

 ▽法制度の歩み
性的少数者の人権がしっかりと守られているスウェーデンでも、50年前には同性愛は病気だと診断されていた。当時、LGBTQであるとカミングアウトする人はほとんどいなかった。

その後、1970年代から勇気ある当事者たちの同性愛解放運動、デモ活動を通して彼らの人権が少しずつ社会に認められるようになった。

87年に企業や政府による同性愛者の差別が禁止され、95年には同性カップルのパートナーシップ法が成立した。2003年には同性カップルの養子縁組の権利も認定され、09年には同性婚が合法化された。

13年には法的性別の変更に関する法律から不妊手術の義務化が削除された。スウェーデンでは1972年に世界で初めて法的に性別変更が認められたが、その際は不妊手術を受けることが条件だった。現在は強制的に不妊手術を受けさせられたトランスジェンダーの人たちに賠償金が支払われている。

一方、日本では性別適合手術を受けないと戸籍の性別を変えることができない。これは人権侵害ともいえ、早急に法律を見直す必要がある。

 ▽支援団体と認証制度
スウェーデンでは法律が整備される上で、性的少数者全国組織(RFSL)の活動が大きな影響を与えてきた。この支援団体は1950年に発足し、会員は7000人を超える。

RSFLは政治的なロビー活動、広報活動、社会的な支援活動などを幅広く行っている。他にも政治家や行政機関、企業に向けて、人権尊重・差別禁止について教育プログラムを実施している。

傘下に25歳までの若者へのサポート組織もあり、自分自身の性や子供の性について悩んでいる人たちを支援している。

さらに、性的少数者の立場から職場環境を見直したり、性的少数者への理解を高めたりする教育プログラムを2008年から実施。終了した組織には「LGBTQI認定証」を発行している。病院、高齢者施設、図書館、就学前学校、学校など、これまでに550以上の団体や組織が認定証を受けている。(中略)

 ▽認証を受けたシニアハウス
LGBTQIの認定を受けた高齢者施設がスウェーデンには現在10カ所ほどある。勤務するスタッフも教育プログラムを受け、性的少数者への理解や配慮が行き届くよう励んでいる。

その一例として「レインボー(虹)」という名のシニアハウスがストックホルム市内にある。スウェーデンではおそらく一つしかない55歳以上のLGBTQの人のためのシニアハウスである。

子どもがおらず老後に不安を持っていた創立者たちが、同じように思っている人たちと共にこの施設をつくり上げた。彼らは「このような施設があるということ自体、実は悲しいことです。私たちの夢はどんな人でもどこでも受け入れられるようになることです」という。(後略)【11月9日 47NEWS】
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LGBTQの人のためのシニアハウス・・・日本ではそういう発想がまだありません。

代名詞について言えば、アメリカでも近年ジェンダーによらない「they」を単数形として使用するようになっているようです。

“ 「they」と言えば、「彼(女)ら」という複数の代名詞であると英語の授業で教えられてきましたが、近年、男女別の単数の代名詞「he(彼)」「she(彼女)」に換えて、「they」を単数形で使う動きが広がっています。これは、「ノンバイナリー(Xジェンダー)」の方たちに対して、『ワシントン・ポスト』紙が2015年に使い始め、AP通信も2017年に表記の仕方を取り決める「スタイルブック」に採用するなどして、認知が広がっています。”【PRIDE JAPAN】

【中国 メンズ美容市場が活況 「女性っぽい男性」を認めない習近平政権】
一方、中国では、習近平国家主席のもとで進む「文化大革命」的な社会・政治運動の一環として、「女性っぽい男性」を否定する指導・統制が行われています。

「女性っぽい男性」が必ずしもLGBT的な性自任を持っている訳でもありませんが、批判する側の「男らしさ、女らしさ」にこだわる姿勢は、LGBTへの批判と同根でしょう。

****「ニャンパオ」を許さない!中国政府が中性的イケメンを憎む理由****
「ニャンパオ」という中国語がある。漢字で「娘炮」と書くこの言葉には、「女性っぽい男性」という意味がある。

最近の中国の若者たちの間では、自由な自己表現につながるこの中性的な「ニャンパオ」を支持する声が強く、またイケメンのひとつの条件とも捉えられているようだ。だが中国政府はそれを許さない。ジェンダーギャップを乗り越えようとしている世界的な流れに逆行して、なぜ習近平政権は「男らしさ、女らしさ」にこだわるのだろうか。

20年前とは様変わりした若者像
「化粧をして、細い腰つきで、わざとらしい指づかいで、はにかんだように振る舞う・・・」

中国メディア「光明日報」は8月27日、「ニャンパオ」のイメージをこう表現した。中国では、歌手・俳優の鹿晗(ルー・ハン、1990年生まれ)や、歌手の蔡徐坤(ツァイ・シュークン、98年生まれ)などが“典型的なニャンパオ”だと受け止められている。

筆者は、ニャンパオを彷彿とさせるアイドル風の中国人男子に会ったことはない。だが、中国の男性が女性っぽくなっている現象については感じるところがあった。仕事柄、1990年代生まれ(90后)や2000年代生まれ(00后)の中国人留学生と接する機会が多いが、彼らを見ていると明らかに20年前の若者像とは様変わりしている。なによりも外見を気にする男子が増えた。

都内の私大教授は、研究室で受け入れている中国人留学生について、「いずれも一人っ子として親に大事に育てられてきた子たちです」と話す。彼らは、みんな顔つきが優しくて性格も大人しいという。彼らのような若者たちがいずれ中国の政治家になったら、「世間が思うような“怖い国”ではなくなるかもしれない」と漠然と思うこともあった。

化粧品をショッピングカートに
中国では今、メンズ美容市場が活況を呈している。調査会社の艾媒諮詢によると、アンケートに答えた65%の男性が外見の改善に関心があり、沿海部の大都市を中心にエステや審美治療(美しさを求める治療)のニーズが高まっているという。

人民日報海外版(2021年5月18日)は、2020年の「ダブルイレブン」(11月11日=独身の日)に、男性用の輸入化粧品の在庫が前年比で3000%増加したと報じた。「リキッドファンデーションを購入する00后男子は00后女子の2倍であり、アイライナーを購入する00后男子は00后女子の4倍となった」(同)という。(中略)

中国の動画やSNSでも、唇をピンクや紫の色に塗った男子がよく登場する。

ニャンパオ文化を助長したテレビ局
(中略)

必要とされているのは“マッチョな愛国男子”
習近平政権はなぜ、これほど「ニャンパオ」を毛嫌いするのか。
 
2020年5月には、中国人民政治協商会議常任委員会のメンバーの一人が、「中国の若者は弱々しく臆病だ」という理由で「男性の若者の女性化防止に関する提案」を提出している。

男性が女性化しては困るというのは、それが「中国の民族の復興」を遠ざけることになるからだろう。米中対立が激化し、台湾有事が現実のものになりかねない今、国家が必要とするのが、戦地に赴き勝鬨(かちどき)を上げる兵士だとすれば、「化粧を施した、華奢なイケメン」はその理想像に著しく反する。(中略)

中国の大学や専門学校では短期的な軍事訓練が行われるが、2011年に北京大学で3500人の学生が参加する2週間の軍事訓練を行ったところ、めまいで医務室を訪れた学生が延べ6000人を超えたという。学生たちが直立不動の体勢を長時間続けられないことも話題になった。(中略)

戦闘態勢に突入しようとする中国が今こそ欲しているのは“マッチョな愛国男子”だろう。ところが若者たちはアイドルを追いかけ、ニャンパオ文化に溺れている。

(中略)習近平政権はニャンパオの増加に兵士の質を維持することへの支障を懸念したのかもしれない。【11月9日 姫田 小夏氏】
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食料品価格の上昇 社会の不安定化を招くレベルに

2021-11-08 22:42:58 | 食糧・飢餓
(10月、ブラジルのスラム街で無料の食事提供を待つ人々の列【11月8日 WSJ】)

【拡大する飢餓の危機 世界で4500万人】
日本を含め、各国は新型コロナの感染者数、死者数の動向には多大な関心を有していますが、世界各地で何百万人、何千万人もの人々が飢餓の危機に直面しているという事実にはほとんど関心がないようです。残念ながらそれが現実世界です。

****4500万人が飢餓の危機に 国連****
国連の世界食糧計画は8日、世界43か国で飢餓の危機に直面している人が、今年初めの4200万人から4500万人に拡大したと発表した。

WFPによると、アフガニスタンについて食料安全保障面から点検した結果、300万人が飢餓に直面していることが判明。このため全体の人数が押し上げられた。

デービッド・ビーズリー事務局長は「紛争や気候変動、新型コロナウイルス感染症によって飢餓に直面する人の数が増えている」と説明した。

WFPはアフガンで約2300万人を対象に支援を行っている。ビーズリー氏は最近、アフガンを訪問していた。

同氏はまた「燃料価格や食料価格が高騰しているのに加え、肥料の価格も上がっている。こうしたことすべてがアフガニスタンで現在起きているような新たな危機や、イエメンやシリアなどでの長期にわたる危機的状況を招いている」と述べた。

WFPによると、飢餓対策にかかる費用は世界全体で今年初めの66億ドル(約7500億円)から70億ドル(約8000億円)に膨らんでいる。

深刻な食糧難に直面する家庭では、子どもを早く結婚させたり、学校を退学させたり、バッタや木の葉、サボテンを食べさせたりといった「悲惨な選択を強いられている」。報道によるとアフガンでは、子どもを売らざる得ない家庭もある。

アフガンは、相次ぐ干ばつや経済破綻に見舞われている。一方、シリアでは約1240万人が毎回食事を食べられるかも分からない状況で、内戦が続くここ10年でそうした人々の数は最多となっている。

WFPよると、エチオピア、ハイチ、ソマリア、アンゴラ、ケニア、ブルンジでも深刻な飢餓の危機が拡大している。 【11月8日 AFP】
**********************

国連世界食糧計画(WFP)のビーズリー事務局長は9月の国連食料システムサミットで「毎年900万人が飢餓で命を落としている」と指摘しています。

“飢餓対策にかかる費用は世界全体で今年初めの66億ドル(約7500億円)から70億ドル(約8000億円)に膨らんでいる。”・・・・正直な感想は「たった、8000億円?」

日本で大騒ぎしている18歳以下に一律10万円を給付する案の対象は約2000万人で、総額2兆円程度の予算規模となります。それに比べたらなんと“僅かな”金額か。それで4500万人の飢餓をさしあたり救えるのか?

各国が、「18歳以下に一律10万円」みたいなバラマキに使う費用の1割でも拠出すれば、たちどころに・・・というのは言っても仕方のない戯言ですが、世の中の不条理を感じます。

【貧困層を直撃する食料品価格上昇 10年ぶりの高水準】
こうした飢餓の基本的な原因は内戦や紛争によって国内統治が機能していないことでしょうが、気候変動に伴う干ばつなどの災害・不作、更に新型コロナ禍による経済混乱が拍車をかけることにもなっています。

そして、ここ数か月言及されることが多くなったのが食料品価格の高騰という現象。当然ながら貧困層の力量確保を困難にします。

世界で今、景気停滞とインフレが併存する「スタグフレーション」が進む気配をみせていますが、貧困層にとっては、収入は減るなかで食料価格が上昇するということで死活問題となります。

****世界で食料価格高騰、貧困層に大きなしわ寄せ****
ブラジル・サンパウロの郊外にある貧民街で暮らすシングルマザー、セリア・マトスさん(41)は、空腹のまま床に就く日々を送っている。4人の子どもに翌日もコメや豆を十分に確保しておくためだ。足元では肉など食料価格が30%高騰しており、今年の早い段階のようには十分な食料が買えなくなったという。

マトスさんは「本当に屈辱的だ」と話す。

ペルーからフィリピンまで、途上国全体で食料価格の高騰による痛みが広がっている。国連の食糧農業機関(FAO)は10月、世界の食料価格は2011年以来の水準に跳ね上がっていると指摘した。

各国政府や支援団体からは、食料高が飢えや栄養不良を招いており、新型コロナウイルス禍による経済への打撃ですでに苦しんでいる貧困層には、とりわけ深刻な影響が出ていると危惧する声が上がっている。

食料価格の値上がりは特に中南米で顕著で、国連では数千万人が栄養失調に陥っているか、食事を抜かざるを得ない状況にあると推定している。

それほど深刻な物価高に見舞われていないアジア諸国でも、悪天候が作物に影響を与えており、一部で食料価格が上昇している。インドではここ数カ月の豪雨による洪水や地滑りの影響で農作物に被害が出ており、カリフラワーやタマネギといった野菜の価格が高騰している。

中国でも豪雨が野菜の主要産地を襲い、不足が深刻化している。フィリピンなど一部の東南アジア諸国では、野菜やパーム油の値上がりが痛手だ。

エコノミストや政策担当者によると、中でも中南米では、食料価格値上がりによる影響がさらに深刻かつ長引く恐れがあるとみられている。

中南米諸国の中央銀行はインフレ抑制に向けて急激な利上げを迫られており、ブラジル、チリの中銀は最近、いずれも20年ぶりの大幅な利上げを発表した。

ただ、中南米諸国にとって利上げは「劇薬」だ。同地域はコロナ禍により世界で最も深刻な不況に見舞われたほか、英オックスフォード大が運営する「アワ・ワールド・イン・データ」によると、人口あたりの死者数も世界最悪の水準だった。

英調査会社キャピタル・エコノミクスの新興国担当チーフエコノミスト、ウィリアム・ジャクソン氏は「中南米では他のどの地域よりもインフレ高進がひどく、非常に厄介な問題だ」と話す。

コロナに見舞われる数年前から成長が低迷していたブラジルなどの中南米諸国では、ここにきて極めて打撃の大きい「スタグフレーション(不況と物価上昇の併存)」に直面しているという。

アルゼンチンの首都ブエノスアイレス在住の看護師、フリエタ・イルレタさん(27)は、4歳の息子にもはやバランスの取れた食事を出すことができないと話す。「2年近くも医療の最前線で命がけで働いてきたのに、この賃金では食事もままならなくなっている」

人々はかつてペットのえさとして買っていた鶏の臓物を今では家族に食べさせるために購入している。

冒頭のマトスさんは非営利組織「G10ファベーラス」が無償で提供している食事をもらうため、地元のコミュニティーセンターで毎日何時間も列に並んでいる。

だが数週間前には、昼食前にセンターを閉鎖しなければならない事態に陥った。食料の提供が途切れたことで、けんかが発生したためだ。

そのセンターはスーパーや富裕層からの寄付に頼っているが、ブラジルでコロナによる死者が減少するのに伴い、寄付も枯渇してきているという。

G10ファベーラスの責任者、ギルソン・ロドリゲス氏は「人々は分かっていないようだ」と話す。「貧困層にとってはコロナ禍の最中よりも現在の方が苦しい状況に置かれている」【11月8日 WSJ】
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****10月の世界食料価格、3カ月連続で上昇 10年ぶり高水準=FAO****
国連食糧農業機関(FAO)が4日発表した10月の世界食料価格指数は平均133.2ポイントと、9月の129.2(130.0から改定)から上昇し、2011年7月以来10年ぶりの高水準となった。

上昇は3カ月連続。穀物と植物油が価格上昇を主導した。前年比では31.3%上昇。

品目別では穀物価格指数が前月比3.2%上昇。その中でも小麦は5%急伸し、12年11月以来の高水準を付けた。

FAOは小麦について、「カナダ、ロシア、米国をはじめとする主要輸出国の収穫減を背景とする世界市場での供給逼迫が引き続き、価格に上昇圧力を加えた」と分析した。

世界の植物油価格は前月比で9.6%急騰し、過去最高を更新。マレーシアの労働者不足による供給制約でパーム油が一段と値上がりしたことが主因だった。

一方、世界の砂糖価格は1.8%低下し、7カ月ぶりの低下となった。【11月5日 ロイター】
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現在の食料価格の高騰は、品目ごとに様々な要因がありますが、全体的には、新型コロナウイルス禍からの急速な経済再開で中国やアメリカなど世界的に食料需要が急増し、供給が追いついていないという側面があります。

トウモロコシ、小麦、大豆などの穀物について、もう少し詳しく見ると、中国の豚肉生産の拡大に伴う飼料需要の増大、原油価格回復に伴うアメリカのガソリン価格上昇、代替品のトウモロコシ由来のエタノール需要増大など、様々な要因が絡んできます。

日本でも10月から多くの食料品が値上げになりましたが、日本では家計に占める食費の割合はさほど大きくないので、その影響も限定的です。一方で、世界の貧困層の場合、収入の大部分を食費にあてて命を繋いでいるとも言えますので、その価格上昇は甚大な影響をもたらします。

****食料品価格上昇の背景と食料安全保障****
Q1:食料品の値上げが相次いでいますが、何が起きているのでしょうか?

トウモロコシ、小麦、大豆などの穀物などの国際価格(取引価格)が上昇しています。2014年から昨年までは低い水準で安定していましたが、大豆でトン当たり300ドルほどだったのが600ドル程度になるなど、直近の価格はその2倍になっています。

2008年、2013年にも、これらの価格が上昇しましたが、今回はそのときとほぼ同じ水準となっています。

Q2:(穀物などの価格が上がるというと、天候不順などを思い浮かべますが、)どんな理由があるのでしょうか?

