テディちゃとネーさの読書雑記

ぬいぐるみの「テディちゃ」と養い親?「ネーさ」がナビする、新旧の様々な読書雑想と身辺記録です。

2025!新春特別企画! 《激走!大西洋横断!》 その③

2025-01-01 22:03:05 | 2025!新春特別企画!

「そ、総員、衝撃に注意~っ!」

 ゴゥンッ、ドスン、ガリガリ、ブシュシュウ~ン……

 

 あらららら、どうしましょう、

 新春特別企画その③、始まると同時に中断、でしょうか。

 名探偵テディちゃムズ一行を乗せた

 英国海軍学校の高速船《アテナ》号、失速してゆきます。

  

「船長、甲板に異常が!」

 副長さんの報告に、船橋は動揺に包まれました。

 黒影の襲撃者たちは、退艦するついでに

 甲板に大穴を開けていったのです。

 穴から風と海水が吹き込んで、

 《アテナ》号の蒸気機関は不調を来たしてしまいましたよ……!

 

 と、そこに。

 「テディちゃムズさん、ロンドンより通信です!」

 通信士さんが声を上げました。

  

『こちらロンドン、ユキノジョン・H・ワトスン博士!

 外交行嚢強奪犯の狙いが分かった!』

 

 ベイカー街221Bで留守を守っているユキノジョン・H・ワトスン博士が、

 次々と電報を打って寄越します。それによると……

 

 数分前、首相官邸に投げ文あり!

 外交行嚢は現金10億クマポンドと引換えだ!

 使い古した紙幣を用意せよ!

 交換場所はロンドン市内〇✕の△◇!

 時刻は2時間後!

 

 みなまで聞かず、走り出すテディちゃムズ。

「ゆこうッ、ろんどんへッ!」

 

 いやしかし、ちょっと待って、テディちゃムズ、

 《アテナ》号の現状を鑑みるに、

 2時間でロンドン着、というのは――

 

「ふふんッ!

 こんなこともォ~あろうかとッ!」

  

 甲板下の貨物室で、

 テディちゃムズと虎くん、マイクマフトお兄ちゃんは

 よいしょっ、せーの、と荷解きします。

 大きな防水布の中から現われ出たのは………え?

 

 人力飛行機………?

 

「くみたてェかんりょうッ!」

「がるぐる!」(←訳:強度確認!)

「出発じゃあ!」

 

 組み上げた機体に乗り込んだら、さあ、離陸ですよ。

 甲板に空いた大穴と、穴の周囲の乱気流を利用して、

 小型人力飛行機は空中に舞いあがります。

 テディちゃムズの巧みな操縦で、

 たちまち偏西風を捕まえて、

 翼は大西洋の荒波を眼下に、ぐんぐんと東へ。

  

「ううゥんッ、たりないィ!」

 

 順調かつ無茶な飛行を行いつつ、

 テディちゃムズは舌打ちしました。

 日没を過ぎ、光量が足りない視界では、

 ロンドンへの最短空路を見分けるのは困難の極み、ですねえ。

 

「ほっほっ、ワケもないわ」

 ペダルを短い足でせっせと踏みながら、

 マイクマフト氏はニヤリと笑いました。

「我が耳のチカラで、案内してみせる!」

 

 飛行機のキャノピーを少しだけ開け、

 ムクムク耳を突き出して、

 マイクマフト氏は精神を集中いたします。

 雲の彼方から、かすかに聴こえるあれは……

 

 ロイアル・アルバート・クマホールで開幕した

 大晦日名物の《紅白クマ歌合戦》の拍手と歓声!

 

「おお、聴こえるぞ!

 クマスピーナッツの大ヒット曲が!

 Vaundyクマくんの美声が!

 B’クマZのギターとシャウトが!

 あっちだ、テディちゃムズ!」

 

 かくして、人力飛行機は滑らかに、

 えー、正直に言っちゃいますと、だいぶヨタヨタと、

 テムズ川沿いにロンドン中心部上空に到り、

 着陸態勢に入ろうとして。

 

「うわッ?」

 

 テディちゃムズお手製の人力飛行機、限界です。

 ペダルは曲がり、サドルは外れ、

 翼からはメリメリと不吉な音がして、

 あわれ、勇ましいクマたち&虎くんは、

 まっさかさま……!?!

 

           (次回に、続く!)

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする