テディちゃとネーさの読書雑記

ぬいぐるみの「テディちゃ」と養い親?「ネーさ」がナビする、新旧の様々な読書雑想と身辺記録です。

お江戸ノワール犬ものがたり。

2011-03-22 23:34:20 | ブックス
 こんにちは、ネーさです。
 今日もなんとか計画停電を乗り切りました。ふぅー!

「こんにちわァ、テディちゃでス!」
「がるる!ぐるーるるぐるがるる!」(←訳:虎です!寒かったけどー踏ん張ったです!)

 皆さま、今日も一日お疲れさまでした!
 さあ、リラックスタイムは読書タイム!
 本日ご紹介いたしますのも、時空を軽々超えてしまう物語ですよ。
 こちらを、どうぞ~!

  


 
                   ―― 伏 ――



 著者は桜庭一樹さん、2010年11月に発行されました。
 『贋作・里見八犬伝』と副題が添えられています。

「……なんだかァ、このひょうしィ、こわァいィ~……」
「ぐるるがるるる~」(←訳:おどろおどろしいね~)

 そうですね、ちょいっと怖ろしげな表紙画のこの御本、
 映画風にジャンル分けするならば、
 スリル!サスペンス!アクション!格闘あり!ハードボイルドあり?
 泣かせる兄妹愛あり!の大作!!
 という感じでしょうか。
 いえ、それとも……
 パラレルワールドのお江戸に渦巻く
 ノワール伝奇物語……。

 テディちゃ、虎くんも、
 滝沢馬琴さん著『南総里見八犬伝』は知ってるでしょ?

「しッてまスゥ! ちばけんでス!」
「がるるるぐるるるがるぐるる!」(←訳:八つの玉と、八犬士の御話だよ!)

 ここに始まりまするは、
 とある漁師の娘さんのものがたり。

 浜路(はまじ)ちゃんは、
 歳のころ十四か、十五か。
 異母兄を頼り、
 それまで暮らしていた山を降り、
 花のお江戸にやって来たばかり。

 小さな彼女が背負った荷の中には、
 使い慣れた立派な猟銃。
 
 狩るべき獣もいない江戸の町で、
 猟銃の出番が早々に来るとは
 思ってもいませんでしたが――

「むむッ! まさかッ!」
「がるるるるぐる!」(←訳:近くに獣の気配が!)

 狩るべきケモノと、
 浜路ちゃんは出逢ってしまいました。

 伏(ふせ)と呼ばれる凶暴な《犬人間》の存在に
 江戸の町は悩まされていたのです。

 伏を狩った者の懐には懸賞金が転がり込む、
 多くの浪人たちが伏せを追っている、と兄は言いました。
 その言葉につられたわけではありませんが、
 お江戸見物を兼ね、
 兄・道節(どうせつ)に連れられて
 吉原へ踏み入った浜路ちゃんは、
 漁師の勘に導かれ、
 見つけ、出逢って、そして闘ってしまうのでした。

 不思議な犬人間、伏と……。

「うわわッ! おおたちまわりィ!」
「がるぐるるがるる!」(←訳:百階段で決闘だ!)

 闘いながらも、
 浜路ちゃんの胸の内で疑問が次々と湧きます。
 伏とは、何だ?
 伏は、どこから来たんだ?
 伏は……どんなものがたりを抱えているんだろう?

 娘漁師・浜路ちゃんのものがたり、
 入れ子状に収められた《贋作・里見八犬伝》のものがたり、
 そして私たち読み手が常に意識する本家・南総里見八犬伝のストーリーが
 渾然一体となって転がってゆく果てには……
 どのような江戸の“顔”が?

 週刊文春に掲載されていた桜庭さん版『八犬伝』、
 鴻池朋子さんの素晴らしい挿絵に飾られ、
 一冊の御本に、
 いえ、ひとつの宇宙となりました。
 伏に寄せるシンパシィ消し難い、
 花と闇の異風冒険物語、
 すべての活字マニアさんに、おすすめです!

「でもォ、みちばたでェ、ふせにィ、あッちゃッたらァ~」
「ぐるがるぐるるる!」(←訳:すたこら逃げよう!)


 
 この現し世にも、
 闇のはてに光が見えてきますように―― 
コメント
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