世界全体では、生産は若干増える見通しです、需要の増加が関係しています。

2018年から中国でアフリカ豚熱という病気が大流行したため、中国の豚肉生産が大変落ち込みました。昨年から、その生産が回復、リバウンドしてきたため、豚に食べさせるエサ用のトウモロコシや大豆などの需要が増加しています。中国は世界の大豆輸入の6割を占めていますから、国際価格に大きな影響を与えます。

もう一つの要因は、昨年新型コロナの影響で暴落した原油価格の回復です。意外に思われるかもしれませんが、原油価格と穀物価格は関連しています。トウモロコシやサトウキビから作られるエタノールはガソリンの代替品です。ブラジルでは、サトウキビから作られるエタノールで自動車が運転されています。アメリカではガソリンにエタノールを混ぜて車を走らせています。トウモロコシの最大の生産国、アメリカでは、トウモロコシのエタノール向けがエサ用と同程度まで拡大し、この二つがトウモロコシ用途の7割以上を占めるようになっています。

原油価格が上がると代替品であるエタノールの需要も増えるので、トウモロコシの価格も上昇します。そうなると、トウモロコシの代替品の大豆や小麦などの価格も上昇します。こうして穀物や大豆の価格が原油価格にも連動するようになっています。(中略)

Q4:穀物などの価格の値上がり。世界では、どのような影響があるのでしょうか?

国際相場が高騰すると、日本など所得水準の高い先進国に与える影響は限定的ですが、途上国の人たちには大きな影響を与えます。途上国では、貧しく所得のほとんどを食費、しかも穀物に支出している人が多いのです。例えば、所得の70%を食費に支出する途上国の人の場合、穀物の価格が倍になると、全体の支出額に占める割合が大きいため、食料を買えなくなってしまいます。

また、米のように、インドやベトナムなどの途上国が主な輸出国となっている場合は、国際価格が上昇すると輸出制限をする国が出てくるという問題もあります。インドなどでは、国際価格が上がると輸出が行われて国内の供給が減少するので国内の価格も上がってしまい、貧しい(国内の)人が食べられなくなります。これを防ごうとして輸出制限をします。(後略)【6月29日 山下 一仁氏 キャノングローバル戦略研究所】
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2008年の食料品価格上昇のときは世界各地で暴動が頻発しました。
2011年には、中東・北アフリカで大規模な抗議・デモ活動が広がりをみせた「アラブの春」が起きましたが、その一因として小麦価格の高騰などを受けて貧困層の困窮が深刻化した影響が指摘されています。

前述のように、貧困層にとって食料品価格上昇は命をつないでいくうえで、死活的に重要な問題です。賃金が上がらず、失業が増える状下でのインフレとなると、その痛みはなおさらです。

食料品価格上昇は各国で政治体制を揺るがすことにもなりかねませんが、現在の価格はそういうレベルにもなっているようです。
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イラク  介入するイランへの不満 総選挙では親イラン勢力敗退 そういう状況で起きた首相暗殺未遂

2021-11-07 22:42:09 | 中東情勢
(イラク・バグダッドで、道路に立つ治安部隊のメンバーとごみ箱に捨てられたムスタファ・カディミ首相を描いたプラカード(2021年11月6日撮影)【11月7日 AFP】 プラカードの絵では、カディミ首相は刑務所に入れられているようです。)

【総選挙で親イラン勢力敗退 イラク国内で高まる介入するイランへの不満】
先月10日に行われたイラク総選挙では、周知のように、アメリカ・イラン双方の外国勢力排除を掲げるシーア派サドル師が率いる勢力が勝利し、親イラン勢力は議席を減らしました。

****イラク国会選挙、サドル師派が勢力拡大「外国の介入は許さない」****
イラク国営通信は11日、国会選挙(10日実施)の暫定開票結果として、イスラム教シーア派指導者サドル師率いる政党連合が全329議席中73議席(前回54議席)を獲得し、第1勢力の座を維持したと伝えた。米国とイラン双方の介入排除を訴えるサドル師が影響力を拡大し、今後の連立交渉をリードするとみられる。
 
サドル師派に続き、スンニ派のハルブシ国会議長率いる政党連合が38議席、シーア派のマリキ元首相の連合が37議席を獲得した。

一方、親イランのシーア派民兵組織と関係が深い「征服連合」は失速し、第2勢力の座から転落した。

ロイター通信によると、少数民族のクルド人勢力は合計61議席を確保、政治改革を訴える民主派候補は数議席を獲得したという。
 
サドル師は11日の暫定結果発表後に演説し、「イラクは国民のためのものであり、外国の介入は許さない」と訴えた。イラクでは過激派組織「イスラム国」(IS)掃討を目的に駐留する米軍の戦闘任務が年内に終了予定で、全面撤退を求める圧力が強まる可能性もある。【10月12日 毎日】
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長年この地で軍事力を行使してきたアメリカへの反発がイラク国内にあるのは当然のことですが、近年はイラク政治に大きな影響力を持つイランに対する批判も高まっています。2年前の反政府デモが広がった際にはイラン領事館も攻撃の標的となって放火されました。

****試練のイラク (上)「イランも米国も出ていけ」****
(中略)「米国はイラクに侵攻して破壊と占領という犯罪を行い、混乱と内戦をもたらした」。首都バグダッドで会ったシーア派民兵組織「カタイブ・ヒズボラ」の報道官、モハメド・モヒ(59)は米国を強く非難した。イラク戦争が起きた03年に創設された組織は反米の最強硬派に属する。

戦争によるサダム・フセイン独裁政権の崩壊は、シーア派とスンニ派の間でテロが相次ぐ宗派抗争を生んだ。14年からはISがイラクの広い地域を支配。イランから資金や兵器など手厚い援助を受けたシーア派民兵組織は、米軍とともに17年にISを壊滅させた。

IS掃討への貢献が評価され、翌18年のイラク国会総選挙では、モヒの組織を含む親イラン民兵組織の連合体「人民動員隊」(PMF)と連携する「征服連合」が48議席で第2勢力に躍進した。だが、今回は議席の大幅減が見込まれる。

イラクで19年、政治腐敗や経済低迷で大規模な反政府デモが起きた際、影響力浸透を図るイランへの批判も噴出。PMFはデモ隊を狙撃して鎮圧したとされ、支持が急落した。

一方、今回の総選挙ではイランや米国など外国勢力の干渉を拒否するシーア派有力指導者、ムクタダ・サドルの政治組織が議席数を前回選の54から73に増やし、国会最大勢力の座を強固にする見通しだ。

背景には、「イランも米国ももうたくさんだ。どっちも出ていってほしい」(バグダッドの大学職員の41歳男性)と願う国民が増加したことがある。

それも無理はない。PMFによる駐留米軍施設への攻撃が相次いだ昨年1月、米軍はイランの周辺国への対外工作を指揮する革命防衛隊の有力司令官ソレイマニと、その盟友のカタイブ・ヒズボラ元幹部ムハンディスをバグダッドで殺害。

イランはイラクの駐留米軍基地に弾道ミサイルを発射して報復し、イラクが米、イランの軍事衝突の現場になった。(後略)【10月17日 産経】
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【選挙結果を認めず抗議行動を続ける親イラン勢力 反イラン姿勢を示す勝利したサドル師】
親イラン勢力はトランプ前大統領と同じように「選挙は盗まれた」と主張して選挙結果を認めず、抗議行動を展開しています。

一方、今後の組閣・政権運営の中核となるサドル師は、イランと距離を置く姿勢、親イラン民兵組織の排除を目指す姿勢を示しています。

****イラクの「脱イラン」で不穏な情勢****
米国のドナルド・トランプ前大統領は、イランの指導者と同じ穴のムジナだった。こんなジョークが中東各地でささやかれている。
 
十月十日に行われたイラク国民議会(国会)選挙で、予想外の敗北を喫した親イラン派が、昨年の米大統領選を連想させるように、「大規模不正が行われた」と、投票結果無効を訴えているからだ。
 
投票後のイラクでも米国と同様、大きな政治変動が起こりそうだ。第一党の政党連合「サーイルーン」を率いる、イスラム教シーア派指導者ムクタダ・サドル師は、対イラン関係と対米関係の見直しを示唆した。イランは大慌てである。

親イラン派の「抑え込み」を示唆
投票から一週間以上経ても、首都バグダッドなどでは、「選挙は盗まれた」とのデモが、しつこく繰り返されている。
「開票に使われた機械は、事前に仕組まれていた」「手作業での開票をやりなおすべきだ」
 
バグダッド市内に集まった数千人は、トランプ支持派から借りてきたような言いがかりを次々と□にした。トランプ氏と同じく、親イラン派は「自分か負けた選挙は無効」と、駄々つ子のように言い張るばかりだ。
 
イランが失うものは、小さくない。連立交渉は長期化するだろうが、新首相や新しい国民議会議長が親イラン派に渡ることはない。クルド人であるバルハム・サリフ大統領と合わせ、政治権力のトップポストがことごとく、「非イラン」の人物によって占められる可能性が強い。
 
中東担当の大手紙編集委員は、「中東政治では大臣が一人代わると、自分の一族郎党をまるまる引き連れて、その省を乗っ取ってしまう。治安や警察、軍を担当するポストでは、特にその傾向が強い」と言う。
 
新イラクの主役となったサドル師は、「反米」と紹介されるが、これはイラク戦争時に米軍に徹底抗戦を呼びかけたことによる。前出編集委員が「今はだいぶ違うようだ」と言うように、米国やイランに対する姿勢は、イラク戦争時と変化が見られる。(中略)

今の立場は、本人が「イラク人のためのイラク」と言う通り、イラン(または他国)の介入を受けない単純明快な「イラク・ナショナリズム」である。
 
米国に対しては、すでにいくつかのメッセ~ンを送っている。まず対外政策全般について、「イラクの問題に介入しないなら、どの国も歓迎する」と述べたこと。

現在のイラク政治には、イランの関与が強く、米国の影響力は限定的だから、米国のイラク専門家の多くは「米国歓迎」のシグナルと受け取った。
 
また、内政・治安については、国営放送での演説の中で、「武器を持つのは国家に限らなければならない」と明言した。

イラクでは、イランの影響下にある民兵組織(「抵抗運動」などと自称)が、法執行機関のチェックを受けないまま、傍若無人を続けている。
イラク国民にも、米政府にも、この発言は明らかに「民兵の活動規制」の意思表明に聞こえたに違いない。
 
サドル師はまた、「国民はもういいかげんに平和に暮らす時ではないか」と述べ、「占領やテロリズム、民兵や誘拐といったことは、もう無しにしよう」と呼びかけた。
これまた、イラン配下の民兵諸組織に、活動終結を求めたものだ。
 
イランの介人なし、民兵も禁止。親イラン派の「選挙無効」運動加熱を帯びるのも、こんなメッセージが次々と飛び出すからだ。サドル派の議席は、三百二十九議席中の七十三に過ぎないが、在米の中東外交筋は、「スンニ派諸政党、クルド大詰政党が加われば、サドル派主導政権誕生がぐっと現実味を帯びてくる」と言う。

「紫の革命」は広がるか
誰よりもイランが、その危険を感じ始めたようだ。(中略)

イラクと並んでイランの影響が強いレバノンでも、イランにとって嫌な動きが広がっている。極端なエネルギー不足、長時間の停電で、シーア派のイスラム主義組織「ヒズボラ」に対して、国民の不満が高まっているのだ。
 
ヒズボラは何とか不満を和らげようと、九月から禁輸対象のイラン産原油を、シリア経由でレバノンに陸路輸送するという、奥の手を繰り出した。(中略)「イランが助けてくれた」とPRするという、子供だましにもならないような窮余の策である。
 
イランは近年、イラクやシリア、レバノンで影響力を伸ばし、フンーア派の弧」の伸長を誇った。

それがイラク総選挙を契機に、大きく流れが変わりそうな機運である。気の早い中東ウォッチャーからは、「イラク総選挙は、紫の芋命だ」という指摘もあがった。投票の時に、指につけるインクの色にちなんだ命名である。米国が中東関与を減らす中、勢力図の塗り替えが急ピッチで進んでいる。【「選択」 11月号】
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サドル師の「イラク人のためのイラク」は、反米よりは、むしろ反イランの方が強く出そうな状況です。

【ドローン攻撃による首相暗殺未遂 犯行勢力は不明ながら、疑われる親イラン勢力の関与】
イランにとっては由々しき事態・・・ということにもなりますが、そんな政治状況で起きたのが、イラク首相暗殺未遂事件。しかも、ドローンで攻撃と、いかにもイラクらしく派手です。

****イラク首相狙った「暗殺未遂」 住居にドローン攻撃****
イラクの首都バグダッドで7日未明、ムスタファ・カディミ首相の住居がドローンによる攻撃を受けた。カディミ氏にけがはなく、首相府は「暗殺は失敗に終わった」と発表した。
 
カディミ氏もツイッターで無事だとし、国民に「冷静さと自制」を保つよう呼び掛けた。
 
イラクでは先月10日の総選挙以来、政治的緊張が高まっている。
暫定の選挙結果では、親イラン民兵組織の連合体「人民動員隊」を母体とする第2党の「征服連合」が議席を48から14と大幅に減らした。支持者らは選挙に「不正」があったと主張している。
 
5日にはPMFの支持者数百人が、政府の主要機関や議会などがあり厳重な警備が敷かれているグリーンゾーン付近で、選挙結果に抗議するデモを実施。警察と衝突し、治安筋によると負傷したデモ参加者1人が搬送先の病院で死亡した。PMF筋は参加者2人が殺害されたとしている。
 
保健省によると、この衝突で125人が負傷し、その大半が治安部隊のメンバーだった。
 
6日にもグリーンゾーン近くで親イラン団体の支持者ら数百人によるデモが行われ、カディミ氏を「犯罪者」と非難し、肖像画を燃やすなどした。
 
選挙の最終結果は数週間以内に確定する見通し。 【11月7日 AFP】AFPBB News
*********************

犯行声明は出ておらず、どの勢力が行ったものかは不明ですが、多くのメディアは上記【AFP】のように、親イラン勢力の動きを併記する形で、その関与を疑うような論調となっています。

その背景には前出【選択】にあるような政治情勢、【AFP】にあるような選挙結果をめぐる親イラン勢力と治安部隊の衝突があります。

また、親イラン勢力「征服連合」とつながるシーア派民兵組織「人民動員隊(PMF)」はイラン製ドローンを多数所有しているとされています。【11月7日 読売より】

もちろん、真相はわかりません。
選挙結果に不満をもつ政治勢力意外にも、イスラム原理主義勢力ISもテロ活動を行っています。

****イラクで銃撃、26人死傷 ISの犯行か****
イラク中部ディヤラ県で26日、銃撃事件があり住民11人が死亡、15人が負傷した。治安当局によると、イスラム教スンニ派過激組織「イスラム国」(IS)の犯行とみられる。ロイター通信などが伝えた。

イラクのISは2014年に勢力を拡大し、米軍などの攻撃により17年に壊滅状態となった。しかし、ISは今年9月に北部キルクークで警官10人以上を殺害したほか、7月には首都バグダッドで30人以上が死亡した自爆テロで犯行声明を出すなど勢力回復の兆しがみられる。

国連はイラクと隣国のシリアで約1万人のIS残存勢力が活動していると推測している。【10月27日 産経】
*******************

ただ、IS犯行なら「戦果」を誇るような犯行声明が出されるでしょう・・・・犯行声明が出ないときは国内政治勢力の犯行が疑われます。

もし新イラン勢力犯行となれば、イランの関与も問題になります。
イランが首相暗殺といった後先考えない犯行に及ぶとは考えにくいですが・・・・。

いずれにしても、このまま親イラン勢力への疑惑が強まれば、今後の政権づくり・政権運営において、「反イラン」の流れが更に強まることが予測されます。
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ミャンマー  秘密裏に進むスー・チー氏裁判 西部チン州攻撃でロヒンギャ虐殺の再現の恐れも

