テディちゃとネーさの読書雑記

ぬいぐるみの「テディちゃ」と養い親?「ネーさ」がナビする、新旧の様々な読書雑想と身辺記録です。

~ 虫、千里を走る ~

2025-01-07 22:03:41 | ブックス

「こんにちわッ、テディちゃでス!

 ふうゥ、たべすぎィ~なのでスゥ!」

「がるる!ぐるるがるる~…」(←訳:虎です!お腹が苦しい~…)

 

 こんにちは、ネーさです。

 身体に優しい七草粥を、

 ゆったりと適量(←ここ大事!)いただいた後は、

 さあ、読書タイムですよ。

 本日は、こちらの御本を、どうぞ~♪

  

 

 

           ―― 病葉草紙 ――

 

 

 著者は京極夏彦(きょうごく・なつひこ)さん、

 2024年8月に発行されました。

 『病葉草紙』は『わくらばそうし』とお読みくださいね。

 

「おォ~いッ、とらごろうゥやァ~いィ!」

「ぐるるるがるぐる?」(←訳:どうしたクマさん?)

 

 ここは、八丁堀から程近い、

 因幡(いなば)町の藤左衛門(とうざえもん)長屋。

 

 今日も今日とて、

 店子(たなこ)さんが寝込んじゃあいないか、

 きちんと仕事(つとめ)に出掛けたか、

 店賃(たなちん)は工面できたか、

 等々の心配事を抱えてやって来たのは、

 大家さんの一人息子の、

 藤介(とうすけ)さんです。

 

 老齢の父・藤左衛門さんに代わって、

 実質的に長屋運営のマネジメントを担っているのは、

 まだ二十代の藤介さん、な訳で。

 

「おうッ、とうすけさんッ、てえへんだッ!」

「がるるぐるがっるるるる!」(←訳:あいつ全然食ってねえぞ!)

 

 にぎやかな店子のおかみさんたちと

 軽くお喋りしながら、

 藤助さん、長屋の棟の左奥の戸口に向かいます。

 

 久瀬棠庵(くぜ・とうあん)さん。

 

 おかみさんたちに”うらなり”と呼ばれている棠庵さんは、

 ちょいとばかし浮世離れしていて、

 放っておくと、書物に夢中で、飯を食うのも忘れっちまう。

 おおい、棠庵さん、生きてるかぁ~?

 

「だいじょぶゥ~!」

「ぐるるるるがるるる!」(←訳:とりあえず生きてた!)

 

 ああだこうだと、

 藤介さんと棠庵さんが無駄話をしている、

 ちょうどそこに。

 

 事件が!

 

「おッ? どうしたッてんでいィ?」

「がるぐぅる?」(←訳:お初ちゃん?)

 

 棠庵さんの真向かいの部屋から、

 ゆらりと出てきたのは、店子のひとり、

 まだ十五歳の、お初さん。

 その顔に、血の気はありません。

 

 いったいどうした? 何事だ?と訊ねても、

 動揺しているお初さんは、

 まともな会話や説明も出来ず泣くばかり。

 

 一方、棠庵さんは言うのです。

 

 《虫――ですこれは》

 

「むしィ?」

「ぐるっるる?」(←訳:ムシって虫?)

 

 ”事件”の現場を見ても

 俺には何も分からないのに、

 棠庵さんの眼には

 何かがはっきり映っているらしい……

 

 いや、それにしたって、虫って何だよ?

 

 問いただす藤介さんに、

 棠庵さんは――

 

「まッたァまッたァ!」

「がるるるぐる!」(←訳:そこまででい!)

 

 すべては、虫。虫のせい。

 

 虫、というひと言の背後に

 どんな事情が、からくりが隠されているのか、

 必死に追いかけ、食らいつく藤介さん。

 笑いと涙と機智が

 幾重にも仕込まれた痛快連作ミステリは、

 虫祓い、いえ、初春の厄祓いにおすすめですよ。

 本屋さんで、図書館で、

 ぜひ、探してみてくださいね~♪

 

コメント
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