2021-11-06 23:23:12 | ミャンマー
(【10月31日 共同】 160戸が焼失したとされる西部チン州タンタラン郡区)

【経済悪化、通貨価値急落 国軍司令官、国民に燃料油や食用油の節約を訴える】
私がミャンマーを始めて旅行したのが2002年、約20年前ですが、首都ヤンゴンに着いて2日目の夜に、ローカルな店で一人夕食を。

メニュー(確か一応英語記載がありました)を見てもよくわからず、「入った以上、何か頼まないと・・・」と迷いに迷ったあげく、魚カレーみたいな説明があった料理を頼みました。
そして出てきた料理は油の海に魚の切り身が浮かんだようなもの。その油に圧倒され思わず唸ってしまいました。

ミャンマー料理は油を多く使うという話は聞いていましたが、これほどとは・・・小さなカルチャーショックでした。
その後、何回かミャンマーへは行きましたが、ミャンマー料理と聞いて思い出すのはこの油の海です。

****「私も好きだ」けど、食用油は節約して ミャンマー国軍トップが演説****
クーデターで権力を握ったミャンマー国軍のミンアウンフライン最高司令官が1日夜にテレビ演説し、国民に燃料油や食用油の節約を訴えた。普段の演説で繰り返す民主派勢力への非難は影を潜め、消費を抑えるよう強調した。

クーデター後に経済は悪化しており、立て直しのために燃料油など輸入を減らす必要に迫られているようだ。
 
ミンアウンフライン氏は1日、軍服ではなく白の民俗衣装で登場した。冒頭で新型コロナウイルス対策の成果を強調した後、「できるだけ燃料油の節約をお願いしたい」と切り出した。燃料油と食用油の輸入が年間約30億ドル(約3400億円)に達するとし、「バスや鉄道での旅行を奨励したい」と公共交通機関の利用を求めた。
 
節約を求める対象は国民の食卓にも及んだ。発酵させた茶葉のサラダ「ラペットゥ」など、油をたっぷり使うミャンマー料理を複数挙げ、「私自身も好きだ」と述べた上で、「食用油の消費をできるだけ少なくすれば輸入を減らせる」と訴えた。
 
演説で、国軍に反発する市民や民主派を「テロリスト」などと糾弾することはなかった。終始穏やかな口調で、演説終盤には米を多く食べるミャンマーの「食生活の変化を促したい」と言及。「米を少し減らす必要がある。必要に応じて肉、魚、野菜を食べると健康につながる」と呼びかけ、食事を変えれば公衆衛生も向上するとした。
 
世界銀行は7月、ミャンマーの2020年10月~21年9月の国内総生産(GDP)は前年から18%減り、100万人が失業すると見込んだ。クーデター後の混乱で通貨チャットが急落し物価が高騰。演説は、景気の悪化に苦しむ国民に理解を求める目的もあったとみられるが、国民の反応は冷ややかだ。
 
ヤンゴンで雑貨屋を営む女性(37)は「演説は市民の厳しい生活に言及しておらず、解決策も示していない」と一蹴した。SNSには「その日の食事に困っている人も多いのに、どうやって肉や魚を食べろというのか」などのコメントも相次いだ。【11月2日 朝日】
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健康のために油は控えた方がいいとは思いますが、もちろんミンアウンフライン最高司令官の狙いは国民健康ではなく、財政危機への対処でしょう。

もともとミャンマーの経済水準は東南アジア諸国の中でも底辺に近いものでしたが、クーデター後の経済混乱で、そこから更に18%減少するということですから、市民生活の苦境は想像できます。まさに「その日の食事に困っている人も多いのに、どうやって肉や魚を食べろというのか」といった状況でしょう。

【外部への情報を遮断した状態で進められるスー・チー氏の裁判】
冒頭に書いた最初のミャンマー観光が2002年4月27日から5月7日でしたが、今確認したところ、当時自宅軟禁状態にあったスー・チー氏がいったん解放されたのが5月6日だったようです。

以来、スー・チー氏は自宅軟禁を繰り返し、ついに政権の座にもつきましたが、今また国軍によって拘束されているのは周知のところ。

****スー・チーさん軍政下で初めて証言台に、国際社会は手出しできず****
謂れのない複数の容疑をかけられ、軍政の影響下にあるミャンマーの特別法廷に立たされているアウン・サン・スー・チーさんが、10月26日に初めて証言台で発言した。
 
当局はスー・チーさんの弁護団に公判の内容に関してメディアなどへの対外発信を禁止していることから、スー・チーさんの証言内容についても一切伝えられていなかったが、27日になって一部メディアが関係者から匿名で得た情報として「スー・チーさんは容疑に関して無罪を主張した」と初めてその発言内容を伝えた。

箝口令が出される中で漏れてきた証言内容
米政府系ラジオ局「ラジオ・フリー・アジア(RFA)」は27日、前日の26日に特別法廷で「国民を扇動して社会不安を煽った」という刑法505条違反の容疑に問われているスー・チーさんが初めて証言台に立ったことを伝え、スー・チーさんは「無罪を主張した」と伝えた。
 
それよりも早くスー・チーさんが初めて証言したことを伝えたAFP通信などは「証言内容は不明」とし、その理由として弁護団に箝口令が出されているためと説明していた。RFAの報道はそこからさらに一歩踏み込んだ内容だった。
 
スー・チーさんは、各国大使館に書簡を送り「軍事政権を支持しないように要請した」ことから扇動罪に問われているウィン・ミン大統領とともに、これまでの公判で弁護団が「無罪」を主張していたが、スー・チーさん自身が証言台で発言したのは今回が初めてだ。そしてその証言内容も、弁護団のこれまでの主張に沿ったものとなったことがRFAの報道で確認されたことになる。

違法な箝口令の背景
スー・チーさんの弁護に当たる弁護団は、キン・マウン・ゾー弁護士、ミン・ミン・ソー弁護士、キー・ウィン弁護士、サン・マルラ・ニョン弁護士らで構成されている。この弁護団を率いるキン・マウン・ゾー弁護士は、10月13日に地元行政当局から、刑法144条の「公共の安全を脅かす行為」に当たる可能性があるとしてメディアに公判の内容を「口外することを禁止する」との措置を言い渡されているほか、外国メディアとのオンラインでのインタビューも禁止されたと明らかにしていた。
 
またニョン弁護士も8月にヤンゴンの地元行政事務所に呼び出されて「国家機密法違反の容疑がかかる」として、「いかなる対外組織とも接触しない」との誓約書に署名を強要されたことを明らかにしている。
 
弁護団はこうした措置は「弁護士は公判の模様を対外発信する必要が認められており、箝口令は違法であり公平性を欠く」として裁判所に抗議するとともに、箝口令の撤廃を求めている。だが、今も事態は改善されていない。
 
軍政のゾー・ミン・トゥン国軍報道官は「(スー・チーさんの)弁護団の発言や声明は大げさに強調されたり、誤解に基づく内容のものが多く含まれたりして国の安定に寄与しない」としたうえで「我々には地裁レベルでも公判の内容を必要に応じて対外発信するチームがありそこが適切に対応することになる」と述べてスー・チーさん弁護団に対する措置を正当化している。

軍政が箝口令による情報統制に踏み切った背景には、2月1日のクーデター当日にウィン・ミン大統領が拘束される際に「体調不良を理由に退陣を表明するよう脅迫されたがこれを拒否したために拘束された」というなまなましい発言内容が12日に弁護団からメディアに明らかにされたことが影響していると見られている。
 
そうでなくてもこれまで折に触れてスー・チーさんの様子や健康状態、短いコメントなどが弁護団から明らかにされ、それがメディアやSNSから国民に伝わり、反軍政運動に「勇気や共感、弾みをつけている」ことがあり、これに苦々しい思いを軍政が抱いていたことも箝口令を敷くに至った一因とされている。

軍政が企むスー・チーさんの影響力排除
スー・チーさんには今回無罪を主張した「扇動罪」以外にも不法に通信機器を所持していた「通信法違反」、無線機を違法に海外から輸入した「輸出入法違反」、十分なコロナ感染拡大防止対策を怠ったとする「自然災害管理法違反」、支援者から現金や金塊を受け取ったという「汚職防止法違反」など複数の容疑がかけられており、仮にそれぞれの裁判で有罪が確定すれば刑期の合計は最高で禁固75年になると言われている。
 
軍政は民主政権の指導者で民主化のシンボルとしても国民の人気が根強いスー・チーさんを「裁判の被告人」として扱い、最終的に「長期の禁固刑」とすることで社会的、政治的な「影響力を奪い去ろう」と画策しているのは間違いない。

公判日程変更も却下
(中略)軍政が立法、行政、司法の3権を実質的に支配しているミャンマーの現状では裁判所、裁判官、検察官に「中立性や公平性」を求めるのは実質的に困難とされ、スー・チーさんの裁判でも今後の展開に関わらず、禁固刑の有罪判決が予想される状況となっている。

スー・チーさん側が証人申請を一切しない理由
(中略)こうした裁判の進め方についてスー・チーさんの弁護団は公判では弁護側の証人を一切申請しない方針を固めているという。

これはスー・チーさん自身の強い意向とされ、その理由として①裁判の中立、公正が期待できないこと、②証人によるスー・チーさんに有利となる証言が出てもその内容に関わらず有罪判決となるシナリオができている可能性が高いこと、③スー・チーさんに有利な証言を法廷でした証人へその後に治安当局による監視や脅迫、暴行、収監などの危険が及ぶ可能性が否定できないことなどが挙げられているという。(中略)

10月26日から28日にかけてオンラインで開催された東南アジア諸国連合(ASEAN)の首脳会議ではミャンマーが欠席する中、ASEAN特使によるスー・チーさんを含めた「全ての関係者との面会、話し合い」の実現を求める意見が続出し、採択された「議長声明」にもその旨が盛り込まれた。
 
しかし軍政は「裁判の公判中である被告との面会を認める国などはない。ASEAN特使のミャンマー訪問は歓迎するが、法の規定もありできないことはできない」との強い姿勢を崩しておらず、ASEANによるミャンマー問題への仲介・調停工作は膠着状態に陥っているのが現状だ。
 
そうした中で着々と進むスー・チーさんの公判に対して国際社会、地域の連合体であるASEAN、ASEAN特使そしてスー・チーさんの弁護団ですら「実質何もできない」状態が続いているのだ。【11月3日 大塚 智彦氏 JBpress】
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【ASEAN 国軍への圧力継続】
こうしたスー・チー氏との面会を拒否し、反政府勢力との妥協も拒んでいる国軍側の姿勢に、特使派遣を求めるASEANは圧力を継続することを表明しています。

****ASEAN次期議長国カンボジア、ミャンマー軍への圧力継続表明****
カンボジアのソコン外相は28日、2022年に東南アジア諸国連合(ASEAN)の議長国に就任した際には、ミャンマーの軍事政権に対して反対勢力との対話を促すとの方針を表明した。ロイターに述べた。

ソコン外相は、ミャンマーは「内戦の危機に瀕している」と警告した上で、ASEAN議長国就任時に新たなミャンマー特使を任命すると述べた。現在のミャンマー特使は、ASEANの現議長国であるブルネイが指名したエルワン・ユソフ氏が務めている。

ソコン外相はロイターに「われわれは皆、加盟国の内政に干渉しないという原則を尊重しているが、ミャンマーの状況は引き続き深刻な懸念の対象となっている」と強調。「地域全体、ASEANの信頼性、そしてミャンマーの人々にマイナスの影響を及ぼしている」とした。

ASEANは今週、首脳会議など一連の会合を開催したが、2月のクーデターを主導したミャンマー国軍トップのミン・アウン・フライン総司令官の参加を認めなかった。

ソコン外相は、総司令官の排除を支持するとしつつも、排除継続について話すのは「現時点では」不適切とも指摘。「状況が変わるかもしれない。ミャンマー次第だ」などと語った。【10月29日 ロイター】
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これまで同様に圧力継続ということですが、周知のようにカンボジアはASEAN内にあっては中国の代理人的立場で、民主化や人権を重視する国とは一線を画しています。そのカンボジアが議長国ということで、国軍に対する融和的な姿勢が出てくるのでは・・・・とも、個人的には危惧しています。

もっとも、“(ミャンマー国軍が)首脳会議を欠席して抗議の意を示した。これに対し、「内政不干渉」「全会一致」を原則とするASEANとしては「(加盟国10カ国のうち)マイナス1の状況にあるがこれはASEANのせいではなくミャンマーのせいだ」(ASEAN首脳会議に出席したカンボジアのフン・セン首相)とミャンマー側を批判する会議となった。”【11月5日 大塚 智彦氏 JBpress】とのことですので、カンボジアのフン・セン首相も国軍対応を快く思っていないようです。

【西部チン州への国軍の攻撃 ロヒンギャ虐殺の再現の恐れも】
「内戦の危機に瀕している」というミャンマーでは、西部チン州への国軍の攻撃が報じられています。

****ミャンマー西部、数十軒の建物が炎上 国軍が反政権派を非難****
ミャンマーの軍事政権は30日、子どもの権利保護団体「セーブ・ザ・チルドレン」の事務所がある西部チン州のタントランで民家などを破壊したとして、反政権派の戦闘員らを非難した。タントラン周辺では国軍と反政権派の衝突が拡大している。
 
現地メディアと目撃者によれば、タントランでは29日、国軍が現地の防衛部隊と衝突後、砲撃を行った。
 
住民によると、人口7500人余りのタントランの街中で火の手が上がり、セーブ・ザ・チルドレンの事務所を含む数十の民家や建物が燃えた。
 
セーブ・ザ・チルドレンは29日に声明を発表し、砲撃発生時はほとんど人けがなく、これまでの衝突を受けてスタッフはすでに避難していたと説明した。
 
また、現在もタントランにいるとみている20人の子どもの安否を懸念しているとし、今回の衝突は「ミャンマーで危機が深刻化している」兆候だとの見解を示した。 【10月31日 AFP】AFPBB News
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****ミャンマー西部チン州で軍が攻勢 衝突激化、民家100軒超が炎上****
(中略)チン州では5月にも南部のミンダッ地方で軍による軍事作戦が行われ、このときは大規模な砲撃を市街地に加えたうえ、居住地区に通じる水道を遮断して市民生活に打撃を与える手法がとられた。

また、戦闘で拘束した住民に目隠しをした上でロープでつないで並ばせ、戦闘の最前線に配置したり、進撃する兵士らの前方を歩かせて「弾除け」とする「人間の盾」という卑劣な手段も報告されている。

このため今回軍による攻勢が報告されたタントラン郡区でも今後こうした軍による作戦が拡大するに従って、国連が指摘したような大規模な人権侵害が起きる懸念も高まっている。【10月31日 大塚智彦氏 Newsweek】
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仏教国ミャンマーにあって、チン州(ロヒンギャ虐殺の起きたラカイン州の北隣)はキリスト教徒が9割を占めており、ラカイン州のイスラム教徒少数民族ロヒンギャへの「民族浄化」の再現も懸念されます。

****ミャンマー軍、キリスト教徒が多いチン州で砲撃・放火の傍若無人****
ミャンマー情勢が風雲急を告げている。インド国境に位置する西部チン州で10月29日から軍が軍事作戦を開始、武装市民組織「国民防衛隊(PDF)」や少数民族武装勢力に対して銃撃や砲撃を加え、さらに兵士による民家放火などが伝えられ、米政府がミャンマー国軍を非難する事態となっている。(中略)

教会炎上、孤児院が取り残され孤立
反軍政のメディア「ミャンマー・ナウ」や「イラワディ」、「ミッズィマ」、「キッティッ・メディア」などが相次いで伝えたところによると、10月29日午前10時ごろ、無人状態となっていた西部チン州タンタラン郡区で商店に侵入して略奪をしようとした兵士に対して、地元少数民族武装勢力である「チンランド防衛隊(CDF)」が発砲して殺害、これに軍側が大規模な報復を始めた。
 
その中で軍は銃撃に加えて砲撃を開始、同時に民家への放火を始めたという。同日午後8時頃にはタンタラン郡区の複数の場所から火炎が上がっていることが確認され、その数は100戸以上、一部報道では160戸以上とされている。
 
大半の民家では住民がすでに郊外に避難していたものの、チン人権機関(CHRO)は町の中にある孤児院には子供約20人と教師が取り残された状態で安否が気遣われていると指摘している。
 
メディアによるとタンタラン郡区にあるキリスト教プロテスタントの「長老教会」の複数の教会も砲撃を受けて炎上、焼け落ちたという。全人口の9割が仏教徒というミャンマーにおいて、チン州は逆に人口の9割がキリスト教徒という地域。そうした背景もあり、長年、軍から迫害を受けている。

NGO事務所放火、インドへの避難も
(中略)軍がチン州に増派されているとの情報が流れた10月22日以降、タンタラン郡区の住民約1万人の大半は郊外への避難を始めていたため、29日の軍による攻勢で住民の犠牲者はまだ報告されていない。
 
ただし、避難した住民の中には、国境を越えて隣国インドのミゾラム州に逃れるケースも増えているという。
 
タンタラン地区の放火や破壊行為についてゾー・ミン・トゥン国軍報道官は地元メディアに対して、「放火したのは軍ではなく武装市民(PDF)であり、我々は放火や破壊を止めようとしたがPDFが攻撃してきて妨害したためにできなかった」として一連の報道を否定、武装市民らを批判している。(後略)【11月5日 大塚 智彦氏 JBpress】
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放火や破壊行為は反政府武装勢力によるものだ・・・という国軍主張は、ラカイン州ロヒンギャ虐殺でも繰り返されているものです。

ミンアウンフライン最高司令官も「肉、魚、野菜を食べると健康につながる」なんてことではなく、治安も経済も悪化するばかりの今の混乱を収束させるため、クーデターの失敗を認め、すみやかに民政に復帰してもらいたいところですが・・・・。

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フランス  マクロン大統領はメルケル後のEUを牽引できるか? 台頭する“フランスのトランプ”

2021-11-05 22:57:43 | 欧州情勢
(「フランスのトランプ」とも評されるフランスの政治評論家エリック・ゼムール氏【10月22日 時事】)

【AUKUS問題で、欧州諸国からフランスを支持する声がすぐには出なかった】
これまでドイツのみならず欧州政治を牽引してきた引退するメルケル首相をフランス・マクロン大統領が夕食会に招いて感謝の言葉を贈ったとのこと。

****「若輩者への寛容さに感謝」マクロン氏、政界引退のメルケル氏に****
フランスのマクロン大統領は3日、新政権の発足に伴って政界を引退するドイツのメルケル首相を仏東部ボーヌでの夕食会に招いた。

外国首脳らを前に強気の姿勢を誇示する場面も目立つマクロン氏。だがこの日は、隣国ドイツを16年にわたって率いたメルケル氏に「血の気の多い若輩者の大統領を受け入れてくれた。私への忍耐とその寛容さに感謝します」と謙虚に述べた。
 
メルケル氏は2005年から首相を務め、この間、シラク氏、サルコジ氏、オランド氏、マクロン氏の歴代フランス大統領と良好な関係を保ってきた。マクロン氏は17年、フランス史上最も若い39歳で大統領に就任した。【11月4日 毎日】
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「私への忍耐とその寛容さに感謝します」と謙虚に述べた・・・・とのことですが、マクロン大統領の思いは「これからは自分の時代だ・・・」といったところかも。

ただ、“ロシアからの脅威に向けて欧州が独自の防衛力を整備し、米国への依存を減らすべきだ”【下記記事】と主張する“強気の姿勢を誇示する場面も目立つマクロン氏”【上記記事】で欧州政治がまとまるのかは疑問を示す向きも。

****「メルケル後」のEU、仏大統領が主導か 独走に不安も****
ドイツの首相として16年にわたって欧州連合(EU)のかじ取り役を担ってきたアンゲラ・メルケル氏が政界を去って行く。これによってフランスのマクロン大統領がEUで指導力を発揮し、「より独立した欧州」という自ら掲げる戦略を推進するチャンスが巡ってきた。

ただEU内のどの立場の外交官も、それほど急速な変化は起きないと話す。

「欧州の女王」と呼ばれたメルケル氏の下で策定された欧州戦略は、時折、構想の「明快さ」が欠けていた。この点、マクロン氏が明快な物言いをエネルギッシュに続け、EUもマクロン氏特有の言い回しをしばしば取り入れてきたのは事実だ。

それでも外交関係者は、第2次世界大戦後の欧州の政治体制が合意に基づき成立したという歴史を指摘。マクロン氏が直接的で相手をいらつかせるようなスタイルばかりか、欧州戦略の策定で「独走」したがる点から、同氏がメルケル氏の役回りを果たすのはなかなか難しいだろうとの見方が出ている。

EU創設時からのメンバー国の駐フランス外交官は「マクロン氏が1人で欧州を引っ張っていける状況にはない。彼は慎重になる必要があると自覚しなければならず、彼はフランスの政策に早速に応援団が集まると期待してはならない。メルケル氏は特別な立ち位置を持っており、全員の話に耳を傾け、全員の意見を尊重していた」と述べた。

マクロン氏を巡っては、オーストラリアが先頃フランスの潜水艦導入契約を破棄した際、欧州諸国からフランスを支持する声がすぐには出なかったとのエピソードもある。

こうした「沈黙」からは、ロシアからの脅威に向けて欧州が独自の防衛力を整備し、米国への依存を減らすべきだとのマクロン氏の構想に対し、EU内部や加盟各国に根深い反対論があることがうかがえる。

マクロン氏自身は過去のフランス大統領に比べれば、東欧諸国により親密に接しようとしている。にもかかわらず、米国が加わる北大西洋条約機構(NATO)を同氏が「脳死状態」にあると切り捨て、ロシアとの対話促進の必要を提唱した際には、ロシアに対抗する信頼に足る防衛力を提供してくれるのは米国だけだと考えるバルト諸国や黒海沿岸諸国は、まさに衝撃に打ちのめされた。

フランス大統領府は、こうした批判についてのコメント要請に応じていない。もっとも複数のフランス政府高官は非公式の場では、ロシアのプーチン大統領との関係も強化するというマクロン氏の戦略がほとんど成果をもたらしていないと認めている。

東欧諸国のある駐仏大使は「彼の対ロシア政策がどういう結果を招くかマクロン氏に言えるなら言いたい。マクロン氏がロシアとの接触を必要としているのは理解する。メルケル氏もそうだった。しかし彼の場合はやり方が問題だ」と一蹴した。(後略)【10月2日 ロイター】
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【ときに強引・傲慢なマクロン大統領の強気姿勢】
上記記事のある“オーストラリアが先頃フランスの潜水艦導入契約を破棄した”件では、駐豪大使を召還するなど激しく米豪を非難していましたが、一応、バイデン大統領がフランスへの配慮を欠いていたととりなす形に。

****米仏大統領会談 バイデン氏、潜水艦契約問題で「不器用な対応をしてしまった」****
ヴァチカン市国を訪問中のジョー・バイデン米大統領は29日、現地のフランス大使館でエマニュエル・マクロン仏大統領と会談し、オーストラリアとフランス間の潜水艦建造契約の破棄につながった米英豪の安全保障枠組み「AUKUS(オーカス)」について、「不器用な対応をしてしまった」とマクロン氏に述べた。

(中略)バイデン氏はマクロン氏との会談で、「自分たちの対応は不器用だった。(潜水艦建造契約は)実行されないと、フランスはもうとっくの昔に知らされていると思っていた。神かけて本当だ」と述べ、フランスへの配慮に欠けていたことを認めた。

マクロン氏はこれに対して、「将来を見据える」ことが大事だと答えた。【10月30日 ロイター】
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これで矛を収めたと思われたマクロン大統領ですが、未だ怒りは収まらないようで・・・

****豪首相が「うそをついた」、潜水艦計画撤回に仏大統領が再び不満****
マクロン仏大統領は、オーストラリアが9月にフランスと進めていた潜水艦開発計画を破棄したことについて、モリソン豪首相にうそをつかれたと述べ、両国間の信頼回復に一層の取り組みが必要との認識を示唆した。

(中略)マクロン氏は豪メディアの記者団に対し、豪州には大いに敬意を抱いていると強調し、敬意を抱いている相手には誠実で一貫性のある行動が必要だと説明。モリソン首相にうそをつかれたと思うかとの質問には「そう思うのではなく、そうだと知っている」と回答した。

モリソン氏はその後に開かれた記者会見で、うそはついておらず、マクロン氏には、従来型潜水艦ではもはや豪州のニーズは満たされないと過去に説明していたと語った。関係修復のプロセスは始まったとした。【11月1日 ロイター】
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フランス・マクロン大統領の矛先は漁業問題で揉めるイギリス・ジョンソン首相にも。

****フランスが英漁船を拿捕、漁業権巡る対立が一段と激化****
フランスと、欧州連合(EU)を離脱した英国との漁業権を巡る対立が一段と激しくなっている。28日にはフランス領海でホタテ漁をしていた英国漁船2隻のうち1隻がフランスの巡視船に拿捕され、ルアーブル港に入港させられた。もう1隻は口頭で警告を受けた。

前日にはフランス政府が、問題解決に向けて十分な進展が見られない場合、11月2日に発動する可能性のある制裁措置のリストも公表し、英政府が遺憾の意を示していた。

さらにフランス政府は英漁船に対する強硬措置も打ち出し、漁業権問題で一歩も引かない決意を見せつけた形。ジラルダン海洋相は「これは戦争ではないが、ある種の闘いだ」と地元ラジオに語った。

フランス側は、英国領海内におけるフランス漁船の全面的な操業が保証されているにもかかわらず、英政府が承認しないと主張。英国は一定条件を満たした漁船には免許を交付していると反論している。

こうした中でフランスのボーヌ欧州問題担当相は「われわれは強い口調で話す必要がある。そうでないと英政府が事態を理解できないようだ」と述べた。

一方、英政府は自国漁船の拿捕に強く反発。トラス外相は「連合王国とチャネル諸島への残念かつ不当な脅迫」について、29日に駐英フランス大使を外務省に呼び、説明を求める考えだ。【10月29日 ロイター】
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こちらは、G20サミットでの両首脳の会談で収まるのか・・・とも思われましたが、“逆に亀裂深刻化”とも。

****英仏、漁業権巡り対立 関係修復目指すも、逆に亀裂深刻化****
フランスのマクロン大統領と英国のジョンソン首相は10月31日、主要20カ国・地域首脳会議(G20サミット)の開催地ローマで会談した。

両国は、英水域での仏漁船の漁業権を巡って対立しており、会談で関係修復を目指した。しかし、会談内容に関する両政府関係者の発言が大きく食い違うなど、亀裂は逆に深まる結果となった。
 
フランスは、EU離脱の合意に反し、英国が仏漁船に対する英水域での操業許可を十分に発行していないと反発していた。仏海洋省は同28日、英仏海峡の仏領海で操業していた英国漁船1隻を違法操業などの疑いで拿捕(だほ)。さらに、英国の対応が進展しない場合、11月2日から通関検査を厳格化するなど対抗措置を強めると警告していた。
 
仏政府高官は首脳会談を受けて、両首脳が事態の沈静化に向け近く再協議すると発表。だが、ジョンソン氏の広報官はこうした合意を否定し「まずフランスが(対抗措置の取り下げに)動くべきだ」と指摘した。さらに、G20サミット閉幕後の記者会見ではマクロン氏が「ボールは英国の側にある」と述べた。
 
会談では、仏が排除された米英豪の安全保障枠組み「AUKUS(オーカス)」に関する問題は話し合っていないという。フランスは、英国が議長を務める国連気候変動枠組み条約第26回締約国会議(COP26)では、合意に向けて協力する姿勢を示している。【11月1日 毎日】
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上記のAUKUAと漁業問題で見えるマクロン大統領の政治姿勢は、良く言えば“ブレない強いリーダーシップ”でしょうが、悪く言えば“妥協しない傲慢な姿勢”というふうにも。あきらかにメルケル首相のような“まとめ役”ではありません。

【穏健路線をとるルペン氏の支持層を侵食する極右ゼムール氏 トランプ前大統領と類似する政治状況】
内政でも、就任以来、労働市場改革、年金問題、黄色いベスト運動、コロナワクチン接種義務化などでも、同様の強気姿勢で、そうした同氏を傲慢と批判する者も少なくありません。

ただ、今のところ来年4月の次期大統領選挙に関しては、おそらく決選投票に進むことが予想されます。問題は、対抗馬が誰にになるのかですが、これまでは、極右政党「国民連合(RN)」を率いるルペン氏と思われていましたが、ここにきて情勢が変わったようです。

****極右ゼムール氏2位=ルペン氏抜く、決選投票視野―仏大統領選調査****
フランス紙ルモンドが22日に報じた来年の大統領選に関する世論調査結果によると、無所属で極右的主張が話題の政治評論家、エリック・ゼムール氏(63)が16%の支持率を獲得し、24%のマクロン大統領に次ぐ2位につけた。
 
大統領選では初回投票で過半数を獲得した候補者がいない場合、上位2人が決選投票に臨む。これまでは、極右政党「国民連合(RN)」を率いるルペン氏がマクロン氏と共に決選投票に進むとみられていた。今回ルペン氏の支持率は15%だった。【10月22日 時事】 
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極右とされるルペン氏は最近穏健な姿勢に転じて支持拡大を図ってきましたが、そのことが支持者離れをおこしているようにも思えます。

“ゼムール氏と主張が似通っていたルペン氏は「責任政党」を目指して極論を封じており、その間隙(かんげき)を突かれた格好だ。ルペン氏は22日、「挑発的な発言は一時関心を集めるかもしれないが、私の考えは変わらない。私が提示するのは真面目で適用可能な政策で、それこそがフランス人が期待していることだ」としてゼムール氏を牽制(けんせい)した。”【10月25日 朝日】

一方の極右ゼムール氏は・・・

****自由・平等・博愛の国フランスで、移民をレイプ犯と呼ぶ極右が大躍進****
<右派のエリック・ゼムールが、移民排斥を唱えて急浮上。決選投票に進むシナリオも現実味を帯びてきた>

彼が本当に大統領になったりしたら「大惨事だ」と、フランスのある政界通は言い放った。彼とは、右派の政治評論家エリック・ゼムール(63)。来年4月に行われるフランス大統領選の有力候補として、急速に支持を広げている。

ゼムールは、パリ郊外のアルジェリア系ユダヤ人家庭に生まれた。移民とイスラム教の流入によってフランスが壊滅すると主張する著書が、ベストセラーになってもいる。

ゼムールはニュース専門局CNewsで人気のトーク番組を持ち、メディアでも派手に取り上げられている。CNewsは、右派系として知られる米FOXニュースのフランス版とも言える局。今年5月には、フランスのニュース専門局で初めて視聴率トップになった。

彼は「大置換」と称する陰謀説を公然と主張する。ヨーロッパ出身ではない非白人の移民が、白人に取って代わりつつあるというものだ。

昨年は番組の中で、移民の子供を「泥棒」「人殺し」「レイプ犯」と決め付けるような発言をした。同性愛者への嫌悪を口にして批判されたこともある。(中略)

トランプと様々な共通点が
そのFOXに愛されたドナルド・トランプ前米大統領と類似点があることから、ゼムールは「フランス版トランプ」とも呼ばれている。

「トランプとの共通点は多い。テレビで知名度を高めたことや、女性に対する態度などだ」と、調査機関カンター・パブリックの国際世論調査部門を率いるエマニュエル・リビエールは言う。

「年配の保守層や富裕層と、いら立ちと不安を抱える白人労働者層の両方に受けがいいという類似点もある。フランスではこの15年で自民族中心主義の感情はおおむね衰えたが、ゼムールはあえて過激な主張を打ち出して支持を集めている」(中略)

支持率は現職マクロンにも肉薄
(中略)「ゼムールはルペンの支持層に食い込んでいる」と、リビエールは分析する。「彼は中道右派と右派の票を獲得できるだろう。国民戦線とルペンの名に反感を抱く年配の保守派は、ゼムールのほうに好印象を持っている」

前回の大統領選では、選挙を経て公職に就いたことのないマクロンが勝利した(アメリカのトランプもそうだった)。次の大統領選でゼムールが勝てば、フランスに本格的な「アウトサイダーの時代」が訪れるのではないかと危惧する声もある。

しかしリビエールによれば、ゼムールが大統領になる道のりはまだまだ険しい。
カンター・パブリックが1976年からフィガロ紙(ゼムールは同紙の元コラムニスト)のために行っている月間調査を見ると、いま政治的に重要な役割を果たしてほしい人物は誰かという設問で、ゼムールは19%の支持しか得られず、全体で12位だった。「10月にこの程度の人気で、翌年大統領になった人物はいない」と、リビエールは言う。(中略)

16年アメリカ大統領選との類似
ゼムールは、「既成の枠組みに立ち向かうイメージのある新顔」を好むメディアの習性から恩恵を受けていると、コルキュフは指摘する。「彼は10年ほど前から極右運動の重要人物の1人だった」ため、選挙を経て公職に就いた経験はないが「立候補しても全くおかしくない」とする。

さらにコルキュフは、今のフランスでは「既成政治家への不信と不満が一触即発の状態にまで高まっている。ゼムールの超保守的なスタンスが国民にアピールする可能性はある」と分析する。

「左派は危機に瀕している。彼らは長いこと自分たちが知的な面で上回っていると考え、傲慢になっていた。そして今、ゼムールに勝利の可能性があることを信じたがらない。16年にトランプが勝つ前のアメリカの左派と全く同じだ」

世論調査での支持率の高さから、ゼムールのメディア露出はさらに増えると、コルキュフは予測する。それによって「彼が大統領選に出馬するという見通しに信憑性を与え、つい最近まであり得ないと思われていたことが現実になる」という「雪だるま効果」を生み出すとみている。

その効果の行き着く先は、22年4月24日に行われる決選投票でのゼムールの勝利だ。

(中略)フランソワ・オランド前大統領の顧問だったガスパール・ガンツァーは、右派の弱点に乗じて支持を集めるゼムールの能力を認める。「マクロンはいい政治家だが、彼の政党の人々は自信過剰になっている」と、彼は言う。

「ゼムールは問題をやさしくかみ砕いて分析する。どうしたらメディアに注目してもらえるかを知り尽くしている」と、ガンツァーは付け加えた。「確かに大惨事かもしれないが、彼の勝利はあり得ないことではない」【11月3日 Newsweek】
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また、○○のトランプが席巻するのでしょうか・・・・アメリカでは本家トランプが復活を狙っており、バイデン・民主党は支持率低下に苦しんでいます。
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気候変動  COP26で強まる「脱石炭」「脱化石燃料」の流れ ただし、厳しい現状・将来予測も

2021-11-04 21:39:57 | 環境
(【11月4日 産経】)

【「何も行動しないことへの代償(コスト)は、予防策を行うコストよりもはるかに大きい」】
気候変動に対する取り組みが人類全体にとって差し迫った危機となっているという認識はほぼ定着してきています。

****COP26、首脳会合始まる 「時間がなくなっている」とボンド映画引き合いに****
国連気候変動枠組条約第26回締約国会議(COP26)の首脳会合が1日、英スコットランド・グラスゴーで始まった。温室効果ガス削減の具体策などについて、約120カ国の首脳が2日間にわたり協議する。

COP26議長国イギリスのボリス・ジョンソン首相は、開会のセレモニーで各国首脳や代表団を歓迎した。そして、ジェイムズ・ボンド映画の新作「ノー・タイム・トゥ・ダイ」を引き合いに、気候変動に対処するための「時間がなくなってきている」と述べた。

ジョンソン氏は、ボンドは世界を滅ぼそうとする勢力と戦うことが多いとした上で、「(気候変動)は映画ではなく、終末装置は実在する。これこそ悲劇だ」と述べた。

その上で首相は、気温上昇が摂氏2度進むと食料供給が危うくなり、3度進むと山火事やサイクロンが増え、4度進めば「すべての都市に別れを告げることになる」と述べた。

「我々が行動せずにいる期間が長くなればなるほど事態は悪化し、最終的には大惨事によって行動せざるを得なくなる。その代償はいっそう高くつくことになる」

先進国は特別な責任を負っている
ジョンソン氏は、「COP26を気候変動問題に本腰を入れるきっかけにしなければ」、「世界の怒りと焦り」は抑えきれなくなると語った。

また、何もかも「一度に」実行するのは無理でも、自分たちには「刻一刻と時間を刻む終末装置」を解除する技術があるとした。

さらにジョンソン氏は、環境に優しい経済へと移行するには、先進国が「他の国々を支援しなくてはならない、特別な責任があることを認識」する必要を強調した。

未来の子どもたちが「我々を評価」
ジョンソン氏は、政治家は2050年や2060年に何をするのかを語るが、COP参加者の平均年齢は60歳を超えていると指摘。将来生まれてくる子どもたちが、自分たちの行動の是非を判断することになると述べた。

「我々は失敗やミスは許されない。もしそんなことになれば、未来の子どもたちは我々を許さない。グラスゴーの会議が歴史の転換点だったのに、歴史を変えられなかったと言われてしまう」

「自然をトイレ扱いするな」
アントニオ・グテーレス国連事務総長は、温室効果ガス排出量削減に向けた緊急行動を最も声高に主張する1人。そのグテーレス氏は、「化石燃料への依存が人類を瀬戸際に追い込んでいる」と力説した。

「我々が化石燃料を止めるか、化石燃料が我々を止めるかだ。もうたくさんだと声を上げる時が来た。炭素で自滅するのはもうたくさんだ。自然をトイレのように扱うのはもうたくさんだ。燃やしたり採掘したりして、どんどん深みにはまるのはもうたくさんだ。我々は自分たちの墓穴を掘っているようなものだ」

「文字通り時間切れ」
休養のため参加を取りやめたエリザベス女王に代わって出席したチャールズ皇太子は、新型コロナウイルスのパンデミックによって、国境を越えた危機が「いかに壊滅的か」あからさまになったと述べた。
気候変動問題については、「文字通り時間切れだ」、「私たちは何をすべきかわかっている」と述べた。

そして、増大する債務に苦しむ国々を支援するために、「世界の民間部門の力を結集するため、軍事作戦的な大々的な取り組みが必要」だとした。
「何も行動しないことへの代償(コスト)は、予防策を行うコストよりもはるかに大きい」(後略)【11月1日 BBC】
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一方で、目標とされる気温上昇「1・5度未満」の達成について、現状は相当に厳しい評価がなされており、時間との勝負の取り組みが求められています。

****COP26 Q&A 気温上昇「1・5度未満」へ機運高まる*****
英北部グラスゴーで開催中の国連気候変動枠組み条約第26回締約国会議(COP26)で本格交渉が始まった。世界の気温上昇を産業革命前から1・5度未満に抑えるための方策が話し合われる。交渉の焦点や各国の立場などをまとめた。

Q 「1・5度未満」の目標とは
A 2020年に本格始動した温暖化対策の国際枠組み「パリ協定」は、世界の気温を産業革命前から2度未満に抑えることを目標とし、できれば1・5度未満とする努力目標も掲げている。国連気候変動に関する政府間パネル(IPCC)が18年にまとめた特別報告は、2度と1・5度で気象や環境への影響に大きな差があると指摘。1・5度未満を目指す機運が国際的に高まった。

Q 目標は実現できるのか
A 厳しい状況だといわれている。IPCCによると、2030年には世界全体の温室効果ガス排出量を10年比で約45%削減し、50年ごろに「実質ゼロ」に抑える必要がある。だが、COP26開幕前の時点で国連機関が各国の自主削減目標を分析したところ、30年の削減目標のペースでは同年時点で排出量が16%増加、今世紀末に気温は2・7度上昇する。欧米や日本が掲げる排出量の「50年実質ゼロ」を達成しても今世紀末には気温が2・2度上昇するとされた。

Q 交渉の焦点は
A IPCCは2040年までに1・5度に到達する可能性を指摘する一方、今世紀末には1・4度に戻すことも可能としている。そのためには、各国の一段の削減努力が不可欠で、会議では目標を高める道筋をつけられるかが焦点だ。削減目標は5年ごとに見直す仕組み。議長国の英国は、石炭火力発電所を先進国が30年、途上国が40年までに廃止するよう訴えている。

Q 主要国の取り組みは
A 先進国の米国や欧州連合(EU)、日本などは排出量の「50年実質ゼロ」とともに30年の削減目標を示している。一方、温室効果ガスの最大排出国の中国は「実質ゼロ」の目標期限を60年とし、排出量が3番目に多いインドは70年としている。経済への影響のほか、両国は途上国としての立場もあり、さらなる目標引き上げに現時点で慎重のようだ。

Q 「途上国の立場」とは
A 途上国側には多くの温室効果ガスを排出してきた先進国が温暖化対策でより大きな責任を担うべきだとの考えが強い。そのため先進国は途上国の対策に資金援助もしている。先進国は20年までに年間1千億ドル(約11兆円)を拠出し、25年までこの規模を維持すると約束。目標は現時点で未達だが、途上国は26年以降も支援の継続・拡充を求めている。

Q 交渉は「先進国対途上国」の構図なの?
A 主要な対立軸ではあるが、そうとばかりではない。参加国は利害が合致する国と交渉グループをつくっている。途上国内でも中印などのほかにいくつかグループがあり、気候変動の影響に脆弱(ぜいじゃく)な島嶼(とうしょ)国などは、先進国で野心的な対策を目指す欧州連合(EU)と連携も強めている。日本は先進国のうち、米国やオーストラリアなどとグループをつくっている。【11月4日 産経】
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【世界的な「脱石炭」の流れ】
これまで、先進国と途上国の対立から総論賛成・各論反対で、なかなか実際の改革が進まなかった感がありますが、今回は各国・企業などの具体的な取り組みが多く報じられており、それらを見る限り、ようやく前向きの取り組みが始まるのかな・・・という雰囲気も感じられます。

特に、気候変動の最大の原因となっているとされる石炭について、「脱石炭」の流れが出来つつあります。

****【COP26】 石炭からの脱却、190の国と企業が約束 米中などは加わらず****
英スコットランド・グラスゴーで開催中の国連気候変動枠組み条約第26回締約国会議(COP26)で3日、190の国と企業が「脱石炭」を約束したと、英政府が発表した。この中にはポーランドやヴェトナム、チリといった主要な石炭使用国も含まれる。

これらの国と企業は、国内外での新たな石炭火力発電への投資をすべて終了することを約束した。
ただ、オーストラリアやインド、中国、アメリカなど、世界最大の石炭依存国の一部は脱炭素化に関する文書に署名しなかった。(中略)

世界の電力の37%は石炭火力
世界的に石炭使用量の削減は進んでいるものの、2019年の世界の電力の37%は石炭火力でまかなわれていた。
南アフリカやポーランド、インドなどでは、エネルギー部門をよりクリーンにするために大規模な投資が必要となるだろう。

COP26に参加する、環境保護団体「グリーンピース」代表団のトップ、フアン・パブロ・オソルニオ氏は、「この声明は概して、化石燃料問題に取り組むための重要な10年間に必要な野心を、また十分に満たしていない」と述べた。

「輝くような見出しとは裏腹に、各国が独自の段階的(石炭)廃止日を定めるうえでの時間的猶予を、各国に与えているようにみえる」【11月4日 BBC】
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****英政府「石炭火力を40年代までに段階的に廃止」 COP26で声明****
英グラスゴーで開催中の国連気候変動枠組み条約第26回締約国会議(COP26)で、英政府は3日、石炭火力発電について主要経済国は2030年代、途上国は40年代までに段階的に廃止するなどとした声明を発表した。

賛同国には現在は石炭火力に依存するポーランドの他、日本の支援で石炭火力事業が進むベトナムなど、段階的廃止や新規建設停止を初めて表明した18カ国が含まれる。日本は参加していない。
 
「世界全体での石炭からクリーンパワーへの移行」と題した声明では、他の電源と比べて二酸化炭素(CO2)排出量の多い石炭火力を期限までに段階的に廃止することの他、国内外の石炭火力への新たな投資を停止するとしている。また、石炭関連産業の労働者らが不利益を被らないよう、支援をしながら脱石炭を進めることも盛り込んだ。
 
英国は「石炭が気候変動の最大の原因」として、世界で石炭火力全廃に道筋をつけることをCOP26での最重要課題の一つに位置づけ、主要経済国は30年、途上国は40年までの全廃に合意するよう呼びかけていた。声明では「30年代」「40年代」などとして事実上期限を延長することで多くの賛同を取り付けたとみられる。
 
英政府は各国政府、金融機関など190の国・組織が賛同したとしているが、3日時点でリストは公表していない。英紙ガーディアンによると、国レベルでは40カ国以上が賛同した。世界のCO2排出上位3カ国(中国、米国、インド)や、石炭火力が電源構成の約6割を占めるオーストラリアなどは参加していないという。【11月4日 毎日】
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各国政府だけでなく、金融関連企業も「ネットゼロ」の達成を投融資の軸足に置く方針を表明しています。

****気候対策中心の投融資を確約、COP26で金融関連企業連合****
英グラスゴーで開かれている国連の第26回気候変動枠組み条約締約国会議(COP26)で、合計運用資産が130兆ドルの金融機関や投資会社の連合が3日、温暖化ガスの排出を実質なくす「ネットゼロ」の達成を投融資の軸足に置く方針を表明した。

COP26ではまた、少なくとも19カ国が来年末までに国外の化石燃料プロジェクトに対する公的融資を停止することで4日に合意する見通し。

これに先立ち、金融関連企業の連合は、化石燃料脱却の取り組みで「相応の貢献」をすると確約した。

国連の気候変動問題担当特使のカーニー前英中銀総裁が金融関連企業で構成する「グラスゴー・ファイナンシャル・アライアンス・フォー・ネットゼロ(GFANZ)」の会合を開催。

COP26が目指す、産業革命前からの世界の気温上昇を1.5度に抑える努力目標の実現には、今後30年間で100兆ドルの資金が必要になるとの試算を公表した。政府が達成できる以上の成果を上げるために、金融業界は民間資金を呼び込む方法を探る必要があると訴えた。

また「資金はあっても、ネットゼロに整合的なプロジェクトが必要で、それがあれば非常に強力な好循環を生み出す道がある」と強調した。カーニー氏は、金融機関が投融資に関する気候リスクについて説明し、開示する仕組み作りを主導してきた。

国際通貨基金(IMF)のゲオルギエワ専務理事は、日々のマクロ経済に関する報告書に気候関連データを組み入れることが非常に重要だと強調。

世界の金融規制を担う金融安定理事会(FSA)のクノット副議長(オランダ中銀総裁)は、気候リスクの開示で最低限守るべき国際基準が必要だと述べた。

中国人民銀行(中央銀行)の易綱総裁は、金融機関が環境に貢献するグリーン事業を支援できるよう、低利の資金を供給する新たな金融政策措置に取り組んでいると述べた。【11月4日 ロイター】
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イギリス政府は、大手企業や金融機関に対し、気候変動を食い止める施策の提示を義務付ける方針を発表。

****【COP26】 英財務省、金融機関などにネットゼロ計画を義務付け****
イギリスの財務省は3日、大手企業や金融機関に対し、気候変動を食い止める施策の提示を義務付ける方針を発表した。

イギリスは、2050年までに炭素排出量を差し引きゼロにする「ネットゼロ」を目指している。企業は2023年までに、この目標に基づき、低炭素化に向けた詳細な計画を立てる必要がある。

財務省の専門家会議は今後、各企業の計画が満たすべき基準を策定する。一方、計画の実行そのものは義務付けられておらず、環境保護活動グループからは十分でないとの指摘も出ている。

財務省はこの点について、「透明性と説明責任を拡大するのが目的」だとして、「企業単位でネットゼロを義務付けるわけでない」と説明。
その上で、企業の計画が信頼に足るものかどうかは市場が判断するだろうとしている。(後略)【11月4日 BBC】
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【日本は世界とのずれも】
ただ、日本はこの「脱石炭」に関しては、世界の潮流と大きくずれているとの指摘もあります。
 
****日本の姿勢と世界の潮流のずれ****
日本政府は20年、国内でCO2排出量の多い非効率な石炭火力の9割を30年度までに休廃止する方針を決めたが、全廃の時期は明らかにしていない。

また、日米を含む主要7カ国(G7)は国外の石炭火力事業について、新規の公的支援を今年中に終わらせることに合意した。ただし、「排出削減対策が講じられていない場合」として例外を認め、支援継続の余地を残している。
 
国外の石炭火力事業への日本の公的支援額は、G7の中でも突出している。また、岸田文雄首相は2日、COP26首脳級会合での演説で、ゼロエミッション(排出ゼロ)化を前提にアジアで既存の火力発電を活用する必要性を訴え、環境NGOなどから批判を集めた。
 
各国の石炭火力事情に詳しい自然エネルギー財団の大野輝之常務理事は「10月に閣議決定したエネルギー基本計画では30年度の電源構成で石炭火力は19%を占め、日本は石炭を継続利用する意思を明確にしている。電力需要が増える見通しのベトナムなどの途上国も今回賛同しており、日本の姿勢は世界の潮流と大きくずれ、対策が遅れていることを一層目立たせる結果となった」と指摘する。【11月4日 毎日】
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【厳しい現状】
現状の方は前出【産経】にもあるように、“30年の削減目標のペースでは同年時点で排出量が16%増加、今世紀末に気温は2・7度上昇する。欧米や日本が掲げる排出量の「50年実質ゼロ」を達成しても今世紀末には気温が2・2度上昇する”という厳しい状況にあって、コロナ禍からの回復とともに、CO2排出量がコロナ以前水準近くまで増加しているとされ、この状況を変えるためには相当大きな決断が必要とされるように見えます。

****世界のCO2排出、コロナ前水準に迫る 今年は4.9%増****
世界の二酸化炭素(CO2)排出量が新型コロナウイルス流行前の水準付近まで増加したことが、4日発表の報告書で明らかになった。輸送部門の排出量は低水準で安定しているものの、電力・工業部門で石炭・天然ガスの排出量が急増した。

報告書の主筆であるピエール・フリードリンシュタイン英エクセター大学研究員は「一定の増加は予想していたが、増加の激しさと速さに驚いた」と述べた。グローバル・カーボン・プロジェクトがまとめた。

昨年のCO2排出量は、ロックダウン(都市封鎖)や経済活動の停止を受けて、19億トン(5.4%)減と記録的な落ち込みとなったが、今年の排出量は4.9%増加する見通し。

主要排出国では、中国とインドの今年の排出量が2019年を上回る見込み。米国と欧州の排出量は、やや鈍化するという。

今年の世界のCO2排出量は364億トンに達する見通し。

フリードリンシュタイン氏は、今後30年間で排出量を実質ゼロにするには、大幅なCO2排出削減が必要だと指摘。「おおまかに言えば、今から2050年まで毎年、新型コロナ危機の際と同程度(の削減)が必要になる」と述べた。【11月4日 ロイター】
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「グラスゴーの会議が歴史の転換点だったのに、歴史を変えられなかったと言われてしまう」(ジョンソン首相)「我々は自分たちの墓穴を掘っているようなものだ」(グテーレス国連事務総長)「文字通り時間切れだ」(チャールズ皇太子)という切羽詰まった状況です。


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アフガニスタンでの女性権利保護、気候変動に関する行動を求める側の言行不一致・欺瞞

2021-11-03 21:30:13 | 女性問題
(1日、英グラスゴーでの国連気候変動枠組み条約第26回締約国会議(COP26)首脳級会合で行動の重要性を演説するジョンソン首相 【11月2日 時事】)

【「ソーセージパーティー」でタリバンに女性権利を求める各国・国際機関代表団の欺瞞】
アフガニスタンで教育や就業の面で女性の権利が認められていないことについては、多くの報道があります。
下記記事はそうしたものの一例です。


****「なぜ勉強できないの?」 学校を追われたアフガン少女たち****
アフガニスタンのアメナさんは、通っていた女子高校が今年5月、イスラム過激派組織「イスラム国」の爆弾攻撃を受け、同級生数十人の死を目の当たりにした。それでも教育を受け続ける覚悟だった。
 
ところが、中等教育を受けているほとんどの女子と同様、アメナさんは今、授業からまったく締め出されている。アフガニスタンで政権を奪還したイスラム主義組織「タリバン」は9月に学校再開を命じたが、女子生徒は除外された。

「勉強したいし、友達に会いたいし、明るい未来がほしいです。でも今はそれができません」。首都カブール西部にある自宅でアメナさんはAFPに語った。「最悪の状況です。タリバンが来てから、とても悲しいし、怒っています」
 
国連児童基金(ユニセフ)の幹部が15日語ったところによると、タリバン暫定政権の教育相は同機関に対し、すべての女子生徒が中等教育を受けられるようにする枠組みを近く発表すると述べたという。
 
だが今のところ首都カブールを含むアフガン全土で、女子生徒の大部分は授業を受けられていない。
 
一方、小学校は全ての子どもに対して再開した。また私立大学には女子も通うことができるが、服装や行動について厳しい制限が課せられている。

■「希望がない」
アミンさんはジャーナリストになることを夢見ていたが、今では「アフガニスタンに希望はない」という。
 
家ではきょうだいに勉強を助けてもらっている。学校襲撃で心に傷を負った妹はカウンセリングを受けている。アミンさんは時折、このカウンセラーからも勉強を教わっている。

「兄弟が本を家に持ってくるので、それを読んでいます」と語る。「それから、いつもニュースを見ています」
 なぜ男子だけが勉強することができて、女子には許されないのか、理解できないとアミンさんは訴える。「社会の半分は女子で、残りの半分が男子。なんの違いもありません」

「なぜ私たちは勉強できないのでしょうか? 私たちは社会の一員じゃないのでしょうか? なぜ男子だけに将来があるのでしょうか?」

■消えた夢
米軍主導の多国籍軍が旧タリバン政権を追放したのは、2001年。それから何年もたって生まれたザイナブさん(仮名、12)は、タリバンの5年におよぶ圧政の記憶もなく、学校通いを楽しんでいた。それも復権したタリバンの命令が出るまでだった。
 
先月、男子だけが学校に戻る様子を窓から見てがく然とし、「恐ろしい気持ち」になったという。
「毎日、どんどん悪くなっています」とザイナブさん。身の安全のために本名は伏せて取材に応じた。
 
姉のマラレーさん(仮名、16)は涙ながらに「絶望と恐怖」を感じていると明かした。今は掃除や皿洗い、洗濯など家事を手伝って過ごしている。
 
母親の前では涙をみせないようにしている。「母はたくさんのプレッシャーを背負っていますから」と説明した。
 
マラレーさんは女性の権利を向上させ、彼女の権利を奪う男性たちを説き伏せることを夢見ていた。
「学校、そして大学に行くのは私の権利です」とマラレーさん。「私の夢や計画はすべて、消えてしまいました」 【10月26日 AFP】
***********************

女子教育についてもタリバンはイスラム法の許す範囲で云々とはいうものの、その実態は上記のような状況です。

ただ、今回取り上げるのは、そうしたタリバンの言行不一致ではなく、タリバンを批判して女性の権利を保護するように求めている欧米諸国や国際機関などの国際社会の"欺瞞"とも言うべき姿勢です。

なお、下記記事表題にもある「ソーセージパーティー」は男性のみの集まりを指す隠語で、その由来は・・・想像できるかと思います。

****タリバンも各国代表団も男性だけ 「ソーセージパーティー」に批判*****
スラム主義組織タリバンが実権を握るアフガニスタンの国際社会への受け入れに動く各国当局や支援団体が、タリバン側との協議に男性だけを派遣し、女性を排除していることに批判が出ている。
 
タリバンは8月の実権掌握以降、暫定政権から女性を排除、女性の労働や教育を制限しており、国際社会から批判されている。
 
各国政府や支援団体の代表団は、国際社会からの承認を希望するタリバン側と首都カブールで協議しているが、その席に女性の姿はほとんど見られない。

■「ソーセージパーティー」
国際人権団体ヒューマン・ライツ・ウオッチのヘザー・バー氏は、ハッシュタグ「sausageparty(ソーセージパーティー、男性だけの集まり)」を付けて、タリバンが投稿した代表団との協議の際に撮られた一連の写真を掲載した。
 
バー氏はAFPに対し、「各国、特に支援団体は模範とならなければならない」と語った。「男性だけの集まりが普通のことだとタリバンに思わせるべきではない」
 
タリバンは外国の代表団との非公開協議の際の写真をソーシャルメディアに多数投稿しているが、女性は一人も写っていない。
 
英国のサイモン・ガス首相特使らは10月、タリバン暫定政権のアブドル・ガニ・バラダル副首相、アブドル・サラム・ハナフィ氏と会談したが、会談場所の豪華な部屋に女性の姿はなかった。
 
当局者はAFPに対し、英国側の出席者がいずれも男性だったのは偶然だと説明した。
 
パキスタンも、国際社会から支持が得られるようタリバンに助言しているが、外相と情報機関トップがカブールを訪問した際の写真や動画で確認できるのは男性だけだった。
 
カタールの首都ドーハで昨年行われたアフガン政府とタリバンとの和平交渉に参加したフォージア・クーフィ氏は「各国指導者は女性の権利について語るのなら行動を伴わなければならない。単なる政治的発言ではなく、信念であることを示さなければならない」と訴えた。
 
赤十字国際委員会や国連児童基金(ユニセフ)、国境なき医師団とタリバン側との会談の写真も公になっているが、いずれも代表団は少人数で、偶然全員が男性だったとしている。
 
国際赤十字・赤新月社連盟は、代表団の女性メンバーが会談直前に参加できなくなったため、男性だけになってしまったと説明した。
 
アフガンは極端な例かもしれない。だが、女性が男性と同席できないのはアフガンに限らない。
バー氏は「男性しかいない場で女性の権利をめぐる問題について懸念を提起するのは極めて奇妙だ」と述べた。
 
こうした批判を受け、国連は、全員女性から成る初の代表団をアフガンに派遣し、タリバン側と女性の教育問題について議論する計画を発表している。 【11月2日 AFP】
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各国・国際機関代表団に女性の姿がない・・・それは、そうしたレベルへの女性の参画が進んでいないという現実の一側面を示すものであり、そのことも改革を必要とする大きな問題です。

ただ、そういう現実があるにしても、女性の権利をなかなか認めないタリバンと会談し、女性の権利を認めるように求める場に女性がいないというのは「奇妙」なことでもあります。

意図的にでも女性メンバーを参加させて、タリバン側の認識の非を明らかにすべきところですが、各国・国際機関代表団にはそいう考えもなかったようです。

「ソーセージパーティー」で女性の権利について語る・・・笑止です。

【COP26 「行動を伴わない言葉は無意味だ」と言いつつ、各国首脳や企業家らは、専用機や自家用機を利用】
英グラスゴーで開催中の国連気候変動枠組み条約第26回締約国会議(COP26)で、地球と人類の将来に漢詩て真摯な議論がなされている・・・はず。

イギリス・ジョンソン首相も、口先だけではない「行動」の重要性を力説しています。

****ジョンソン英首相、グレタさんまねる 気候変動で行動呼び掛け―COP26****
ジョンソン英首相は1日、英グラスゴーで開催中の国連気候変動枠組み条約第26回締約国会議(COP26)の首脳級会合で、スウェーデンの環境活動家グレタ・トゥンベリさん(18)の口まねをし、各国首脳に行動を呼び掛けた。
 
ジョンソン氏は演説で「もしわれわれが行動を起こさなければ、気温上昇を1.5度以内に抑えるという約束は、言葉を換えれば、『何とかかんとか』以外の何物でもなくなるだろう」と訴えた。グレタさんの名前には言及しなかった。
 
グレタさんは9月の気候変動に関する若者の国際会議で、世界の指導者たちが口約束ばかりで行動を欠いていると批判。その際に「より良い再建、何とかかんとか。グリーン経済、何とかかんとか。2050年までの排出ゼロ、何とかかんとか」などとジョンソン氏らの掲げるスローガンを引用しながらやゆしていた。【11月2日 時事】
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「行動を伴わない言葉は無意味だ」と息巻くジョンソン首相は正しい・・・・しかし、その実態は・・・・

****COP26に専用機など400機 首脳、企業家ら 偽善との批判も*****
「グラスゴー上空には偽善と熱気が漂っている」(英紙デーリー・テレグラフ)――。英グラスゴーで開かれている国連気候変動枠組み条約第26回締結国会議(COP26)に出席した各国首脳や企業家らは、専用機や自家用機を利用。その数は計約400機に上り、英メディアなどで批判的に取り上げられている。
 
英紙ガーディアンによると、英国のジョンソン首相は、グラスゴーからロンドンに戻る際に4時間半かかる電車ではなく、専用機を使う。
 
英首相官邸は、専用機の燃料の一部は環境配慮型だとしているが、ジョンソン首相は1日の首脳級会合のあいさつで「気候変動対策に取り組む時に、行動を伴わない言葉は無意味だ」と息巻いた。だが「説得力に欠ける」との非難を受けそうだ。
 
航空機は乗客1人当たりの二酸化炭素(CO2)排出量が鉄道より多くなることから、欧州では短距離の移動に鉄道の利用を促す機運が高まっている。
 
また、同じ航空機でもたくさんの乗客を運ぶ民間機と比べ、専用機は乗客1人当たりの排出量がさらに増える。このため輸送に関する英国の環境活動家、マット・フィンチ氏は英メディアに対し「プライベートジェット機は輸送手段の中でもっとも汚染度が高い。気候変動会議の行き来に使うのは、完全に間違ったメッセージの発信になる」と訴えた。
 
デーリー・テレグラフは「その最たるものがバイデン米大統領だ」とする。大統領専用機「エアフォースワン」と、それに同行する4機の大型ジェット機が米欧間を往復すると、約1000トンのCO2が発生すると指摘した。
 
さらに、欧州連合(EU)のフォンデアライエン欧州委員長も専用機で現地入りしたとし「彼女はブリュッセルからパリやロンドンといった短距離を含め、海外出張の半分以上に『エアタクシー』を使っている」批判した。
 
英紙インディペンデントは2日のCOP26の会合で、自然の回復などに20億ドル(約2280億円)の拠出を発表した米インターネット通販大手アマゾン・コム創業者、ジェフ・ベゾス氏がプライベートジェット機でやって来たことを紹介。ただ、ベゾス氏が気候変動対策のために設立した基金の担当者は、同紙に対し「環境配慮型の燃料を使い、排出されるCO2も全て相殺している」と答えた。【11月3日 毎日】
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専用機仕様でねん出した時間を使って、より効果的な行動を起こす・・・・ということであれば、目くじらをたてることもないでしょうが・・・どうでしょうか?
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観光再開へ舵を切る東南アジア コロナを極度に恐れる日本 「ゼロコロナ」に固執する中国

2021-11-02 23:03:25 | 疾病・保健衛生
(【11月2日 FNNプライムオンライン】タイ・バンコクの観光客が集まるカオサン界隈)

【観光再開に踏み出すタイなど東南アジア】
“タイでは現在も1日当たりの新規感染者数が1万人近くに上っており、ワクチン接種が完了しているのは全人口の40%余りにとどまる。ただ、バンコクについては接種率は80%近くに達している。”【11月1日 AFP】がという状況ですが、観光が国民経済の基幹産業である観光立国ということもあって、これまでの地域を限定した外国人観光客の受け入れを、日本を含めた低リスク国を対象に本格的に再開しています。

1日以降、条件を満たす旅行者は到着時に受けた検査の結果が出るまで、政府指定のホテルに1晩だけ宿泊する
ことになります。12歳未満の子どもが親と一緒に入国する場合は、ワクチン接種の条件が外されます。【11月2日 CNNより】


****タイ、観光客受け入れ再開 ワクチン接種で隔離なし バンコクなど****
タイは1日、新型コロナウイルスワクチン接種を条件に、1年半ぶりに外国人観光客の受け入れを再開した。首都バンコクとプーケットの空港には、規制緩和後初となる旅行者が到着した。他の都市についても順次受け入れを再開する。
 
バンコクのスワンナプーム国際空港とプーケット国際空港に降り立ったのは欧州からの観光客が大半で、防護服を着用した空港職員に迎えられた。
 
国内の国際空港を運営するタイ空港公社によると、1日には約3万人がスワンナプーム国際空港に到着する見込み。
 
タイ経済は観光業に依存しており、新型コロナのパンデミック(世界的な大流行)で大打撃を受けた。2020年の訪問者数は80%以上減少し、経済活動は1997年のアジア通貨危機以来、最悪の状態にまで落ち込んだ。
 
当局は観光業を再活性化させるため、「低リスク」の60か国以上を対象に、ワクチン接種済みの観光客についてホテルでの隔離免除を決めた。
 
12月に避寒のため訪れる観光客を取り込みたい考えで、低リスク国には欧州各国や米国、中国が含まれる。
 
プラユット・チャンオーチャー首相は10月29日、「政府と私が今、最も重要だと考えていることは、人々の暮らしを正常な状態に戻すことだ」と述べた。
 
観光産業はタイ経済の5分の1を占めており、コロナ禍の影響は飲食から輸送などさまざまな部門に及んでいる。
 
当局は来年には1000万〜1500万人の観光客が戻ってくると見込んでおり、その収益は300億ドル(約3兆4000億円)を超えると予測されている。
 
ピパット・ラッチャキップラカーン 観光相は「観光収入は2023年には2019年の水準にまで近づく見込みだ」と述べた。
 
一方、業界関係者は状況を楽観視していない。タイへの観光客の大部分を送りだす中国が、海外からの帰国者に対し、厳格な隔離措置を実施しているためだ。(後略)【11月2日 AFP】
******************

観光再開を首を長くして待ち望んでいる私としては、非常に気になるニュースなので、タイの状況をもう少し詳しく。

****“眠らない街“タイの復活...隔離も酒も有名スポットも「大幅解禁」で狙う観光客****
タイの観光業復活に向けた動きが急加速した。2021年11月1日(月)、タイ政府は日本を含む63の国と地域からの観光客について、ワクチン接種などを条件に入国後の隔離措置を免除。

人気観光地の一般公開も続々再開させたほか、バンコクなどでは、一部時間や店舗による制限があるものの、店内での飲酒が解禁された。

夜間外出禁止令は前日の10月31日に解除となったばかりだ。ほかにも一部の小学校が対面授業を再開した。「大幅解禁の日」街では人々がかつての日常を取り戻し始めていた。

“眠らない街”復活か
11月1日午前0時、首都バンコクのカオサン通りは地元の若者たちで賑わっていた。前日に夜間外出禁止令(午後11時〜午前4時)が解除されたのだ。スマホのカメラを向けると笑顔で応じる人が多い。日本の渋谷ほどではないが、ハロウィンの仮装姿の人もいる。

小道を入ったところに置かれた赤いクーラーボックスの側に、忙しそうに働く男性がいた。男性はクーラーボックスの陰でコソコソと真っ白のカップに液体を入れ、通りに座る客へ届ける。カップに入れられたそれは遠目からはジュースのように見えるが、酒だ。

この日からバンコクでは店内での飲酒が半年ぶりに解禁されたが、「酒は午後9時までしか売ってはならない」などの制限が付けられている。このため、こうした“違法行為”に手を染める店が多いという。なかには瓶ビールをそのまま売っている店もあった。

警察車両が近づくと人々は一斉に離散するが、車両が通り過ぎるとすぐに元の場所へと戻る。大型のクラブが入る建物には吸い込まれるように多くの若者たちが入っていく。クラブやバーの営業はまだ認められていない。クラブが入るビルの外観だけを見れば、真っ暗だが、開いた扉の奥の方には明かりが見える。私が近づくと、扉は閉められてしまった。

カオサン通りを少し離れた一画には屋台が並んでいた。深夜にも関わらず、白いカップを手にした若者たちが続々と来店し、楽しそうに語り合っていた。

観光大国の復活にかけるタイ
解禁されたのは夜間外出と店内飲酒だけではない。11月1日からタイ政府が指定した63の国と地域からの人々は、ワクチン接種や検査を条件に、入国後の隔離措置が免除となった。

午前7時、バンコク郊外のスワンナプーム国際空港に欧州から到着した人々が姿を現した。機内は空いていたようで、通路の混雑はない。この日、空港には前日のほぼ倍増となる61便が到着し、空港運営会社の幹部職員は「これから来訪者はますます増えると思う」と期待をにじませた。

人気観光地であるタイ王室ゆかりの三大寺院もすべて11月1日の朝から一般公開を再開した。午前8時、「エメラルド寺院」の通称で知られる「ワット・プラ・ケオ」では、衛兵の訓練が行われていた。外のテントには、7カ月ぶりに一般公開が再開されるのを前に、既に多くの来訪者が待機し、午前8時30分、供物の花などを手に続々と入門した。人々とともに奥へ進み、門をくぐると静けさが広がる。

コロナ禍の前は、1日あたり2万2000〜3000人が訪れ、いつも混雑していたが、11月1日は感染対策の人数制限で人が少なく、普段より落ち着いている。(中略)

タイの11月から3月は乾季にあたり、比較的過ごしやすい日が続く。タイ政府観光庁によると「爽やかな青空が広がる日が多く、観光にはぴったりの季節」だ。そんな観光シーズンのスタートに、旅行者は、空港到着後の隔離なしで街へ出て、観光名所の寺院を訪れ、夜は街で酒を飲め、外出規制もない…すべてこのタイミングで解禁したタイ政府の狙いは、観光大国の復活だ。

コロナ禍により激変した街
(中略)
プラユット首相は10月11日テレビ演説で「観光で生計を立てる国民を支えるために、年末年始の旅行者に来てもらうチャンスを逃してはならない」と述べた。この発言の背景には、各国の政策もある。

“競合国”との観光客争奪戦
周辺の国々でも海外からの入国再開の動きが相次いでいる。

2021年11月1日現在、“インド洋の真珠”スリランカは10月7日、全土で隔離なし入国可能に。
インドネシアは10月14日、リゾート地バリ島などで国際線運航を再開(5日間の隔離義務)。

インドは10月15日、段階的な観光ビザの発行を再開し、11月15日からは外国人観光客の受け入れを本格的に再開する方針だ。

シンガポールは10月19日、隔離なしで入国を認める制度に8カ国(北米と欧州)を加え、11月8日からはオーストラリアとスイスを、15日には韓国も加える(日本からの渡航者は依然隔離が必要)。

オーストラリアは11月1日から最大都市のシドニーを含む一部の州や都市で、帰国する自国民や駐在などのために入国を許可された外国人に限り、隔離を免除とした。

マレーシアは11月15日からランカウイ島で外国人観光客を隔離なしで受け入れる方針だ。

これに負けじとタイも一部の観光地、プーケットでは隔離なしの入国を認めてきた。
11月1日は、ワクチン接種率が基準を満たした一部の幼稚園と小学校も、対面授業を再開させ、子どもたちが笑顔で再会を喜び合った。

かつての日常が戻り始めるなか、タイ国内では不安の声も聞こえてくる。このところ、タイの1日当たりの国内新規感染者は1万人程度で推移。国内では、観光業の回復=経済再生へ期待が高まる一方、警戒感が根強く、世論調査では6割が「観光客受け入れは時期尚早」と回答した。

タイ政府はリスクを負って観光客争奪戦への参入に踏み切った形で、タイ政府観光庁は、今後の2カ月間で、毎月約30万人の旅行者がバンコクを訪れると見込んでいる。ウィズコロナで観光大国の復活はなるか。今後に注目したい。【11月2日 FNNプライムオンライン】
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【規制緩和したものの、相変わらずコロナ死を極度に恐れる日本】
日本でも“なぜか”感染者が急減し、各種の規制が緩和・撤廃されています。
今日はたまたま地方の田舎から東京に出てきていますが、さきほど(午後10時)ホテルの外に出たとき、近くの飲食店は酒を飲みながら談笑する客でいっぱい。コロナ前の賑わいのようにも。

ただ、日本の場合、「安心・安全」「ゼロリスク」へのこだわりが非常に強く、「ウィズ・コロナ」への発想の切替がなされている訳でもないので、今後感染者が増えれば、すぐにまた規制強化となるのでしょう。

****英国はコロナ感染再拡大でも規制強化せず…日本人には理解できない「死生観」の違い****
規制措置はほぼ全廃
10月25日、新型コロナウイルスの感染拡大防止のための飲食店への営業時間の短縮要請が、首都圏でようやく解除された。東京都などで厳しい行動制限がなくなるのは、昨年11月以来だ。

10月下旬の日本の新規感染者数は1日当たり50人以下と劇的に減少し、「ゼロ・コロナ」に近い状態となっている。だが、「冬にかけて再び感染爆発が起こる可能性がある」と警告する専門家は相変わらず多い。

経済活動の本格回復への期待が高まっているものの、東京商工リサーチが10月に実施した調査によれば、70%強の企業が「緊急事態宣言の発令などに関係なく、忘年会や新年会を今冬は行わない」と回答している。コロナ禍以前の「日常」が戻ってくるかどうかはいまだに見通せない状況だ。
 
日本とはまったく対照的なのは英国だ。
英国では今年7月半ばに、コロナウイルス感染拡大防止のための規制措置はほぼ全廃され、人々は通常の生活に戻りつつある。公共交通機関やスーパーなどでのマスクは義務化されている(違反した場合は100ポンド=約1.5万円が課される)ものの、ほとんどの人がこれに従っていないという。

コロナと共存するやり方
そのせいだろうか、ここにきて新規感染者数が再び急拡大している。
10月下旬の1日当たりの新規感染者数の平均は約4万5000人、今年1月上旬のピーク時(約6万人)に近い水準となっているものの、ワクチン接種などのおかげで過去の感染拡大局面と比べて死者数や入院者数は大幅に減少している。しかし、医療体制は徐々に逼迫してきており、保健当局は22日、「早期に行動すれば厳しい対策を講じる必要性が低下する。在宅勤務など感染拡大を抑制するための措置の再導入に向け準備すべきだ」と提言した。
 
これに対し、ジョンソン首相は規制の強化の必要性を否定した。規制の強化で社会生活や経済を犠牲にするのではなく、あくまでコロナと共生していくやり方だ。その根底にはコロナの被害が一定の範囲に収まったら「収束」とみなし、季節性インフルエンザと同等の扱いをするという決意があるのだろう。政府の方針について国民の間にも強い反発はなく、パニックが起きているわけでもない。

コロナが特別ではない
日本では「収束」に関する具体的な議論が進んでいない。コロナに対する恐怖心が強くなりすぎてしまったことから、「収束」についての具体的な基準を示せば、「経済を回すために少数の人を見殺しにするのか」と、批判が起きることを政府は怖れているのかもしれない。
 
第5波の時に自宅療養者が多数死亡したことが社会問題となった。痛ましい出来事だったが、コロナ禍以前も緊急搬送先が見つからないなどの理由で亡くなる人が少なからず存在していた。コロナだけが特別だったわけではない。
 
日本でのワクチン接種率が7割超えとなった現在、換気が悪い場所でのマスク着用等を続けていれば、感染者の急増で医療体制が逼迫するリスクは格段に低下したと言える。新型コロナウイルスをいつまでも特別視するのではなく、政府はそろそろ「コロナ収束宣言」についての議論を始めるべきではないだろうか。

新たな「医原病」の誕生
近頃、「科学(医学)に基づく政治」が当然視されるようになったことにも、筆者は違和感を覚えている。念頭にあるのはオーストリアの哲学者、イヴァン・イリイチが1970年代に提起した「医原病」という概念だ。

イリイチは、「健康」に関するすべての問題が医療専門家にコントロールされるようになり、人々は常に何らかの健康不安を抱える状態になったことを「医原病」と呼んで問題視した。
 
必要な時期があったとはいえ、感染症の専門家が人々の行動に介入することが当たり前になった日本の現状は、新たな「医原病」が誕生したと言っても過言ではない。
 
諸外国に比べ感染者数や死者数が少ないのに、日本人が新型コロナウイルスを必要以上に恐れている原因を「死生観の欠如」に求める指摘もある。
 
戦後、日本を含め先進国では「死」を日常生活から隔離する風潮が高まり、「死」が近づいている家族や友人に対して積極的に向き合うことができなくなってしまった。

現在、日本の「病院での死」の比率は先進国の中で最も高くなっている。医療現場では、末期の患者に対する延命治療に終始するあまり、家族との別れが満足にできない場合が多いと言われている。地域の人々と行っていた弔いの儀式なども形骸化、喪失してしまった。

日本では「死は敗北」
死生観(死に関する意味づけ)が希薄になった日本では「死は敗北」以外の何ものでもないだろう。日本人は先進国の中で最も「死」を恐れる国民になってしまったのかもしれない。そうだとすれば、パンデミックによる「突然の死」への耐性が低いのは当たり前だ。
 
日本ではあまり知られていないが、英国を始め欧州では「QOD(死の質)が重要である」との考え方が広がっている。その背景には「死を受け入れると残りの日々を幸せに暮らすことができ、人生のクオリテイーが向上する」という社会的コンセンサスがある。
 
英国では「人生の最終段階を支えるケアシステム」が、21世紀初めからすべての総合医療機関や介護施設でスタートした。現場のスタッフが死をタブー視することなく、月に一度「終末期をどうしたいか」を確かめるための面談を行っているという。
 
パンデミック当初、日本の弔いの現場は大きな打撃を受けた。だがコロナが契機となって「看取り」の重要性が再認識され、葬儀のあり方を見直そう動きも始まりつつある。日本で新たな死生観が醸成されることを願うばかりだ。【11月2日 藤和彦氏 デイリー新潮】
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【「ゼロコロナ」に固執する中国】
一方、頑なに「ゼロコロナ」「ゼロ寛容」を維持しているのが中国。
最近感染が拡大しているとは言え、他国に比べたら遥かに低いレベル。それでも当局は強力な規制措置をさらに強める構えです。

****中国、コロナ流行「深刻」 封じ込め策さらに強化****
中国・北京市は30日、新型コロナウイルスの「深刻な」感染拡大を完全に封じ込めるため、新たな規制を導入した。北京冬季五輪の開幕まで100日を切る中、感染者ゼロを目指す「ゼロコロナ」を引き続き掲げる市当局は、厳格な封じ込め策を実施している。
 
著名ウイルス学者の鐘南山氏は30日、当局は全国的な感染拡大を1か月以内に封じ込めることが可能だと述べたものの、「流行を短期間で根絶することはできない」と指摘した。
 
少なくとも14省に感染が広がっており、この1週間で数百万人が検査を受けた。
 
国家衛生健康委員会の米鋒報道官は会見で、状況は「深刻かつ複雑」で、感染は「いまだ急速に広がっている」と語った。
 
北京市当局は、天安門広場の西に位置する人口100万人を超える西城区に対し、来月14日まで映画館の閉鎖を命じた。
 
中国では30日、9月半ば以降最多となる59人の新規感染者が確認された。うち北京で報告された2件は、北部で確認された団体旅行客の感染に関連している。
 
1日当たりの新規感染者数は他国に比べれば少ないが、来年2月4日の冬季五輪の開幕を前に当局は、北京市内の感染封じ込めを急いでいる。
 
現在、北京から650キロ離れたモンゴルとの国境の町エレンホトが新たに流行の中心となっている。
 
これまでに感染が確認された各都市で、計約600万人が移動制限の対象となっている。
 
国営新華社通信は30日、感染が確認された地域では、列車の運行を一時停止したり運行本数を制限したりしていると報じた。
 
現在多くの地域では域内に入る際、陰性証明書の提示が求められる。
29日には北京発の航空便の約半数が欠航となった。また、やむを得ない場合を除く市外への移動を控え、結婚式を延期するよう要請している。 【10月31日 AFP】
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武漢マラソンも北京マラソンも中止になりました。
甘粛省の省都で人口400万人の蘭州では10月26日、6人の新規感染が確認され、緊急の場合を除いて外出禁止となる都市封鎖が行われています。
北京市は10月29日、ホテルの結婚披露宴や団体旅行を禁じるなど厳しい感染対策を打ち出しました。

北京では来年2月に冬季オリンピックの開催を控え、また、11月には中国共産党中央委員会の年次会議も予定されています。

そうした“敏感な”時期的要因のほかに、中国製ワクチンの効果の問題もあるのでは・・・というのは私個人の邪推です。

中国では人口の約75%に当たる10億人以上がワクチン接種を完了したにもかかわらず、感染が急拡大している状況ですが、中国製ワクチンは欧米製に比べ感染予防効果が低いとも言われていますので、規制を緩めると感染拡大が一気に進む可能性も・・・そういう事態は、中国当局にとっては“世界に恥をさらす”ような受け入れがたい事態でもあるのでは・・・。

“中国、コロナ「ゼロ寛容」政策を長期に維持へ=専門家”【11月2日ロイター】
“世界的にワクチン接種が進んでいるにもかかわらず現在の死亡率が2%となっていることについて、中国では許容できない(2020年初めに中国の対新型コロナ戦略の策定に寄与した呼吸器疾患の専門家、鐘南山氏)”

ただ、そうなるといつになったら普通の生活が戻るのか?
いつまで外の世界から隔離した状態を続けられるのか?
といった問題も。 

世界が「ウィズ・コロナ」に動く流れのなかで、中国だけ隔離状態を続けるのでしょうか?

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アフガニスタン  相変わらずのタリバンの言行不一致 深刻化する飢餓と資金難 疑問視される統治能力

2021-11-01 22:26:53 | アフガン・パキスタン
(国内各地で住む場所を失い、首都の仮設シェルターに避難したアフガニスタンの子供たち(10月9日、アフガニスタン・カブール)【10月26日 BBC】)
 
【不明確な統治方針 相変わらずの言行不一致も】
アフガニスタンで実権を掌握しているイスラム武装勢力タリバンの統治がどのようにものになるのか、旧タリバン政権時代のようなイスラム原理主義に基づく(と、彼らが主張する)過酷なものになるのか、一定に女性・少数民族などの人権が守られるものになるのか・・・未だによくわかりません。

(国際的な国家承認を求めている)報道官など幹部からは、従来よりは融和的な発言もなされますが、実際に現場でおきていることは旧政権時代を彷彿とさせるようなことも。

実際には変わる気がないのか、末端兵士にまで支持が徹底されないのか、内部に従来と同様な過激な主張に固執する勢力が存在するのか・・・。

たまに、“変化”をうかがわせるような言動も。

****アフガンのクリケット代表が国際試合で勝利…娯楽に否定的なタリバンも祝意****
アフガニスタンの国民的スポーツ、クリケットの男子代表チームが25日、アラブ首長国連邦(UAE)での国際試合で勝利した。本格的な対外試合は、アフガンの親米民主政権が崩壊した8月以降では初めて。アフガン国民にとっては、一筋の希望の光となった。
 
代表チームは、イスラム主義勢力タリバンが首都カブールを制圧した後も、国外で練習を続けていた。25日のスコットランド戦では、国歌斉唱でむせび泣く選手もいた。観客席ではサポーターがアフガンの黒、赤、緑の国旗を懸命に振った。
 
カブールの建築士の男性(39)は、電話取材に自宅で友人とテレビ観戦したと語った。タリバンの実権掌握後は仕事がなく不安な日々を送るなか、「代表チームが幸福をもたらしてくれた」と喜んだ。
 
本紙通信員によると、娯楽に否定的なタリバンを恐れて、路上などで喜びに沸く人の姿は見られなかった。タリバンのザビフラ・ムジャヒド報道官は試合後、ツイッターに「全ての愛国者に祝意を表す」と投稿した。人心をつかもうとの思惑がありそうだ。【10月29日 読売】
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娯楽を禁じていた旧政権時代に比べると、報道官が祝意を表すというのは“変化”です。
でも、国内で練習が出来るような環境があるのでしょうか?
以前幹部から「女性がクリケットをする必要はない」といった発言もありましたが、女性のスポーツは?

一方で、やはり変わっていないのでは・・・と思わせることは多々。

****披露宴で招待客3人射殺、音楽演奏が原因か アフガニスタン***
アフガニスタン東部ナンガハル州で開かれた結婚披露宴で、招待客3人が射殺される事件が起きた。イスラム主義勢力タリバンの31日の記者会見によると、音楽の演奏が原因だったと思われる。

記者会見したタリバンの報道官によると、29日夜にナンガハル州で行われた結婚披露宴で、タリバンのメンバーを名乗る容疑者3人が招待客らを銃撃した。地元のジャーナリストはCNNの取材に対し、少なくとも2人が死亡、10人が負傷したと話している。

タリバンの報道官は、音楽演奏を理由とする殺人は許されることではないと述べ、個人的な争いを原因とする事件だったのかどうかを調べているとした。

報道官のツイッターによれば、容疑者らは銃撃前にタリバンのメンバーを名乗り、音楽を止めるよう要求していた。

ただ、容疑者が実際にタリバンのメンバーだったのかどうかについて、報道官は明らかにしていない。容疑者3人のうち2人は逮捕されたが、もう1人は逃走したという。

タリバンは結婚式など人が集まるイベントで音楽を演奏することは認めていないものの、今年8月に実権を握った後も禁止命令は出していない。

しかし8月下旬にはフォークシンガーの男性が自宅からひきずり出されてタリバンに殺害される事件が発生。同国のミュージシャンは、楽器を演奏しないよう指示されたと証言している。

1996〜2001年のタリバン政権下では、ほとんどの音楽が非イスラム的だとして禁止されていた。【11月1日 CNN】
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明確に音楽を禁止はしていないが、“音楽に関しての見解を示していないが、タリバン幹部は娯楽としての音楽を依然として良しとせず、イスラム法に反するとみている。”【10月31日 AFP】という事情が背景にあるようにも。

“音楽演奏を理由とする殺人は許されることではない”・・・・殺人は許されないが、殴って楽器を没収するぐらいは許されるのか?・・・人権・市民生活を尊重・保証する基本的な考えを明確に示し、それに違反する末端兵士がいれば厳罰に処するという実際の行動が示されない限り、タリバン支配を容認することはできません。

【「世界最悪の人道危機の一つに陥っている」(WFP)】
ただ、政変で経済が混乱し、国際支援は途絶し、干ばつやコロナ禍もあって従来以上に飢餓・食糧難が深刻化する事態に、人道援助は必要になるところが、国際社会の対応の難しいところです。

****アフガニスタン、人口の半分以上が飢餓状態に WFPが報告書で予測****
国連世界食糧計画(WFP)は25日、アフガニスタンで11月以降、人口の半分以上にあたる2280万人が飢餓状態になると予測した報告書を発表した。「世界最悪の人道危機の一つに陥っている」としている。
 
報告書によると、すでに9〜10月、前年同期に比べて30%増となる1900万人が飢餓状態に陥った。干ばつや新型コロナウイルス感染に加え、8月にイスラム主義勢力タリバンが政権を掌握したことで、国際的な支援が滞ったという。
 
11月〜来年3月はさらに食料不足が深刻化し、飢餓に苦しむ人口が前年同期から35%増え、国連が調査を始めて以来最悪の水準になる恐れがあると警告した。特に5歳未満の子どもは年末までに、320万人が栄養失調に陥る可能性があるとみている。
 
今回はまた、失業者の増加や現金不足が原因で、都市部の住人も地方と同じ割合で食料不足にあることが分かった。中流階級だった層も飢餓状態になる可能性があるという。
 
WFPは「支援がなければこの冬、何百万人もの人が移住するか餓死するかの選択を迫られることになる」として国際社会に支援を呼びかけている。【10月25日 朝日】
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これから厳しい冬が訪れます。事態の悪化が懸念されます。

【米中 人道支援で影響力増大を狙う】
アメリカを含めた国際社会も人道支援には同意していますが、現実問題として、タリバン政権の性格が明確にならない状況では、政権を利することにならない形での人道支援というのは効率が悪く、援助国側のモチベーションも上がらないところがあるでしょう。

****タリバン、「アメリカが人道支援で合意」 アフガン撤退後初の対面協議が終了****
2アフガニスタンを支配する武装勢力タリバンと、米政府代表団の、米軍撤退後初の直接協議は10日、2日間の日程を終えた。協議では過激派勢力の封じ込めやアメリカ国民の脱出、人道支援の提供などが話し合われた。

米国務省のネッド・プライス報道官は、タリバンについては行動で判断するとしつつ、協議は「率直でプロフェッショナル」なものだったと述べた。

アメリカは、対面協議を再開したからといって、タリバンをアフガニスタンの正統な政府として承認したわけではないと強調している。
タリバンは10日夜に声明を発表し、アメリカがアフガニスタンへの人道援助の提供を開始することに合意したと主張した。

同組織は、「アメリカ代表団はアフガニスタンの人々に人道支援を行い、ほかの人道支援団体が援助を行うための施設を提供すると表明した」としている。

また、「人道支援を必要としている人々に、透明な形で届けるため、慈善団体と協力し、原則に基づいた外国人の移動を促進する」と付け加えた。

一方でアメリカはこれまでのところ、こうしたタリバンの主張内容を正式に認めてはいない。

米国務省のプライス報道官は、アメリカとタリバンの双方は「アフガニスタンの人々に直接、精力的な人道支援」を提供することについて協議したと述べたものの、詳細は明らかにしなかった。

また、「米代表団は、安全保障やテロに関する懸念、アメリカ国民やそのほかの外国人、アフガン人協力者の安全な移動、そしてアフガン社会のあらゆる側面に女性や少女が有意義な形で参加することなど、人権に焦点を当て」て協議したと話した。

一方タリバンは、過激派勢力「イスラム国(IS)」系の地元組織「ISKP(イスラム国ホラサン州)」(あるいはISIS-K、IS-Kなど)の活動対応に、米政府と協力することはないと述べた。

ただ、カタール・ドーハを拠点とするタリバンのスハイル・シャヒーン報道担当はAP通信に対し、タリバン政権が「単独でダーイシュ(ISの別称)に対処できる」と述べた。

アフガニスタンでは8日、米軍撤収以降最悪の自爆攻撃が起きている。北部クンドゥズのモスク(イスラム教寺院)を狙った自爆攻撃で、少なくとも50人が死亡し100人以上が負傷した。アフガニスタンでの少数派、イスラム教シーア派の寺院を標的にしたこの攻撃について、武装派勢力「イスラム国(IS)」が犯行声明を出した。【10月11日 BBC】
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ここでも中国は、人権などを重視する欧米とは一線画した速やかな支援で存在感を強めようとしています。

****中国外相、タリバンに支援申し出る****
中国の王毅国務委員兼外相は25日、訪問先のカタールの首都ドーハで、アフガニスタンのタリバン暫定政権のバラダル第1副首相代行と会談した。

中国外務省の発表によると、王氏は「力の及ぶ限り人道支援物資を提供したい」と述べ、支援を申し出た。王氏は「米欧に(対タリバン)制裁を解除するよう促している」と強調する一方、米欧が懸念を示している女性の権利について「適切に保護することを望む」とくぎを刺した。

新疆ウイグル自治区の独立派組織「東トルキスタン・イスラム運動(ETIM)」のアフガンでの活動を取り締まることも求めた。【10月26日 産経】
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中国としても、新疆ウイグル自治区のイスラム主義を刺激しないように、タリバンのテロ対策が明確に示されない間は国家承認までには至らない状況です。

もっとも、イスラム原理主義を声高に唱えるタリバンは、中国の新疆でのイスラム教徒弾圧には“不干渉”姿勢のようです。このあたりは非常に現実的です。

【懸念される基本的な統治能力の欠如】
深刻な飢餓が懸念される状況で、国家承認がなされず国外資産は凍結されたままで、財政的に枯渇していますが、そもそもタリバンは(ゲリラ戦の能力はあっても)国内統治の能力を有しているのか?という疑問もあります。

****労働の対価は小麦のみ 露呈するタリバンの「無能さ」****
反故にされた「約束」
イスラム過激派組織タリバンがアフガニスタンを実効支配してから2カ月半が経過した。
タリバンは国際社会に対し、自らを「アフガンの正当な代表」としてアピールすべく、「女性の権利はイスラム法の範囲内で保証する」「女性も就労できる」「女子も学校に行くことができる」「誰に対しても報復しない」「全てのアフガニスタン人の安全は保証されている」「包括的政府を作る」などと数々の「約束」をしたが、それらはことごとく反故にされているのが現状だ。

首都カブールの女性公務員はほぼ全員が仕事を奪われ、「女子トイレの清掃」といった女にしかできない仕事のみが許されると市当局は発表した。ほとんどの地域では女子に許されているのは小学校への登校のみで、中学、高校への通学は禁じられたままである。

女性警官や女子スポーツ選手の他、旧政府関係者や同性愛者などが拘束されたり惨殺されたりしているという報告も相次ぎ、アムネスティ・インターナショナルやヒューマン・ライツ・ウオッチなどの国際人権NGOはタリバンが少数派ハザラ人から家屋や畑を奪い強制移住させていると報告している。タリバンはイスラム教スンニ派であり、ハザラ人はシーア派だ。

統治能力の欠如
問題はこうした人権侵害だけにとどまらない。タリバンにはそもそも、統治能力というものが完全に欠如している現実も明らかになってきている。

タリバンはアフガンを「占領」する米軍に対する憎しみを煽り、米の傀儡政権である旧政府の腐敗・不正を強調し、暴力とテロを武器に「敵」を倒してアフガンの実効支配に至ったものの、今や4000万人のアフガン国民を守り、衣食住を確保し、インフラを整備してその生活を支え、経済を立て直して国を再建しなければならない責任を負う立場に立たされている。

しかしタリバンにその能力がほぼ完全に欠落していることは、末端のタリバン兵たちも証言している。彼らは米軍を追放し米の傀儡政府を打倒するための「ジハード」に参加すべくタリバン入りしたものの、タリバンからはほとんど給与をもらえず日々の食料にも事欠く状況に置かれている。役人や教員にも給与が支払われない状況が続き、これもアフガンで教育が滞っている一因となっている。

世界最悪の人道危機
国連の世界食糧計画(WFP)は、4,000万人いるアフガン人の95%が十分な食事を得られておらず、半数以上にあたる2280万人が深刻な食糧不足に直面しており、世界最悪の人道危機に陥っていると警告している。

苦境に立たされたタリバン政府が10月末に発表したのが、「小麦で仕事を」という「失業キャンペーン」だ。これは水路の建設や掘削作業などの肉体労働と引き換えに小麦を渡すというもので、全国の主要都市で展開され、数万人を「雇用」する予定だという。

タリバン政府当局は「失業対策のための重要な一歩」と胸を張るが、「雇用」とは言っても労働者に賃金は一切支払われない。対価は小麦のみである。

治安維持も「無能」
タリバンは治安維持においても「無能」であることを露呈させている。

8月末の米軍撤退直前には首都カブールの空港で自爆テロが発生し、180人以上が死亡した。10月には2週連続でシーア派モスクが自爆テロの標的となり、多数の死傷者が出た。いずれも実行したのはタリバンと反目する「イスラム国」だ。

アフガニスタンでは2015年から「イスラム国」の支部である「ホラサン州」がテロ活動を展開している。戦闘員数は現在4000人ほどと見積もられているが、そのうち約半数はタリバンが政権をとった際に「解放」されたか脱走したメンバーだとされる。タリバンの「おかげ」で勢力を倍増させた「イスラム国」は、8月以降アフガンで既出の自爆テロを含め既に40回近く「作戦」を実行している。

「イスラム国」は「作戦」の犯行声明で、タリバンの検問を容易に突破できたと度々強調しタリバンの「無能」を嘲笑しているだけでなく、タリバンは中国政府の反イスラム政策に協力してウイグル人迫害に手を染めている、タリバンは米軍と協力しているなどと批判し、タリバンのことを「背教者」と非難している。

タリバン政府は「イスラム国」は長続きしない、自分たちだけで十分対処可能でありアメリカと協力するつもりなどないとその脅威を過小評価しているが、治安の悪化は止まらない。10月末に公開された「イスラム国」の週刊誌『ナバア』は、1週間のうちにアフガンだけで215人の「敵」を死傷せしめたと報告している。

食糧難、経済難、そして治安悪化のいずれも、その直撃を受けるのはアフガン国民だ。アフガン国民の窮状を救うには、タリバンが罪のない人々に暴力を働く残虐非道な過激派組織であることだけでなく、その「無能さ」についても、国際社会が理解を共有する必要がある。【11月1日 飯山陽氏 FNNプライムオンライン】
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労働対価が小麦というのは、それだけタリバンが資金的に苦しい状況にある、払いたくても資金がないことを示すものでしょう。

****タリバン、労働対価に小麦支給 飢餓対策で****
アフガニスタンで実権を掌握したイスラム主義組織「タリバン」は24日、飢餓対策として労働の対価に小麦を支給する計画を発表した。
 
タリバンの報道担当者ザビフラ・ムジャヒド氏は首都カブール南部で記者会見し、計画は主要都市で展開する予定で、カブールだけでも男性4万人の雇用につながると説明した。
 
ムジャヒド氏は「失業との闘いにおける重要な一歩となる」とし、労働者は与えられた仕事に励まなければならないと述べた。
 
アフガンはタリバンの実権掌握以前から貧困や干ばつ、電力不足、経済低迷に直面していた。現在、厳しい冬を迎えようとしている。
 
計画の対象は、冬に飢餓に直面する恐れが最も大きい失業者で、金銭は支払われない。実施期間は2か月間。
 
カブールでは小麦1万1600トン、ヘラートやジャララバード、カンダハル、マザリシャリフ、プリフムリーなどで合わせて約5万5000トンが支給される。
 
カブールでの労働は、干ばつ対策の流雪溝や貯水池の敷設工事といったものになる。 【10月25日 AFP】
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小麦支給でも、何もしないよりはましでしょう。
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